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第五十一話 用意周到にて到着 その一

お疲れ様です。


本日の投稿になります!!


それでは御覧下さい。




 口から零れる熱を帯びた吐息、足はもう疲れたから休みたいと我儘を言い放ち、それに従い指令役の頭も体を労われよと。


 あまぁい囁き声を放つのですが、そうはいかない。



 肩の肉と皮を食む背嚢を背負い直し、筋疲労によって熱く燃え滾っている大殿筋を稼働させ。大変歩き辛い街道の先に見えて来た人の文化の象徴へと進む。



 王都を出発して十日。



 最終補給地点であるベラードの街へ予定よりも二日程度早く到着出来たのは幸運であろう。


 幸運では無くて俺達の実力だな。


 常日頃から体を鍛えているお陰で一日の移動距離が一般人と比べて格段に長いのだ。


 まぁ、でも。


 移動に関して最大の功労者は彼女なのです。



「ウマ子?? もう直ぐ到着だよ??」



 御者席に座り、可愛い御手手で手綱を取る藍色の彼女では無くて、その前。



『あぁ、その様だな』



 カエデの言葉に反応してフルンっと尻尾を左右に揺らす。ウマ子の存在が本当に大きいよ。



「ふふ。もう……。振り返ってこっちを見なさい」


『――――。これで良いか??』



 ヤレヤレ、仕方がない小娘め。


 そんな感じでカエデの言葉に従い、円らな瞳を向ける。



「うん、良い子だよ」


『ふんっ』



 ブルルっと鼻を鳴らし、再び正面を捉えた。



「カエデ、そろそろ変わろうか。街に到着したら厩舎に入れなきゃいけないし」


「そうですね。分かりました」



 荷馬車へ背嚢を乗せ、颯爽と御者席に着き。



「久し振りだな、こうして手綱を握るのは」



 此処までずぅっとカエデが座っていたし。


 手綱の革の感覚がどこか懐かしく感じてしまった。



 車輪から伝わる振動が臀部を刺激し、何だか痛い様な、むず痒い様な。珍妙な感覚が広がる。


 俺が感じているという事は彼女も当然感じていた訳だ。



「…………」



 荷馬車の隣を何とも言えない表情を浮かべて歩き、時折臀部に手を当てて何かを誤魔化していた。


 擦れて……。痛いのかな??



「よ――、カエデ」


「何ですか?? ユウ」


「さっきから可愛いお尻ナデナデしているけど。どした??」


「御者席が若干硬くて……」



 ほら、やっぱり。


 分厚い座布団でも買うべきかな??


 王都に帰還したら一度お店を探そう。



「ふぅん……。痛いんだぁ……」



 おっと。


 この声色は不味い。



 不穏な声色に違和感を覚え、ユウの方へと振り返るとそこには。



「……」



 大変横着な遊びを思いついてしまった悪ガキの笑みを浮かべ、体の前で揺れる小振りな二つの桃に目掛けて忍び足で進んでいるユウの姿を捉えてしまった。



 両手の人差し指をツンッ、と立てて。さぁ準備完了。



「にしっ」



 賢い海竜様のお尻様に勢い良くぷにゅっと突き刺してしまった。



「ぃっ!!!!」



 刹那に生じた痛みに体をビクッ!! と上下させ。



「あはは!! 可愛い声出たな??」



 上空に浮かぶ太陽も呆れ果てる笑みを浮かべるユウに向かい、真っ赤な御顔さんのまま近付き。



「光よ、穿て。愚者に裁きの雷を……」



 手の平大の魔法陣をユウの胸元に浮かべると、そこから細い雷の線が出現し彼女の胸の頂を急襲した。



「いっでぇええええええ!!!! な、何すんだよ!!」


「お返しです」



 ふんすっ!! っと。かなり荒い鼻息を漏らし、スタスタとウマ子の前へと先行してしまった。



「いっちぃ――……。あぁ、良かった。先端は無事だ」



 指先で襟元をクイっと広げ、世界最高峰の双子山の頂を確認して安堵の声を漏らす。


 先端って……。


 まぁ、皆迄言うまい。



「随分と楽しそうな攻撃だったじゃん」



 深紅の髪を揺らし、ユウの肩をポンとマイが叩く。



「悪戯仕掛けたらとんでもねぇ御釣りが返って来たよ」


「カエデのお尻、フニフニだから触りたいのは理解出来るわよ?? でも、その代償が大き過ぎて流石の私でも触るのには勇気が要るわね」



 ふむ。


 賢い海竜様の臀部は餅の様に柔らかい。


 また新たなる余計な情報が蓄積されてしまいましたね。



 そして、下らない言葉を聞き逃す筈も無く??



「…………」



 時間さえも凍り付く冷たい瞳で横着者二人と。



「……。むっ」



 御者席に着く俺にも恐ろしい瞳を届けてくれました。



 藍色の瞳はこう言っている。



『聞こえなかったですよね??』 と。



 彼女に向けて肯定とも、否定とも取れる曖昧な視線と表情を浮かべ。街の入り口の脇に見えて来た厩舎へ、いつもよりウマ子を速く走らせて向かって行った。





















 ◇




 ベラードの街はどこにでもある至極普通の町並みであった。中央の通りを挟むように家々が立ち並び、その中には店を営んでいる者も居る様で。


 よそ者である俺達の姿を見かけると。



「いらっしゃい!! 野菜とパンは如何かな!!」



 店主の威勢の良い声が道に鳴り響いた。




 生活雑貨と食料品のお店か。


 後で寄りますからもう少々お待ち下さいね??


 恰幅の良い店主さんに一瞥を放ち、引き続き周囲へと視線を送る。




 若干硬そうパンを美味そうに齧っている男。道端に足を止め亭主の文句を言い合う主婦達。


 映し出される長閑な風景に、何処か時間が遅く流れて行く様に感じてしまう。



 生まれ故郷に似て、此処も田舎ですね。



『田舎だなぁ』



 俺の気持ちを代弁したユウが念話でポツリと漏らす。



「普通に田舎で、普通に過ごし易そうな感じだよね」



 ユウの意見に賛成し、心温まる瞳で通りを見つめていると。龍の一声がこの和やかな空気を破壊し尽くした。



「あぁぁぁぁぁっ!! 飯屋発見んぅぅ!!」



 右手前方。


 店先の看板に飯の文字を確認すると、その看板の前へ鷹も驚く速さで駆け始めて行く。



「飯にしようか」



 少しばかりの溜息と共に声を出し、街の皆さんに喧しくて申し訳ありませんと。


 忸怩たる想いを乗せた足取りで彼女の後を追った。



 今更って感じだけど。アイツに情緒は無関係だな。


 頭の中は常に飯の事で埋め尽くされているんじゃないのか??



『おらぁ!! ちゃっちゃと来いやぁ!!』


「もう少し静かに移動しろ」



 店先の前で腕を組み、堂々たる仁王立ちで此方を待ち構える愚か者にそう話す。



『無理っ!! お腹減ったもん!!』



 でしょうね。


 此処で食事を摂ると決めて、昼食は抜きにしましたから。



 これ以上コイツにお預けをさせていたら、この街の食料を全て食べ尽くしかねないので。少しばかり建付けの悪い扉を開け店内に足を踏み入れた。




 日の光が入り辛いのか、薄暗い店内は何処か寂しげに映る。


 外観からは想像出来ない位に広い店内に置かれた大きな丸い机、その前には来客様の椅子が取り囲んでいた。


 昼を少し過ぎた所為か。


 食事を摂っているのは最奥に居るお年を召した老夫婦のみであった。


 パッと見は寂れた田舎の飲食店、しかし何処か温かさが残る店内だな。




「いらっしゃいませ。お客様は五名で宜しいでしょうか??」



 来客を察知した中年の女性が一番奥の扉を開けて出て来る。



「あ、そうです」


「こちらの机をご利用下さい」



 店員さんに促される様に席へと着くのですが……。


 椅子の座り心地は此方の想像通り、良く無かった。



 外観が寂しくとも、味が良ければ良いのさ。


 さて!! 本日の昼食は何にしようかね!!



 手元に置かれている品書きを手に取り、取捨選択を開始した。



 クリームパスタ。


 山菜の炒め物。


 握り飯にその他麺類、諸々か。



 ぱっと目に付いたのは麺類だな。


 牛乳を使用した麵料理……。まろやかな味を想像した口内にじわりと唾液が湧いてしまう。



 後は、適当に見繕って頼もうかしら??


 横一文字に口を閉ざして唸り続けていると、アオイの念話が届いた。



『レイド様、今日はここで一泊なさるのですか??』



 宿泊かぁ。


 補給を済ませたら出発する予定だったけども。


 皆の疲労度合いを今一度確認しましょうかね。



「俺としては泊まっても構わないけど……。皆、どうする??」


『補給したら直ぐ出発でもいいんじゃないか?? 特に泊まる理由も無いし』



 ユウが机の上に置かれているやかんからコップへと水を移し、一口分チビリと飲み終えると声を上げる。



『私もユウに賛成ですわ。早く向こうに到着すればそれだけ時間を短縮出来ますし』



 アオイもユウに賛成か。



「そりゃそうだけど。疲れとかは溜まっていない??」



 体は資本だ。


 疲れを取るのも仕事の内。最適な行動を取る為には十分な休息が必要だからね。



「僅かな疲労は感じていますけど、支障をきたす程ではありません」



 カエデも俺達の意見に賛成、ね。


 この中で一番無理をしそうな彼女だけど、声色から察するに概ね好調そうだし。大丈夫かな。



「マイはどうだ??」



 コイツの場合は聞かなくても良いけど、一応聞いておきますか。



『へ?? ごめん聞いてなかった』



 品書きからパっと顔を上げ、深紅の瞳でこちらを捉える。



「補給を済ませたらここを直ぐ出発してもいいかと聞いているんだ」



 惚けた御顔さんに向けてそう話す。



『あ――。はいはい、それで構わないわよ。このトマトソースのパスタいけそうね……』



 私は今選択に苛まれているんだ。


 だから、邪魔をするな。


 そう言わんばかりに此方を邪険にあしらい、再び品書きへ視線を落としてしまう。



 貴女は一度、礼儀って言葉を誰かに教わった方が良いと思いますよ??


 親しき中にも礼儀あり、という言葉もあるのだから。



「――――。ご注文はお決まりですか??」



 先程の女性とは違い、若い女性がこちらの注文を取りに来た。



「まだ決まっていませんよ」


「す、すいません」



 頬をぽっと赤く染め、俺達に向かってお辞儀をすると慌てて下がって行ってしまった。



 まだ仕事に慣れていないのかな??



『何だ、レイド。あぁいう子が好みなのぉ??』



 こちらの視線を追っていたのか。


 ユウが煽るような表情を浮かべ、頬杖をついて揶揄って来る。



「そんなんじゃないよ。まだ慣れていないのかなって思っただけさ」


『へえ??』



 ニヤニヤと意味深な笑みを浮かべちゃってまぁ――……。


 その顔、止めよう??



「それより注文は決まった??」



 揶揄う表情から逃れる為、強制的に注文を受け賜わる。



『あたしはクリームパスタかな』


『私は鶏肉の香草焼きを所望しますわ』


『山菜炒めとパン』



 ふむ。


 皆さんお淑やかな量で御座いますわね。



「マイは??」



 さぁ……。


 問題はコイツだぞ。


 驚天動地の量を頼まれても椅子からひっくり返らない様、丹田に此れでもかと力を籠めて尋ねた。







『うむむ……。トマトソースのパスタと、パン十個。それに山菜炒めとおにぎり三つで……。いや、おにぎりを一個抜いてもう一品違うのにすべきか……』



 はい!!


 勘弁して下さい!!



「すいません!! 注文お願いします!!」



『ちょっと!! まだ確定していないのよ!?』



 それを見越して店員さんを呼んだのですよ。


 慌てふためく間に無理矢理決めちゃおうって作戦ですからね。



「は――い!!」



 遠くで律儀に待機していた先程の女性がこちらに小走りでやって来る。


 焦らなくても構いませんよ??


 転んでしまいますからね。



「ご注文を受け賜りますっ」


「えっと。クリームパスタ二つ、鶏肉の香草焼きそれと……」


『トマトソースのパスタ!! それとおにぎり四つ!!』



 捲し立てる様に若干早口で、今し方覚えたての注文を次々と伝えて行く。


 此方の作戦踊り。焦った龍が慌てて注文を確定させた事にほっと胸を撫で下ろし、女性店員さんへ何気なく視線を送ると。



「えぇっと……。クリームパスタ、二つ。鶏肉の香草焼き一つ……」



 二つの手の先にある指をキュ、キュっと折り曲げて注文した品を反芻していた。


 額に汗を浮かべて行うその所作。


 熱心な接客態度が伝わってきますよ??



「……。以上です」


「畏まりました!! 直ぐにお持ち致しますね!!」



 元気の良く頭を下げると、奥の扉の先へと姿を消して行ってしまった。



「カエデ、向こうで調査を始める場合どこから開始した方がいいと思う??」



 頼んだ品が来る前に一通り調査の段取りを把握しておこうと考え、机の上に地図を広げた。



『そうですね……。襲撃された場所は森の中央地点でしたよね??』


「そう、此処だよ」



 山と山に挟まれた渓谷。


 入り口側の平地の森と、向こう側の森の出口の丁度中間点を指差して話す。



『ふむ……』



 細い顎にこれまた細い指を当てて何やら考え込む仕草を取る。



「深い森の中ならそれだけ隠れる場所も広くなる。それを考えて襲撃しているのか??」



 東西に広く伸びる森だ。


 身を隠すには持って来いの場所だし。



『そう考えるのが妥当でしょう。複数の襲撃地点は、最初の襲撃があった地点から然程離れていません。私達もそこで夜営を張り、愚か者を出迎えた方が宜しいかと……』



 下手に動くよりかは待ちの一手か。



「相手が俺達を警戒して現れない可能性もあるよね??」


『魔力を抑えていれば問題無い。それと、襲撃地点が離れていない事が指し示すのは……。相手は味を占めているのです』



 味を占めている??



『広い大陸を態々右往左往しなくても、待ち続けているだけで様々な物資が運ばれて来るのですよ??』



 あぁ、そういう事か。



「盗人猛々しいとはこの事だな」



 それがどういった結果に繋がるのか、向こうは考えていないのだろうか??


 それとも。


 襲い掛かる問題を跳ね除ける力を持っているからなのか。


 いずれにせよ、注意を払うべきだな。



『どんな奴か楽しみよね。腕が鳴るわ』



 野盗さんも可哀想に……。


 コイツを相手にしなきゃいけないのだから……。


 両の拳を握り、未だ知り得ぬ敵との戦いを想像し喜々としていた。



「物騒だな。会敵したとしても先ずは説得だ、いきなり殴りかかるなよ??」


『分かっているわよ。向こうが手を出して来たら……。好き勝手に暴れても構わないわよね??』



 好き勝手。


 その部分が気になりますが、正当防衛となると仕方がないよね。



「程度にもよるって。間違っても命を奪うまねは止めろよ」


『あのねぇ、私はそこまで狂暴じゃないっ』



 呆れたようにこちらを見ると静かに溜息を漏らした。



『どうだか。レイド様のお手を煩わす事だけはしないように』


『はぁ?? あんたにだけは言われたくないわよ』



 また始まった。


 この二人、協調性という言葉は知らないのか?? 机を挟み視線がぶつかると火花が空中で飛び散る。


 両者一歩も譲らず視線を逸らす事はしない。まるで背けたら負けを認めるかのようであった。



「お待たせしました!!」



 一足即発の雰囲気を見計らった様な登場に胸を撫で下ろしてしまう。



 店員さん、有難う!! 助かりましたよ!!



 元気の良い声と共に料理が運ばれて来て、芳醇な香りが周囲に立ち込め食欲をワンサカ掻き立てる。




『ウェヘヘッ!! こりゃぁあ、上物ですぜぇ……!!』



 先程までの不穏な空気は何処へ。



 お前さんは悪の手下かと突っ込みたくなる台詞を放ち、己の前に並べられた料理に目尻がとろぉんっと蕩け落ちてしまっていた。



 現金な奴め。


 まあ、それでいざこざが収まれば安いものか。



「さて、頂こうか」


『大賛成よ!! いっただきま――す!! あむっ!!』



 食に感謝を述べ、器用に巻き取った麺を一口口に含む。



 う、うぉっ。


 これは……。大当たりだ!!!!



 濃厚なクリームの中にキノコや山菜がこれでもかと入っている。とろっとした白き液体に絡ませて口に運べば幸せな気分にさせてくれるではありませんか。



 静かに咀嚼を始めると、甘さと塩気が舌の上で踊り演劇が始まる。


 主演は麺で、それを栄えさせる名脇役がクリームだ。



 そして、俺は劇の観覧者。



 麺がクリームの手を取り舞台で踊れば、キノコと山菜が脇で演奏を始め、華やかさに拍車をかける。


 麺はクリームの手を放さないように誘導し、より苛烈に踊り始める。



 口の中の演者達はどの舞踏会にも負けない華やかで、そして優雅な舞を観覧者の俺に披露してくれた。



「……。美味い」



 数口で食べ終えると飾りに飾った比喩では無く、質素な言葉を敢えて送った。



 素直な言葉しか出て来ない程に、完成された味であり。これ以上味を加えればこの素晴らしい舞踏会は成り立たない。



 短くも、賛辞を精一杯込めた言葉でありましたね。



『うん!! 美味しい!!』



 此方と同じ注文をしたユウも満足気だ。


 そうだろう、そうだろう。この濃厚なクリームは早々味わえないからな。



 牛乳に小麦粉をちょっと混ぜて……。胡椒も少し入っているかな??



『一口頂戴!!』



 幸せな咀嚼を続けていたら、隣から横着な龍の攻撃が始まり。ごそっと麺を強奪されてしまった!!



「あ、おい!!」


『んふ――!! いけるじゃない!!』



 白いクリームで口回りを汚し、無邪気な子供の様に笑顔を浮かべる。



「自分の分を食えよな」



 これ以上幸せの麺を減らされたく無いので、少し卑しいかもしれないがマイから皿を遠ざけてやった。



『気にしないの。ほら、私の山菜も食べてみて?? いい味出してるわよ』



 ほう??


 それは聞き捨てならないな。言われるがまま山菜を箸で摘み口に迎え入れる。



 あぁ……。


 ここは優しい風が吹く野原か?? 山菜の青い香りと少しだけ固いシャキッとした触感が否応にも俺を野へと誘う。



 塩と山菜が俺の両手を掴み、野原を駆け巡る。この二人といつまででも遊んでいたい気持ちにさせてくれる、そんな味を舌で感じてしまった。



『どう?? 美味しいでしょう』



 ご満悦な龍を見ると、俺は大きく頷いた。



「野原が……。俺を呼んでいる」


『は?? 何言ってんの??』



 しまった。


 余りの美味しさに比喩表現をしてしまった。



「んんっ。美味いの一言に尽きるな」



 取り敢えず。此方の失態を誤魔化す様に咳払いをしておいた。



 いや、どれも本当に美味しいな。これだけの物、早々出会う事は出来ないぞ。


 街の近くに寄ったらこの店に必ず寄ろう。




 食事はあっと言う間に終わり、俺は目の前の空になった皿を恨めし気に見下ろした。


 今度は絶対大盛で頼もう。



『美味しかった!! ご馳走様!!』



 マイも満足したようだ。腹を抑え笑顔で天井を仰いでいるのが良い証拠です。



『今からどうするんだ??』



 食後の水を一口飲むとユウがこちらを見つめる。



「物資の補給をするよ。その間、皆は自由行動で。街の入り口にそうだな……。一時間後に集合ってのは??」



 それくらいで補給は済むだろう。



『分かったわ。ユウ、何か買いに行こうよ!!』


『あいよ。ちょっと行ってくるね――』



 二人は立ち上がると颯爽と店を出て行ってしまった。


 むっ。


 しまった、二人に浪費は避けるようにと言伝を忘れてしまった……。



「二人はどうするの?? 出掛けて貰っても構わないけど」


『私はレイド様をお手伝いさせて頂きますわ』


『手伝う』


「そっか。じゃあお言葉に甘えようかな。すいません!! 勘定をお願いします!!」



 店員さんに声を掛け、立ち上がる。



 さてと、物資の補給はどこで済まそう。先程の通り沿いに何か良い物があればいいのだが。



「お待たせ致しました!! えっと……」



 計算が苦手なのかな?? 指を折り曲げてぶつくさと独り言を放ち。



「お待たせしました。えっと、三千ゴールドですね!!」



 これで完璧ですね!!


 自身の計算に満足気に頷き、此方の予想以下の値段を発表してくれた。




 うむ!! 五人で食事をしてこの価格、実に良心的です。



「ご馳走様でした。また寄らせて貰いますね」


「あ、はい!! お待ちしております!!」



 会計を済ませ、素晴らしい笑顔を背に受けて通りへと躍り出た。


 さて!!


 アイツが余計な物を買い揃える前に、素早く補給を終えましょうかね!!


 先程見掛けたお店へと向かい、通常の速度よりも二割増しの速度で歩き始めた。




最後まで御覧頂き有難うございます。


後半部分は現在編集中ですので今暫くお待ち下さい。

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