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第十三話 女の戦いは基本、タイマン

本日の投稿、何んとか間に合いました……。

では、御覧下さい!!




 彼が突如として襲来した鉄の塊を真正面で受け止め、天幕の外へと面白い角度で弾き飛ばされて行く。

そして、彼の息の根を止めるべく。巨躯のオークが大股で天幕を出て行った。




 おっし。

 綺麗に受け止めたわね。




 アイツの表情を見る限り気負ってはいなかったし。大丈夫でしょう。

 私が加勢に向かってもいいけど。

 真正面のコイツを放っておいたら何をしでかすか分からん。



 私達と対峙しても、鬱陶しい笑みを浮かべ。

 人の神経を逆撫でする態度を放ち、今も目を細めて私達の様子を観察し続けていた。



 そろそろ私達から目を離しやがれ。

 何見てやがる。あぁ……??



「ちっ!! せめぇ!! やい!! こっちで勝負だ!!」



 ユウが戦斧を手に持つ巨躯を挑発し、天幕の外へと足を向けた。



「ユウ――。この姉ちゃん、私が成敗しても良い――??」



 そうじゃないと、私が喧嘩する相手いなくなっちゃうもん。



「あたしの分も残しておいて!!!!」



 あはは。

 そりゃあ無理な注文よ??



 この馬鹿野郎には痛い思いを与えねばならん。

 私達に喧嘩を売った事。

 それは非常に、本当に……。不味い事なんだってね!!



「はぁ。やっと静かになったわ……」



 なげぇ足を組み替え、気怠さを残した声でそう話す。



「あっそ。んで?? 考えを変える気は無いの?? 今ならまだ間に合うわよ」



 これが最終警告だ。

 そんな感じで言ってやる。



「はっ?? 何?? 何か言った??」



 こ、この野郎。

 折角!! 優しいこの私が警告してやったってぇのに!!



「も、もう一度。言うわよ。今直ぐ、此処から立ち去れ、さもないと……」

「さもないと?? 続きをどうぞっ。胸板直角女さんっ」



 あっ、駄目だ。


 頭の中で何かが切れる音が鳴り響くと同時に。



「口に気を付けろぉぉおおおお!! この野郎ぉおお!!」



 ベッドの上に座る馬鹿野郎目掛け、今か今かと待ち侘びていた筋力を全解放して突撃を開始した。



 食らえぇえ!!

 これが、龍族の熱き拳だぁああ!!



 端整な顔目掛け、全ての筋力を籠めた一撃を放つ。



「はいっ、残念でした――」

「あぁ!? いでぇっ!!」



 完全完璧に捉えたと思った矢先。

 私の拳は珍妙な壁によって阻まれてしまった。



「何だ!? それは!!」

「結界よ。何?? 知らないの??」



 そんな事も知らないのか??

 そんな風に、挑発口調で話しやがる。



「あ?? あぁ。知ってるわよ。結界でしょ?? 結構疲れるのよねぇ――。結界って」



 畜生。

 初見だっつ――の!!



 薄紫色の透明な壁とでも呼べばいいのか。

 それがクレヴィスの体全体をすっぽり覆うように展開している。



 殴った感触からして、物理攻撃は……。効き目が薄いのかしら。

 うん。全く以て、良く分からん。




 魔力を使用して構成したのか……??

 だとしたらかなり厄介だ。

 私は付与魔法に通じているのだが、放出系の魔法に関しては疎い。




 あれが物理攻撃で砕けないのなら、奥の手を出すしかないわね。




「もう少し、上手に嘘を付いたら??」

「嘘じゃねぇし!!」



 さて、と。

 お次の手はどうしようかしらね。



 取り敢えず、絶え間なく攻撃を続けっか??



 私が様子を窺っていると。


「ふぅ……。私もちょっと本気を出そうかしらね」


 クレヴィスが立ち上がり、右手を前に翳した。



「邪なる風の音。立ち塞がる愚か者を断て!!!!」



 やっべぇ!! 来る!!



風烈刃!!(ウィンドウブレイズ)



 薄緑色の魔法陣が出現し、そこから鋭利な風の刃が二つ。私の体を断とうと鋭い風の音共に飛び出した。



「ふっ!!!!」



 宙へと飛び、体を捻って一つ目を躱し。



「だらぁあああ!!!!」



 二つの目の風の刃を龍の爪で切り裂いてやった。



 おっし!!

 回避成功!!!!



 余裕綽々ってねぇ!!



「身のこなしは鋭いわね」

「はっは――。褒めてくれてぇ……」



 着地と同時に足に力を籠め。



「有難うよぉぉおお!!」



 愚か者へと二度目の突撃を開始した。



 一度目は素手。

 二度目は……。頑強な岩をも切り裂く、龍の爪を食らいやがれっ!!



 瞬き一つの間に間合いへと到達。



「っ!!」

「食らえやぁあ!! おらぁ!!」



 私の速さにビビってる野郎に、雷撃を加えてやった。



「くっ!! 馬鹿力め!!」



 おぉっ!?

 吹き飛んだわね!!



 地面の上をコロコロと転げ回り、天幕の壁付近で漸くその動きを止めた。



「随分と軽いわねぇ。ぷすっ!! コロコロと転がっちゃってまぁ……」



 流石、私の爪!!

 伊達に幼い頃から鍛えていないわよ??

 鉄程度なら紙みたいに裂けちゃうもんっ!!



「う、五月蠅いわねぇ!!」



 腰を強打したのか。

 四つん這いの姿勢から中々立とうとしない。



「お――お――。たった!! 一発で随分と辛そうですなぁ??」



 地面に平伏す姿が実に心地良い。

 溜まった鬱憤がすぅぅっと晴れ渡って行くようだ。

 そのままずっと私の前で平伏せておけ。



「油断したのよ!! 本来ならもっと分厚く出来るんだから!!」

「あっそ。ってかさ」



「何!!」



「――――――――。顔と体の割には、随分と尻がデカいわね??」



 身長は普通、胸は……。 ちっ!! 並み以上かよ。

 だが、今し方話した通り。



 尻だけは、ぷりんぷりんであった。



「デカく無いっ!! 普通だもん!!」



 まぁまぁ可愛い顔が途端に朱に染まる。



 ん??



 だもん??

 ははぁん。こいつ……。



「よぉ。あんた。無理して口調変えていたわね??」



 多分、自分を大きく見せたかったのだろう。

 私はそれを『数日前』 に経験済みなのよ。

 まぁ、直ぐにボロが出ちゃいましたけども……。



「っ!?」



 ほぉら。図星を突かれた所為か。

 御顔さん、真っ赤っかだし。



「べ、別に。そんな事ないわよ……」



 はい、嘘――!!

 悪戯に髪を触ってるもんね――!!



「だっさ。無理して背伸びして、ボコられたら言う事無いですわなぁ??」



 さてと!!

 此れだけ挑発したのだ。次はどんな手を打って来るのかしらね!!



 挑発して頭に血が上ってくれれば儲けもんよ。

 ぷっつんしたら行動が単調になるし。その間に、あの結界をぶっ壊してぇ。

 でけぇ尻をペンペンしてやる!!



「う、五月蠅い!! 無乳!!」


「死ねぇぇぇ!! 尻デカ女ぁあああ!!」



     『無乳』



 コイツは決して口にしてはならぬ言葉を放ってしまった。



 漸く立ち上がったクレヴィス目掛け。

 頭で考えるよりも先に、体が突貫してしまった。




「甘いっ!! まだ厚く、そしてより強固に出来るんだか……。のよ!!」


「言い直す位なら普通に喋りやがれっ!! ぬぅっ!?」



 先程の爪の急襲で綻んでいた箇所がもう修復されている!?



 しかも、ちょっと紫色が濃くなっているし!!


 だけど……。

 振り翳した手は止められんっ!!



「ずぁっ!!!!」



 大きく振りかぶり、そして爪の一閃を叩き込む。



「――――――――。いてぇぇええ!!」



 透明な壁に爪を叩き込むと同時に、指先に痛烈な痛みが生じた。



 な、何!?

 どうなったの!?



 確かな手応えは感じたのだが。

 デカ尻女はその場に立ち尽くし、こちらを見下ろしてほくそ笑んでいた。



「あはは!! だっさ――!! あんたの大切な爪。ボロボロですよ――」



 何ぃ??



 ケラケラと笑うクレヴィスから己の手に視線を移すと。



「げっ」



 右手の人差し指のすんばらしい爪が大きく欠けてしまっていた。



「はぁ――。可笑しいっ。さぁさぁ、どうしますかぁ?? 見た所、魔法は詠唱出来ないみたいだしぃ?? 八方塞がりなんじゃないのぉ――??」



 はい。

 死刑執行しま――す!!!!



「お――お――。何勝手に勝利宣言してんだ」


「はぁ?? もう私の勝ち確じゃん。諦めて仲間に助けを請うたら??」




「女の喧嘩はタイマンって相場が決まってんのよ。ふぅぅ……」




 よっしゃ!!

 奥の手の出番ね!!!!


 腹の奥にぐぅっと力を籠め。

 湧き上がる魔力を右腕にかき集めた。



 くぅ!!

 良いわね、この感じ!!



「ちょ、ちょっと。何する気よ……」



 私の魔力の昂りを感じたのか。

 クレヴィスが口をポカンと開き、真ん丸お目目を更に丸く丸めた。



「決まってんでしょ?? あんたをブチのめす為に奥の手を……。使うのよ!!」



 右腕に集めた魔力を放出。

 体の前に深紅の魔法陣を展開した。




「風よ、炎よ!!!! 我と共に吹き荒べ!!!!」




 展開した魔法陣の中へ右手を突っ込み。

 熱い魂の欠片を掴み取る。



「行くぞぉぉおおおお!! はぁぁぁぁっ!!」



 今にも火傷してしまいそうな熱を放出する魂の塊を引き抜き、体の前で構えた。







「覇龍滅槍!!!! ヴァルゼルク!!」







 切っ先に残る、燃え盛る真っ赤な残留魔力を払い。

 黄金の柄の鋭い穂先をクレヴィスへと向けてやった。




「は、はぁ!? 何よ、それぇ!!」


「何って。奥の手じゃん」


 肩に黄金の槍をポンっと担いで言ってやる。



「ど、どうせこけおどしでしょ!?」


「戦って見れば分かるんじゃない?? でも、これを出したからには手加減出来ないわよ。死んでも……。文句は言えないからね……」



 腰をすっと落とし、中段の構えを取る。



「死んだら文句言えないじゃん!! く、くそう!! 負けられるかぁあ!!」



 クレヴィスが両手を前に翳すと、真っ赤な魔法陣の中から猛炎が姿を現す。

 秒を追うごとに塊が膨れ、猛炎の熱が周囲の空気を朧に揺らした。



「食らいなさい!! 私の最強の魔法を!!」


「掛かって来やがれ!! 私の乾坤一擲とあんたの魔法!! どっちが上か。勝負だぁあ!!」



 大人の背程に膨れ上がった火球が放たれると同時に、私も前方へと突撃した。



 下がるのは性に合わん!!


 それに、格好良く火球をブチ抜きたいし!!


 自分の武器を、技を、そしてぇ!! 力を信じる!!!!



 眼前に迫った火球に対し。

 私は全ての力をぶつけてやった。




   ◇




 四方で立ち昇る醜い豚共の雄叫びが心の隙を生み出そうと画策するが、それを上書きし。己の力に変え

よとする兵士達の熱き咆哮が大地を揺らす。


 空気に含まれる殺気と殺意の波動が足を絡め取り振り上げる武器を、そして奴らに立ち向かう勇気さえも断とうと周囲に渦巻いていた。



 これが、本物の戦場の空気か。



 体が……。重い。

 体力の疲弊からなのか、それともコイツらが放つ殺気に体が慄いているからなのか。

 普段の倍以上の重さを感じてしまう。



「はぁっ!!!!」



 正面から襲い掛かる剣を跳ね除け、戦斧の刃で体を両断。



「グゥゥ……」



 肩口から腰へ。

 一閃が駆け抜けて行くと、醜い豚は黒灰へと還って行った。



「ぜぇ……。ぜぇ……」



 くそう。

 体が熱い。本当に、燃える様に熱い。


 喉の奥が乾き、舌が口内にへばりつく。



 自分が考えている以上に戦場の空気は鈍重で、粘度の高い物体だ。

 取り除こうとしても決して私の体にしがみ付き、決して放そうとしてくれなかった。



「レノアちゃん。もうひと踏ん張りよ」



 後方で待機していた筈の彼女が前線へと無防備な歩みでやって来る。



「フェリス様!! 危ないですよ!?」



 此処は戦場だ。

 いつ、何が起こってもおかしくは無い。

 それなのに彼女ときたら。



「あらぁ……。痛そう。ね!! 見た?? 今の攻撃っ」



 左翼で展開している部隊の一人。

 その者が敵の攻撃を受け、僅かに体が揺らぐのを見て話す。



「見ました!! フェリス様、せめて武器を装備して頂けますか!?」



 彼女の装備は。紺色のズボン、胸元が広く開いたシャツに灰色の上着。



 買い物に出掛けている主婦じゃないのですから!!

 場に相応しい装備をして下さい!!



「そうは言いましても。武器が見当たらないのですよ??」



 カクンっと小首を傾げる姿がまた可愛……。



 そうじゃない!!



「では、せめて下がって頂けますか!? フェリス様の身にもしもの事があればボー様に顔を向けられません!!」


「大丈夫ですよ。私、こう見えて強いのですからっ」



 むんっ、と両手を掲げる姿が愛おし……。



 違う!!



「それは重々承知しております!! 私が言いたいのは……」


「ガアァアア!!」



 くそ!! また来たか!!



 襲い来る敵を殲滅し続けているのだが……。正直、終わりが見えん!!



「はぁぁああっ!!」



 正面から襲い掛かる五体の内。

 一体目の頭部に戦斧を叩きつけ。



「ふんっ!!」



 体を回転させて、二体目の腹部に一撃を加えた。



「まぁっ!! 随分と体の動きが良くなりましたね??」

「有難うございます!!」



 感謝の言葉を述べつつ、三体目の首を刎ねてやったのだが……。



「ギィィアア!!」

「ガアァァアアア!!!!」


 私の体の横をすり抜けた二体がフェリス様へと襲い掛かった。



 し、しまった!!



「――――――――。あらぁ?? どうしたのですか??」



 襲い掛かった二体の内、フェリス様が一体の首を左手で掴み。



「駄目ですよ。大声を出しちゃあ」



 ぐぐぅっと持ち上げ。オークの額目掛け、右手をすっと伸ばし。

 そして……。



「はい。お疲れ様でしたっ」



 人差し指で、オークの額をピンっと撥ねると。



「っ!?」



 空気が破裂する音と共に、オークの顔が消失した。



「へ!?」



 う、嘘ですよね!?

 指先一つであの顔を吹き飛ばしたのですか!?



「レノアちゃんは、筋は良いんだけど。初めての実戦で緊張したのかしら。体が鈍重ですよ??」


「クァァ……」



 残りの一体の首を再び掴み、宙へ浮かしつつ話す。



「は、はぁ」

「後、回転しながら斬るのは宜しいのですが。相手を死角に置くのは余りお薦めしません。今みたいに後方に守るべき存在が居る時は特に気を付けるべきです」


「…………」



 オークの首が、鳥の足みたいに細くなっていくと。苦しみから逃れようと悪戯に両足を動かす。



「他の方々にも指導を施したいのですけどねぇ。私の大好きな森がこれ以上傷ついて行くのは了承出来ませんっ」



 眉間に一瞬だけ血管が浮くと。



「グッ!?」



 オークの首が無残に吹き飛び、黒灰へと還った。



「え、えっと。つまり……。フェリス様は今現在。憤怒を抱いている、と??」


「その通りっ。ユウちゃん達は……。あぁ、戦い始めていますけど。ちょぉぉっと決着が遅いかしらねぇ」



 目を細め、森の奥を一つ睨む。



「我々はユウ様達を信じて、戦い続けているのです!!」

「うふふ。有難う、娘を信じてくれて」



 私の肩に手を置き、いつもの柔らかい笑みを与えてくれる。

 此処が戦場だという事を忘れてしまう程の安寧を刹那に感じてしまった。



「じゃ、そう言う訳だから。行って来ますね」

「はい??」



 フェリス様の体の中から強烈な光が迸る。

 そして、光の中から真の姿が現れると……。


 森の木々で羽を休める鳥達がその圧に恐怖を感じたのか。一斉に何処かへと飛び立って行ったのだった。


私のマイページの活動報告に簡素ですが、この作品の構想を少しばかり載せてあります。

興味がある御方、時間が余っている御方はご覧頂けたら幸いです。


最後まで御覧頂き、有難う御座いました!!

続きます!!

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