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第四十一話 これぞ龍の真骨頂!! その一

お疲れ様です!! 日曜日の夜、皆様如何お過ごしでしょうか??


蒸し暑い夜にそっと投稿を添えさせて頂きます。


それでは、御覧下さい。




 此方の体を捕らえ、全身の骨を砕こうとする悪しき塊が空気の壁を突き破って恐ろしい速度で向かい来る。


 荒い呼吸を整え、荒ぶる精神を御し。


 薄皮一枚で躱すと、刹那に遅れて鋭く空気を切り裂く音を鼓膜が捉えた。



 一瞬の気の迷いが生死を別つと、その音は俺に言葉無くして伝える。


 より一層集中力を高め、化け物の懐に侵入。



「はぁぁっ!!!!」



 普段の戦闘のそれと比べ、数段上の龍の力で分厚い装甲を打ち抜く。



「グォッ……!!」



「好機っ!!」



 一歩、二歩。


 踏鞴を踏んだ化け物の顎先へと向かい、宙へと飛んで右上段蹴りを放とうとするのだが……。



「ガァアアアッ!!」



 一瞬で体勢を整えた化け物の背から蜘蛛の節足が襲い掛かった。



「やっべぇ!!」



 禍々しく光る鋭い黒き爪が、胸のド真ん中の服を切り裂き。二本目の節足が襲い掛かると同時。



「させませんわよ!!」



 アオイが放射した蜘蛛の糸がそれを食い止めてくれた。



「有難う!! アオイ!!」


「うふふ。どういたしまして」



 い、今のはやばかった……。二本目が直撃したと思うとゾッとするな。


 もっと集中しなきゃな!!



 化け物の間合いから離れ、薄く裂かれた皮膚の中から滲む血を指で掬い取り一つ呼吸を整えた。




 マイが提示した三分。


 日常生活では特に気にもならない時間なのだが……。


 この状況下では途轍もなく長い時間に感じてしまう。



 再生速度は確実に下がっているが、代わりに。己の命を燃やすかの如く。攻撃に厚みが増してきている。



 触腕の攻撃から、鎌への連携。


 飛蝗擬きの剛脚から、宙へと逃れての突撃。


 接近戦を仕掛ければ今し方受けた蜘蛛の節足が襲い掛かり、かと言って。距離を取って戦えば常軌を逸した速度で距離を潰して来る。



 単騎で俺達の相手を務めるだけの実力に、敵ながら感心しちまうよ。


 だけど……。




「レイド!! 大丈夫か!?」


「おう!! ユウ!! 仕掛けるぞ!!」



 俺達は負ける訳にはいかないんだよ!!



 萎れかけた闘志に炎を灯し、相手の殺意を上回る気力を身に纏い。数えるのも面倒になる回数の突撃を開始した。



「くらぇえええ!!」



 先手を取ったユウが大戦斧を上段から切り下ろすと。



「フグッ!!!!」



 化け物が右腕の鎌と、左腕の触腕で彼女の剛力を寸断。



「ちぃっ。やるじゃん!!!! だけど……。なっ!?」


「ユウ!! 肩を借りるぞ!!」



 彼女の右肩に左手を置き。



「でやあああああああ!!!!」



 軸足で大地を蹴り飛ばして得た跳力に、腕から得た反発力を更に加算。


 化け物の顎先に激烈な足技を与えられる距離に身を置き、集中力を最大限に高めた。




 此処で……。倒す!!!!




「はぁぁぁっ!!!! でやぁっ!!」



 右足に全ての力を集約し、体を捻った加速度を生かして足の甲を顎先に叩き込む。



「ググガァッ!!!!」



 肉が弾け飛ぶ鈍い音と共に首がほぼ百八十度に捻じ曲がり、苦悶の絶叫を放つ。


 自分の身の丈を越える巨躯を堅牢な大地へと叩き付けてやった。




「どうだっ!!!!」



 手応えはあったぞ!?



「すっげぇな。今の足技」


「ユウがアイツの攻撃を受け止めてくれたお陰さ。助かったよ」


「へへっ。どういたしましてっ!!」



 掲げられた右手に己の手を合わせ、軽快な音を鳴らして気持ちを切り替えた。



 さぁ……。


 お次はどう出て来る!? お前は此処で倒れる玉じゃないだろ!?



 細かい痙攣を続けていた化け物の動きがピタリと止まり。



「ウグググ……」



 嘯く声を上げると同時に何事もなかったかの様に立ち上がった。



「やっぱり立って来るか」


「だろうな。お――い!! 顔と後頭部、逆だぞ――!!」



 ユウの声を受けると、化け物が両手で己の頭部を掴み。



「ググッ!!!!」



 肉が引きちぎれる音と、骨が折れる乾いた音を奏で。向こう側を向いていた顔を通常の位置へと戻した。



 うぇっ。


 痛そうだな、今の音。




「首を捩じっても駄目。って事は、引きちぎったらどうなる??」


「あの高い位置の頭を引きちぎるのは骨が折れるぞ」


「大戦斧で首をプッツリ切ろうとしても、蜘蛛の節足と触腕が邪魔だし。マイ!! まだか!?」



 彼女が振り返り、最後方で魔力を高め続けているマイへと問う。





「澄んだ水を煮沸させて、ピッカピカに研いだ御米を中に入れる。お湯の中で踊る御米さん達の踊りが私の荒んだ心を潤す。お鍋の蓋を閉じたら炊き上がるまでじぃぃっと我慢。フツッフツッと鼻腔と鼓膜を楽しませてくれるお鍋さんにお礼を告げると共に……」




 あ、アイツ……。


 詠唱中にふざけてるのか??



「な、なぁ。あのお馬鹿さん、御米の炊き方を唱えているんだけど??」


「詠唱の言葉は何でもいいんだよ。術者が集中出来さえすればいいんだから」



 へぇ、それは初耳だな。



「つまり、アイツなりの集中力を高める言葉は……。料理方法って事??」


「方法と言うよりかは、自分が今食べたい物を想像しているんじゃない??」



 成程ぉ。


 だから、アイツ。口の端っこから涎を垂らしているのか。



「ホッカホカに炊けた御米さん。そこに……。ジュルリッ!!」



 集中出来ていない姿になんだかドッと疲れが押し寄せて来たぞ。



『レイド様、ユウ。化け物さんを……。今の位置に食い止める事は可能ですか??』



 ん??


 アオイの念話だ。



『出来ない事はないけど……。どうして??』


『強力な魔法を詠唱しますので、その位置が丁度良いのです』



 足止め、ね。



「おっしゃ。前衛のあたし達の出番だな」


「了解。出来ればもう少し休みたいけどね」



 かなりの体力を消耗しちまったし。


 龍の力も後どれだけ解放出来るか……。それが問題だよな。



「それがあたし達の役目だって。ほら、行くぞ!!」


「いでっ!!」



 此方の背中をパチンっ!! と叩き。



「やいっ!! 化け物!! そろそろお前さんも年貢の納め時だ!! 覚悟しておけよ!?」



 大戦斧を体の真正面に構え、堂々とした足取りで化け物に向かって行った。




「グガァッ!!」



 相手の間合いに入ると同時に三本の触腕がユウの大戦斧を捉えようと伸びるが。



「あっめぇ!!」



 大人の背程もある武器を剛力で器用に操り、触腕を切断。



「行くぞっ!! ふぅっ!!!!」



 残された触腕が縮む速度に合わせて敵の懐へと到達し。



「ふんっ!!!!」



 右の拳を正中線へと捻じ込もうとするが……。



「グッ!!」



 蟷螂の鎌の甲殻によって塞がれてしまった。



 硬った!!!!


 龍の甲殻を纏っているのに、肉の芯にジンっとした痺れが残る。



 コイツの甲殻、少し硬くなっていないか??


 それとも俺の攻撃力が落ちている所為なのか……。



 考えるのは後だ!! 己の間合いで動き続ける!!



「グルァッ!!!!」



 背中側から蜘蛛の節足が空気を切り裂く音を奏で、俺の命を穿つ為。目を疑う速度で振り下ろされた。




 それはさっき見たよ!!



 左の節足を見切って躱し、続く右の節足を拳で往なし。



「ぜぁっ!!!!」



 全体重を乗せた右の昇拳を胴体へとぶち込もうとするのだが……。



 奴も俺の攻撃方法を見切った様で??



「……」



 音も無く巨大な鎌を己の体と迫り来る拳の間に置いた。




 畜生。


 俺の攻撃力なら余裕で受けきれるってか!?


 ならば、それを…………。


 穿ってやるよぉぉぉおおおおおおおお!!!!




「食らいやがれぇえええええ!!!!」



 此処で全てを出し尽くす勢いで拳を振り抜くと、拳に硬い感触を捉えてしまった。



 こんな物……っ!! 貫いてやらぁああああ!!




「はぁあああああ!! だぁあああああ!!!!」




 上腕二頭筋の中から何やらプチっと。


 切れてはいけない糸が切れてしまった音が響き、体を支える足の筋が悲鳴を上げてしまうが……。拳を突き上げる事を一切躊躇せず。


 己の闘志を籠めた渾身の一撃を見舞った。






「グボガァッ!?」



 つ、貫いたぁああ!!!!



 硬い感覚を通り抜け、生温い肉の感覚を拳が捉えたぞ!!




『レイド様!! そこから下がって下さいまし!!』



『分かった!!!!』



 悲鳴を上げる両足に喝を入れ、化け物から距離を取った刹那。



「地獄の火炎よ、この世に生きとし生ける全ての生命を焼き尽くせ。そして、無様に己の屍を晒して嘆き苦しめ……。さぁ……。行きますわよ!!!!」



 化け物が立つ大地の左右、そして頭上。


 三つの地点に血よりも赤き魔法陣が出現した。



「グ、ググゥ……」



 化け物が危険地帯から避難しようにも、俺の攻撃を受け回復に至らない体は細かい痙攣を続けるばかりであり。


 たった一歩分の距離の移動も叶わなかった。




「レイド様に傷を付けた罰ですわ。死を以てその罪を償え……。紅蓮牡丹三式ぐれんぼたんさんしき!!!!!!」



 朱の魔法陣から大気を焦がしてしまう灼熱の業火を纏った大火球が三つ出現し、化け物の体に向かって直進。




「ギギヤアアアアアアアア!!!!」



 化け物に着弾すると顔を背けたくなる熱量の火柱が立ち昇り、断末魔の叫び声を上げ続ける化け物の体を焼却し始めた。




「あっつ!!!! あつ!!」



 かなりの距離を保って様子を眺めていたのに、ユウの背に飛び火が襲来。



「ユウ!! 後ろを向け!!」



 燻ぶる炎を手で払ってやると、健康的に焼けた背の肌が現れてしまいました。



「へへ、ありがと」


「どういたしまして。さて、奴はどうなった??」



 火柱が収まり、熱を帯びた煙が晴れて行くと……。



「カ……。カカッ……」




 只でさえ黒い体躯が真っ黒に焼け焦げて燻ぶり。


 右目が熱によって破裂したのか見事華麗に潰れ、眼窩からは粘度の高い液体が零れ落ち。


 奴の武器である触腕、鎌、節足も焼け落ちて使い物にならなくなってしまっていた。



 凄い威力の魔法だな……。


 人体が真面に食らったら骨すら残らないのでは??




「アオイ!! 凄いじゃないか!!」


「ぜぇ……。ぜぇ……。ほ、褒めて頂き有難うございますわ」



 膝に手を置きつつ弱弱しい笑みを浮かべるアオイに向かって叫んであげた。



 そして、そしてぇ!!!!


 此処が勝機だ!!!!






「おっしゃあああああ!! マイぃ!! あたし達がお膳立てしたぞぉおおお!!」


「此処で決めろよ!! マイ!!!!」



 待料理方法を唱えるの止め、集中力を最大限に高め続けている最後方の女性に向かってユウと共に叫んでやった。




最後まで御覧頂き有難う御座いました。


後半部分は現在編集中ですので、今暫くお待ち下さい。

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