第二百五十話 大事の前の小事 その二
お疲れ様です。
後半部分の投稿になります。
ダンさん達の姿が人混みの中に消えて行く様を見届けると何だか心に寂しい風がさぁっと吹く。
後数時間後に再会出来るのですよ?? と心にそう言い聞かせても寂しさの風は止む事無く周囲の陽性な雰囲気とは真逆の感情が沸々と湧いてしまう。
たった数時間の空白の時間も拒絶してしまう程に私の心は彼に傾いている。
それを再確認すると己の感情を誤魔化す様に敢えて明るい声を上げた。
「さっ、皆さん。王都は森と違って大都会ですので迷子にならない様に常々周囲の状況と人数確認を怠らない様に。いいですね??」
私がそう話すとエルザードが顔を顰めつつ口を開く。
「別にはぐれても魔力探知すればいいじゃん」
「貴女は出来るかもしれないけど他の子達はまだまだ魔力探知能力が乏しいのです。人物探索の基本は目視なのですよ??」
「はいはいっと。さて!! むさ苦しい野郎達と別れた事だし、私達は私達で行動しましょうか!!」
淫魔の子が年相応の笑みを浮かべて西大通りに向かって歩みを進めると私達はそれを合図としてダンさん達とは真逆の方向へと進んで行った。
一歩、また一歩進み彼等と距離が離れて行くと距離と比例する様に心に渦巻く寂しさが増加してしまう。
気を抜けば直ぐにでも人混みの中に己の存在が掻き消されてしまうかも知れないという有り得ない妄想を抱かせる人口密度の中でも私の心は一刻も早く彼と合流すべきだと叫び続けていた。
ふふ、困ったものですね。恋する乙女という心は……。
たった数時間の空白さえも苦痛になるのだから。
これまで生きて来た約二百年という長きに亘る時間よりも再会までの数時間の方が長く感じてしまいますよ。
勿論これには私の乙女心によるものも含まれていますが、ダンさんの横着を心配する得も言われぬ感情も含まれている事を忘れてはいけません。
大体、妻となる私が直ぐ近くに居るというのにフウタさんの声につられてお胸の標高の高い女性に視線を送るなんてあり得ませんよ。
向こうの組には真面目一辺倒のハンナさんとシュレンさんが居ますのでよっぽどの事が無ければダンさんは他の女性に目移りするとは思えませんが……、異性の姿が三度の御飯よりも大好きなフウタさんの存在が気掛かりだ。
彼の声に従いハンナさんとシュレンさんの目を盗んで姿を消し、私の目の届かない所でそういった行為に及んでしまうという砂粒程度の可能性が残されている。
今からでも方向転換をしてダンさんの首に首輪でも付けてこうようかしら?? 街中で首輪を付けて行動している男性の姿は傍から見ればとても特異に映る。
ほら、稀有な格好をしている者に手を出そうとは思いませんでしょう??
このモヤモヤした感情に終止符を打つべきかどうか迷っていると。
「んっ!! 先生!! あの服可愛くない!?」
隊の先頭を歩くフィロがふと歩みを止めて左手側の店の軒先に飾ってある一繋ぎの服を指差してので一旦人が抱くべきでは無い恐ろしい感情を掻き消して彼女の指先に視線を移した。
恐らくアレは夏の猛暑の中で行動する事を想定して作られたのだろう。
淡い水色は川の清涼を彷彿させ布地は着用者の体温を籠らせない様に薄手にしてある。肌を守る面積は乏しくあの服を着用したまま日の下に出れば日焼けは必至。
暑さを凌げるという唯一の利点を除けば服自体の機能性は及第点以下の代物であった。
「可愛いという一点に着目を置くのでは無く機能性に重きを置きなさいと何度も言っているでしょう?? あの服を着てこの炎天下の中を歩けばたった一日で肌が焼けてしまい酷い日焼けによって肌が荒れてしまうでしょうね」
及第点以下の服装に比べて私の服装はどうでしょう。
薄い茶の皮製の長袖で日の光から上半身をしっかりと守り下半身は深い青色の長ズボンで上半身と同じく肌を守る。
直射日光だけでは無く万が一の攻撃にも咄嗟に対応出来る様、可能な限り肌を露出させない服装は数多多くの戦場若しくは死地を潜り抜けて来た歴戦の戦士さえも大きく頷く物でしょう!!
「はぁ――……。そう言うと思った。多岐に渡る行動を想定するよりもさ、一人の男性に見て貰う事を想定して服を選んでみたら??」
一人の男性に……、ですか。
「ふむっ……」
フィロの言葉を受け取り改めて機能性に乏しい一繋ぎの服に視線を送る。
私があの服を着用すれば恐らく彼は腹ペコのワンちゃんみたいに左右に大きく尻尾を振り、口からだらしなく涎を垂らして私を見つめるでしょうね。
『マ、マリルさん!! 今日は趣向を変更したんですか!?』
そうそう、今にも飛び付きそうな顔でそう叫ぶのでしょう。
「ん――……。興味をそそられるのは確かですけども、やはり着慣れた服装で行動すべきですね」
生徒達の前で厭らしい恰好をするのも憚れますし、彼女達の前でその……。そういった行為に繋がる行動を取るのは指導者としての立場が危ぶまれてしまいますのでやはり却下ですっ。
「先生――!! はよぉ――こ――い!!!!」
「うっわ、うるさ。あんたの馬鹿みたいな声は頭に響くからもう少し抑えて叫んでよね」
「うるさいぞ!! あほ淫魔めがっ!!」
「フォレイン、このぬいぐるみかわいいよね」
「え、えぇ。見方によっては可愛く映りますが……。それは一体何を模した物か多大に気になるのが本音ですわ」
これ以上の寄り道はダンさん達との集合時間に遅れる可能性がありますし、それと何より生徒達の喧噪は人様の迷惑となるので行動を再開させましょう。
「先生が買わないのなら私が買うか……?? あ、でも胸辺りが絶望的に足りない恐れがあるしぃ」
「フィロ、行きますよ??」
「あ、ちょっと待って!!」
服屋の前で葛藤する唐紅の髪の女性を呼び寄せると再び西大通り沿いの歩道を歩み始めた。
本日、アイリス大陸一番の大都会にお邪魔させて頂いた理由は私と彼の結婚式用の礼服を購入する為だ。
結婚という事象は約千年生きるとされている魔物の人生の中で起こり得る数少ない出来事。
所謂特別な出来事なのでそれに備えた特別な服を着用するのは大変理に適っていると思います。しかし、たった数回の出来事の為に態々高価な服を買う必要はあるのかという素朴な疑問を持つ自分もまた存在する。
この事をハーピー一族の女王様に尋ねた所。
『いいなぁ!! 私もその時の為に今の内に買っておいた方が良いかも知れませんよね。あ、そうだ!! 王都に向かわれたのならついでに……』
自分の事の様に素直に喜んでくれましたね。
勿論、新たなる話題を提供してしまった為に大変長い回り道が始まりましたけどもレオーネさんの眩い笑みは私の決断に一役買ってくれたのです。
「ねぇ、あそこのお店に寄らない??」
「えぇ――。私の服の趣味と合わないじゃん」
「いいの!! 偶には趣向を変えてって奴よ!!」
私の真正面から歩いて来たうら若き二名の女性が左手にある服屋の中へと軽やかな足取りで入って行く。
彼女達の本日の御召し物は膝までの丈の短いスカートに薄手のシャツ、そして女性の細い足首を敢えて強調させる可愛らしい靴であった。
王都では女性らしさを前面に押し出す服装が流行っているのかしら??
「……」
小豆色の髪の毛を微かに揺らしつつ入店を果たした彼女達から歩道へと視線を移すと私の考察は間違いでは無いと証明出来る服装の数々が視線に入って来た。
暑さを逃す様に敢えて肌の露出を多めにしてある可愛らしい色の服、スラっと伸びた足を強調させる為に短く纏めたスカートに大きく開いた背の服。
勿論流行りに当て嵌まらない服装を着用している女性も居るが、凡そ五割から六割程度の女性達は夏の暑さを回避しようとして又は男性達の目を惹こうとして流行りの服に袖を通していた。
仮に、王都で流行っている服を着用して森の中で行動するとなると一体どうなるのでしょうか。
「もう直ぐ到着よ――」
「エルザード、あるくのがちょっとはやい」
「なはは!! お子ちゃまの足は短いからの――」
「あんたの足もまぁまぁ短い方だと思うわよ??」
「フィロ!! 絶望的な角度の胸を持つ貴様には言われたくないわ!!」
今も元気一杯な会話を続けている生徒達の明るい背を見つめつつ頭の中で軽い妄想を開始した。
短いスカートで行動すれば足元から伸びる草や木の枝で肌を傷付け、薄手のシャツは流れ出る汗を防ぐ事は叶わず数時間も経たない内に汗で重さが上昇して肌に嫌悪感を与えてしまう。
行動範囲が限定されるだけならまだしも、森の植物が持つ毒を防ぐというもっとも必要な機能が失われるのは痛いですね。
私の生まれ故郷で肌を露出する事。
それはすなわち自殺願望者であると確定付けてしまうのだ。
「先生――、着いたわよ!!」
「あ、はぁ――い」
エルザードの間延びした言葉が森の中で自殺願望者丸出しの姿をしている想像上の私の姿を掻き消し、彼女の手に呼び寄せられる様に中々に立派な店構えのお店の前に到着した。
へぇ――……。中々の出で立ちですね。
私の前に立つのは白を基調とした木材の二階建ての建築物であり、西大通り沿いに建ち並ぶ他の店と比べてもそして素人目である私から見ても此処で売られている物は毛色が違うと店に入る前からでも認識出来てしまう。
美しい木目の扉の上にはこれまた材質の良い木の看板が掲げられておりそこには 『ウェリン』 と立派な書体で店名が書かれている。
濁りの無い硝子の向こう側には黒を基調とした服装に身を包む数名の女性店員が確認出来、彼女達は店内に置かれている服装の整理や白き布で店内の一切の汚れを排除しており各々が店員としての役割を全うしていた。
「此処が礼服用の服を売ってくれるお店よ」
「エルザード、何でお店の場所を知っているのよ」
「ほら、偶に王都に訪れる時があるじゃん?? その時フラフラしたついでに服屋を探しているのよ。此処でぼ――っと突っ立っていても事が進まないし。ほらっ!! 先生行くわよ!!」
「ちょ、ちょっと!!」
格式の高そうなお店の前で一歩踏み出す勇気を躊躇しているとエルザードが軽い笑みを浮かべて私の手を取り、瞬き一つの間にお店の扉を開けて店内に私を誘ってしまった。
「いらっしゃいませ。本日はどの様な御用件でしょうか」
素人丸出しの私に対しても柔らかい笑みを浮かべて迎えてくれる接客態度はグゥの音も出ない程の高さですが……。
田舎者が此処へ何しに来た。私達が貴女の要望に応えてあげるから全て任せなさい等々。
私としてはもう少し上から目線で接してくれた方が助かるのですよ。
「え、えっと……。近い内に夫となる人と式を挙げますのでそれに合った服装を探しに来ました」
店員さんの貴重な時間を奪わぬ様に端的で的を射た目的を伝えてあげると。
「おめでとうございます!!」
「ふふっ、素敵な式になる様に私達が全力でお客様の御召し物を御用意させて頂きますね」
店内に居た二名の女性が柔らかい笑みを浮かべて私の幸せを喜んでくれた。
「それでは早速どういった服を所望しているのか御聞かせ願いますか??」
淡い金色の髪の女性が私の目を確と捉えて問うて来る。
「何分初めての事なのでどういった物を用意すればいいのか……。それが本音ですね」
「畏まりました。それでは……、現在王都で流行っている薄い桜色のドレスは如何でしょうか」
彼女が一つ頷きお店の奥から一着の服を手に持って帰って来るとお店の中央に置かれている机の上に嫋やかな所作で置いてくれた。
「胸元のリボンは真っ赤な薔薇を模しておりその花言葉は……」
「愛と美、ですよね」
「ふふっ、よくご存じですね。赤色の薔薇の花言葉は愛情と情熱。白色の薔薇は純潔や尊敬。お客様の御心に合わせて薔薇の色を変更できますので御安心下さいませ。さて!! それでは早速寸法を測りたいと思いますので此方へどうぞ」
「は、はぁ……」
ちょっとだけ強引な女性店員さんに背を押されてお店の奥の扉へと連行されてしまう。
「それではお入りください」
ここは着衣室なのだろう。
お店の出入口の扉と遜色無い立派な扉の向こう側は中々の広さを有しており、部屋の隅にはドレス用に使用する布が棚の上に綺麗に折り畳まれている。
素敵な布の香りが漂う部屋に足を踏み入れると二名の女性店員さんが有無を言わさず長尺により手慣れた所作で私の体の寸法を開始した。
「ふむ……。身長は千六五十と……」
「肩幅はそこまで広く無いので在庫の分で何んとかなりそうですよ??」
「腰回りもキュっと引き締まっていて……。中々の体型で羨ましいです」
「そ、それはどうも……」
何でしょう、この場違い感全開の雰囲気は……。
彼女達は服を売る事を生業にしているのに対し、私は危険が付き纏う森の中で薬草採取を生業にしている。
片や文明に携わり、片や野生に携わる。
お互い専門外の場所で生計を立てているのでこうした得も言われぬ感情が湧くのでしょう。
彼女達が素晴らしく速い所作で寸法を測り終えると一人の店員さんが先程のドレスを手に取り着衣室に戻って来てくれた。
「寸法を測り終えましたのでお次はこれを試着してみて下さい。細かい箇所の補修が必要になってくるので各場所の感想をお聞かせ下さいね」
「わ、分かりました」
人前で服を脱ぐという行為に慣れていないのでど――してもおっかなびっくりな手付きになってしまいますよね。
革製の上着とシャツを脱ぎ、下半身を守ってくれるズボンをおずおずとした所作で脱ぎ終えると。
「それでは失礼しますね――」
「っと……」
女性店員さんがドレスの背の紐の編み上げを調整すると素晴らしい手触りの布地を足元から着させてくれる。
足から腰へそして上半身へ……。
使用している布地の摩擦係数は無に等しく私の肌の上を大変滑らかに移動をし、着せ替え人形同然の状態の私にドレスを着せ終えると背の紐をキチンと結び終えてくれた。
「腰回りの布を調整して……」
「最後に胸元をちょっとだけ大胆に開けば完成です!!」
いや、そこは大胆に開かなくても宜しいかと。私は肌の露出は出来るだけ抑えたい方なので……。
「うん!! 大変お似合いですよ!!」
「どうせでしたら娘さん達に披露しちゃいましょうよ!!」
「いえ、彼女達は私の教え子なのですよ」
婚姻前にあれだけの人数の子を産む母親はあまり存在しないでしょうね。
「あ、あはは。そうでしたか。と、取り敢えず店内の姿見で素敵なドレス姿を拝見して下さい」
乾いた笑い声を放つ店員さんに手を引かれる形で着衣室から出ると。
「「「「おぉぉおおおお――――ッ!!!!」」」」
生徒達から感嘆にも驚愕にも捉えられる吐息が漏れてしまった。
「先生!! 滅茶苦茶似合っているわよ!!」
フィロが笑みを浮かべてコクコクと頷き。
「う――む。悪くはないのぉ」
イスハは顎に手を当てて私の周りをぐるっと一周。
「先生。本当に素敵ですわ」
「わたしもいつかシュレン先生のまえできる」
フォレインとミルフレアは瞳を煌びやかに光り輝かせてドレスと私に視線を送り。
「おぉ!! だっさい服よりもそっちの方が似合うわよ!! 馬子にも衣裳とは正にこの事よねぇ――」
そして最後にエルザードが辛辣な声を私に浴びせて来た。
「皆、有難う。後エルザード。貴女には後で物凄く厳しい個人指導を与えるつもりだから忘れない様にね??」
「はぁっ!? 何で!?」
「あはは!! 先生を揶揄うからそうなるのよ!!」
「触るな!!!!」
フィロがケラケラと笑いつつエルザードの頬を突く様を見届けると、一つ呼吸を整えて姿見の前へと移動を開始した。
私も淫魔の子が言った様に馬子にも衣装だと思いますよ??
でも……。一生の内に一度位はおめかししても罰は当たりませんし。それと何より晴れ舞台に普段着ではちょっと味気ないですものね。
「すぅ――……。ふぅっ」
姿見の前まで残り一歩、二歩の場所で歩みを止めると再び呼吸を整える。
もしも私に似合って居なかったら店員さんには悪いけど他のドレスを用意して貰いましょう。
いや、ひょっとしたらこの店では私に似合うドレスは無いのかも……。
普段の自分とは百八十度異なる私の姿を捉える。
その勇気が中々溜まらないでいると。
「先生っ、安心して。本当に良く似合っているから」
フィロの明るい声が私の背をトンっと叩いてくれた。
「有難う、フィロ。ふ、ふぅ!! このままでは皆さんの迷惑になってしまうので着衣の乱れをか、確認しましょうか」
彼女の声に背を押されて一歩踏み出す勇気を貰うと姿見の前に、本当に静かな足取りで到着した。
「……っ」
胸の中央付近から左右の肩口まで大きく開いたドレスからは私の肌が露出し布地の薄い桜色も相俟ってか肌がより白く映る。
肩から腰に掛けて敢えて湾曲する様に作られているので女性らしい丸みを帯びた線をより強調し、腰から足元までふわっと広がる作りによって相乗効果を齎す。
お伽噺や小説の中で出て来る様な素敵な衣装が目の前に現れると、私は呆気に取られたまま己とドレスを交互に見つめていた。
普段着からの様変わり処か、地を這う蛙さんが空を自由に舞う鳥に変わったかの様な有り得ない大変身を捉えると己自身の時が止まってしまう。
え、っとぉ……。これが私なのですか??
心に湧いた素直な感想は普段の私とかけ離れた自分を捉えた所為で大変陳腐なモノとなってしまった。
「どうですか??」
呆気に取られている私の背後から女性店員さんが静かな口調で話し掛けてくれる。
「え、えぇ。生徒が馬子にも衣裳と言った理由が分かった気がします」
「ほ、ほら!! 言った通りでしょう!? だったら特別指導は無しだからね!!」
「このドレスに合った靴とベールも此方で御用意致しますけど如何でしょうか??」
これからそれらを探しに人と魔物が犇めく王都右往左往するよりも此処で用意してくれ方が理に適っていますよね。
「それではお願いします」
「畏まりました。それでは引き続き靴の大きさとドレスに合ったベールの調整に取り掛かりますので此方にどうぞ」
ま、また寸法と取捨選択の再開ですか。たった一着のドレスを用意するだけでも呆れる程の時間を要するのですね。
あの部屋の中で一体どれだけの時間を過ごさなければいけない事やら……。
アレコレと着せては脱がす店員さんに対して私は着せ替え人形ではありませんっ、と口を大にして叫んでも所詮素人である私には服の良し悪しやその場の雰囲気にあった服は選べない。
このままだと集合時間に遅れてしまう可能性がありますし蛇の道は蛇と言われている様に、店員さんに取捨選択を任せた方が時間短縮にも繋がるので大人しく着せ替え人形を演じましょうか。
「むむむ!! わしはこっちの方が可愛いと思うぞ!?」
「だめ。シュレン先生はそういう色はきらいなの」
「お主が着るドレスではなくて先生が着るドレスの話をしておるのじゃ!!」
「ねぇ!! お姉さん!! これを試着しても良いかな!?」
「うふふ。お嬢ちゃん達にはちょ――っと早いかしらねっ」
「そうそう。ってか、あんたの場合絶望的に胸の場所が足りていないわよ??」
「誰が絶壁残念娘だごらぁぁああああ――――ッ!!!!」
「ささっ、此方ですよ――」
「よ、宜しくお願いします」
素敵なドレス達が佇む店内で楽し気に燥ぐ生徒達の様子を見届けると私は孤立無援の状態で恐ろしい苦難の連続が待ち構えている着衣室へと向かって行ったのだった。
お疲れ様でした。
猛暑の所為で夏バテ等の体調不良を罹患して中々筆が進まない毎日が続いていますよ……。
何とか体調を戻す為に無理をしてでも沢山御飯を食べようと考えている次第であります。
いいねをして頂き有難う御座いました!!
それでは皆様、お休みなさいませ。




