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今日も今日とて、隣のコイツが腹を空かせて。皆を困らせています!!   作者: 土竜交趾
過去編 ~素敵な世界に一時の終止符を~
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第二百四十八話 超重要事後報告 その二

お疲れ様です。


後半部分の投稿になります。




 ここ最近、気味が悪い位に先生の機嫌が滅茶苦茶良い。


 私が朝食の時にイスハとおかずの取り合いでギャアギャア騒いでいても。


『うふふ、喧嘩をしてもおかずは逃げませんからね』


 いつものアノ顔は浮かべず慈愛溢れる聖母も思わずうっとりしてしまう温か笑みを浮かべて私達を見つめて柔らかい吐息を漏らし、実技指導中の際に汚い言葉でフウタを罵っても。


『あらあら。女の子が汚い言葉を使っちゃ駄目よ??』


 子供の横着を静かに見守る母親の様な瞳を浮かべて私の言葉を見逃し、晩御飯の際に量に付いて文句を叫んでも。


『後でおかずを追加しますから今はそれで我慢してね』 と。


 久々に実家に帰って来た孫の食欲に満更でも無い笑みを浮かべるおばあちゃんみたいな優しい顔を浮かべていた。


 此処に来て数年経ったけども、これら一連の優しさを受けた事が無い私達は当然面食らっているのよね。




 あ、でもエルザードの苦言に付いては見逃さなかったわね。


『先生、最近どした?? 気持ち悪い位に優しいのがすっごい違和感あるのよ。何処かで頭を打って本来忘れていた優しさを思い出したの??』


『そういう訳ではありませんよ。後、今日中に新しい魔法の術式を完成させて私に見せなさい。約束を反故したのなら貴女だけに特別指導を与えますねっ』


『えぇ――ッ!? 何で私だけ!?!?』


『っし!!!!』


 目を白黒させて驚く淫魔の子を他所に私は一人静かに心の中でグっと拳を握り締めた。


 そりゃあ怒りの矛先が彼女一人に向けば苦手な魔法の課題も減るしっ。



 兎に角、私達生徒はマリル先生の豹変ぶりに気が気じゃない日々を送っているのよねぇ……。


 特に薬草を採取しに行った先日のマリル先生の笑みは背の肌が一斉に泡立つ程に恐ろしかったわ。


『今日はこれからダンさんと二人で薬草を採取して来ます。指導に付いてはハンナさんに一任していますので彼の指示に従う様に』


『んじゃ行って来るわ!!』


 二人共満面の笑みを浮かべて森の奥へと出掛けて行くので私達は彼等の背を見送り、それから半日以上馬鹿みたいに強い大人達から強力な指導を受け続けていた。


 そして日が傾く頃。


 マリル先生達が帰って来ると私達生徒は一堂に首を傾げて彼女達を迎えた。


『ふぅ――っ。只今戻りましたっ』


 片や、温泉上がりの様に顔の肌や髪の毛ががつっやつやに潤い。


『ぜぇっ、ぜぇっ……。ぜ、ぜひゅっ……』


 片や、精も根も尽きかけた様に頬がげっそりと痩せこけ過積載の荷物を運ぶロバみたいな歩調で命辛々帰還する。


 両者を見比べて呆気にとられたのは今も鮮明に覚えているわね。


 たかが半日の間にナニが起こったのかと尋ねてもマリル先生はどこ吹く風。それならばと考えダンに尋ねても彼は。


『し、知らない……。お、俺は何も知らないぞ!!』


 私の言葉がきっかけとなって精神的苦痛トラウマを発症してしまったのか、記憶の中に封印していたあの半日に出来事を思い出すと顔がサっと青ざめ両手で両耳を覆い塞ぎ込んでしまった。



 まぁ、恐らくあの馬鹿げた威力の毒を持つ毒花に向かって行けと命令されたのでしょう。


 誰だって死にに行けと命令されたら怖がるだろうしっ。



「ねぇ、ハンナ先生。最近マリル先生が優し過ぎるんだけどさ。何か心当たり無い??」


「ぬぁぁああああッ!!!! 貴様ぁ!! わしの攻撃を避けるんじゃない!!」


「あのな?? そんな馬鹿正直な攻撃を食らう敵が何処にいるってんだよ」


 七ノ月の中旬に相応しい強き光が降り注ぐ森の中で今日も元気溌剌と徒手格闘の訓練を続けているイスハとダンを見つめつつ左隣りで静かに彼女達を見守っている彼に問うた。


「い、いや。俺は何も知らん」


 あ――、はいはい。その声色と態度からしてナニかを知っているのは確実って事か。


 私も女の端の端くれ……。じゃあなくて!!


 れっきとした正真正銘の女の子だから男性のこういった口調は見逃さないのよね。


「ふぅん……。ねぇ、フウタは知らないの??」


 俺は滅茶苦茶くつろいで居ますよ――っといった感じで背の低い草々の上でだらしない姿で休む野郎に問う。


「あ?? あ――……。まぁそれは本人達がおいおい話すだろうさ。俺様達が首を突っ込む事じゃねぇしっ」


 そのおいおいという曖昧な時間が私のヤキモキを増長させているってのに……。


 だがまぁ馬鹿フウタの言っている事は正しいかもね。マリル先生だって誰にも知られたくない秘密ってのがあるし。


 ではその秘密とは一体何か??


 世の名探偵が認めざるを得ない推理力を持つこの龍族の超問題児が今まで得た情報からその秘密を解き明かしてみましょう!!!!




 その一。街で偶然見つけた可愛い服を買って気分が良い。


 世界中の者共が恐れ戦くマリル先生だが一応は女。女性は新しい服や下着を入手すると気分が上がるものである。


 しかし、先生が着用する服はいつも通り機能性に重きを置いた冒険者御用達の服装のみなのでこれは却下。


 ならば下着はどうかと思われるが、日常生活の中でさり気なぁく彼女の下着を確認するものの。新品の下着は一切合切確認出来なかったのでこの推理は間違っている。



 その二。美味しい御飯屋さんを見付けた。


 マリル先生は各地へ傷薬を売りに大陸を転々としておりその際、私達に内緒で美味しい御飯屋さんを見付けて誰にも悟られぬ様にそのお店で食事をして帰って来る。


 悪くは無い線だと思うけどもうちには鼻の良い狐ちゃんや腹ペコ白頭鷲先生が居るので衣服に着いた匂いで看破されるから、もしもそこで食事をして帰って来たのなら速攻でバレてしまうので無いわね。



 その三。長丁場に亘る仕事を終えて気分が良い。


 詐欺狸共を退治してウォルの住民達の賠償額の交渉並びに田畑の除染作業は私が思っている以上に大変であった。


 重たい獲物をエッサホイサと運ぶ末端の働き蟻である私よりも、指示を出すマリル先生が感じていた疲労感は恐らく私の想像を容易く越えるモノだったのでしょう。


 それら一連の仕事が漸く終わりいつもの日常が帰って来た。


 恐らく、というか確実に先生は心休まる安堵感を覚えているので忘れかけていた優しさを取り戻したのね。




「そぉぉりゃああああ――――ッ!!!!」


「おっそ。冬眠明けの蛙でも余裕で躱せる拳を放つなよ」


「んっふふぅ。分かったわ!!」


 狐のお子ちゃまの馬鹿正直な拳とまぁまぁカッコイイ構えで彼女の攻撃を受け流すダンの姿を捉えつつ柏手を打った。


「ビビったぁ……。おい、そこの断崖絶壁龍。急に大声を出すな」


「変態クソ鼠。次、同じ事を言ったら龍の炎で体全身を焦がし尽くすからね?? マリル先生が優しい理由は……。そう!! あの詐欺狸共との長丁番亘る仕事を終えて気分が良いのよ!!」


 これぞ完璧な答えだ!!


 そう言わんばかりに腰に手を当てて頷いてあげた。



「はっ、まぁそれで良いんじゃね??」


「あぁ、そうだな」


「そ、某も同意しよう」


 あっるれぇ――?? おかしいなぁ??


 大人勢の声色に何だか馬鹿な子供をあやす感情が籠められているぞぉ??



「ねぇぇええ、シュレン先生ぇ。どうして今、コイツは何て見当違いな答えを導き出したんだって感じの声を出したのぉ??」


 黒頭巾の奥からカッコイイ瞳をダン達に向けている彼の左袖をグィィっと引っ張って問う。


「フィロ、シュレン先生にさわらないで」


 それを捉えたミルフレアがシュレン先生の右の袖を私に負けない力で引っ張る。


「いいじゃん別に、減るもんじゃないし。ほら奥歯に何かが詰まったみたいに気持ち悪いからさっさと教えてよ」


「は、放せ。某はな、何も知らぬと言っておるだろうが」


 むむっ……。そうやって簡単な言葉を噛む所が怪しいわね。


 忍ノ者は口が堅いって言うし、こうなったら本人に直接問うた方が早いわね。それと何より私はまどろっこしいのが苦手なのだっ。


 何事も単刀直入!! 愚直に突き進んで行けば最短距離で真実に辿り付けるってものさっ。


「まっ、いっか。悪いわね。御楽しみの最中に」


「ほんとうだよ。シュレン先生、んっ」


「何だその強請る様な手は。某は次に実技指導を請け負う段取りになっているから鼠の姿に変わってやれぬ。頼むならあそこの馬鹿鼠に頼め」


「やっ、フウタ先生の毛並はかたすぎてきらい」


 本日も長閑で平和な光景に心休まる感覚を覚えていると母屋から私の頭を悩ませる張本人が静かな足取りで此方に向かって来た。




「……」


「あ、先生!! 丁度良かった!! 聞きたい事があるんだけど――!!」


 さぁこっちにいらっしゃい!!


 そう言わんばかりに右手を大きく振ってマリル先生の注目を集めると、彼女はびみょ――に頬を朱に染めて私の下へとやって来てくれる。



「……っ」


 顔全体が甘くも切ない初恋を覚えた少女の様に赤らみ、体の前で嫋やかに手を組み、そして視線は俯きがち。


 う――むっ……。この様子からしてっ。



「先生、どしたっ?? 超絶ドキツイ便秘に悩んでいるの??」


 恐らく彼女は数日間訪れない便意に戸惑い、その解決策を人に尋ねられずこうしてモジモジしているのでしょう。


 私は生まれてこの方、便秘に悩んだ事が無いので残念ながらその問題解決に手を差し伸べられないわね。



「ふぅ――……。ッ!!」


「いだぁっ!?!?」


 マリル先生が静かに視線を上げると何処からともなく召喚した鉄球を私の脳天目掛けて直撃させてしまった。



「な、何ッ!? 何で急に鉄球を私の頭にブチかましたの!?」


 い、痛くて目から大量の涙が出ちゃったじゃん!!


 それに人に対してぶつけて良い質量じゃなかったんだけど!?


「見当違いも甚だしい答えを出したからですよ」


 だ、だからって脳天に鉄球をブチかますのはちょっと不味いわよね!? 下手したら死ぬ質量と速度だったわよ!?


「いてて……。じゃあ何で珍しく女の子っぽい姿を醸し出しているの??」


 痛む頭をヨシヨシと撫でて立ち上がると素直な疑問を問う。


「皆さんも揃っている事ですし、丁度良いですね。ダンさん、ちょっと来て下さい」


 まだまだ女子の表情を浮かべているマリル先生がダンを呼び寄せると。


「へいっ!! 只今ッ!!!!」


 彼は飼い主に呼ばれた飼い犬の様に瞬き一つの間に私達の下へと駆け寄り。


「何か御用で!? それともちょっと早い昼食の知らせですか!?」


 ハッハッハッと息を荒げて見事な忠犬ぶりを見せてくれた。


「ふ、ふぅ――。では皆さん、良く聞いて下さいね」


 マリル先生が静かに胸元に右手を置くと己の動悸を沈める様に大きく息を吐き、そして清らかな空気を静かに吸い込んで心の凪を鎮める。


「「「……」」」


 私達は特に何を言う事も無くその様子を只々静かに見守り次なる言葉を待った。



 何か大袈裟な格好と雰囲気よね。


 また私達を連れて僻地にでも向かうのかしら?? そしてそこで強敵と一戦交えるのかしらね。


「え、え、えっと……。そのぉ……」


「ねぇ、マリル先生。何を言いたいのか分からないけど早く行っちゃった方が楽よ??」


 言い淀む彼女に対し軽い口調でそう話し掛けるとマリル先生はフっと笑みを浮かべて私を見つめてくれる。


 そして意を決した様にダンの顔を直視した。


























































「え、えっと。ダンさん……。で、出来ちゃったみたいです」


「はい?? 少し早い昼ご飯の事ですか??」


「い、い、い、いえ。そうじゃなくて……。私のお腹にっ……」


 マリル先生が顔を真っ赤に染めて己の右手を下腹部に添えた刹那。








「こ、こ、こ、この甲斐性無しのクソ種馬がぁぁああああ――――ッ!!!!」


「アゲバァッ!?!?」


 すっとぼけた顔を浮かべ続けているダンの横っ面を龍の怒りを籠めた地上最強の拳で思いっきり張り倒してやった


「て、て、テメェ!! よくもマリル先生に手を出したなぁ!?!?」


 だ、だから先生の様子がおかしかったのか!!!! 漸く合点がいったわ!!!!


「や、止めろ!! と、取り敢えず今はマリルさんに事情を聴くのが最優先だろうが!!」


 ダンが真っ赤に染まった頬を抑え涙目になりながらマリル先生の顔を指差す。



 はっ!! それもそうね!!


 張り倒せるのはいつでも出来るし、先ずはマリル先生に色々聞かないと!!



「うっそ!! 先生子供出来ちゃったの!?」


 エルザードが珍しく声を荒げてマリル先生の下へ駆け寄り。


「ふふっ、おめでとうございます」


 フォレインは満面の笑みで先生の妊娠を喜び。


「ほっほう!! 先生もようやく母親になる時が来たのか!!」


「ここにこどもがいるの??」


 イスハとミルフレアが喜々とした様子で先生の下腹部に手を添え。


「せ、せ、先生!! どの機会タイミング、雰囲気、状況で子供が出来たの!? 詳しく教えて!!」


 私は脱兎達から満場一致で合格点を頂ける速度で先生に駆け寄り妊娠の詳細を問うた。


「それは私達の秘密ですっ」


「そっかぁ……。まぁそれはおいおい向こうの甲斐性無しの野郎に問い詰めるからいいや。ねぇ!! 早く来なさいよ!!」


「う、うぅっ……」


 私の奇襲が思いの外効いたのか将又先生の妊娠に驚いているのか。


 蟻の歩く速さと何ら変わりない速度で此方へと向かって来る。



「え、えっと……。そのぉ……。取り敢えず何を言ったらいいのか分からないので、お、おめでとうございます??」


 ダンが顔を真っ赤に染めてマリル先生にそう話すと。



「はいっ、有難う御座います」


 彼女の顔に世界中の美しい花達から嫉妬を買う美しい花が咲き誇った。



 うっわぁ……。今の顔、ヤバイわね。


 めっちゃくちゃ可愛かったし。


「「……っ」」


 何も言わず、何も行動せず只々相対する二人なのだが周囲を包む雰囲気はまるで視認出来る程に温かな物であった。


 ははぁん?? 二人共どうしたら良いか分からないって感じね。


 此処は一つ!! お節介焼きの龍の出番かしらね!!!!



「ぬふふぅ……。ねぇダン、先生を孕ませたんだから責任を取らなきゃいけないわよねぇ??」


「そうそう!! 遂にテメェも所帯持ちって奴さ!!」


 おっ!! フウタも乗って来てくれたわね!!


 こういう事に関しては誰よりもノリがいいから助かるわ。


「セ、セキニン??」


 何ソレ?? 美味しい食べ物??


 そう言わんばかりにダンが首を四十五度傾ける。



「そっ、要は結婚って奴よ」


 他者を好きになるとその人との間で見えない絆という糸が形成される。


 その糸は好きの段階ではあっと言う間に千切れてしまう脆いモノだが、好きから愛に変わるとちょっとやそっとじゃあ断ち切れない金剛不動の強度を持つ。


 ダンは此処に来てからマリル先生との間に絆を構築し、深め、その結果彼女のお腹に子が生まれる事となった。


 独身から家族へ。


 幾つもの絆が複雑に絡み合った家族は、それはもう幸せな家庭生活を送れるであろう。


 その絆は家族という媒体を通してマリル先生の子にも繋がりそして当然私達にも繋がる。私達はダンを、マリル先生を、そして生まれて来る子を見守る義務があるのかもねっ。



「け、け、結婚!? それってあのアレな奴だよね!?」


 何でそんなに驚くのよ。まさかコイツ……ッ!!


「ちょっとあんた。先生に手を出すだけ出して責任を取らないつもりなの??」


 右の拳に強力な魔力を籠めていつの間にかマリル先生から微妙な距離を取った大馬鹿野郎を睨み付ける。


「そ、そんなつもりは毛頭ないっ。お、俺も男だ。ちゃあんと責任は取るつもりさ」


「そ、それって……」


 マリル先生がダンの言葉を受け取るとちょいと俯きがちであった面を上げる。





「そのぉ……。こんな機会タイミングで申し訳ありませんが……。け、け、結婚をしましょう」


 そして種馬の言葉を受け取ると彼女の顔に、本当に素敵な花達が咲き乱れた。


「は、はいっ!! 此方こそ宜しくお願いしますっ!!」


「ちょっと!?」


 彼の口から待ち望んでいた言葉が出て来るとマリル先生は陽性な空気を振り撒き、ダンの胸の中へと飛び込んで行った。





「ふふっ……。良かった……。私達を受け入れてくれて」


「お、俺も一人の男ですからね。ちゃ、ちゃ、ちゃんと責任は取らないといけませんから」


 大変ぎこちない所作でマリル先生の綺麗な黒髪を静かに撫でる。


「まっ、俺様達魔物は重婚が禁じられた訳じゃねぇし。結婚は通過儀礼みたいなもんだよなぁ――」


「でもさ、ケジメって大切よね」


 私達に囲まれながらも二人だけの幸せな空間を築き上げている二人を見つめつつ話す。


「そういう事。おっしゃ!! そこの御両人!! 結婚式を挙げるから日取りやら段取りやらを決めようぜ!!!!」


 おぉ!! それは楽しそうね!!


「賛成ッ!! マリル先生の案は私達女性が聞くから、だらしのない種馬の案はハンナ先生達が聞きなさい!!」



「分かった。ダン、貴様には個人的に少し話したい事がある。だから付いて来い」


 ハンナ先生がダンに向かってドスの利いた口調でそう話す。



「え?? ヤダ。絶対酷い事するもん」


 流石、長い事お互いを見て居るだけはある。


 彼はハンナ先生の心の中に潜む負の感情を敏感に捉えるとマリル先生の肩からパっと手を離し、今も瞳に憤怒の炎を揺らしているハンナ先生から距離を取った。


「そうか、それなら……。此処で始めさせて貰おうかッ!!!!」


「ちょっ!! や、止め……。ウブグェッ!?!?」



 はっっっっや!!!!


 何!? 今の動き!?



 ハンナ先生が強烈な風を身に纏ったと思えば視界から消え失せ、気付いたらダンの懐に潜り来んで思いっきり横っ面を殴ったし!!


 私達の指導は手加減でアレこそがハンナ先生の本物の力、か。



「はぁ――……。びっくりしたぁ。速過ぎて見失っちゃったわ」


「フィロ、ハンナさんの動きをよく見ておきなさい。彼の魔力操作や筋力の動きはいつか必ず貴女にとって役に立つと思うから」


「家庭を持つとなるならば、誰にでも手を出す貴様の悪い癖を修正しなければならないからな!! 覚悟しておけ!!!!」


「待って!! 急にこんな早く動け……。ギャヒィンッ!?」


 マリル先生が私の隣に立ち、夫となるべき男が襲い掛かる暴力の雨によってズタボロになりつつある様を見つめながら話す。


「うん、分かった。でもいいの?? そろそろ止めないとダン死んじゃうかもよ??」


「ハンナさんは私達の家庭の事を想ってダンさんの悪癖を修正してくれているのですっ。それに男同士の独身時代の最後の餞別だ!! みたいな感じがして格好良く見えません??」


 ごめん、全然見えないわ。


 だって下手したら死んじゃうかも知れない角度と威力の拳が体の至る所に襲い掛かっているもん。



「ギャハハ!! 俺様からも餞別を送ってやらぁぁああああ――――ッ!!!!」


「某も参戦させて貰おうか!!」


「何でテメェ等も参加してんだよ!!!! これ以上は駄目!! 絶対!! 幾ら頑丈な俺でも死んじまうよ――ッ!!!!」


 忍ノ者が参戦する様を捉えると彼は三名の戦士に背を向けて森の奥深くへと逃げて行ってしまった。


 追いかけて来る肉食獣に決して背を向けてはイケナイと言われている様に、ハンナ先生達にも決して弱みは見せていけないのだ。


「貴様ッ!! 戦場から逃げ出すとは何事か!!!!」


「うひょうっ!! 丁度良いや!! 敗残兵をぶっ飛ばす練習になりそうだぜ!!」


「男足る者……。責任から背を向けるのは許されぬぞ!!!!」


「う、う、嘘だろぉっ!? ギィィヤアアアアアアアアア――――――ッ!?!?」



 あ、あはは……。ダン、大変だったね。


 でもその痛みはいつか嬉しい痛みと思える日が来るよ…………、多分だけど。


 強烈な打撃音の数々が止み、彼の大絶叫が静かな森に響き渡るとマリル先生が柔らかく口角を上げて絶叫が轟いた方向へと視線を向ける。


 その瞳の色は男に恋心を寄せる乙女そのものであり、いつか私も彼女の様な瞳を向けられる相手が出て来るのだろうかと一抹の不安を覚えてしまったのだった。




お疲れ様でした。


御盆期間真っ最中ですが皆様の予定は如何でしょうか??


家でまったり、誰かとおでかけ、実家に帰省等々。それぞれの予定を過ごしているかと思われます。


私としては……、そうですね。取り敢えず買い物に出掛けそれから趣味の一つであるZIPPO集めで新しいオイルライターをネットオークションで落札したり等。普通――の休日を過ごしていますよ。


後は美味しい御飯屋を探せれば今年のお盆休みは完成といった感じです。




沢山の応援を、いいねを、そしてブックマークをして頂き有難う御座いました!!!!


読者様からの応援が執筆活動の活力となっております!! 皆様が考えている以上に筆者は画面の向こう側で狂喜乱舞しておりますのでこれからも温かな目で彼等の冒険を見守って頂ければ幸いです!!



それでは皆様、引き続きお盆休みを堪能して下さいね。

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