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今日も今日とて、隣のコイツが腹を空かせて。皆を困らせています!!   作者: 土竜交趾
過去編 ~素敵な世界に一時の終止符を~
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第二百三十七話 右往左往する視線 その二

お疲れ様です。


後半部分の投稿になります。




「――――。エ゛ッ!?!?」


 俺の正面に居た筈のむさ苦しい野郎共の姿は既に無く、その代わりに俺のイケナイ性欲をギュンギュンと刺激してしまう美女達が微笑みを浮かべて立っていた。



「「「……ッ」」」


 大変短いスカートからスッッラァっと伸びるあんよちゃんは視覚を喜ばせ、無駄に大きく開いたシャツの胸元から覗く双丘の盛り上がりは拍動を強め、そして丸みを帯びた瞳の誘いを受け取ると脳が考える事を止めてしまう。


 これが普通の女性の顔だったのなら此処まで思考が停止する事は無い。しかし、俺の脳が停止してしまった理由は……。



 女性の顔がマリルさんそのものであったからだ。



「はっ!? へぇっ!?」


 普段はぜぇぇええたいにあんな厭らさ全開の服を着ないので目に飛び込んで来た女性らしいポニポニでムチムチの柔らかそうな肌と双丘が俺の口からすっとぼけた声を勝ち取ってしまった。



 俺が想像していた柔肌よりも一つも、二つも上を行く肌の美麗さに思わず口の端から粘度の高い唾液が零れそうになってしまう。


 それをグっと堪え、唐突に訪れた幸せな最高の機会を逃して堪るものかとして彼女の肌をマジマジと観察する事にしてみましたっ。



 ふぅ――むっ……??


 硬水と軟水の両方を弾く肌の艶と張り、そして丁度良い塩梅の肉のムチっと感。


 マリルさんは恐らく、世の男性にこれを見せたくないからあぁして四角四面の服装を身に纏っているのでしょう!!


 真面目な彼女は野郎共の不必要な注目を浴びたくないと考えている筈ですもの!!



「おっふぅ……。すごぉい、熟れたミカンよりもテカテカしてるぅ……」


 マリルさんの肌艶と双丘の陰りが俺の戦闘意欲を一切合切消失させてしまい、発情期の犬よりもだらしない息をハッハッと荒げていると。


「「「ッ!!!!」」」


「うげべっ!?!?」


 厭らしい服を身に纏った三人の偽マリルさんから強烈な拳を顔面に頂戴しました!!



「いっでぇぇええええ――――ッ!!!!」


 地面に尻餅を着き、大変痛む顔面を抑えて悶え苦しむ。


 超痛いんですけど!? そりゃそうだ!! 三人分の拳が纏めて一気に顔面に直撃したのですからね!!



「て、テメェ等!! 卑怯だぞ!! マリルさんの姿に変わるなんて!!」


 両目に涙を浮かべたまま立ち上がりマリルさんに化けた狸三人に向かって叫んでやった。



 ち、畜生!! 攻撃を加えてもいいが……。


 戦闘欲よりもや、や、やっぱり性欲が勝っちゃうぅぅうううう!!!!



「……っ」


 一人のマリルさんが此方に向かって愚直に拳を突き出して来るとその動きの反動によって世界最高峰の張りがある双丘がプンっと上下に動く。


 普段は見せてくれない彼女の双丘をマジマジと穴が開くまで観察出来てしまう絶好の機会を無くす訳にはいかないよね!?


「ほ、ほぉ!! 成程!! 超張りのあるお胸ちゃんはそうやって動……。ドゲベッ!?」


 偽マリルさんの拳が俺の顎を跳ね上げ。


「うひゃぁっ!! そんなに足を開いて上段蹴りを放ったら中身が見えてぇ……。ウングゥッ!?!?」


 二人目の偽マリルさんが左足を軸にした右上段蹴りを俺の鼻頭に直撃させ、そして。


「……ッ!!」


「わ、わぁっ!! ほぼぜぇんぶ見えちゃって……。ギャッヒィィンッ!!!!」


 大きく開いた胸元から覗く淡い青の下着の姿を捉えた約一秒後に俺の体は後方へと吹き飛ばされて行ってしまった。


「アババババッ!?!?」


 地面の上を有り得ない速度で転がり続け、奥歯を噛み砕く勢いで受け身を取って立ち上がると背に誰かの体が衝突した。



「「ッ!!!!」」


 街の通りで行われている乱戦なので俺の背にぶつかったのは敵かも知れない。


 そう考えて勢い良く振り返ったのですが……。



「な、何だ。ダンかよ……」


 俺の背にぶつかったのはやたらと顔に傷が目立つフウタであった。



「お、おいおい。その傷はどうした」


 フィロ達生徒の実力なら多少の負傷は分かるがお前さんは狸ちゃん達に対して遅れを取る様な実力じゃあないだろうに。


「あ?? これ?? 実はさ!! 俺様の目の前に超大盛ちゃんが三体も現れてなぁ!!」


 あぁ――、はいはい。そっちもそんな感じだったのね……。


「ほ、ほれ!! あっちを見てみろ!!」


「あのなぁ……。アレは狸共が化けた姿であって。本物の女性がそこに居るって訳じゃ……、にゃぁのぃ!?!?」



 す、す、すっごぉぉおおおおい!! あれはまさしく男の夢を具現化した肉の祭典ですね!!


 超大盛が六つも上下左右に暴れ回ればそりゃ不要な傷も負っちゃうよね!!!!



「「「……ッ」」」


 相棒も認める実力者であるフウタを傷付けた三体の偽スイギョクさんが妖艶な笑みを浮かべて此方を見つめている。


 彼女がお召しになる服は男の性欲を敢えて刺激するような肌の露出が多いモノであり、少しでも動いたのなら関係各所が見える絶妙の塩梅となっていた。


 アッチは超大盛の果実ちゃん達、そしてこっちは普段隠されているイケナイお宝が拝見出来る。


 頭の中であの中身はむさ苦しい野郎共と理解しているのだが、体は折角の機会だから心行くまで堪能しろと声を大にして叫んでいる。この相対的事象を解決しない限り、俺とフウタには勝ちの目が無い。



 ま、全く……。狸退治はこれまで相手にして来た化け物よりも精神的にかなり苦労しちゃうぜっ。



「い、いちち……。ったく、俺様達の弱点を的確に攻めて来る敵の相手はつれぇぜ」


 フウタが痛む体に鞭を打ちつつ弱々しい足取りで大地に足を突き立てる。


「激しく同感。ヤり辛いのなら相手を交換するかい??」


 どうせなら俺もあの超大盛の果実ちゃんに囲まれながらやんちゃをしたいし??


「冗談。俺様好みの大盛は誰にも譲れねぇぜ!!!!」


「そりゃ残念。楽しむのも勝手だけどよ、油断し過ぎると本当に死んじまうぞ」


「んな事頭では理解してんだよ!! でも、俺様の聖剣と体がアレに抗う事を拒絶しちまうの!!」


 俺と同じ事象に苛まれている彼が六つの超大盛に指を差した刹那。


「「「……ッ!!!!」」」


 それぞれが対峙する三名の敵が俺達の背筋を泡立たせる殺気を纏って襲い掛かって来やがった!!


 畜生!! 俺達が反撃出来ないと決め付けて向かって来やがったな!!



「フウタ!! 行くぞ!!」


「あいよう!! そっちも死ぬ気で目の保養……、じゃなくて!! 必死に抗えよ!!」


 言わずもがな!! 時間と体が許す限り偽物だけど!! 彼女のイケナイ所を隅々まで堪能してやるぜ!!!!



「はわわっ!? 超大盛の果実が一個ぉ、二個ぉぉおお!? 駄目だ!! こんなの抵抗出来る訳がねぇ!!」


「ふぁぁああっ!? そんなに足を開いたらまた見えちゃいますよ!?」


 偽マリルさんが大きく足を開いて回し蹴りの構えに入った瞬間に心拍数が苛烈に急上昇して行く。


 で、出来ればそのまま思いっきり蹴りを放って下さい!!


 張りと形の良いお尻ちゃんが目に飛び込んで来る事を期待し、敢えて緩い防御態勢を取って居るとかなり離れた位置から天にまで轟くお叱りの声が戦場に鳴り響いた。




「い、いい加減に普通に戦って下さ――――いッ!!!!」


 本物の森の賢者様の怒号が鼓膜を貫くと、俺とフウタだけでは無く偽マリルさんや偽スイギョクさん達の足元にも広がる巨大な魔法陣が地上に出現。



「「「「ウギィィアアアアアアアア――――ッ!?!?!?」」」」


 眩い光を放つ黄色の魔法陣から稲妻が迸り敵味方関係無くその体を穿って行った。


 足先から脳天まで駆け抜けて行く稲妻のお味は、それはもう例える事が出来ない位の痛みを体に与え四肢が己の意思とは無関係に暴れ回る。俺達の体は傍から見れば気持ちの悪い踊りを舞っている様に見えるだろうさ……。



「ウ、ウ゛ゥゥ……」


「お、おい。フウタ大丈夫か……??」


 地面に倒れたまま直ぐ後ろから聞こえて来た親友の嘯く声に向かって問う。


「だ、大丈夫じゃねぇよ。手足が震えて眼球が全く動きやしねぇ……」


「そ、そっか。その痛みのお陰かも知れないけどね?? 俺達を誘惑して来た連中を一網打尽に出来たみたいだぞ」


 まだまだ痺れと痛みが残る体を懸命に動かして周囲の様子を窺うと。


「う、うあぁ……」


「うぐぅ……」


 俺達の周りには八人のむさ苦しい野郎共が黒き煙を体全身から放ちながら力無く地面に倒れていた。負傷者が数名増えたのはマリルさんの放った魔法が広範囲過ぎたからでしょう。



 正に鎧袖一触とはこの事。



 森の賢者様の実力は伊達じゃないと褒め称えたいのですが、何も俺達を巻き込んでまでぶっ放す必要はあったのですか!?


 貴女の力なら個別に狙いを定める事も出来ましたよね!?



「く、くぅっ……。痛過ぎて耳から脳味噌が駄々洩れて来そうだ……」


 数呼吸後に漸く頭の命令を受け付けてくれるようになった体を労わる様にして上体を起こし、戦場の状況を確かめてやる。



「……ッ!!」


「馬鹿が!! 俺にその手の幻術は効かん!!!!」


 相棒に襲い掛かっているのは俺の姿を模した狸さんであり、彼は偽物の俺の顔面に向かって何の遠慮も無しに剣の腹をブチ当て更に後方から襲い掛かるフウタ擬きにも苛烈な一撃を見舞う。



「ふっ、化けるのならもう少し上手く化けるのだな!!」


「グェッ!?!?」


 マリルさんと俺の偽物がシュレンに襲い掛かるが、彼はいとも容易く偽物を看破し有無を言わさずに偽マリルさんと偽ダンの腹部に強烈な打撃を与え。



「んぉ!? 偽ダンか!! めっちゃ殴り易いからそのままで居ろ!!」


「なはは!! フィロの言う通りじゃ!! 足腰が立たぬ様にボッコボコにしてくれる!!」


「その通り!! そこの前衛!! ちゃちゃっとぶっ飛ばして次に備えなさい!!」


「対処が簡単過ぎて欠伸が出ますわね」


 複数の偽物の俺が前衛のフィロとイスハに襲い掛かるが、彼女達は大好物を目の前にした大型犬宜しく鼻息を荒くして偽物の俺を無力化。



「ふふっ、本物のダンさんはもっと叩き易い顔をしていますよ??」


「「「「アギャァァアアアア――――ッ!!!!」」」」


 そして森の賢者さんは満面の笑みを浮かべて人に向かって放ってはイケナイ威力の魔法で四名の偽物の俺を料理していた。



 こっわぁ……。何?? 俺ってそんなに殴り易い顔をしてんの??


 まかり間違って偽物の中に俺が紛れ込んでいたら洒落にならない威力で攻撃してんじゃん……。



「よ、よぉ。フウタ、どうやら戦況は俺達の方へ傾いているみたいだぜ」


 戦々恐々の想いを胸に抱きつつ現状を伝えてやる。


「俺様達がもう少ししっかりしていればもっと早く戦場を制圧出来たんだけどなぁ」


「無理無理。あぁんな美味しそうな御馳走が目の前をチラついたら嫌でも堪能しちゃうって」


「激しく同感するぜ……。うげっ!! お、おいおい!! また新手が出て来たぞ!?」


 いやいや!! 勘弁して下さいよ!!


 こちとらまだ雷に打たれて満足に動けないんですけど!?



 フウタの声に従い家々の間の薄暗い影に視線を移すとそこには殺気全開の空気を身に纏う十名を優に超える狸ちゃん達の姿が確認出来てしまった。


 自業自得かも知れないけども!! この体であれだけの個体を相手にするのは辛いぞ!?


 し、しかも!!



「「「「……ッ!!!!」」」」


 彼等の体から強烈な光が迸りそれが止むとまた偽者のマリルさんやらスイギョクちゃん達が出て来ちゃったし!!


 やっべぇ……。視覚的には大満足なのですけども、体的には超最悪な増援だぜ!!


「くっ!! 俺達が相手になってやる!!」


 丹田に力を籠めて戦闘態勢を整え、喉の奥から空気を捻り出して奴等の注意を引き付けてやった。


「出来れば蹴り主体の攻撃を求む!!!! そしてぇ!! 弱ったこの体には顎先に狙いを済ませた上段蹴りが有効ですよ!!!!」



 俺に向かって来た四名の偽マリルさんに攻撃方法を敢えて指定してあげる。


 強烈な痛みと引き換えにすんばらしいお宝が拝見出来るのなら本望ッ!!!!



 さぁ……、三度のお宝よ!! 俺の前に現れるが良い!!



 体の前で両手一杯に広げてこの世のどんなお宝よりも価値があるマリルさんの金銀財宝を己が眼に収めようとした刹那。



「俺達だって戦えるんだ!!」


「その通り!!!! 街の平穏を取り戻す為なら何だってするぜ!!!!」


 鍬や鎌等の農業用道具とお世辞にも切れ味が良いとは言えない剣を手に持った住民達が新手の増援に向かって突貫を開始した。



「ああああああ――――ッ!!!! こ、こらぁぁああ!! お宝が拝見出来なくなるから余計な手出しは駄目ぇぇええ――――!!!!」


「ダンさん!! ふざけないで下さい!! 早く彼等の援護に加わりなさい!!!!」


 ち、ちぃっ!! 離れた距離に居るってのにこっちの現状は筒抜けですか!!


「へ、へい!! 分かりやした!! フウタ!! 俺達も加勢するぞ!!」


「おう!! さり気なくそして刹那の淫靡を記憶する様に戦ってやらぁ!!!!」


 本物のマリルさんから強烈な命令を背に受け取ると街の住民達の群れの中に向かって突貫を開始。



「へへ。わりぃね!! 少しの間眠って貰うぜ!!!!」


「あぐっ!?」


 群衆を掻き分けて進んで行った先に居る偽スイギョクさんの顎を下から綺麗に打ち抜いてやった。


 んぅ!! 変身が解ける前の刹那に大変大きな果実がプルルゥンって動きましたね!!


 満足まではいかないけども今はこれで我慢すべきでしょう!!


「俺達の街で好き勝手にしやがって!!!!」


「これはこれまで受けて来た仕打ちのお返しだぜぇぇええええ――――ッ!!!!」


「「くっ!?」」


 俺とフウタが手出し出来ないカワイ子ちゃん達に住民達の攻撃が加えられると狸一族の固有能力である変身が解除。


「むさ苦しい顔を見せんじゃねぇよ!!!!」


「そうだそうだ!! もっと鮮明にマリルさんの下着を再現してくれれば幸いです!!」


「「ギィィアアアアアアッ!?!?」」


「うっし!! これにて終了っと!! フウタ!! 手ぇ!!!!」


「あいようっ!!!!」


 眩い光の中から現れた男の顔面をフウタと共に打ち抜いてやると勝利を確信した俺達は青き空の下で右手同士を強くパチンと叩いて勝利の音を奏でてやった。



「うぐぅ……」


「く、くそっ……。強過ぎる……」


 街の主大通りにはたぁくさんの狸一族が横たわり彼等は苦悶の表情を浮かべて倒れている。


 体中に刻まれた裂傷、顔のあちこちに刻まれた打撃痕、そして体中から放たれる黒き煙。


 街の状況を知らぬ者達がこの光景を捉えたのなら口を揃えてきっとこういうだろうさ。



『えっと……。とんでもない化け物が街を通過したのですか??』 と。



 そりゃあ傷だらけの野郎共がうめき声を上げながら倒れているのだ。長閑な田舎に起きた特異な事件を捉えたのなら誰だってそう考えるだろうさ。



「一――、二――、三――」


 死体擬きの数を一つずつ丁寧に数えて行く最中にとある事に気付く。


「あれっ!? スイギョクさんが居ない!?」


 そう、狸一族の首領である彼女の姿が戦場に変化した主大通りから忽然と姿を消していたのだ。


 もしかして戦いのどさくさに紛れて逃げたのか!?


「マリルさん!! スイギョクさんの姿が見当たりませんよ!!!!」


 ちょいと離れた位置で残存戦力の増援が無いかどうか、緊張の色が顔に濃く表れているマリルさんの下へと駆けて行く。


「その様ですね」


 あ、あらら?? 随分と落ち着いた御様子ですね??


「先生!! あのクソ狸が見当たらないんだけど!?」


 己の戦場を制圧し終えたフィロが血相を変えて此方に向かって来る。


「フィロ?? 何度も言いましたけどもう少し口調を改めるべきでは??」


 マリルさんが己の感情をス――っと殺して端整な御顔ちゃんに修羅を宿して問う。


「ご、ごめんなさいっ……」


 ははっ、三度の飯よりも暴力が大好物の龍も森の賢者様の前じゃあ飼い慣らされた大型犬みたい大人しくなっちゃいますよねぇ。



「御二人共、御安心下さい。既に彼女の魔力は捉えていますので」


 彼女がそう話すと地面に眩い光を放つ魔法陣が浮かび上がる。


「えっと、つまりこれから空間転移で戦場から逃げ遂せたスイギョクさんを追うと??」


「ダンさんの仰る通りです。私はこれから彼女を追い捕縛してから此方に戻りますのでそれまでの間。傷付いた住民の方々の治療それと平行する形で狸さん達を拘束。そして狸さん達にも必要最低限の治療を施して下さい」


「分かったわ!! それじゃ先生!! 気を付けてね!!」


「ふふっ、有難う。それではダンさん。後始末を宜しくお願いしますね」


「へい!! いってらっしゃいませ!!!!」


 マリルさんの心がホっと安らぐ笑みを受け取ると覇気のある声で眩い光の中に姿を消した森の賢者様を見送って上げた。



 さぁって、これから忙しくなりそうだなぁ。


 恐らくというか確実にマリルさんは俺が想像しているよりも早く帰って来るだろうし、それまでの間に彼女の指示を確実に遂行しなければならないのだから。



「よぉ!! 相棒!! わりぃけど狸さん達を捕縛してくれ!!」


 少し離れた位置で増援を警戒し続けている彼に指示を送ると。


「……ッ」

『それは貴様の仕事だろう』


 言葉では無く大変鋭い瞳で俺の指示に反抗しやがった。


「俺の指示じゃねぇって!! マリルさんがそうしろと言ったんだよ!!」


「ふんっ、増援の見込みは無さそうだ。今だけは貴様の指示に従ってやる」


 愛剣を左の腰の鞘に収めるとぶつくさと文句を言いつつも俺の指示に従ってくれる。


「後で美味しいぜんざいを食わせてやるから頑張れよ――!!」


「喧しい!! 俺は食べ物の為に動いている訳では無いのだ!!」


 うふふっ、口では辛辣な言葉を放っていますけども。食べ物の単語を捉えると機敏な動きに変化していますよ??


 恐らく、今まで聞いた事が無い御飯の単語に反応しちゃったのでしょう。


 朝早くからの行動でお腹を大変減らした彼の体にあまぁいぜんざいは程よく染み込む事だろうさ。


 相棒のふっっわぁぁっと浮き上がった前髪の姿を想像しつつ。



「ほら!! お前さん達も早く行動する!!」


「はぁ――い、はいはい。マリル先生の指示なら従うけどダンの指示だとど――も気が抜けるのよねぇ」


「エルザード、小言を放つ前に体を動かしなさい」


「フォレインの言う通りよ。あんたは目を離すとす――ぐサボるんだからっ」


「五月蠅い!! やればいいんでしょ!! やればっ!!!!」


 戦場の熱がまだまだ冷め止まぬ戦場に生徒達の燥ぐ声が響く。


 その明るい声は地上で留まる事無く、衰え知らずの声は青き空へと勢い良く立ち昇り徐々に傾きつつある太陽にまで届く勢いだ。


 かなり疲弊した体に彼女達の明るい声は一種の増強剤となり俺達は鼓膜を震わす威勢の良い声を力に変えて作業に勤しむ。



 ただ、明る過ぎる声は時に毒になり得るのだ。



「おっも……。何よ、コイツ。図体ばかりデカクなって……」


「なはは!! 何じゃ、お主その程度の大きさの体も運べぬのかぁ?? 淫魔という種族はぜいじゃくじゃのぉ」


「うっそ!? 頭の中にまで筋肉が詰まっている馬鹿狐が言葉を発した!? 明日はきっと季節外れの雪が降るわねぇ――」


「こ、こ、この阿保淫魔がぁぁああああ!! わしが直々にせいばいしてやるわぁぁああ――――!!!!」


「「「「はぁぁああ…………」」」」


 俺達の作業に手を貸してくれる住民さん達と共に疲労を籠めた溜息を吐くと、俺達は耳に意識を向ける事を止めて只々目の前のむさ苦しい野郎共を捕縛する事に神経を集中させ続けていたのだった。





お疲れ様でした。


投稿が少し遅れてしまい申し訳ありませんでいた。連日の猛暑でちょっと体がヤられてしまいまして……。



さて、予定では次の御話で狸一族の侵略編は終了します。


そのプロット作業にちょいと手こずっていますので中々休めない休日になりそうですよ。



六月なのに猛暑が続いていますが読者様の体調は如何でしょうか??


熱中症に気を付けてお過ごし下さいね。



それでは皆様、体調に気を付けて週末をお過ごし下さいませ。

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