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今日も今日とて、隣のコイツが腹を空かせて。皆を困らせています!!   作者: 土竜交趾
過去編 ~素敵な世界に一時の終止符を~
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第二百二十九話 酒と喧嘩は男の華 その二

お疲れ様です。


後半部分の投稿になります。




「すいません!! すいません!! 何度でも謝りますから手を出すのは止めて下さい!!」


 子を守ろうとする母親の切なる声が俺の闘志に火を灯す。



 女性に手を出すのは許せねぇよなぁ……。他人である俺達には彼女達の問題に首を突っ込む訳にもいかないが、理不尽な暴力となれば話は別さ。


 さてと!! お節介かも知れねぇけど此処からは俺達の出番みたいだな!!


 フウタにチラっと視線を送ると彼も俺の意見に賛同しているのか。



「……っ」


 大変わっるぅい笑みを浮かべて一つ頷いてくれた。


 にしし!! さっすが親友ダチだぜ。視線一つで俺の思考を汲んでくれて幸いですよっと!!



「おいおい……。俺達が狸一族だと知っての行動かぁ?? いいのかなぁ――?? こんな上等ブチかましてくれて」


 へぇ、アイツ等がこの街を実効支配していると言われている狸一族ちゃん達か。丁度いいや、聞きたい事が山程あるんで彼等の『体』 に直接問うてみましょう!!


 首を左右に傾け、手首を軽く解しているとこの所作を捉えた森の賢者さんからお許しの声を頂けた。


「ダンさん、フウタさん。出来るだけ穏便に済ませて下さいね??」



「勿論です!! よぉ!! そこの兄ちゃん達!! ちょぉっと聞きたい事があるんだけどさぁ――!!」


 これから女性と楽しい楽しいお出掛けをする思春期真っ盛りの男の子と同じ足取りで酔っ払い二人の下へと進んで行く。


「あぁ!? 何だテメェ!!」


「まま、そう怒りなさんな。まだまだ若いんだし、その子の失敗は大目に見てやれよ」


「駄目だな。この街の住民は俺達狸一族の所有物みたいなもんだ」


「そうさ!! 俺達に借金を返すまでコイツ等は俺達に仕える運命なんだよ」


 借金??


「よぉ、兄ちゃん。その借金って何だ??」


 フウタがいつでも事を起こせる様、両の足に力を溜めつつ問う。


「お前達は今日来たばかりなのか?? それなら優しい俺が教えてやろう!!」


 そりゃど――も。後、酒くせぇからさっさと説明し終えて口を閉ざせや。


「俺達はコイツ等の作物を買い取りそれ相応の金を渡した。一度目の取引ではお互いに満足の行く取引が出来たんだけどよぉ……」


「二回目、三回目の取引は全く上手くいかなかった!!」


「へぇ、そりゃまたどうして??」


「姉御があ、あ、青田ぁ……。売り??」


 惜しい!! 実に惜しいですね!!


「先物取引の青田買いの事??」


 何かを思い出そうとして右上方に視線を送っている酒臭い男の言葉を補修してあげる。



「それだ!! こっちは金を渡したってのにコイツ等は作物が出来ねぇからって物を渡さねぇから質が悪い!!」


「ふぅん、そういう事があったのね。でもさ、作物が出来ないのならお金を返せば良かったじゃん」


「それがよぉ、俺達と取引を担当したこの街の野郎が大金に目が眩んだのか。金の大半を横取りして姿を消しちまったんだよ。姉御は段取り通り事を進めたってのにひでぇ話だぜ」


 金を横領したクソ野郎は兎も角、この街は農業を生業にして成り立っている。


 コツコツと農作物を育てて行けば全部とまではいかないが債務を返済出来る筈なのに……。


「えっと、急に作物が出来なくなった理由は分かります??」


 狸の野郎二人を恐れて肩を細かく震わせている女性二人に問う。


「原因は不明ですが米も他の農作物も急に育ちが悪くなってしまったのです。幾ら田畑を耕しても一向に実る気配は無くて……」



 大筋が読めたぜ。要はこういう事だ。


 狸一族がこの街の農作物を青田買いで買い取り事前に街を代表する者に大金を渡す。それに目が眩んだクソ野郎が金を持ち逃げし、彼等は借金を返そうとして齷齪働くが一向に作物が育たず狸一族の配下に加わり苦しい思いをしている。


 農作物が育たぬのなら他の事業で利益を得るべきだと考えた狸一族が長閑な街を色欲の街に変えてしまった。


 街の住民達をほぼタダ同然で働かせれば利益をがっぽり頂けて尚且つ色と賭け事を目当てに外からジャンジャンと客が押し寄せて来る。


 恐らく狸一族は借金が返済されるまでこの街を支配し続ける事だろう。


 優しい人の心の持ち主なら狸を一匹残らず捕らえて、ケツを思いっきり蹴り上げて街から追い出してやるのだが今回はちょいと毛色が違う。



 そう、彼等の債務不履行が今回の事件の発端となってしまったのだ。



 狸一族には債権という至極真っ当な権利があり、街の住民には債務の弁済という義務がある。


 これをうやむやにしてしまうのは法治国家として如何なものか??


 俺と同じ考えに至ったのか。



「……っ」


 受付所付近で彼等の話を聞いていたマリルさんの顔が大丈夫ですかと思わず問うてしまいたくなる程に顰めっ面に変容してしまった。



「それで借金の形としてコイツ等の下で働いている訳か」


「そうなんです……。去年からずぅっと住民総出で働いていますが利子を払う事が精一杯で」


「はぁ?? 優しい俺達がちゃんと給料を払ってやっているってのにその言い草はねぇだろうが!!!!」


「あぁッ!!」


「お母さん!! お、お願いしますからもう止めて下さいッ!!!!」


 酔っ払いその一がパルペントさんの横腹を蹴り上げると娘が悲壮な声を出して母の上に覆い被さった。



 はい、これで一応俺達に大義名分は出来ましたね!!


 第三者が金のやり取りに首を突っ込むのは駄目ですけども、命のやり取りには首を突っ込まなきゃいけませんので!!!!


 俺達は世直しの旅に出ている訳じゃねぇけどさ、輝かしい命を守る為に行動を取るのがイイ男の条件なのよ!!!!



「うるせぇ!! テメェ等人間は俺達の言う事を聞いていればいいんだよ!!」


 酔っ払いその一が右足を大きく振りかぶった刹那。


「よっしゃ!! ちょいと俺と遊ぼうぜ!!!!」


「テメェ何を……。ウォォオオオオオオ!?!?」


 酔っ払いその一の胸倉を思いっきり掴み上げて通りに面する窓ガラスに向かって力の限りにぶん投げてやった。


 く、くぅぅうう!! この闘志がグワングワン湧いて来る感情が堪らねぇぜ!!



「あ、おい!! 俺達に手を出したらどうなるか分かっているのか!?」


「ギャハハ!! 先に手を出したテメェ等がわりぃんだよ!!!!」


「グェッ!?」


 フウタの回転蹴りが狸ちゃんの腹部に命中して俺が空けた穴に寸分違わずに向かって行く。


「お、おい何だ!?」


「喧嘩みたいだぞ!?」


 そして窓枠に微かに残る硝子を狸ちゃんの体で綺麗に掃除すると大通りで素敵な喧噪が広がって行った。



「よっしゃあ!! ダン!! 行くぜ!?」


「おうよ!! マリルさん!! ちょぉぉっと世直しの旅に出掛けて来ますねっ!!」


「はいっ、わるぅい狸さんにお灸を据えちゃって下さいっ」


 お灸って……。存外、俺達よりもマリルさん方がおっかないかも知れないな。


 逸る足のまま扉を勢い良く開けて素敵な夜の雰囲気が漂う大通りに躍り出ると、先程ぶっ飛ばした二体の狸ちゃん達が丁度立ち上がる場面であった。



「い、いちち……。テメェ等、中々ヤルな」


 へぇ、酒と女と賭け事。怠惰に過ごしていた割には結構頑丈な体なのかも。


 まぁ二割に手加減した力でぶっ倒れたらこっちとしても拍子抜けですものね!!


 これからは本腰を入れて痛めつけてやるぜ!!!!


「俺達の恐ろしさをその体に刻んでやらぁ!!」


「狸一族にたてついた事を後悔させてやる!!!!」


 まぁまぁ口だけは達者な事で。



「ギャアギャア喚くなよクソ雑魚が。俺様が秒で片付けてやっからさっさと掛かって来やがれっ」


「まぁ!! 皆さん聞きまして!? 脳味噌が詰まっていない様な酔っ払いがちゃあんと言葉を発しましたわよ!?」


 フウタとほぼ同時に似た意味の挑発をすると同時。



「「死ねぇぇええええええ――――――ッ!!!!!!」」


 酔っ払いその一とその二が激昂したままで襲い掛かって来やがった!!



 よっしゃあ!! 酒と喧嘩は男の華ってね!!!!


 景気良く派手な喧嘩にしようぜ!!!!



「ハァァアアアアッ!!!!」


 酔っ払いその一が大きく振りかぶった右の拳を俺の顔面に定めて放つ。



 体の開き具合、がら空きの顎先、そして思わず欠伸が出てしまう拳速。


 相手に攻撃を与える要素の一つ一つが及第点以下のモノであり、大きな拳が迫り来る中で幾つもの選択肢が頭に浮かんで来る。


 相棒やフウタ達との組手ではこうはいかねぇ。アイツ等の攻撃は背筋がゾクリと泡立つモノだからな。


 さてと!! 優しいダンちゃんはこわぁい相棒と違って良く出来た人物なので俺とテメェの実力差を、痛みを以て分からせてあげましょうかね!!



「セァッ!!」


「おせぇ!!!!」


「グホァッ!?」


 どうぞ私の腹を叩いて下さいと言わんばかりの隙だらけのお腹ちゃんを右の拳でやさしぃくボスンと叩いてあげると。


「うっ、ぐはぁっ……」


 両手で腹を抑え、踏鞴を踏みながら一歩二歩後退して行く。


 浴びる様に酒を飲み、たらふく飯を食った腹に響く一撃は相当堪えるよねぇ。


 でもぉ、お前さんはこの街の住民ちゃん達に手を出してしまったのでそれ相応の罪で償って頂きますぜ!?


「わりっ、もう決めるぜ!? とぉうっ!!」


 何とか闘志の炎を絶やすまいとして懸命に大地に足を突き立てていた狸その一の死角から攻撃を開始。


「はっ!? き、消え……。ウグェェッ!?!?」


 その一の左頬に鍛えに鍛えた拳を直接捻じ込んでやるととんでもない快感が拳から体の中央へと駆け巡って行った。


 く、く、くぅぅうう!! これだよこれ!!


 やっぱり喧嘩はこの手に限るぜ!!



「よぉ!! こっちは終わったぜ!!」


 完璧な勝利を掴み取り満面の笑みを浮かべてフウタの方へ振り返ると。


「こっちもだ!!」


「う、う、うぅん……」


 彼も丁度相手を無力化したのか、フウタの足元には白目を向いて気絶している狸その二が寝っ転がって居た。



「んだよ、コイツ等。口だけは達者で滅茶苦茶弱いじゃねぇか」


「まぁ酒に酔っていたんだし?? 本来の実力じゃないでしょう」


 その一の魔力の源から感じる圧は武に通じた者までとはいかないがそれ相応の高さを感じる事が出来たし。


「んで?? どうする?? コイツ等の処理は」


 あ、そっか。派手に張り倒すだけじゃなくて事後処理まで考えなきゃいけなかったのか。


「取り敢えず知り合いを探してみる?? 俺達を取り囲む連中なら誰か知っているだろ。すいませ――ん!! 誰かこの人達の知り合いは居ませんか――!? 酔っ払って俺達に喧嘩を売って来たので仕方が無く手を出しちゃったんです――!!」


「マジかよアイツ等……。狸一族に手を出しやがったぞ」


「でもすげぇ強かったよな」


「はぁっ……。やっぱり戦う男って素敵よねぇ……」



 好奇、興味本位、果ては雄の勇姿を捉えて恍惚とする目を浮かべている女性。


 俺達を取り囲む群衆に向かって問いかけるが彼等から返って来るのは何んとも言えない吐息のみ。


 アレ?? 俺達ってもしかして手を出しちゃいけない奴等に手を出しちゃった感じ??


 まぁそりゃそうか。この街を実効支配している狸一族に上等をブチかましたのだからそれ相応のしっぺ返しは返って来るのが世の常ですので。


 彼等もその事を重々理解しているので手を貸そうとはしないのでしょう。


「参ったな……。いっその事、人の迷惑にならない場所で寝かせようかしら??」


 大勢の群衆に囲まれながらコイツ等の処理に困り果てていると……。



「ふふっ、随分と腕の立つ御方達なのですね」


 俺の背がゾクっと泡立ってしまう色っぽい女の声が鼓膜に届いた。



「「「スイギョク様!!」」」


 はい?? スイギョクちゃん??


 色艶のある女の声がした方向へ顔を向けると丁度、件の彼女が群集を器用に掻き分けて俺達の下へと歩いて来る場面を捉えた。



 それはちょっと大袈裟じゃあありませんかと思わず首を傾げたくなる大きく開いた胸元の青い浴衣を着熟し、歩く度にチラっと見える太腿ちゃんの柔肌が男のグングンと性欲を上昇させ、そして健康的な色の唇から艶のある声を聞かせられれば我を忘れて襲い掛かってしまうであろう。


 どちらかと言えば丸顔の中央をスっと流れる整った鼻筋と軽く浮かべる笑みは健康的に焼けた肌に良く似合う。


 スイギョクと呼ばれた女性が、黒みがかった茶の髪の毛をフルっと震わせて俺達の下に到着すると本当に静かに声を上げた。



「彼等が一体何をしたのか説明して頂けないでしょうか??」


 わぉっ!! 顔も可愛ければすんげぇ良い匂いもするじゃん!!


「あそこのアマヤという宿屋の受付でちょいと一悶着ありまして。俺達は酔っ払った彼等から向けられた暴力に対して最低限の自己防衛行為を働いた訳であります」


「ハッハッハッハッ!!!! ね、ね、ねぇちゃん!! 俺様とちょいとその辺りでイイ事しない!?!?」


 発情期の雄犬も顔を顰めてしまう興奮具合のフウタの襟を掴みつつ至極冷静を努めて話す。


「まぁ、そうなのですか。狸一族を代表して謝罪させて頂きます。真に申し訳ありませんでした」


 スイギョクちゃんが俺達に向けてキチンとお辞儀をすると。



「「ッ!?!?」」


 たわわに実った二つの果実ちゃんがぷっるぅぅんと左右に揺れ動いた。


 でっかぁ……。これまで沢山の大盛果実ちゃんを堪能して来ましたけれども、彼女の双丘はその中でも群を抜いて素晴らしいと膨らみ具合から判断出来ますねっ。



「も、もう我慢出来ねぇ!! ダン!! 放しやがれ!!!!」


「だ――!! 阿保か!! 俺達はもう休むんだよ!!」


「ふふふ、中々面白い殿方ですね」


 今にもスイギョクちゃんに襲い掛かろうとするフウタを羽交い締めの要領で御してやる。


「狸一族を代表して謝罪すると仰っていましたけど……。スイギョクさんが彼等の代表なので??」


「うわぁ……。すっげぇ腫れてる……」


「こっちも相当酷いぞ」


 俺達が無効化した酔っ払いその一とその二を運んで行く男達に視線を送りつつ問う。



「はいっ、仰る通りです。私の名はレジィナ=スイギョク。狸一族の代表として今はこの街を管理させて頂いております」


 ほぉ、この姉ちゃんが狸一族の代表か。


 物腰柔らか且人に敵意を抱かせない所作を捉えると何だか拍子抜けしちまうよ。俺はてっきり無頼漢を越える猛者が実効支配していると思ったのに。



「此方が貴方達に迷惑を掛けたのは事実。何か用が御座いましたのならこの先に私の家がありますのでいつでもお越し下さいませ」


「そ、それは夜這いしてもイイって事か!?」


「クスっ、私に対してそういう事を企てる殿方は滅法減ってしまいましたので……。夜の務めを果たせるかどうか不安ですね」


 両手で嫋やかに口元を隠し、両腕で双丘をムギュっと寄せる所作がフウタの何かを刺激してしまったのだろう。



「ア、ア、アォォオオオオオオ―――――ンッ!!!! 絶対にお邪魔するからね!? 絶対に逃げないでくれよ!?」


 狼の遠吠え何かメじゃない叫び声を上げてしまった。


「では私は仕事があるので失礼しますね」


「おい!! 道を開けろ!!!!」


 彼女の部下らしきガタイの良い兄ちゃんが群集に声を掛けるとスイギョクさんが通る道が瞬き一つの間に形成される。


 権力も然ることながらこの街で暮らして行く為にはスイギョクさんに頭を下げ続ければなければならないのね。


「ダン!! 放せぇぇええ!! 俺様の聖剣が漸く復活するかも知れねぇんだぞ!?」


「阿保か!! 街の権力者に手を出して言い訳がねぇだろうが!!!!」


「こ、この薄情者!! インチキ野郎!! 姑息な詐欺師がぁぁああああ!!!!」


 刹那に見せた権力の大きさそして今日の夢に出て来るであろう大盛の果実ちゃんを確と脳裏に刻むと、スイギョクさんお尻に向かって突撃しようと画策し続けている大馬鹿野郎を開かれっぱなしの宿屋の扉へと向かって無理矢理引きずって行ったのだった。




お疲れ様でした。


連休明けでまだまだ体が平日に慣れていませんが読者様の体調は如何でしょうか??


此処で怠惰に過ごすと体調を崩す恐れがあるのでしっかりと睡眠と栄養を摂って日々に備えようと考えていますね。



沢山の応援をして頂きそして、ブックマークをして頂き有難う御座いました!!


読者様達の温かな応援が連載の力になっています!!!!



それでは皆様、お休みなさいませ。

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