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第二十五話 彼の勇気 その二

お疲れ様です!! 夜分遅くに失礼します!!


後半部分の投稿になります。


それでは、御覧下さい。




 うぅむ……。


 ちゃんと、労いの言葉は伝わったのかしら??



 レシェットさんが壇上から降りて直ぐに言葉を掛けましたけども。今だ怒りが収まらないのか。


 顔を赤く染めて返事を頂けずにアイシャさんの後をスタスタと付いていっちゃったし。



 はぁ――。


 何で十六の子の顔色を窺わなきゃいけないんだ……。



 だけど……。



「いや、見事な御言葉でしたよ!!」


「えぇ!! 全くその通りです!!」


「有難う御座います」



 地位ある男性達を相手に一切動じる事も無く、慎ましく相手を務める様は少女の姿では無く。一人の大人の女性と変わらぬ姿であった。



 俺もそろそろ認めないとな。


 レシェットさんは大人の女性だって。



 性格云々は置いておき、立ち揮う姿は大人顔負けですからね。




『皆。異変は無いか??』



 レシェットさんの左手後方に付き。護衛を続けながら、皆に念話を送る。



『レイドの姿が見えないけど。こっちは大丈夫――』


『此方も異変はありません』



 ユウとカエデの位置は大丈夫か。


 けれど、問題はアイツだな。



『おい、マイ。聞こえたか??』



 肝心要な彼女の言葉を頂いていない事に一抹の不安を感じて再び問う。



『ふぇ?? あ――…………。うんっ!! 大丈夫よ!!』



 今の間が物凄く不安ですよ。



『皆がそっちに夢中だからさ。机の上の料理を食い漁っていま――す』



 嫌な予感程当たるって現実だったのですねぇ。



『ユウ!! 一々報告せんでいいわ!!!!』


『そしてあたしもちょっとつまみ食いしていま――すっ』



『食べるのは構わないけど。気を抜かないでくれよ?? もう少しで式典も終わりなんだから』



『『はぁ――いっ!!!!』』



 もう少しシャキっとした声を上げなさい。



 最後は二人仲良く声を揃えてしまいましたとさ。



 レシェットさんの周囲に人集りが出来て、死角が所々に存在しますけど……。


 前からは俺。


 そして後方からはマイ達が監視の目を光らせているから大丈夫だな。




『レイド様っ!! 大変で御座いますぅ!!』



 うんっ!?



『どうした!? アオイ!?』



 屋敷の内部に挙動不審な奴が居たのか!?



『洗い物が終わらなくてぇ……。レイド様の背広姿が見えませんのぉ!!!!』



 はぁぁぁ。


 そんな事で急に声を張り上げないでよね。


 身構えちゃったじゃんか。



『アオイ――。馬子にも衣裳って感じだから別に今見なくても良いぞ。んぉっ!! うまっ!! このパンっ!!』


『ユウ!! 貴女という人は……。レイド様の御召し物は全て把握しないといけませんのよ!?』


『何で??』



『レイド様と私の間に将来産まれて来る御子の為に、私は様々な御召し物を把握しておかなければならないのです!! 父親が御召しになる服を子も着る。それはもう……。うふふ。幸せな家庭になる事間違いなしですわっ』



『くだらねっ。あぁ!! マイ!! それ、あたしが食べようと思っていた奴!!』


『く、く、下らない!? 今の台詞は聞き捨てなりませんわ!! 今からそっちへ……。きゃあ!!!!』



 何で最後は驚愕の声で締めたのだろう??


 まぁ、大体想像は付くけども。



『レイド様ぁっ!! お皿の山が襲い掛かって来ましたわぁ!!』



 ほら、正解した。



『クジで公平に決めたんだから。頑張ってね?? 応援しているよ』


『っ!!!! は、はいっ!! これも花嫁修業の一環として誠心誠意。そして、粉骨砕身の思いで取り掛かりますわぁ!!』



 お疲れ様です。


 皿洗いは家事の基本中の基本ですからね。


 是非とも習得して下さいまし。




 レシェットさんの周囲に集っていた人々が徐々に捌け始め、数名の客人達が正面扉から出て行く。


 何となく式典が終わりの方向へと傾き始めた時……。
















「…………」



 視界が一人の男性の姿を捉えた。



 いや、辛うじて捉えられたと呼ぶべきか。



 今の今まで気が付かなかったぞ。


 あんな人、会場内に居たっけ??



 周囲の空気、並びにレシェットさんの周囲に存在する人集りに同化する様に気配を殺し。静かに佇むものの。


 周囲が沸くと彼もまた慎ましく沸く。


 タンドア議員が豪胆な冗談で再び場を盛り上がらせると、彼もまた笑う。



 でも。


 彼は……。そこに存在しないのだ。



 な、何だよ。


 アイツ……。気持ち悪いな……。




 気配があるようで、無い。


 霞の様な存在感に背筋がゾクリと泡立ってしまった。



 師匠が以前仰っていた、『気』。



 それに例えるのなら。あの人はそれを他人に確知させない術を持っているのだろう。


 素晴らしく高度な技術だ。




 陽性な感情に包まれる人集りの中。


 右手に持つ随分と前に配布された酒のグラスを左手に持ち替え、レシェットさんの左手の方へと静かに歩む。


 その間。


 彼を直視しては不味いと考え、彼が軌道を描く先の先へと視線を送った。



 周囲の人物は、彼の体が己の肩に触れる程接近して初めて気付いた御様子で。



「あら、御免なさい」


「あ、此方こそ失礼しました」



 他人に敵意を抱かせない当たり障りの無い笑みを浮かべ、悠々と人の合間を縫い進み続けた。



 どうする??


 一度、声を掛けるべきか??


 だけど……。


 少なくなったとは言え、まだ大勢の人集りが居るので。もしも、彼が暴れたら客人達に被害が及ぶやも知れぬ。



 様子を見続けるか……。



 彼が豪華な服を着熟す淑女の背後に回り一旦姿を消失し、その後。俺の予想した進路に現れるかと思いきや。





 ――――――。



 えっ!?


 何処に行った!?



 人集りの中にその存在を消失させてしまった。



 やっべぇ!! 見失ったぞ!!




『皆!! 聞いてくれ!! 今から話す容姿の男性を探してくれ!! 年齢二十代後半から三十代前半。中肉中背、式典が始まった時に配布された酒のグラスを左手に持つ。上等な黒色の背広を着用し。顔の特徴はやや細い眉に、当たり障りのない笑みを浮かび続けている!!』




 室内に居る三名へと念話を送り、人集りの後方からその人物を特定しようとするのだが。




『此方からは確認出来ません』


『同じく。ユウ、見える?? あんた目が良いでしょ??』


『ん――。居ない、な』



 おいおい。


 一体どうなってんだ??


 俺が見付けた男性はゆ、幽霊だと!?


 そんな馬鹿な!!



 俺だけが見える訳ないだろ!! さっきの淑女だって確知出来たのに!!



『頼む!! もっとよく探してくれ!!』


『何慌ててるのよ。相手はたかが人間でしょ?? 横着したらちゃちゃっと捕縛すればいいじゃない』



 俺達を狙うのならそうだけど、彼が狙うのは人間なんだ。


 形容し難い不安が募り、忙しなく視線を動かし続けていると。





 黒い塊が人集りの中から猛烈な勢いで飛び出て来た!!!!






 野郎!!!!



 そこに居たか!!



 レシェットさんの左手側から此方の死角へと回り込み、彼女の右手側へと移動を終えていたのか!!



 俺が予想した速度よりも二回り速い速度で彼女へと向かう。


 右手を懐に仕舞い再び右手が現れると。その手には鋭く見事な刃面の短剣が握られていた。



 刺殺するつもりなのか!? 大勢の人前で!?






 やっべぇ!!


 間に合うか!?!?




「くっ!!!!」



 此方も懐に右手を仕舞い、他人から見られない様にして龍の力を解放。


 左足に激烈な力を籠めてその場から飛び出し、右足で着地すると同時。





 彼と、彼女の間に体を置いた。































「ちっ……」


「残念だったな。あんたの目論見は総崩れさ」



 左手を突き抜けた短剣が左脇を薄っすらと刺し。


 手と胴体、同時に痛みが発生するものの。それを堪え、精一杯の嫌味を言ってやった。



 何て踏み込みの速さと鋭さだ。


 これが……。人間の動きか??



「ふんっ。運の良い奴め」



 お生憎様。運では無く、実力だよ。


 いや、俺では無く。後方のレシェットさんに対して吐き捨てたのかもな。



「ぐぁっ!!」



 彼が下がると体内に循環する液体が噴出し。



「きゃあああああああああああ!!!!!!」



 それを見付けた淑女が大絶叫を上げた。



「何だ!? どうした!?」


「あ、あの人が刺したのよ!!!!」


「何だって!!」



 数十名の男達が彼を取り囲み、退路は塞がれ。


 万事休す。



 だが、彼は窮地を脱しようと血に塗れた短剣を握り締め。最大の脅威である俺の瞳を睨みつけた。


 俺を倒して突破口を開こうって算段だろうが…………。





「掛かって来い。逃げられない様に四肢を全てへし折ってやる」



 腰に装備する短剣を使用してもいいけど……。


 不殺を心掛けなきゃな。


 誰に雇われたのか、問い詰める必要があるし。




 体は攻撃に備えて斜に構え、左手は相手の攻撃を往なす為に顎の下に置く。


 そして、激烈な攻撃を与える為の右手は左と同位置!!


 師匠と同じ構えを取り。


 不退転の姿勢を貫き、やれるものならやってみろと。闘志を燃やして対峙した。




「ふんっ!!!!」



 来たっ!!


 最短距離を突き進み、俺の急所を目掛けて鋭い切っ先が襲い掛かる。


 熟練された技と軌道。


 素晴らしいの一言に尽きるが……。



「甘いっ!!」



 左手で短剣を持つ相手手首を往なし。



「くらぇぇええええええ!!」



 龍の力を解いた人間の右手で相手の脇腹へ、乾坤一擲を見舞ってやった。



「ごはぁっ!!!!」



 手応えありっ!!


 彼の体内から骨が折れる乾いた音と、肉が弾ける音が響き勝利を確信……。



「ふっ!!」


「っと!!」



 あぶねぇ!!


 肋骨数本じゃ、奴の抵抗力を奪えないか!!



 切っ先が頬を掠め、ピリっとした痛みが己の甘さを痛感させてしまった。




「「…………」」




 俺達を囲う、人集りの輪の中。


 奴と対峙しつつ、お互いの体で円を描きながら移動する。



 彼が放つ圧が硬い唾液を分泌させ、喉の力を振り絞ってそれを体内へと送り込む。



 糸を張り詰めた緊張感の中。


 彼の構えをじっくりと観察した。




 此方の行動に合わせて、咄嗟に対処出来る様に左手を甘く開き。 


 されど。


 右手に持つ短剣には明確な殺意が籠っている。



 すげぇ……。この人……。



 俺が甘く踏み込んだら此方の攻撃を全部華麗に捌き、確実に命を刈り取ってしまうであろう。


 マイ達と共に切磋琢磨していなきゃ、初手でやられていただろうな。



 互いの体で円を描いていたのだが、その直径が徐々に狭まる。



 彼が放つ殺意が体内の五臓六腑を締め上げ、嫌な汗がじわりと全身の肌に滲んでしまった。



 く、来るか!?



 彼の重心が僅かに低くなった刹那。


 俺の予想以上に低い軌道を描き、此方の間合いへと苛烈に侵入を開始した!!!!



「はぁっ!!!!」



 大地から昇り来る一撃を、上体を反らして躱し。



「ふっ!!」



 袈裟切りの要領で此方の左肩から振り下ろされる二撃目を見切り、左足を後方へと置いて躱す。



「あぁっ!!!!」



 俺の胴体を狙いすました三撃目!!


 此処で勝負を仕掛ける!!



「貰ったぁ!!!!」



 右の拳を下方から突き上げ、彼の硬い顎へと着弾させ。



「ぶぁっ!?!?」



 彼の体が堅牢な大地から引っこ抜かれ、ピンっと伸びる。



「止めだぁあああ!!」



 返す刀の左拳で彼の胴体をぶち抜き、木の床へと叩きつけてやった。



 どうだ!?


 今度こそ手応え十分だぞ!?



「…………」



 床に叩きつけられた体は微動だにせず。


 人知れず、肩の力を抜いて勝利を確信した。




 はぁ――――。


 いや、本当に強かった!!


 こうした状況でなければ何度も手合わせを願いたい程ですよ。



 さて、捕縛して誰に雇われたかと問うとしますかね。



 今も静かに横たわる彼の下へと歩み寄って行くと。



「……くっ。うぅぅぅっ!!!!」



 何と、立ち上がるではありませんか!!


 嘘だろ!?


 まだ立つのかよ!?



 痙攣する足を必死に御し、血だらけの口元からは今も深紅の液体が零れ続けている。


 満身創痍。


 それなのに、何が一体彼を奮い立たせるのか。



「き、貴様……。ど、何処でその様な実力を得た」



 数本欠け落ちた歯の隙間から吐血しながら此方へと問う。



「訓練所、並びに仲間と共に切磋琢磨した結果です」



 彼の目を真っ直ぐに捉えて話した。



「――――。ふっ、呆れる位に真っ直ぐな瞳だな」



 右手に持つ、鋭い鷹の目が柄に刻印された短剣を床に捨て。殺意が消失した武人足る力強い瞳で俺を捉えた。



 良い目をしている。


 強き者が宿す力が瞳の中に現れた様だ。



「その強さを、我々に捧げれば。もっと高みへと登れた、のに……」


「そこまでです。貴方を捕縛し、殺人未遂に付いて問います」


「ふ、ふふっ。やっと……。これで……。解放されるんだ……」



 解放??


 何を言っているんだ、この人は。



「あ、有難う。俺を倒して、くれて。お前の様な強き者に巡り合えて……。俺は幸せ者だ……」



 そう話すと。


 事切れたように両膝を床に着け、ガクっと項垂れてしまった。



 降参、するのか??



 だが、彼は此方の予想に反し。


 左手を懐へと忍ばせ、透明な小さな小瓶を取り出し。蓋を開け、中身を一気に飲み干してしまった。



「――――――――。カッ!! クゥゥ!!!!」



 己の喉元を掻き毟り、口から泡を吹き出すと地面へと倒れ込み。



「アァァァアアア!!!! ア…………。ぁぁ……」



 最後は無意味に床を掻き続け、絶命に至った。




 自分で命を絶ったのか……。


 そこまでして情報を外部に漏らしたくないのか?? だとしたら、彼の背後には一体何が……。



 近付き、死体の様子を窺おうとすると。




「レイド!!!!」



 背後からレシェットさんの震えた絶叫がこだました。



「はい?? どうかなされました??」



 右手で左手の出血を抑えつつ振り返ると。



「っ!!!!」



 彼女の端整な顔が、血の気がサっと引いたものへと変化してしまった。



 出血するのを見た事がないのかしら??


 こんな短剣に貫かれるよりも、師匠や。エルザードの攻撃の方が万倍も痛かったからなぁ。



 あ、勿論。激痛ですよ??


 左手も脇も。




「だ、大丈夫なの!?!?」


「え、えぇ。短剣で貫かれただけですから」


「見せなさい!!」



 いや、傷口を見たらか弱い女の子は卒倒するんじゃないのかな??



「人の怪我を見ても得する事は……」


「早く!!」


「あ、はい」



 彼女の剣幕に押され、左手を差し出すと。



「うわっ……。酷いっ……」



 まるで己の傷口を見るかの様に、きゅっと目を丸くされてしまった。



「レイド君!! 大丈夫だったかい!?」


「ベイスさん!! えぇ、無事です。ですが……。犯人を捕らえる事は叶いませんでした」



 此方の状態を確認する為に駆けつけてくれたベイスさんから。



「貴様ら!! それ以上近付くな!! この死体は警察に提出する大事な証拠だからな!!」



 タンドア議員が取り締まる現場の上に転がっている遺体に視線を送った。



「いや、驚いたよ。急に黒い何かが接近しかと思いきや……」


「余程の手練れでしょうね。私も相手が接近するまで気が付かなかったので……」



 一体何者だ??


 何処で、どう習ったらあの動きを習得出来るのだろうか。


 それに、己の命を絶ってまでも渡せない情報。


 俺が考えている以上に闇が深いのかもな……。




「レイド。動かないでね??」


「はい?? ぃっっ!!!!!!」



 新鮮な水で傷口を洗い流し。


 レシェットさんが胸元から取り出した純白のハンカチで左手の出血口をキチンと縛ってくれた。



「い、痛かった??」


「痛みがある内は大丈夫ですよ。しかし……。圧迫止血は何処で習ったのですか??」



 見事な手際に思わず唸ってしまった。



「習っていないよ?? 適当に縛っただけ」



 お、おぉ……。


 左様で御座いますか。



「も、もう大丈夫かな??」



 彼の様な暗殺者が周囲に存在しているのではないかと。


 慌ただしく周囲へと視線を送り続けている。



「レシェットさん?? 大丈夫ですよ。彼は単独犯です。複数犯であるのなら、最初の一撃で確実に刺殺しようと試みる筈ですので」



 あれだけの手練れを複数相手にする自信は、正直ありません。


 良かったぁ……。単独犯で。



 綺麗な右手で彼女の頭をポンっと優しく乗せてあげると。



「あのねぇ……。飼い犬が飼い主の頭を撫でてどうすんのよ??」



 いつも通りの笑みに変化してくれた。



「その調子ですよ。――――――――。えっと……。廊下の件は申し訳ありませんでした。此方も少し言い過ぎました」



 この勢い、流れに乗って……。


 じゃあ無いけども。


 先の、己の失態について謝罪を述べた。



 再び叱られるかと思いきや。



「あ、うん。良いよ。私もちょっと言い過ぎたし……」



 あっれ??


 俺の予想とは正反対の答えが返ってきましたね。



「ごめんね?? レイド。それと、有難う……。身を挺して守ってくれて」



 女性らしい柔らかさを持つ手で、負傷した左手を優しく包み込みながら此方を見上げる。



 しっとりと艶やかな唇。


 そして思わず触れてしまいたくなる、金色の髪。



 継承式典を終え、大人の階段を上り始めてしまったのか。


 この数時間で随分とまぁ、大人の色香を装備してしまいましたねぇ。



「「…………」」



 互いに手を取り合い、言葉も交わさず見つめ合い続けていると……。




『おっしゃ!! 怪我人は治療だよな!!』



 ユウが俺の右腕をむんずっと掴んで、強制的に移動を開始させてしまった。



『それとぉ。今のぉ、ヨクナイ雰囲気についてぇ。釈明して貰うからねぇ』



 その移動中。


 憎悪の炎を宿した瞳で俺を睨みつける女性とバッチリ目が合ってしまった。



『何だよ、その雰囲気って。後、ユウ!! 自分で歩けるから!!』


『駄目だね。手を離した隙に逃げそうだもん。そうだよな?? カエデ』


『その通りです。マイが話す通り、レシェットさんとの会話内容について、尋問させて頂きます。返答次第では…………。分かっていますよね??』



『は、はい……』



 熟練した技を持つ暗殺者よりも、この三人の方がおっかないよ……。


 様々な感情が残り、渦巻く会場を後にし。


 一路、大変な恐怖が待ち構えている廊下の闇へと引きずられながら向かって行った。



最後まで御覧頂き有難う御座いました。


深夜の投稿になってしまいまして、申し訳ありません。


それでは、皆様。


体調管理に気を付けてお休み下さいね。

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― 新着の感想 ―
[良い点] だいぶレイドも強くなりましたねぇ。 序盤と比べるとかなり変化した事が 色々な所から伝わってきますね。 [気になる点] 脱字は報告をあげたのですが、 「もの」「もん」どっちか分からなかったの…
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