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第二十五話 彼の勇気 その一

お疲れ様です!! 本日の、前半部分の投稿なります!!


それでは御覧下さい。




 父の大きな背中に続き、ちょっとだけ五月蠅い心の音を宥めながら会場へと舞い戻ると。



「「「っ!!!!」」」



 再び万雷の拍手が私達二人を迎えてくれた。



 一々拍手で迎えてくれなくてもいいのに……。嬉しいのは嬉しいんだけど……。



 私が彼の腕を取って出て行くのを見られちゃったのよね??



「「「……」」」



 ほら。


 ユウさん達もじぃっと私の顔を窺っているし。



 自分の失態を思い返すと、どうにも出来ない熱が頬の奥でぽっと発生し。悪戯に顔をじんわりと温めてしまった。




「さ、行こうか??」


「うん……」



 父が大きな手で私の手を優しく掴むと、式場奥に併設された壇上へと誘う。



 その間、自分でも馬鹿らしくなる程。


 無意識に視線が彼を追い求めてしまっている事に気付いてしまった。



 レイド……。


 まだ着替え終わっていないのかな??



 さっきの事、先に謝ってから挨拶をしたかったんだけどなぁ……。


 有耶無耶な心のまま壇上脇に到着し。



「頑張って」


「うん。行って来ます」



 父に見送られ、壇上脇の階段を上り。


 会場内の視線を一手に集めた。



 わっ……。


 こうして注目されるのって……。凄く緊張するな……。



 満面の笑みを浮かべるお年を召した方や、酒の効能が如実に顔に表れてしまった青年、そして。



『頑張れ――っ!!』



 そう言わんばかりにヒラヒラと此方に向かって手を振るロレッタ。


 数百を越える瞳の力は凄まじく私の体を貫通し、心の奥まで突き刺さってしまった。




 あ――。も――!!


 折角覚えた台詞が飛んじゃったじゃん!!!!



 どうしよう……。


 頭の中が真っ白だ。



「「「…………」」」



 と、取り敢えず。


 沈黙を決め込み、私の言葉を待つ皆に初めの挨拶を述べましょうか。




「皆様、こんばんは」



 うっわ。


 何よ、今の挨拶。


 ガッチガチに緊張しちゃっていますよ――って声色じゃん!!




「本日は遠路はるばる我が屋敷へと御足労頂き、真に有難うございます」



 そう話し終えると、数百の瞳から逃れる様に静々と頭を下げた。



 つ、次の台詞はぁ……。


 何だっけぇ!?


 随分と長いお辞儀で時間を稼いで……。お願いだから台詞が出て来ます様に!!


 祈る想いで面を上げると。




「……………………」



 数百を越える人集りの中から、そして広い式場内で。彼を捉えることに成功してしまった。


 しかも、ものの数秒で。




 此方から見て左の扉から似合わない背広を着用して、周囲に気を配る様におずおずと入って来た。



 あはっ!!


 居たっ!!



 お酒を洗い流したのか、妙にしっとりした黒い髪。


 ちょっとだけきつそうな背広の肩幅と胸元相手に、時折苦しそうに体をゴワゴワと動かしている。



 馬子にも衣裳だよなぁ――……。でも、ちょっと素敵だよ??



 私と同じ想いを抱いたのか。


 ユウさんがレイドを見付けると。



「っ!!」



 バシバシと嬉しそうに彼の肩を叩いてしまった。



 いたそ――。


 でも……。うん。


 何か緊張が解けた。



「本日は我がアーリースター家の継承式典になりますが……。私自身は、大変未熟であると自負しております。それは年齢も然る事ながら、経験不足を拭い去る事が今後の課題であると私は考えております。そして……」



 あぁ――。


 どうしよう……。


 言葉はスラスラと出て来たのは良いけども。


 視線が彼を追ってしまう。



 壇上前に集まった人集りを避ける様に、弧を描いて私達の方へと進んで来てくれる。



 良かった。


 私を避けている訳じゃないんだ……。


 あ、でも……。


 仕事、だからか。


 そうだよね。彼にとって、私は仕事の対象でしかないんだ。そう考えるとチクンと胸が痛むよ……。




「大陸を覆い尽くそうと恐ろしい力を揮う異形の存在。私達は今こそ、一致団結して対抗すべきだと考えております。しかし、現実と理想の間は乖離し。様々な問題に我々は直面しています」




 彼が壇上脇に到着し、空気と同化する様に立つと。




「…………」



 何だかぎこちない笑みを浮かべて此方に目配せをしてくれた。




 ぷふっ!!


 あはは!! 何よ、今の笑み!!



 励まそうとするのならもう少ししっかりした笑みを浮かべなさい。



「そ、そして……。コホンっ」



 ほら!!


 込み上げる笑いを堪えようとして嚙んじゃったじゃない!!



 後で御仕置だなっ。





 ――――――――。



 違うわね。先ずは謝罪が先だ。




 彼が傍に居てくれるだけで力が湧いて来る。


 どんなに緊張しても解き解してくれる。


 飼い犬って凄く大事な存在なのだと、まざまざと感じてしまった。




 よし!!


 これで最後の締めの台詞だ!! ちゃんと聞きなさい!! 皆の衆!!




「今回の継承式典は通過儀礼的な意味を含みます。ですが……。 私がこの素晴らしい家の名を継いだ暁には国の発展に御助力出来る様誠心誠意務めさせて頂きます。それは、まだ先の話になるかも知れませんが。その時までどうか、皆様。我々を温かい目で見守りそして、至らない時があれば是非ご指導ご鞭撻の程宜しくお願い致します」



 言えたぁ!!



 長い台詞を言い終え、確と頭を下げると。



「「「「「っっ!!!!」」」」



 室内の大気を揺れ動かす程の、今日一番の拍手が沸き起こった。



 わっ、わっ……。


 恥ずかしい!!


 さっさと降りちゃおう。



 ポッポッと火照る熱い顔を引っ提げ、彼が居る壇上脇へと進んで行った。





「――――――――。見事な御挨拶でしたよ」



 彼がそう話すと。



「っ」



 灼熱の炎が顔の中から発生してしまった。



 あ、あっつぅ!!!!


 な、何、コレ!?


 人間の顔ってこんなに熱くなるの!?



 嬉しさ、そして僅かな後悔。


 色んな感情が再び胸の中で渦巻き、制御不能な大炎が迸ってしまった。


 嫌いじゃない熱さだけど……。


 彼に見つめられると体内から出火して、周囲に延焼させてしまう恐れがあるから視線を反らしちゃおっ。



 ぷいっと視線を反らし。


 今も拍手が方々で起こる集団へと顔を向けた。



 ごめんね??


 今は顔が熱すぎて謝れないけど。冷ました後でちゃんと謝るからね??



「レシェット様。皆様へご挨拶を……」



 挨拶用の笑みを浮かべていると、アイシャが人集りの前へと誘う。



 まだ挨拶しなきゃいけないの??


 全く……。


 一回で済ませられる様に、もう少し上手く出来なかったのかしらねぇ。


 駄犬との戯れる時間を作りたいのに。




「分かった」



 愚痴を零しても解散する訳じゃないし。


 パパっと捌いて帰って頂きましょうかね!!


 いつもの冷静さを失わない彼女の後に続き、壇上前へと歩み始めた。




最後まで御覧頂き、有難うございました!!


引き続き、編集作業を続けますので。今暫くお待ち下さい……。

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