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今日も今日とて、隣のコイツが腹を空かせて。皆を困らせています!!   作者: 土竜交趾
過去編 ~素敵な世界に一時の終止符を~
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第二百二十話 新たなる不穏な影の匂い

お疲れ様です。


本日の投稿になります。




 手の届きそうな距離から鼓膜に届く鉄同士が触れ合う打撃音、眩い光を放つ魔法陣から解き放たれた火球の燃え盛る破軍の音、そして神々が住まう天にまで轟く戦士達の雄叫び。


 私が想像していたよりも戦場には数多多くの音が溢れ返っていた。


 戦場に鳴り響く音の一つ一つが混ざり合いそして互いを装飾して戦場に渦巻き始めると私の心の中に灯る闘志を沸々と温め続ける。


 業火にまでは至らなくとも私の闘志の炎は既に日常のソレとはかけ離れており炎の熱量に駆られる様に右手で掴む剣に力を籠め、私が倒すべき敵と改めて相対した。



「ちぃっ、餓鬼の分際で手こずらせやがって……」


 黒が濃い虎色の髪の女性が私の顔を確と捉えながら口を開く。


 瞳の中は憎悪の炎が渦巻き体に纏う風は秒を追う毎に強烈になり、そして彼女の周囲に舞う風の刃は此方の侵入を拒む様に不規則に乱れる。


 鍛え抜かれた戦士が放つ圧や覇気、闘志を直接体に当てられると無自覚の内に後ろ足加重になってしまう。



 この姿を見たら先生はきっとお叱りになるのでしょうね……。


『こらっ、フォレイン。貴女はもっとちゃんとしないと駄目でしょう??』 と。


 自分でもそれは十二分に理解していますけどまだまだ未熟である私には分不相応の戦場だとは思いませんか??


 それ相応の敵を用意して欲しかったのが本音ですわ。


「あら?? 如何致しました?? 今から休憩なので??」


 正面の敵から放たれる圧を受け流し、飄々とした声色で問う。


「テメェの飄々とした態度もその余裕な口調も苛つくんだよ。追い詰められているのは自分だとまだ気が付かないのか??」


「御安心下さいませ。私は貴女に及ばないかも知れませんが他の方々が私以上の働きを見せてくれますので」



「ギャハハ!! おいおいどうしたよ!? 二人掛かりで俺様一人も倒せないのかぁ!?」


「す、素早過ぎて攻撃が当たらない!!」


「このチビ助!! ちょこまか動いていないで男らしく戦いなさいよね!!」


「誰が豆粒ドチビの助だごらぁ!! テメェの中途半端な双丘をまっ平にしてやんぞ!!!!」


「キャァァアアア!?!? 服の中に入って来ないでぇ――!!!!」


 随分と離れた位置からフウタ先生の覇気ある声と首を傾げたくなる可笑しな声が戦場にこだまして友を鼓舞し。



「オラァァアアアア――!!!! じゃんじゃん掛かって来い!! 私がぜぇぇんぶ焼き払ってあげるわ!!!!」


「あっつぅううう!?」


「アチチッ!! 炎を吐くなんて卑怯じゃん!!!!」


 頭が大変悪く身体能力のみに特化した龍が襲い掛かる敵に対して炎を放射すると戦場の熱を更に上昇させ。



「さぁどうした!? 俺は此処に居るぞ!!」


「「「ワァァッ!?!?」」」


 直ぐ近くに居るハンナ先生が三名の敵から放たれた斬撃を見事に捌き、受け止めると戦況が此方にグっと傾き始めた。



 フウタ先生とフィロは二体の敵を、ハンナ先生はたった一人で三体を。


「後ろ!! 貰ったぁぁああああ!!」


「ぬぅっ!?」


「そこの馬鹿龍!! 攻撃ばっかに集中してないで偶には自分で身を守れ!!」


「あはは!! エルザード結界有難うね――!! 後でヨシヨシしてあげるからぁ――!!」


「要らんッ!!!!」


 そして隊の最後方からは大変頼れる指揮官擬きの素晴らしい援護魔法が私達の戦いを優位に進めている。


 各々が果たすべき役割を見事にこなし戦況は徐々にだが此方に傾いていた。



 各自が健闘する中で私が果たす役目と言えば精々敵の足止め程度。


 ハンナ先生の負担をこれ以上増やす訳にはいきませんからね。


 彼の存在はこの戦場の中で途轍もなく大きい。万が一、それを失えば此方の分隊は速攻で崩れてしまうでしょうから。



「けっ、弱い分際で戦況が良く見えているな」


「お褒めの言葉、有難く頂戴致します」


「さっさとお前をブチ倒してこの戦場を制してやる!!」


 さぁ、来ますわよ?? 相手に気圧されても集中力を決して切らず、闘気を当てられても相手の一挙手一投足を見逃すな……。


 ハンナ先生やダン先生から指南して頂いた戦いの極意を胸に秘め、今にも後退してしまいそうになる弱き自分を戒めると敵の攻撃に備えた。



「食らえぇぇええええ――――ッ!!!!」


 敵が愚直な踏み込みで私の間合いに侵入を果たすと上段から袈裟切りの要領で切り付けて来る。


 鉄が空気を撫で斬る甲高い音が闘志の炎を刹那に揺らし、殺意の籠った瞳が臆病な私を大いに刺激した。


 この斬撃を真面に受け止めたら恐らく後手に回り、確実に殺されてしまいますわね。


「ふっ!!!!」


 防御よりも回避行動を優先させ、上空から襲い掛かる斬撃を回避すると敵から見て右側へと飛び退く。


「さっきから同じ行動ばかり繰り返しやがって!! その動きは何度も見たんだよ!!!!」


 敵が激昂した雄叫びを放つと右手に握り締めた細剣の柄を器用に動かし、私の回避行動を追う様に斬撃を放った。



 人体を絶命させるのには頭部や首を刎ねれば良いのですが相手も黙ってそれを受け止める訳では無い。


 己の命を散らさぬ様に、輝かしい勝利を掴み取る為に防御行動や回避行動を取るのは言うまでもない。


 胴体に比べると頭部や首は随分と小さな的。更に相手が動き回れば更にそれは矮小になって行く。


 小賢しい行動を取り続ける敵を捉える為にはどうすれば良いか??


 その答えは至極簡単だ。


 そう……。人体の中で一番大きな的を狙えば良いだけの話なのです。



 柔らかい砂が無数に存在する砂浜の上に着地するとほぼ同時。



「くっ!!」


 私の胴体に襲来した刃を受け止める事に成功したのだが敵が身に纏う風の刃だけは防げず、幾つかの風刃が私の肌を傷付けてしまった。


 掠っただけでも衣服を切り裂き、肌を傷つける威力は真に厄介極まり無いですわね。


 直撃すれば死を免れない斬撃を受け止めた勢いでその場から後方に弾き飛ばされてしまった。



「わはは!! おいおい、随分と軽い体だなぁ??」


「この体はまだまだ発展途上で御座いまして……。私は貴女の体が羨ましいですわ」


「ハハ!! そうか!! 私は幼い頃から修練に励み……」


「平均以下の標高の双丘を持つ体でしたら動き易いですよねぇ。私、貴女の様な平均以下の胸の大きさを持ちたかったですわ」


「テメェ!! 殺されてぇのか!? ああ!?」


 ふふ、直情型で本当に助かりますわ。相手が思考を凝らす敵でしたらこうはいきませんもの。


「餓鬼を殺すのに躊躇していたがもう容赦はせんぞ。確実にテメェを殺す……」


 顔を真っ赤に染めた敵が激昂すると体に纏わり付く風の刃が感情と同調する様に激しく動き回り、更に彼女の体から放たれる風の圧も勢いを増して来た。


 只、力を解放しただけなのに相手を圧倒する姿に私は静かに固唾を飲んで身構えた。



 全く、たった一体の敵を倒すのにこうも苦労をするとは思いませんでしたわ。


 やはり私は…………。姉が言った通り出来損ないなのかも知れませんわね。


 全てを器用にそして見事にこなす姉に対し、私は彼女の劣化版だ。


 何をするのにも姉以下の効用しか生み出せず私は彼女の溜息を只々買い続けていた。



『お母様が認めても私は貴女を認めない』


『どうしてこんな簡単な事が出来ないのかしら』


『正当な血を受け継ぎこの世に生まれ落ちたのにも関わらず自ら地面に膝を着くとは……。貴女は一体何の為に生まれたの』


『その白き髪が憎たらしい。どうして私の髪は白くないのよ……』



「ハァァアアアア!!!!」


 相対する敵の激昂する姿が私の目標である姉の顔に被ってしまう。



 私は姉を見返す為では無く九祖の力を受け継ぐ者として恥じぬ生き方を覚えたいが為に里を出た。


 それにも関わらず何故、敵の姿が姉に見えてしまうのだろう??


 それは恐らくもう一人の卑しい私が敵と姉を重ね合わせ、切り伏せろと叫んでいるのでしょうね……。


 私はどんな酷い仕打ちをされても姉を愛し、敬い、そして目標としているのです。


 それが家族であり血を分けた姉妹の絆だから。



「さぁ、これで終わりだ。テメェを切り刻んで魚の餌にしてやる!!!!」


 たった一人の敵も倒せない弱い私、意気地無しな私、そして己の血の運命に抗えない情けない自分と決別する為。


「ッ!!」


 私は両手に万力を籠めて剣の柄を握り締めた。



 さぁ掛かって来なさい!! これまでの弱い私と別れを告げる為に今日此処で貴女を倒します!!!!



「ダァァアアアア――――ッ!!!!」


 先程の突撃よりも更に速さを増した速度で私の懐に潜り込んで来る。


「くっ!!」


 攻撃の起こりを抑え込まれた私は敵の剣撃が放たれる前、先程と同じ回避行動を咄嗟に取った。


 両足に力を籠めて相手から距離を取り敵の攻撃の間合いの外へと逃れる。


 私の行動は傍から見れば完璧な回避行動に映るのだが、どうやら彼女は私の行動を見透かしていた様ですわね。


 憎悪の炎が渦巻く瞳が完璧に私の体を捉えていますもの。



「テメェは私に動きを見せ過ぎた。じゃあな」


 相手の攻撃を嫌がる様に飛び退く私の胴体に目掛けて乾坤一擲となり得る斬撃が追撃を開始する。


「ッ!!」


 そして鉄が衣服を切り裂き、己の肌に鉄特有のヒヤリとした感触を掴み取った刹那……。



「なっ!?!?」


「ふふっ、蜘蛛一族は狡猾で有名であると知らなかった様ですわね」


 地面の至る所に隠していた蜘蛛の糸を集結させて敵の刃と体を拘束してあげた。


「こ、こんな糸!! 私の剣と風で……」



 私は弱い、出来損ない、何も出来ない役立たずと常々姉に言われて来ました。


 しかし!! そんな無価値な私でもこの大好機を逃す程愚かではありませんわ!!!!


 多方向からの糸の拘束によって雁字搦めになっている敵の背後へと素早く移動。



「これで幕引きです!!!!」


 巨大な隙の香りが漂う背に向かって己の魂を乗せた一撃を見舞ってやった。


「ギィィアアアアッ!?!?」


 剣の切っ先が敵の肌を切り裂くと服の間から大量の血飛沫が舞い上がり、私の頬を怪しく濡らす。


 生温い液体の感触は心地悪い処か、大変甘美に感じてしまった。



 これが勝利の美酒というものなのですね。初めて知りましたよ。


 私の命を奪おうとした敵に対して情けは無用。


 冷血な姉は右手に持つこの刃を敵の背に突き立てるでしょうが、生憎私の血は誰よりも温かいのです。



「有難う御座います。貴女の御蔭で私はより強くなれましたわ」


 背中に迸った衝撃で気絶した敵の姿を再確認すると彼女の傷口を蜘蛛の糸で縫合して出血を収めてあげた。


「ふぅっ、何んとか勝利を飾れましたわね」


 初陣はフィロに手柄を取られてしまったが初めての本格的な実戦を勝利で飾れたのは後の糧になる事でしょう。


 さて、勝利の余韻に浸るのは此処まで。



「ンガァァアア!! うざってぇ!! 背中に乗ってくんなぁ!!」


「誰だって炎で焼け死にたく無いし!! 死角に逃げるに決まっているでしょ!?」


 背に纏わり付く虫を払う様。


 無意味に尻尾を左右に振り回している龍の援護に回りましょうか。


「ふふっ、何だか滑稽な姿ですわね」


 このまま傍観してあげても良かったのですが友を見捨てるのは御法度なのです。


 マリル先生の教えに従いお馬鹿な龍の戦場に向かって進み出した刹那。



「……??」


 暗闇が蔓延る森の影の中に違和感を捉えた。


 何ですの……。この嫌な感覚は。


 善戦を続けるフィロに向かって進もうとする足を止めるとその正体を探る為に森へと視線を向けた。


「……」


 龍が放つ炎の明かりによってある程度森の中の様子は窺えるが、此処から目測で十五メートル程離れた森には相も変わらず暗き闇が跋扈している。


 目をキュっと細めてその闇の中を観察しているとその闇よりも深い殺意が私の胴体を穿った。



「ッ!?」


 殺意の波動が私を穿つと同時に深き森の中に二つの獣の目の光が浮かび上がり、その二つは私の体を確と捉え続けていた。


 あ、新手!? ま、不味い!! 防御態勢を……。




「クフフっ。はい、お終いっ」


 新たに現れた敵が化け物級と言わざるを得ない速度を保ったまま地面を這う様に私の懐に侵入を果たすと、右手に持つ本当に細い剣の切っ先を私の心臓目掛けて穿ってしまった。



 あ、駄目だ。このままじゃ間に合わない。


 この細く鋭い切っ先が私の心臓を穿てば恐らく絶命は免れないでしょう。


 刻一刻と接近する敵の刃を視覚で捉え続けていると脳裏にこれまで得た輝かしい思い出の数々が浮かんでは消えて行く。



『あはは!! フォレイン!! 貴女の分も私が食べてあげるから!!』


 お馬鹿龍の屈託のない笑み。


『むぅっ……。どうしたらばかダンの様に上手く動けるのじゃろう』


 狐のお子様の困った顔。


『ちょ、ちょっと先生!! この術式の課題の量は洒落にならないって!!』


 真の驚きを示す淫魔の顔。


『シュレン先生。んっ』


 そして幼きラミアの本当に優しい笑顔。


 決して失いたくない私の思い出の数々が強烈な輝きを放つものの、現実の死は遅々足る速度でありながらもその直進を停止する事は無かった。



 これが所謂走馬灯という奴なのですね。


 走馬灯が見える時は現実世界の時間の進み方が遅くなる。


 所詮は眉唾ものであると思っていましたが……。本当に現実世界の速度がゆっくりと移動している事に驚きを隠せませんよ。



 御免なさいお姉様、お母様、里の皆。不出来な私は敵の攻撃も躱す事も出来ずにこの世を去ってしまいます。


 先に逝く情けない私をどうか許して下さい……。生涯の友よりも家族や里の者達に対する詫びの言葉が脳裏に過りそして……。


 漆黒の刃が遂に私の胸を突き刺した。







































「第七の刃!! 雷轟疾風閃らいごうしっぷうせん!!!!」


「ッ!?」


 直ぐ近くの砂浜に稲妻が直撃した様な鼓膜をつんざく轟音が迸ると私の体は猛烈な音の波動と風の勢いによってその場から弾き飛ばされてしまった。


「ケホっ……。い、一体何が……」


 眼前に立ち昇る砂塵の分厚いカーテンが海から届く微風によって微かに薄れて行く。


 そしてその中から現れた一人の男性の背中に私は思わず魅入ってしまった。



「……」



 双肩から滲み出る魔力の圧、体全体に纏う覇気。それは正に戦乱蔓延る世界からこの世に舞い降りた一体の修羅だ。


 右手に掴む剣には今も激しい雷の力が宿りとても、とても大きな男の背中は微動だにせず私にこう語りかけていた。


 まだ戦いは終わっていない、と。



「フォレイン、大丈夫か」



「っ!!」


 私の命を悪鬼羅刹から救い出してくれた彼が正面を見据えたまま口を開くと、私の心臓は痛い程激しく鳴動を始めてしまう。


 そして無意識の内に意図していない言葉が口から飛び出てしまった。



「ハンナ様……」


「む?? ハンナ様??」


 はっ!! わ、私とした事が!!



「い、いえ!! ハンナ先生!! 救って頂き有難う御座います」


 いけませんわね!! 戦いの最中ですのでしっかりしませんと!!


「姑息に蠢き続けていた敵の存在を察知したのは俺とフウタ、そしてフォレインお前だけだ。良く敵の存在に気付いたな」


 彼が鋭い瞳で此方を横目でチラリと捉える。


 たったそれだけの行動なのに心臓の音が外に聞こえてしまうのでは無いのだろうかと有り得ない妄想を掻き立てる程に強烈に鳴ってしまう。


「気付いていたとしても対処出来なければ意味があ、ありませんわ」


「ふっ、そう謙遜するな。誇れ」


「は、は、はいっ。有難う御座いました」


 胸の中央辺りを右手でキュっと抑えつつ私を救ってくれたハンナ様……。基!! ハンナ先生に感謝の言葉を伝えてあげた。



「あはは、貴方。滅茶苦茶速いですよねぇ」


 私の命を奪おうとした敵が剣を握り直してハンナ先生と対峙する。


「折角、労せず殺そうとしたのに。どうして邪魔をするんですかぁ??」


「あそこで馬鹿騒ぎをしている男を除き、俺はこの場に居る者共を預かっている。貴様が手を出すのなら容赦はせんぞ」


「ふぅん、貴方は指導者って訳ですか。こっちの戦力も残り僅かですし、さっさと片付けちゃいましょうかね」



 敵の新手が微かに腰を落として構えるとこれまで激しく鳴り響いていた心臓が更に拍動の回数を増してしまった。


 な、何ですの……。あの馬鹿げた殺意の塊は。


 恐らく彼女が所在不明の幹部の一人に違いありませんわね。


 これまでの敵が可愛く見える程の強烈な力の前に私は素直に怯えてしまったのだから。



「フォレイン」


「は、はい」


「これから始まる戦いをよく見ておけ。必ずやお前の今後の糧となるだろう」


 ハンナ先生は強烈な力を持つ敵に対して一切臆する事無く堂々とした姿で剣を中段に構えた。


 あれが命のやり取りを行う本物の戦いを知る真の戦士の姿、ですか。



 その姿が何んと勇ましく見える事か、敵の殺意を受け止める体の背中が何んと大きく見える事か。


 必ず敵を倒して見せるという覚悟を持った一人の男性の後ろ姿に私は只々魅入ってしまう。



「分かりました。ハンナ先生の戦い、この目に確と焼き付けますわ」


「あぁ、そうするが良い」


 彼が冷徹にしかし私を労わる優しき声色を放つと一切の優しさを消失させた修羅が再びこの世に舞い降りた。



 ハンナ先生、私はこれから始まる戦いを己の脳裏に刻みいつか……、そういつか。貴方が居る高みへと昇りそして共に肩を並べて世界の広さを知りたいです。


 私は自分の弱さに募る苛立ちを誤魔化す様に地面の砂を強く握り締めつつ、目の前に立ち塞がる金剛不動の大きな背を見つめ続けていたのだった。





お疲れ様でした。


本話に出て来た蜘蛛のお姉様は第二部に登場予定です。現代編でも出て来なかった人物なだけにアレ?? っと思った読者様も居られると思いましたので一応報告させて頂きました。


さて、皆様。花粉症の症状は如何でしょうか??


私の場合は最悪に近い状況ですね。毎日、毎日鼻水が出て目が痒くなってしまいもう大変ですよ……。


薬で何んとか抑えていますがそれでも症状が軽くなる程度なので本格的に病院に通うかなぁっと思っている次第であります。


いいねをして頂き有難うございました!!



それでは皆様、良い週末をお過ごし下さいませ。

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