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今日も今日とて、隣のコイツが腹を空かせて。皆を困らせています!!   作者: 土竜交趾
過去編 ~素敵な世界に一時の終止符を~
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第二百十八話 毎度毎度、くじ運が悪い男 その二

お疲れ様です。


後半部分の投稿になります。




「誰だ!! 貴様達は!!!!」


「ままっ!! 警戒するのは御尤もで御座います!! あっしはしがない御用聞きで御座いましてぇ。商売するついでにこの島にふらぁっと立ち寄った次第でありやす。何か御所望する品はありやすか??」


 お得意様に対して揉み手をする様に体の前で両手をコネコネと合わせて二人の様子を窺う。


「え?? 何か売ってくれるの??」


 いやいや、お嬢さん?? こんな分かり易い嘘に馬鹿正直に引っ掛かるなよ。


「馬鹿!! そんな訳あるか!! こいつらは敵なんだよ!!」


「そ、そうだよね!! 色々買えるものかと思って損しちゃったじゃん!!」


 他人を信用し過ぎる女戦士が勝手に激昂すると左の腰に差してある細剣を抜き、御用聞き擬きである俺の体に鋭い切っ先を向けた。



「ふんっ、一体はバカそうで助かるわい」


 人の姿に変わったイスハが溜息混じりに話す。


「だな。俺が二人同時に相手をしてやってもいいけど……」


「わしはあのバカそうな個体を相手にする。お主は右の奴を相手にせい」


 はいはい、了解しましたよっと。


 何で生徒側から指示を受けなきゃいけないんだろう?? ちみはどちらかと言えば俺の指示に従う側ですぜ??


「俺達は島の中央で囚われの身となっている女王様を解放しに来た正義の使者なのだ。ってな訳でぇ!! 大人しくこっちの指示に従って貰えると物凄く助かるんだけど??」


 これが最終分水嶺だ。


 無駄な血を流したくない願いを籠めて問いかけるが相手は当然とばかりに此方の願いを却下した。


「敵に無抵抗のまま大人しく従えるか!! 貴様の首を刎ねて北側に応援へ向かうぞ!!」


「分かった!!」


 まぁ当然そう来ますよね!!


「イスハ!! 来るぞ!!」


「おおぅ!!」


 俺から向かって右側の個体が細剣の柄を強く握り締めると両足に力を籠め、砂塵を舞い上げながら俺の間合いへと侵入。



「ぜぁぁああああ!!」


「うおっとぉ!!!!」


 上段の構えから一気苛烈に細剣を振り下ろして来たので短剣の腹で女戦士の初手を受け止めてあげた。



 両の手の平から感じるジィンとした痛み、両腕から肩口に抜けて行く衝撃からしてコイツは本気で俺を殺すつもりで打ち込んで来たな。


 戦場に突如として現れた正体不明の敵に攻撃を加えるのは当然なんだけども普通、こんな人の良さそうな俺を初手でブチ殺そうとしますかね。



「中々の膂力では無いか!!」


 目と鼻の先にある剣の向こう側から女戦士のちょいと低い声色が届く。


「こちとらこれよりも強力な剣技に鍛えられているんでね。これ位の攻撃を受け止め切れない様じゃあ叱られちまうよ」


 いや、叱る処か無慈悲にぶん殴って来そうだよな。


『貴様ぁ……。一体何度言えばその馬鹿頭で理解するのだ!!』 ってな感じでね。


「私の一撃を受け止める膂力、剣筋を見極める眼力、それに此方の覇気に圧倒されない闘志……。ふむ、これなら楽しめそうだ」


 お前さんは一体何様なので??


 思わず首を傾げてしまう台詞を女戦士が吐くと剣を下げて俺から素早く数歩後退した。



 先手は打たれたけどもそれを難なく迎い打てたのはこれまでの戦闘経験と訓練の賜物であろう。


 血と肉が確実に成長している事に喜びを覚える一方で、もう一つの戦いを繰り広げている戦場にどうしても気を割いてしまう。



「せりゃああああ!!」


「へぇ!! お子ちゃまの割に結構強いね!!」


「だれがおこちゃまじゃ!!!!」


 付与魔法を駆使したイスハの左右の拳は女戦士の体を捉える事無く虚しく空を切り、続け様に追撃を仕掛けるものの相手は若干の余裕を持ってイスハの攻撃に対応している。


 余裕があるって事は戦いの中で幾つもの選択肢が生まれ、戦いを優位に進められる事を示唆している。ちゅまり、このままじゃあ狐のお子ちゃまは負けてしまう蓋然性があるのだ。


 こりゃ不味いな。こっちを早く片付けて向こうに助太刀しないとヤられちまうぞ。


 当て気に逸って時折大振りになるイスハの攻撃を捉えると俺の肝がヒュっと冷えてしまう風が吹いてしまうし……。



「あの娘は貴様の子か??」


 っと、いけね。先ずはこっちに集中しないと。


「いいや?? 俺に子は居ないよ。訳あってあの子を指導している立場にある、とでも言えば理解出来るかい??」


「成程。だから貴様と構えが似ているのか」


 相手に対して体を斜に構えて両の拳は肩口まで上げる。


 イスハも相棒と共に練り上げた基本中の基本の構えを取っているからねぇ。


「そういう事。さて!! こっちも続きと行きましょうぜ!!」


 相手の馬鹿げた速さに対応出来る様に軽く腰を落として構えた。



「勿論そのつもりだ!! 死裂風デスビーズ!!」


 これがマジで厄介だぜ!!


 単なる風の付与魔法による移動速度の増加だけじゃなくて、剣や体に纏う風の刃が本当に極悪極まりないったらありゃしない!!


「さぁ行くぞ!! 我が剣技を受けてみろ!!!!」


 奴さんが覇気ある雄叫びを放つと喉元、心臓、絶対に守らなければならない血管の位置等々。


 繋ぎ目が一切見当たらない連続突きを体の急所目掛けて打ち込んで来やがった!!



「うにぃぃいいいい!?!?」


 喉元に向かって来る初撃を華麗に回避したのは良いが間髪入れずに心臓目掛けて襲い来る二撃目は短剣の腹で受け止めて防御。


 更に更にぃぃ!! 数えるのもクソ面倒な乱撃の数々は体捌きと短剣で往なし辛うじて躱し続ける。



 奴の細剣と俺の短剣が空中で接触すると闇の中に火花が飛び散り刹那に闇を払う。


 互いの呼吸、闘志が宙で混ざり合うと戦場の熱量が一気苛烈に上昇した。



「ふははは!! 気色の悪い声を放つが器用に躱すじゃないか!!」


「そ、そりゃどうも!! こちとら……。ひゃぁん!? 毎日といっていい程お前さんより強い奴から厳しい……。フヒィッ!?!? 訓練を受けていますのでね!!」


 眉間を狙って襲い来た切っ先に対して上体を屈めて回避。


 訓練中なら此処でふぅっと息を吐いて一息付くのですが生憎此処は命のやり取りを行う戦場だ。


「ならば実戦は訓練よりも厳しい事を教えてやる!!」


 女戦士が右手に力を籠め、更に両足をグっと落とすと俺の頭を両断する勢いで剣を振り上げて来やがった。


「ばっひぃん!!!!」


 相も変わらず自分でも若干気持ち悪いなぁっと判断出来る声を放ち上半身の全ての筋肉がブチ切れても構わない勢いで上体を逸らしてとんでもねぇ速さの剣技を回避。


 女戦士の間合いから逃れようとして素早く後方へと飛び退いた。


「待っていたぞ!!!! その後退を!!!!」


 でしょうね!! こっちは後退した勢いで後ろ足加重になっちまったからね!!!!



 後退して出来た隙を狙って女戦士が勝利を確信した雄叫びを放ちつつ俺の間合いに勢い良く飛び込んで来る。


 連続の剣技を嫌がる様に。相手の優位な間合いから華麗に飛び退いて砂地に着地するとほぼ同時に敵の切っ先が体のド真ん中へと放たれた。



 一切の寄り道をしない素直且クソ真面目な剣の軌道を捉えると体全身から冷たい汗が滲み、鋭い鉄が空気を切り裂く甲高い音が鼓膜に届くと心臓ちゃんがきゃぁっ!! と絶体絶命の女々しい叫び声を上げる。


 俺の命を絶つ鉄が肌に触れるまで残り数センチ。


 完全完璧に勝利を予感した女戦士が右手に掴む柄に更なる力を籠めると、此方も彼女の闘志に応える様に全身全霊の力を四肢に籠めた。



 よっしゃぁぁああ!! 食いついて来やがったぜ!!!!



「ッ!!」


 お前さんは接近戦を嫌い若しくは一呼吸付く為に己の間合いから離れたと考えたんだろう??


 でもな?? これは敢えて美味しそうな隙を見せてやったのさ!!!!


 てめぇは美味しい餌に食いついた憐れな魚ちゃんなんだよ!!!!



「フンッ!!!!」


 左腕の筋がぐちゃぐちゃになっても構わない猛烈な勢いで動かし、俺の命を絶とうとする剣の腹を左拳で往なす。


「なっ!?!?」


 突撃の勢いで俺の間合いにすっっぽりと収まった女戦士の驚愕した面を捉えると口角をニっと上げて勝利宣言を放ってやった。


「わりっ。ちょぉぉっと痛いぜ!!!!」


「ぐほぁっ!!!!」



 右手に火の力を籠めて敵戦士のお腹ちゃんに勢い良くめり込ませてやると奴さんの体がクの字に折れ曲がる。


 普通の相手なら此処で腹を抑えたまま倒れるか、又はその場に踏み止まるのだが……。お前さんはそんな玉じゃねぇよな??



「な、嘗めるなぁぁああ!!」


 砂地に倒れ込もうとする甘い自分を蹴り捨てると手から零れ落ちてしまいそうになる剣を万力で握り締め、下段から上段の位置へと勢い良く振り上げて来た。



「ふんっ!!!!」


「う、嘘でしょ!? い、今の一撃を上体を逸らして躱す……」


「だから言っただろ?? お前さんよりも強い奴から厳しい指導を受けているからってなぁ!!!!」


 驚愕の瞳を浮かべている女戦士の懐に素早く潜り込むと相手が防御態勢を整える前に烈火の拳を顎先にぶち込んでやった。


「グブァッ!!!!」


 くぅっ!! この拳の先にジィィンっと感じる痛みが何とも言えませんなぁ!!


 美しい放物線を描いて後方へと吹き飛びそして砂地に着地した女戦士の様子を窺うが……。



 どうやら俺の一撃で完璧に意識を失ったみたいだな。


「う、うぅん……」


 ちょぉっとだけ男の性を刺激してしまう甘い声を出すとそのまま夢の世界へと旅立ってしまった。


 よっしゃ!! 取り敢えず一体撃破!! イスハの方はどうだ!?


 打ち倒した敵から素早く波打ち際の方へ視線を送ると……。どうやら向こうの勝負はまだまだ継続中の様だ。



「こ、このぉ!! お姉さんだっていい加減怒るんだからね!!」


「それはこっちのせりふじゃ!! いい加減当たらぬか!!!!」


 素敵な波音が響く砂浜の上で剣と拳を交わしているのだから。



「せりゃぁああ!!」


「ッ!!」


 魔力を付与した拳が鉄に触れると素晴らしい打撃音を奏で、細剣全てが後方へと弾かれる。


「しょうきじゃ!!」


 相手の右手の体勢が崩れた隙を窺いイスハが攻め込むがどうやら敵もそれを見透かしていたらしい。


「甘いですよ!! お姉さんはまだまだ元気一杯なんですからね!!」


 残る左手に纏わせた風をイスハに向かって勢い良く放射。


「むぉっ!?」


 イスハが暴風を受け取ると小さな体がふわぁっと浮かび上がり後方へと押し流されてしまった。



「あはは!! 体が小さいと魔力の消費が抑えられて楽ですねぇ!!」


「やかましいぞ!! わしはまだまだはってんしゅうちゅうなのじゃ!!」


「それを言うなら発展途上ですよ――?? お馬鹿さんですかぁ??」


 何だか気が抜ける戦いだなぁ……。


 あそこに参戦してもいいけど、イスハから横取りするなって目くじらを立てられても面倒だし。


 砂浜の上にちょこんと座り、イスハがヤバイ時にいつでも飛び出せる様に待機していると聞き捨てならぬ台詞が鼓膜に飛び込んで来た。


「張り倒すぞきさまぁぁああ!!!! 尻がデカいきさまにともかく言われる筋合いは無い!!!!」


「お、おっきくないもん!!」



 な、な、何ですと!? お尻が大きいと!?


 最近、そっち方面は御無沙汰だったのでイスハを助ける名目でそれを確かめても俺に罰は当たらない筈っ……。


 それに御咎め役の相棒も居ないし!? 


 本当に久し振りに舞い降りたこの僥倖を見逃す手は無いぜ!!!!



「にししっ……。後ろから失礼しますねぇ……」


 真剣勝負を繰り広げている女戦士の後方から四つん這い……。いいや、気配を完全に殺した匍匐前進でエッコラヨッコラと接近を開始。


「やりますね!!」


「そっちこそなっ!!!!」


 中々の武を交わしている戦場の死角から見事に侵入を果たし、顔のちょいと前でプルルンっと揺れ動いている大変美味しそうな二つの果実に手を添えてあげた。


「えへっ」


「きゃぁっ!?」



 んぅっ!! 狐のお子ちゃまが言っていた通り中々の大きさで右手も喜んでいますよ!!


 大きいだけでは無く鍛えているお陰もあってか素晴らしい張り具合も確認出来、俺の人生の中でも十番以内に入る好みの柔らかさ具合であった。



「ひ、人のお尻を勝手に触るなぁぁああ!!」


 俺のお茶目に激昂した彼女が有無を言わさず切っ先を喉元に突き刺して来る。


 俺の突然のお茶目に向こうが驚いたのなら今度は俺が驚く番だ。


「ギャヒンッ!?」


 これを受ければ確実に御先祖様がお暮しになる世界へ旅立ってしまうであろう刺突を命辛々回避。


 柔らかい砂の上に態勢を崩したまま着地して敵戦士の顔を見上げると更に肝が冷えてしまった。



「戦場でふざけた行為をする人は確実に殺しますっ!!」


 怒りで双肩がワナワナと震え体全体から魔力が迸りそれが右手に掴む細剣へと流れて行く。


 そして激昂状態の彼女は駄目夫の浮気現場を捉えた奥様の様に怒気を含めた雄叫びを上げると俺の胴体目掛けて切っ先を振り下ろして来やがった!!!!



「死ねぇぇええええ――――ッ!!!!」


「イヤァァアアアア――――!! 触ったのは謝るから怒らないでくださぁぁああ――いっ!!!!」



 何度目かの浮気の免罪を請う夫の様に叫ぶがそんなちんけな願いは勿論却下され、上空から襲い掛かる剣技に対して細かい砂粒が無数に広がる砂浜の上をがむしゃらに転がり続ける。



 口の中に侵入する乾いた砂は己の愚行を諭す様に大変な苦みを与え、切っ先が砂浜に突き立てられるサクッという乾いた砂の音が下半身にヒュッと冷たい風を生み出す。


 女性の大切な各所を触れたら酷いしっぺ返しが襲い掛かって来る。


 これまでの人生で何度も経験済みだがよもや此処まで激昂するなんて思ってもいなかったぜ。



「うぅっ、目が回るぅ……」


 砂浜から波打ち際まで転がり続けながら到着すると地の果てからやって来た波の冷たさを右手に感じた。


「はぁっ、はぁっ……。お、往生際が悪い人ですね!!」


 そりゃあ誰だって殺されそうになったら死ぬ気で避けるだろうさ。


「ですがその悪足掻きも此処までですよ!! 愚かな行為を激しく後悔して死んでください!!」


 触り心地の良いお尻を持つ彼女が細剣を勢い良く上段に構えた。


 さてと、イスハちゃん?? お膳立てはしましたのでさっさと、早く、猛烈な勢いで俺を助けなさい!!!!



 これからは至極真っ当に生きようとする機会を俺から奪おうとする敵戦士の目に憤怒の炎の光が宿った刹那。



「せぁぁああああ!! 桜嵐脚!!!!」


 敵戦士の背後の闇からイスハが現れ、彼女の横っ面にまぁまぁな勢いの脚撃を直撃させた。


「あぐっ!!」


 イスハの雷撃を真面に受けた可愛いお尻の持ち主ちゃんは勢い良く吹き飛ばされて砂地に叩き付けられ、暫く様子を窺っていたがどうやら夢の世界に旅立ってしまった様ですねっ。



「ううんっ……」


 右手に掴んでいた剣が手からハラリと離れ、柔らかそうな唇から甘い寝息が漏れてしまったのだから。


 紆余曲折ありましたがこれにて南側を守備する連中は無力化出来た様だな。


 注意深く周囲を窺っていたが新手の増援は現れる様子は無いしっ。



「なんちゃってだけどまぁまぁの出来栄えだったぞ」


 体全体にぎゅっとしがみ付いて来る砂ちゃんをパパっと払って立ち上がる。


「そこは褒めるべきじゃろうが!!」


「お前さんも極光流が板について来たじゃないか」


「ハンナ先生は無双流だといっていたぞ」


 あ、あの大飯ぐらいの白頭鷲めが!! 俺が名付けた流派を勝手に名称変更しやがって!!


「違います――。極光流って名前の流派なんですぅ!!」


「どっちでも良いじゃろ。お主とハンナ先生が決めたのならぁ……。足してみるとか??」


 ほぉ、それは案外悪くないかもしれませんわね。



「じゃあ、『極光無双流』 って名前になるのか。結構かっこよくね!?」


 相棒が考えた名称は俺の後ろにくっ付けておこう。


 後でギャアギャア騒ごうが名称変更は一切受け付けませんっ。



「名前等ど――でもよいわ。ほれ、中央に向かうぞ」


「あ、こら。師範お母さんを置いて行かないの」


「せめてどっちかにせい!!!!」


 砂浜の上で寂しそうに持ち主を見上げている荷物ちゃんを手に取り一番弟子ちゃんにギロっと睨まれて彼女の後に続こうとして駆け出すと。




「あぁん!? おいおい!! 強い力を感じて来てみれば二人共ヤられてんじゃん」


 深い森の影の中から一人の女性が砂浜に静かに姿を現した。




 金色の色合いが強い虎色の髪にちょいと尖った目。


 背丈は少し遠目だから分からないが成人女性を優に超す背丈であろう。


 左の腰に刃厚の太い曲刀を差し、俺とイスハを捉えても微動だにせず俺達の後方で倒れている戦士達に視線を送ると巨大な溜息を吐いた。



「はぁ――。ったくぅ、弱過ぎる奴を此処に配置したのは間違いだったな。北側からも奇襲を仕掛けられているしさぁ」


 アイツが配置不明の幹部か?? だとしたらこれまでのふざけた気持ちを捨て去らなければならない。


 情報通りなら腰を据えて相手にしなきゃならない敵なのにも関わらずどうして君は無策で歩み寄って行くのかしらね!?


「わしらは急いでおるのじゃ!! じゃまをするのならお主もたおすぞ!!」


 あの馬鹿!!!! 敵の実力も分からないのに近付くんじゃねぇ!!


「はぁ?? 先ずはテメェから死にてえのか」


 やっべぇ!!


「望み通り……。その首を断ってやるよ!!!!」


「ッ!!!!」


 その場に己の影を置く勢いでイスハの前に飛び出て女幹部の一刀を短剣の腹で受け止めてやった。


 いや、受け止めたってのは些か疑問が残る言い方だな。


「いづっ!!!!」


 相手の一撃の強さが想定を余裕で上回り左肩に曲刀の刃面が微かにめり込んでしまいましたのも。



「へぇ!! 味方を庇いつつも私の攻撃を防いだか!! すげぇな!! お前ぇ!!」


「そ、そりゃどうも。で、出来れば早くこの曲刀を抜いてくれません?? 肉が痛過ぎて泣きっ面を浮かべていますので」


「ハハッ!! わりぃな!! あらよっと!!」


「うぎぃッ!!」


 女幹部が『敢えて』 曲刀を勢い良く引いて引き抜くとまるで焼き鏝を直接当てられた様な燃える痛みが左の肩口に迸って行った。



 そのままスっと上部に引き抜けば良かったのにどうして貴女は引き抜いたのでしょうかね!!


 もうちょっと手心を加えるべきだと思います!!



「ダン!! 大丈夫か!?」


「お、お、お前さんはこれが大丈夫に見えるのかい??」


 左の肩口から零れ落ちる血液の瀑布が服を侵食し、吸収しきれぬ水の流れは服を伝って砂浜に赤き血だまりを形成しつつある。


 不味いぜ。早めに治療をしないと出血多量で意識を失っちまう……。


「うへぇ――。痛そう」


「安心しなって。これ以上の痛みを何度も味わっているので。えぇっと……」


「あ?? 私の名前か??」


 その通りです。


 そんな意味を含めて一つ小さく頷く。


「いつもなら名乗らねぇけどちょっと気分が良いから名乗ってやるよ。私の名前はジェルチェ。この部隊を率いる幹部の一人さ」


 やっぱりそうか。


 普段からくじ運は悪い方だけどもこんな時くらいは幸運が舞い降りて来てもいいんじゃね!?


 左肩の負傷に加えてイスハのお守をしつつ幹部を撃退しなければならない。こりゃあ俺が考えている以上の厳しい戦いが始まりそうだぜ。


「さぁって、私達に上等ぶち込んで来た敵にお返しをしなきゃなぁ……」


 お返しはいりませんのでどうかそのまま静かにお帰り下さいませ。


 心の中で決して叶わぬ願いを唱えると徐々に魔力と闘志が膨れつつある敵に対して最上級の警戒心を抱いていた。




お疲れ様でした。


先日の後書きにも記載した通り、花粉症がかなり辛い状況が続いております……。


鼻水はティッシュを鼻の穴の中にぶち込んでおけば何とか耐えられるのですが、目のかゆみだけはど――も慣れませんね。自室内での執筆作業中の姿は見せられない惨状となっておりますよ。


この状況が解消されたのならブラリ一人旅にでも出ましょうかね。


今年は……、そうですね。出雲大社辺りに出掛けてみようかと考えております。一度も足を運んだ事が無いのでその周辺を散策しつつ帰りは温泉に寄って旅を満喫しようと現在計画を練っております。



いいねをして頂き有難う御座います!!


読者様達の沢山の応援のお陰で連載を続けられていますよ!!!! 



それでは皆様、お休みなさいませ。

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