第二百十六話 ある意味最も不運な者 その二
お疲れ様です。
後半部分の投稿になります。
敵の幹部が居るのはシュレンさんとダンさんの位置、か……。
シュレンさんはランドルトさんと行動を共にしているから戦力的には大丈夫だと思うけど、問題はダンさんの方ですよねぇ。
『先生!! わしの組手に付き合ってくれ!!』
『のぉ、せんせい――。魔法のじゅぎょうばかりじゃなくてたまには格闘のじゅぎょうもしてほしいのじゃ』
彼の仲間は非詠唱型の可愛い狐さんだけなのですから。
近距離での格闘戦や中遠距離での魔法戦等。
何でも器用にこなすシュレンさんと、剣術と風を操った接近戦が得意なランドルトさん。そしてまだまだ拙いながらも魔法を扱えるミルフレア。
西側は多角的な事態に対応出来る一部の隙も見当たらない部隊、それに対してダンさん達が取る戦法は近距離での格闘戦のみ。
敵戦力は北側と中央に揃っているのですがそ、そう考えると何だか猛烈に不安になって来ましたよ……。
彼の実力は間違いなく強者の位置に存在しているのですが、その何んと言うか……。
『マリルさ――ん!! えへへっ、もう直ぐ御飯ですよね!? 今日はシチューですか!?』
『ささっ!! 遠慮なさらずもう一歩近付いて下さいましっ』
『お、おぉっ!! お風呂上りのマリルさんも素敵ですよ!?』
物凄く強いのにアノ何処か抜けた性格が人に一抹の不安を与えてしまうのですよね。
「ダンさん、か……」
彼の素敵な笑みを思い出しているとハーピーの里で私を守ってくれた場面が突如として脳裏に浮かび上がる。
彼は私に降りかかる暴力に対し身を挺して守ってくれた。
誰かに守られるという不思議で温かい感情を覚えてしまう一方、相手の身を案じてしまう不安な感情も浮かぶ。
この世に生まれ落ちて約二百年。
異性に対してこの様な不安で、でも決して嫌じゃない相対的感情が芽生えたのは初めてかも知れませんね。
両親が他界して広い森の中でたった一人静かに暮らしていると横着な龍が森に降り立ち、それに呼応する様に素晴らしい才能を持った子供達が私の下に集まって来た。
彼女達と暮らしていると寂しさは地平線の彼方へと飛び去り目の回る様な嬉しい忙しさが単色に染まっていた私の生活を彩ってくれる。
そして、向上心の塊である彼女達と幸せな生活を続けていると今度はもっと騒々しい彼等が私の愛する土地にやって来てくれた。
私は恵まれているのかも知れませんね。
ただ森の中で暮らしていただけなのにこんな素敵な幸せを届けて来る人達と出会えたのだから……。
素敵な笑みを零す生徒達の顔とダンさんの男らしく格好良い大きな背中を思い出しているとその姿を刹那に掻き消してしまう存在を正面に捉えた。
「暇過ぎるのも問題だよねぇ」
「まぁな。だが、油断はするなよ?? ハーピーの里は制圧しているけどアイツ等がいつ反旗を翻すか分からないのだからな」
深い闇の中で微かに動く二つの影。
人に不安を与える存在を捉えると私の心は一気に引き締まり、体中に冷たくも熱い血が流れて行く。
ふむっ、私の相手は情報通り二体の雀蜂さん達ですか。あの影の大きさからしてどうやら人の姿で哨戒任務に就いている様ですね。
「大丈夫だって。ほら、アイツ等凄く弱かったし」
「それを奢りと呼ぶのだ。私達に最後まで抵抗していたあの黒き翼の戦士はかなりの力を有していた。アイツが奮起して里の者達を扇動するかも知れないんだぞ」
「心配性だなぁ――。あれだけ痛めつけたんだからもう起き上がって来ないって」
「ジェルチェ様とロルウェ様、そしてガーナード隊長からあれだけの猛攻を受けても決して折れなかった闘志と勇気は見事だったが……。最後は女王を人質に取られて剣を手放した。奴が胸に抱く復讐心は想像にし尽く難い。それを努々忘れぬ事だな」
「はぁ――いっ」
彼女の口から出て来たのは恐らく幹部の名前とこの部隊を率いる総隊長の名ですね。
名前だけの情報は特に有益ではありませんのでもう少し様子を窺うべきでしょうか??
「……っ」
闇に紛れたまま口を閉じて呼吸の回数を制限。
沈思黙考の状態を維持していると私の腹の奥にズンっと重く響く魔力の鼓動が迸って行った。
「な、何!?!?」
「何だ今の衝撃波は!?」
この馬鹿正直な魔力の鼓動と衝撃波は恐らくフィロでしょうね……。
私と初めて対峙した時も何の遠慮も無しに灼熱の業火を吐き出しましたし。
あの子ったら……。作戦通りに行動しているのは好感を覚えますけどもう少し手加減をしたらどうかしら。
彼女の魔力の波動が迸ると同時に北の森が燃え上がり島を覆う雲に茜色の光が反射していますもの。
天然自然を無意味に破壊してはいけない。
森に帰ったら口を酸っぱくして説きましょうかね。
「き、北の森が燃えているよ!?」
「敵襲か!! 応援に向かうぞ!!」
「えぇ!? 持ち場を離れちゃ駄目ってガーナード様が言っていたよ!!」
ハンナさん達は只でさえ大勢の敵を引き付けていますのでこれ以上の増援は彼等の不利益になりかねません。
上手く情報を引き出そうとしていましたがどうやら四の五の言っていられない状況が早くも訪れてしまいましたよ。
「……」
背から抗魔の弓を静かに外し、彼女達の背に向かって照準を定めた刹那。
「臨機応変に対応すべきだ!!」
「わ、分かった!! じゃあ私達も……。ッ!?!?」
あら、目が合ってしまいましたね。
北側に生じた炎の明かりが微かに闇を払い、虎色の瞳を持つ女戦士の一人が薄闇の中に佇む私の姿を捉えると大きく目をキュっと見開いた。
「こ、こっちにも敵襲だよぉぉおお――――!!!!」
「何ッ!?!?」
闇討ちは卑怯だと言われていますが状況が状況ですので目を瞑って下さいね??
「こんばんは。そしてお休みなさい」
私に背を見せている一人に向かって深紅の矢を放つが……。
「危ないっ!!」
私と目が合った女戦士が細剣で矢の軌道を逸らしてしまった。
あらら……。確実に当てるつもりで狙った数秒間の構えが仇となってしまいましたか。
「あ、あんた一体何者だ!!」
「貴様ぁぁああ!! 私に矢を射るとは良い度胸をしているな!!」
「初めまして。私の名はマリルと申します」
私に対して明確な殺意を向けて来た二人に対してお辞儀をしつつ簡易的な自己紹介を済ます。
「あ、態々どうも」
「馬鹿っ!! 敵に頭を下げ返してどうする!!」
「いったぁい!! ガーナード様も言っていたでしょう!? 武には礼儀を尽くせって!!」
この隊を纏める人はどうやら確固足る芯を持つ武人の様ですね。
礼儀正しく頭を下げ返してくれたのが良い証拠です。
「今は訓練中では無く戦時だ!! その分別を付けろ!!」
「折角守ってあげたのにその言い草は無いと思うよ?? さて!! お姉さん!! 抵抗するのなら遠慮しないけどいいかな!?」
「あ、はい。此方もそのつもりでお邪魔させて頂きましたので遠慮はいりませんよ??」
「それは此方の台詞だ!! 私が空から攻撃を加える!! お前は地上から奴の腹を切り裂いてやれ!!」
目付きの悪い女性が大雀蜂の姿に変わると闇が蔓延る空へと向かって飛翔。
「了解っ!! あ、でもお腹を切り裂くのはちょっと残酷だからいい感じに痛めつけるね!!」
どちらかと言えば抜けている丸い目の女性が左の腰から細剣を引き抜くと体の正面で構えた。
ふ、む……。地と空からの挟撃ですか。二対一という数の優位性を見事なまでに考えて実行していますね。
「ふふふ……。恐怖で声も出ないか」
私の頭上で此方の隙を窺いつつ飛び交う大雀蜂。
「さぁさぁ!! 行きますよぉ!!」
徐々に距離を詰めて間も無く己の間合いに私の体を収めようとするちょっと抜けた戦士。
異なる地点からの挟撃に対応方法は先ず死角を減らした安全な地帯からどちらかを無力化し、残存戦力を削ぐのが最も有効的だ。
今回の場合は私の真正面から馬鹿正直に向かって来ようとするちょっと抜けた戦士さんを無力化すればいいのですが……。
「後ろが隙だらけだぞ!!」
空を飛び交う大雀蜂さんの存在が本当に厄介ですね!!
「っ!!」
その場から右方向へと飛び退いて後方からの雷撃を回避。
「はぁっ!!」
回避するとほぼ同時に抗魔の弓を構えて彼女の魔力の鼓動を頼りに矢を放つ。
「ハハハ!! 何処を狙っている!!」
しかし私の矢は彼女の実体では無く虚空を穿ち、敵性対象を見失った矢は夜の闇へと消失した。
「漸く隙を見せてくれたね!!」
ちょっと抜けた戦士さんが私の頭蓋に向かって細剣の切っ先を鋭く穿つ。
鉄が空気を切り裂く甲高い音、体に纏う風の圧、そして確実に敵を倒そうとする明確な殺意が籠められた瞳。
性格に難がありそうですが実力はどうやら本物の様です。
「んっ!!」
眉間に迫り来る切っ先に対して首を傾けて回避。
「風刃撃!!!!」
其方の攻撃のお返しと言わんばかりに右手に魔力を集めて無詠唱の風の刃を放射するが……。
「甘いよ!!」
同じく風を纏う剣で私の刃を打ち消してしまった。
剣を上段に構え、胸を張って鋭く打ち下ろした剣筋は見事の一言に尽きますね。
「んふっふ――。お姉さんも中々ヤルねぇ!!」
「褒めて頂き光栄です」
右の肩にポンポンっと剣を当てているちょっと抜けた戦士さんに返事をする。
「でもその程度の実力じゃあ私達に敵わないかなぁ」
「その通りだ。これから貴様の体を切り刻み、この毒針で命を奪ってやる」
夜の闇の中から一匹の巨大な大雀蜂が現れると太い尾から透明な液体を纏わせた毒針を覗かせる。
「人の命を安易に奪ってはいけないと習わなかったのですか??」
両膝に付着した土埃を払いつつ話す。
「我々に歯向かう者は皆殺しにしろ。それが大雀蜂一族の鉄則だ」
まぁ……、何んと恐ろしい鉄則なのでしょうか。
文明社会にはそれを律する為に法という存在があるのに……。まぁ彼女達は法の存在が許されぬ未開の島で暮らしているのだ。
武力で抗うのなら殺人も厭わない。
法に代わる恐ろしき鋼の法慣習が彼女達の根幹を支えているのでしょう。
「手当たり次第に戦火を広げればそれ相応の痛みが返って来るとは思いません??」
「思わん。それも全て跳ね返せばいい話だからな!!」
この人達は恐らく世の中の広さを知らずに育ってしまった。だから恐ろしい慣習に従っているのだろう。
この広い世界には私が想像しているよりも遥かに多い数の猛者共が跋扈している。私の暮らしているアイリス大陸が良い例ですよ。
ギト山周囲で暮らす狐一族は狐火を駆使した攻撃方法を見せ、深き森に住まう蜘蛛一族は糸と魔法そして剣術を巧みに扱う。
大陸南部一帯に広がる森の東方にはミノタウロス一族が住み、彼等は常軌を逸した筋力から大地を割る攻撃を繰り出し膂力に特化した戦闘方法で敵を打ち滅ぼす。
大陸北北西にはラミア一族が静かに暮らし、彼女達は毒や魔法の扱いに長けており一度その毒牙に掛かれば何人も生きては帰られないでしょう。
狐、蜘蛛、ミノタウロス、ラミア、そして亜人の片方の末裔でもある私。
この星の生命を生み出したと言われている九祖の内、五体の末裔が大陸各所に点在しているのだ。
彼女達は常軌を逸した力を持つ傑物達が静かに、そして平和に暮らす大陸に我が物顔で侵略を開始した。
この一報を聞けば彼等は黙っていないでしょうね。
虎の尾を踏むなと言われている様に強力な力を持つ個体に対して武力で干渉するのは得策だとは思えません。寧ろ愚策だと判断出来ます。
他所の大陸での無知は即刻死に至るという残酷な現実を私が教えてあげましょう。
「いいですか、良く聞きなさい。私達が暮らすアイリス大陸には絶対に手を出してはイケナイ危険な場所が多く存在します。今はそこまで戦火は広がって居ませんがこのまま侵略行為を続ければいずれそこにも届くでしょう。そして……。そうなったのなら貴女達は己の愚行を激しく後悔してあちらの世界へと旅立ちます」
「ワハハ!! それは楽しみだ!! 我々の武が何処まで通じるのかを試すいい機会じゃないか!!」
「わ、私は今のままで満足かなぁ。ほ、ほら。私達の目的であった栄養価の高い食べ物も見付けたし??」
「それが賢明な判断です。いいですか?? これが最終警告です……。これ以上、私の愛する大陸で狼藉を働くのなら私が全力を以て阻止します!!」
「「っ!?!?」」
自然界では不要な戦いを避ける為に威嚇という手段が用いられる事が多々ある。
私はそれを分かり易く示すかの如く、一気苛烈に魔力を急上昇させて彼女達と改めて対峙してあげた。
「なっ!! 何よその馬鹿げた魔力は!?」
「ふ、ふんっ!! その程度の魔力なら我等の女王には到底及ばぬ!!」
「まだこれでも三割程度ですよ??」
「「は、はぁっ!?!?」」
ふふ、慌てふためく顔が物凄く可愛いですよ??
その顔を恐怖で歪めるのもまた一考ですが生憎時間がありませんので一気に制圧させて頂きますね!!
「炎衝波!!」
私の魔力の圧を受け止めて揺らいだ隙を狙いすまし、ちょっと抜けた戦士さんに向かって火球を放射。
「わ、わぁっ!!!! 危ないッ!!!!」
剣で受ける事無く回避に専念したのは大正解ですが、回避した先の事も考えるべきでしたね。
「そこは行き止まりですよ??」
「へ?? キャァァアアアアアア――――――ッ!?!?」
先程の戦闘の際に設置しておいた魔法陣に彼女が足を乗せると雷の力が彼女の体内を目まぐるしい勢いで駆け抜けて行く。
雷の白光が闇を照らし魔力の波動を体全身で受け止める彼女の体が激しく痙攣。
形容し難い動きの影が森の闇に映し出されると此方に傾き始めようとした形勢を取り戻す為に巨大な大雀蜂が私に牙を向けた。
「貴様ぁぁああああ――――!! 我々に手を出して生きて帰れると思うなよ!!」
「それは重々承知しております。理解していないのは貴女達の方だといつになったら理解するのですか??」
重圧な風の壁を纏う大雀蜂が私の直ぐ側を駆け抜けて行くと風の余波が肌を薄く切り裂く。
激昂して上昇した魔力の圧はかなりのモノですがそれでも私の心に湧く闘志の火を絶やす事は出来ませんよ??
「その五月蠅い口を閉ざしてやる!! 食らえぇぇええええ――――!!!!」
ただでさえ尖っている虫特有の漆黒の複眼が心に湧く憤怒に呼応する様に鋭角になる。
そして私の正中線に向かって毒針を突き刺そうとしてこれまでの速さは前座だと言わんばかりの速度を以て突撃を開始した。
刹那に見失ってしまう程の速度は敵ながら天晴だと言いたいですが……。私は貴女よりも速くそして強い人を何人も知っているのです!!
此処で引き下がる訳にはいきません!!」
「風衝波!!!!」
「ウアァァアアアアアア――――――ッ!?!?」
左手の先に浮かべた結界で彼女の毒針を受け止め、右手から放った暴風の衝撃波が大雀蜂の体を穿つと心地良い風の波動と共に後方へと吹き飛んで行った。
敵の攻撃を躱して致命傷に至る強撃を確実に受け止め、風の圧力を瞬時に爆発的に上昇させる基本的な魔法操作。
相手に攻撃を当てるまでの行程が、自画自賛ではありませんが完璧だと判断出来ました。
私の体捌きを捉えたのなら恐らく私達に指導を施してくれた彼等も大きく頷いてくれる事でしょう。
『えっと……。マリルさんは魔法戦が主体なので俺から近接戦闘を学ぶ必要は無いのでは??』
『何事も勉強ですよ。ほら、行きますよ!! えいやっ!!!!』
『ちょ、ちょっと!! もう少し抑えて下さいってぇ!!』
ダンさんの格闘術の指南が大変役に立ちましたねっ。
「く、くそ!!」
背に生える四枚の羽はボロボロに傷付き更に虎色の体表面も至る所が破損しているものの、大地にしっかりと節足を突き立てて鋭い顎を動かして警戒態勢を維持する。
「う、うぅん……。もう駄目ぇ……」
闘志衰えぬ大雀蜂に対してちょっと抜けた戦士さんはもう意識が無いのか、燻ぶった匂いを放ちつつ夢の世界へと向かって旅立って行ってしまった。
「どうやらこの戦場は私が制圧した様ですね」
これだけ暴れても幹部さんが出て来なかったという事は恐らく、此処以外の場所に居るのでしょう。
「私はまだ動ける!! この命がある限り貴様の命を……」
「はぁい、ちょっと静かにしましょうね」
「ぬぁっ!?」
岩をも噛み砕くであろう威力を備えている顎を激しくカチカチと鳴らす大雀蜂さんの体を光の輪で拘束。
「な、何だこれはっ!?!?」
「拘束魔法の一種ですよ。貴女には聞きたい事が山程ありますので……。ちょっとした拷問を受けて貰いますねっ」
抗魔の弓を背負い、両腕の裾をクイっと捲って光の輪の拘束から逃れようとして無意味に暴れ回っている大雀蜂さんの下へと向かった。
「はっ!! 私は痛みに耐えられる訓練を受けているのだ。貴様程度の細い腕から繰り出される拷問等、児戯に等しいぞ!!!!」
「あはは、そうですか。私の拷問が貴女の強固な心を打ち砕くのか、それとも私の技術を上回るのかを試してみましょう!!」
左右の手の先にある十の指を激しく動かしてその時に備え、そして鋭い顎と毒針に細心の注意を払いつつ彼女のお腹に手を添えた。
「掛かって来い!! 私は決して屈し……。へっ!?」
「さぁぁああ……。行きますよ!!!!」
「や、や、やめっ!! キャハハハハ!? 何をするのだ!!」
んっ!! 昆虫の硬い甲殻に守られているかと思ったのですが体表面は人体と同じく鍛えられないようですね!!
胴体と節足部分を丁寧に攻めてあげると女性の甲高い笑い声が先程まで激戦が繰り広げられていた戦場に響く。
「敵の幹部の情報とこの部隊を率いる隊長の情報を教えて下さいっ!!」
「アハはは!?!? お、お、教える訳が無いだろう!? き、きさ……ひゃんっ!? 馬鹿なのか!?」
この強情さんめ!! 早く口を割った方が身の為だと教えてあげましょう!!
「そうですか!! それでは此方は如何です!?」
「は、は、羽の部分は駄目ぇぇええええええ――――!!!!」
あはっ!! これは良い情報ですよ!! 大雀蜂一族は羽の付け根が弱いという事が露呈されましたね!!
ここを重点的に攻めて確実に情報を引き出してあげます!!
「覚悟して下さいね?? 貴女が泣こうが喚こうが貴重な情報を引き出すまで、私は攻めの手を決して緩めませんから!!!!」
「ヒィィイイイアア――――!!!! だ、誰かぁ!! キャハハハ!! だ、誰か助けてぇぇええ――――!!!!」
彼女の悲鳴を捉えた月が何事かと思って厚き雲の隙間から地上を見下ろす。
「ほらほらほらぁ!! 二か所同時はキクでしょう!?」
「んひぃっ!?!?」
「更にっ!! 両足も使ってお腹ちゃんも擽ってあげますねっ!!」
「キャハハ!! く、くっ付くなぁ!!」
「ですから言いましたよね!? 貴女が情報を教えてくれるまで止めないと!!」
「一思いにこ、殺してくれぇぇええ――!! これ以上はた、た、ンヒヒヒヒ!?!? 耐えられないからぁ!!!!」
一人の女性が巨大な大雀蜂に向かって寝技?? らしき行為をしている様を捉えると月は呆れた溜息を吐いて再び雲の影に隠れてしまった。
静かな夜の闇に強烈に響く女性の笑い声が空高く舞い上がり、大陸間を飛翔している鳥達の翼を刹那に動揺させてしまう。
一人の女性の拷問技術は天然自然を揺るがす程の威力を持っており、それをほぼ無抵抗のままで受け続けている大雀蜂の口がきっぱりと割れるまでそう時間は掛からなかったのだった。
お疲れ様でした。
執筆に少々手こずってしまい、投稿時間が遅れて申し訳ありませんでした。
今日はいつもより温かったですね。もう間も無く冬が明けると思うと心がホっと温まるのですがその後ろに控えている奴等の存在を想像すると今から辟易してしまいますよ。
そう、花粉です!!
毎年毎年流したくもない鼻水を垂らして生活を脅かす存在を忘れてはいけませんよね。早めに薬局へ向かって薬を買って来ましょうかね……。
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