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第二十四話 男ごころと女心 異なる想いの形 その二

お疲れ様です!!


夜分遅くの投稿になってしまい、申し訳ありませんでした。


それでは御覧下さい。





 胸が張り裂けそうに痛い。


 お腹の中がグルグルして気持ちが悪い。


 そして……。心のぐちゃぐちゃした感情が瞳の奥が猛烈に燃やしてしまう……。



 人生で今まで経験した事が無い感情と、痛みに困惑しつつ。お父さんの部屋の中で一人静かに涙を流していた。




 何で私の考えが分かってくれないのよ……。


 あの大馬鹿野郎め!!




 大体、男って生き物は闘争心の塊なんでしょ??


 それなのにあの飼い犬ときたらっ!!


 易々と鬱陶しい男共に頭を下げ、虐げられても一切行動に移らなかった。剰え!!!! 飼い主である私に噛みついたのよ!?



 あ――……。


 もう!!!!



「苛々するぅうううう!!!!」



 此れでもかと拳を握り締め、父さんの執務机の上をブッ叩いてやった。


 しかし。


 私の拳は彼のそれとは違い、その数秒後には情けない痛みを発生させてしまった。



「――――――――。いったぁぁぁああああい!!!!」



 もうほんっとうに最悪っ!!!!


 晴れ舞台の日になんて感情を抱かせてくれるのよ、あの駄犬めがっ!!






 ――――――――。



 まぁ――……。


 でもさぁ。



 レイドの言い分も理解出来ない事は無い。


 彼の実力ならあんな男共は容易く捻じ伏せられたでしょうね。


 一人になり、冷静に考えると……。彼の心も少なからず理解出来てしまう。






 お父さんから話しを聞いた時、本当は飛び跳ねる位に嬉しかったんだよ??


 だってさ。


 本来の実力を発揮すれば撃退する事も出来たのに、敢えてそれをせず。


 私達の事を想って辱めを受けてくれたのだから。


 でも……。此処で舞い上がるようじゃ次期当主は務まらないの。



 私達の家に仕える飼い犬らしく、強くそして気高く誇り高い魂を持って欲しかったから……。




 そ、それなのにぃ!!


 何で私の気持ちを分かってくれないのよ!!



 あ――ぁっ。これが自己嫌悪って奴なのかなぁ――。


 自分が取った行動は間違っていないと思う一方で。


 相手を傷付けてしまった嫌悪感が悪戯に私の心を傷付けてしまっていた。



 はぁ――――。


 どうしよっかなぁ。


 次、どうやって顔を合わせたらいいか分かんない……。



 様々な感情が湧いては消え、五月蠅い心を鎮めようと必死になっていると。


 扉が静かな音を立てて開いた。




「此処に居たのか」



 お父さんだ。



「何??」



 うっわ。


 子供っぽい声出しちゃった。


 拗ねた餓鬼じゃないんだから……。



「ふぅ――。ちょっと休憩、かな」



 そう話すと、私の直ぐ隣に立ち。大きな息を吐くと机に腰掛け。



「――――」



 何も言わずに机の上に伏せている私の状態を確認するかの様に押し黙ってしまった。




 それから数分後。


 いつも優しい口調で、私を諭す様に話し始めた。



「彼は……。立派な大人だよ」


「何処が立派よ。男なのに、皆の前で易々と頭を下げて」


「ふふ。それが分からない様じゃあ……。まだまだお前も子供だな」


「違うもん!! 私は大人よ!!」



 子供だって産める体だし、それに今日を以て当主を継げる歳になったんだから!!



 伏せていた状態から体を起こし、此方を包み込む様な優しい瞳を浮かべる父さんに噛みついてやった。



「お前とレイド君との話を聞かせて貰ったけどね??」


「何処で聞いていたのよ」



 廊下には私達二人だけしか居なかったのに。



「あはは。あれだけ大きい声だ。扉越しでも聞こえちゃうよ。彼の仲間……。ユウさんとマイさん。三人で仲良く聞き耳を立てていたのさ」


「っ」



 うっそ!!


 皆に聞かれちゃってたの!?


 恥ずかしいなぁ……。


 彼女達にも合わす顔が無いかも……。



「レシェット、お前の言い分は正しい。男にはやらねばならぬ時もあるからね」



 うん。


 全くその通りよ。あの駄犬はそれを理解していないから、私が叱ってやったのだ。



「でも、それは時と場合にもよるんだ。今回の場合、彼は公の場で。しかも彼は公務の真っ最中。そして、彼が手を出せば彼の所属する軍だけでは無く。我々の家の名にも傷が付く。それは理解出来るね??」



「うん……」



「レイド君は自分が傷を負えばこの場は平穏に収まってくれると考えて頭を下げてくれたんだよ。しかも、誰に言われる事も無く自分自身の想いで。言い換えれば、彼が身を挺してくれたお陰で我々の名誉は守られたんだ」



 それは痛い程分かっているの。


 でも。


 もう一人の自分がそれを良しとしてくれないのよ……。



「大の男が頭を下げ、辱めを受ける。それはもう本当に傷付いただろうさ。私も一人の男だからね。それは理解出来るんだ」


「だったら……。私はどうすれば良かったの??」



 自分の考えは間違っていない。


 けれど。


 彼の考えも間違っていない。


 もう訳分かんないよ…………。




「ん――……。自分の娘に対して言っても良いものなのか……」



 腕を組み、うぅんと唸る。


 そして、暫く悩んだ後。


 パッと明るい顔になってとんでもない事を口に出してしまった。



























「あそこで言い合うのでは無く。彼を…………。優しく抱き締めるべきだったね」

「へっ!?」




 自分でも笑えてしまうすっとぼけた声が喉の奥から出てしまった。



「ちょ、ちょっと待ってよ。何で抱き締めなきゃいけないのよ!?」



 叱るのが正解じゃないの??



「彼の傷付いた心をお前が癒すべきだったんだ。彼の仲間ではそれは叶わない。他ならぬ、お前だけが傷付いてしまった彼の心を癒す権利を与えられていたのだからね」



 え、えぇっ!?


 じゃあ、私……。間違えていたの!?



「彼を叱るのもまた正解だよ?? でも。貴方のお陰で助かった、そう言い。彼が受けた痛みを共有してあげるのが、大人の女性の姿なんだよ」



「へ、へぇ――。そうなんだ」



 さ、参考になるわね。



「今、彼は私が昔着ていた背広に着替えているよ。挨拶を終えたら、キチンと顔を向き合って謝るなり。再び言い合うなり、そして……。抱き締めるなり。好きに行動しなさい」



 最後の奴は大変な勇気があるけども……。


 謝ってもいいのかな??


 あ――。でもぉ――。


 彼の顔を見て謝れる気がしないのよね。


 絶対、命令したくなっちゃうもん。



「ふふ。そうやって考え、悩み、落ち込んで大人になっていくのさ」


「分かり切った事言わないでよ」


「偶には父親っぽい所をみせないとね。さっ!! 挨拶が待っているぞ?? 後少し、私と頑張って乗り越えよう!!」


「わっ!!」



 お父さんが私の手を取り、力強く立ち上がらせてくれた。


 多分。


 此れには別の意味も含まれていると思う。



 そこで、一人でウジウジ悩んでいても問題は解決しないぞ。凡そこんな意味でしょうね。



 うん……。


 何か、スッキリした!!



「有難うね!! お父さん!!」



 父の大きな背中をポンっと叩いて話す。



「おいおい。もう歳なんだから……。余り強く叩かないでおくれよ」


「レイドはもっと強く叩いても平気なんだよ!?」


「彼と私を一括りにしないでくれ」



 部屋に入った時とは雲泥の差の、高揚しきった心で廊下へと出る。


 そして、此れから始まる本番に備え。次期当主としての面持ちを作り直し。


 昨晩から必死になって覚えた挨拶用の台詞を心の中で復唱しつつ、父の大きな背中に続いた。



最後まで御覧頂き、有難う御座いました。


短い本文で申し訳ありません。



タイトルを見てお気付きになられた方はいらっしゃるかと思いますが。



彼の主観では、『男心』で。明瞭な形となって理解出来。向こうの心は、不明瞭な女ごころとなり。


彼女の主観では、『女心』で。彼と同じくしっかりとした形で理解して。相手の心は、男ごころとなりました。



これが指し示すのは主観では己の心の形はハッキリと掴めるのに、相手の心は。男、若しくは女ごころとして。 漠然となった形でしか捉えられない事を表現させて頂きました。


同じタイトルでも何か変化を加えたくて……。分かり辛くて申し訳ありません。



そして!!


ブックマークをして頂き有難う御座います!!


これからの執筆活動の励みとなります!! 増々精進させて頂きますので、どうか温かい目で連載を見守り続けて下さいね。

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