第二百十三話 作戦会議中はお静かに その二
お疲れ様です。
後半部分の投稿になります。
「陽動と急襲を提案します」
「この場合は陽動と急襲だな」
まぁっ!! 俺と同じ考えに至ってくれたのですね!?
ほぼ同時に口を開き、更にほぼ同じ作戦展開を提案した彼女と目が合うと思わず陽性な感情が心一杯に広がって行く。
「ダンさんも私と同じ考えに至ったのですね」
マリルさんも俺と同じ感情を胸に抱いているのか、硬くなっていた唇を少しだけ柔らかくして口角を上げてくれた。
うふふ、今のはかなり可愛い笑みでしたわよ??
この男だらけのむさ苦しい空間に偶発的に生まれた幸運を噛み締める様に、記憶の深い海の底に素敵な笑みを大切にしまっておきましょうかね。
「えぇ、この場合。先ずは北側の大戦力に対して此方も大火力を向けます。向こうはハーピー以外の者達の襲来を予想していないので島全体は動揺するでしょう」
神々をも慄かせる巨大な翼、一度捉えた獲物は決して逃さぬ鋭い目、肉を深く抉り取る爪と硬度の高い嘴。
常軌を逸した戦闘力を持ち目玉が飛び出る位に馬鹿げた大きさの白頭鷲が夜の闇に紛れて突然現れたら誰だって動揺するだろう。
最大最強の火力で一点を突破する考えもあるが脆弱な前線を突破して中央に到達する頃には恐らく、各地点から異変を察知した敵が俺達を倒そうとしてワラワラと集まって来る可能性がある。
前には強大な力を持つ隊長格、後ろにはまだまだ元気一杯のたぁくさんの敵達。
敵地で挟撃されるのは最も避けねばならぬ事態でありその可能性が含まれている一点突破は最善の策とは言い難い。
雀蜂の巣を下手に一箇所突いて大勢の敵に襲われるよりも複数個所を同時に突いて敵の注意を散乱させて此方の被害を最小限に抑え、尚且つ的確に敵の中央に攻撃を加える。それが四点同時攻撃の肝なのさ。
「仰る通りです。漆黒の夜に紛れて移動をし、動揺した隙を窺い西、東、南に順次急襲を仕掛けて敵前線を突破」
「北側に与えたのは急襲では無く陽動で、本命は北以外の方角の急襲部隊だ。北側から島全体に伝播した混乱に乗じて各方角の要員は中央に斬り込み中央を無力化。レオーネ女王を救出した後に無力化した敵達を拘束して……」
頭の中で理想的な作戦展開を描いて行くがここでふとした疑問がぬるりと湧いて来やがった。
「作戦の概要は簡単ですんなり入ったんだけどよぉ。島までの移動手段はどうするんだ?? ハンナの背に乗って襲い掛かったら速攻でバレちまうぞ」
そう、フウタの言った通り夜の闇に紛れて島に急襲を仕掛ける前に此方の存在が明らかになってしまうのだ。
戦闘の時には頼りになるけども高過ぎる魔力ってのも考え物だよなぁ……。
「向こうが俺の存在を気付くよりも早く移動すればいいのではないか??」
「お前さんの翼ならそれは可能かも知れないけど、猛烈な勢いのまま陽動を仕掛けていたら各方角へ要員を配置出来ないだろ?? 東西南北。同時四点の作戦展開が理想だけど……」
「「「……」」」
新たに浮上した問題点に付いて各自が深く考え……。
「ふわぁぁ――……。あぁ、ねっみぃ。作戦が決まるまで暇だし、俺様は向こうの姉ちゃん達の様子を監視していた方がよくね??」
基。
大欠伸を隠す事無く放った不能鼠さんを除いた三名が深く考える姿勢を保持し続けていると家の扉がけたたましい速度で開かれた。
「マリル先生!! 人質の移動を終えたわよ!!」
「意外と全員元気で拍子抜けだったわね」
「マリル先生。次の指示をお願い致しますわ」
「むぅ!! 何じゃその大きな地図は!!」
「そ、某にも早く作戦の概要を伝えろ!!!!」
「むっ。シュレン先生はこのまま動かないで」
あ――あ――、折角大人達で物静かに思考を凝らそうとしていたのにお子ちゃま達の登場で雰囲気がぶち壊しだぜ。
「皆様、マリル殿達は現在南の島の奪還に向けての作戦を熟考中で御座いますのでもう少し静かにすべきかと思われますよ」
最終最後に部屋に入って来たランドルトさんが大変疲れた顔のままでそう話す。
あの疲弊具合は恐らく人質さん達に対する事情説明とお子ちゃま達のお守の影響だろうなぁ。
お疲れ様でした。お守の仕事は引き継ぎますので暫くの間は里の事だけを考えて下さいまし。
「フィロ、ルミナの住民達の様子は如何でしたか??」
「ハーピーの里の人達よりも弱っていたけど全員無事だったわね。私が龍の姿に変わって疲弊具合が酷い人達から先に街へと送って行ったわよ!! 残りの人達は自力で歩いて帰るってさ!!」
「そうですか、それは朗報です」
龍の背に乗った人達はきっと初めての空中散歩に驚いただろうなぁ。
まぁでも貴重な経験を出来て……。
「なぁ、フィロ。お前さん魔力を抑えて魔物の姿に変わって飛行する事は出来るか??」
龍の背に跨る人達の姿を思い浮かべ、ふと閃いた妙案に対して彼女に問うが。
「無理ッ!!」
俺の考えは秒で達成不能であると思い知らされてしまった。
「私がそんな器用な奴に見える??」
「外見から、そして内面から考察すると全くそう見えないのが本音で御座います」
馬鹿みたいに五月蠅いし、後先考えずに敵に喧嘩を売るお嬢さんに器用な真似は無理か。
「もっと丸めて言え!!!!」
「言葉遣いが悪いですよ?? さて、困りましたね。これですと作戦の第一段階で頓挫してしまう可能性が出て来ました」
マリルさんが体の前で腕を組み、再び難しい顔を浮かべると机の上に置かれている地図に視線を落とした。
「ですよねぇ。いっその事、相棒が島をグルリと一周回るのはどうでしょうか??」
「これ!! ダン!! もっと屈まぬか!!」
「それですと急襲の意味が無くなってしまいますね」
俺の背によじ登ろうとする狐のお子ちゃまの指示に従い前屈みになり、肩車の要領でイスハを双肩に乗せて意見を出すが採用には至らなかった。
「むっ!! これは島の全体像か!? ダン!! 儂らにも作戦とやらを伝えるのじゃ!!」
「別にそれは構わねぇけど何でお前さんは俺の頭を一々ポコポコ殴るんだい??」
「叩けば妙案が出て来るかも知れぬじゃろう!?」
俺の頭はアレかい??
何十年も前に棚の中に仕舞った毛布を叩くと出て来る埃か何かなのかしらね。
叩けば叩く程妙案が出て来るのなら幾らでも叩いて欲しいのですが、生憎この頭は叩いても賢くならないのであしからずっと。
「それは大変気になりますね。私からもお願いしても宜しいでしょうか」
「えぇ、分かりました。実はですね……」
ランドルトさんの柔和な声色に従い先程まで練っていた作戦の概要を伝える。
その間、彼は険しい瞳を浮かべたまま俺に視線を送らず地図を見下ろしていた。
「ちょっと!! 狭いんだからもっと向こうに行きなさいよね!!」
「フィロがもっとそっちに行けばいいでしょ!! 私はブクブク太ったあんたの体と違って細いんだから押さないでよ!!」
「ふ、太ってないもん!!」
「御二人共、先生達の御前ですわよ。もう少し静かに」
「ミルフレア!! もっと前に出ろ!! 某は地図が見えぬ!!」
「あそこが空いているけどすごくうるさいからここでいい」
ランドルトさんの瞳が険しいのは恐らく彼女達の喧噪が一役買っているのだろうさ。
数分前の静けさが嘘の様に感じてしまう程の音のうねりが室内に飛び交っていますもの……。
マリルさんも大変だよな。こんな喧しい連中の世話を静かな森の中でずぅぅっと行い続けているのだから。
「――――。と、言う訳で。俺達が発案したのは陽動と急襲の作戦なのですが相手に確知されない様に北側以外の場所に降り立つ方法を模索している最中なのですよ」
「成程……。それなら我々の里から人員を出しましょうか??」
「へ?? ハーピーの人達は人を背負う事が出来るので??」
ハーピーの姿で人を背負った場合、背負った人が背から生えた翼の動きの邪魔をするだろうし。
「人一人を収容出来る籠の中に一人を入れ、それを体の前で持てば運搬する事が出来ますね」
「ランドルト殿以外の者達の魔力の強さは如何程だ??」
相棒がいつもと変わらぬ鋭い瞳のままで彼に問う。
「私よりも随分と劣りますので余程探知能力に長けた者で無い限り、ゆるりと飛翔すれば見付かる事は無いでしょう」
おぉ!! それなら何とかなりそうですね!!!!
「御助力有難う御座います。これで全ての駒が出揃いました。北側から主戦力に陽動を仕掛けるのはハンナさんとフウタさん」
「任せろ」
「おうよ!! 一丁ド派手に暴れてやるぜ!!!!」
「御二人の任務は陽動ですのでフウタさんが仰る様に好きなだけ暴れて下さいね」
う、うわぁ……。北側に展開する部隊も可哀想に……。
好き勝手に暴れ回る相棒を相手にしなきゃいけないのだから。
「よ、よぅ、相棒。暴れ回ってもいいけど絶対に相手を殺すなよ??」
戦闘意欲から沸々と湧く陽性な感情を隠しきれぬ表情の相棒に問うが。
「努力はする」
彼は俺の言葉をサラっと流して早くも武器の手入れに勤しみ始めてしまった。
「努力じゃ無くて絶対順守しなさい!!!!」
「ふふ、御二人の武力には期待していますよ。西側はシュレンさん、南側はダンさん、そして東側は私が担当します。ハーピーに運搬された我々は闇夜に紛れて三点に急襲を仕掛けます。敵性戦力を無効化した後に島の中央へと向かって素早く移動し、中央に到達したのならレオーネ女王を拘束している不届き者に正義の刃を振り下ろす。此処までで何か質問はありますか??」
マリルさんが南の島に向かう戦士達に問い掛けるが俺達は只々黙ったまま大きく頷く。
返答が無い事に安堵した彼女はそのまま口を開こうとしたのだが、どうやらそう事は上手く進まないらしい。
「ちょ、ちょっと!! 私達の名前が無いのは何で!?」
そう、このまま黙って指を咥えている程龍のお嬢ちゃんは大人しくないのだ。
「何でって……。貴女の実力では分不相応の作戦だからですよ??」
「えぇ――――!?!? 嫌よ!! 先生達が駄目って言っても私は絶対に付いて行くからね!!」
「そこの脳筋の言う通りよ!! これ程貴重な機会は滅多に訪れないから!!」
「わしも行くぞ!! 腕を上げる絶好の機会じゃからな!!!!」
「では私も相伴しましょうか」
「シュレン先生といっしょにいく」
あ――あ、怖い怖い先生に逆らっちゃって。し――らねっと。
「はぁ――……。いいですか。良く聞きなさい」
ほ、ほら出た!! 伝家の宝刀、顔は笑っているけど目はメッチャ怒っている表情じゃん!!
マリルさんの美味しそうな唇ちゃんがス――っと嫌な角度へと上がり、死神がひぃっ!! と思わず情けない言葉を漏らしてしまう殺気が瞳に宿ると。
「「「「「ッ!?」」」」」
彼女達の顔が秒に満たない速度でサッと青ざめてしまった。
「貴女達はこれを遊びか何かと勘違いしていますね。今回の作戦はそれ相応の実力と経験が必要とされます。貴女達はそのいずれも満たしていない。私達の行動如何で里の最重要人物の命が失われてしまうかも知れない作戦に貴女達を連れて行く訳にはいかないのですよ」
貴重な経験を積みたいフィロ達の気持ちは痛い程理解出来る。
俺も冒険の初めの頃は相棒と行動出来る様になる為に、がむしゃらに鍛えていたし。
でも今回の場合はマリルさんの意見が正しいかな。
輝かしい人命が掛かっている作戦に中途半端な実力の者を連れて行く道理は無いのだから。
さて、此処でいつもなら彼女達は先生の指示に従い身を引くのだが今回はどうなるのかしらね。
マリルさんに気圧され、押し黙っている彼女達に視線を送っていると真っ赤な髪の女性が誰よりも先に口を開いた。
「わ、私は絶対に足を引っ張らない!! マリル先生に叱られようが、殴られようが絶対について行く!! だって……。だって!! 私もマリル先生達と肩を並べて戦いたいんだもん!!!!
「ですからそれが迷惑だと言っているのですよ??」
「迷惑!? その一言が私達の成長を妨げているって何で気付かないの!? お願い、先生……。偶には私達の事を信用してよ…………」
フィロが悔しそうに唇を噛み、何処にも当てられない怒りを誤魔化す様に右の拳を痛い程握り締めてマリルさんに懇願する。
「……」
彼女の痛烈な願いを体の真正面で受け止めたマリルさんは大変おっっそろしい顔を浮かべたまま微動だにしていない。
ひょ、表情の変化が無いから分からないけども。きっと頭の中では物凄い速度で作戦の加筆修正を行っているのだろう。
フィロが口走った、『その一言が私達の成長を妨げている』。 その言葉を受けた刹那に驚いた表情を浮かべましたからねっ。
「マリル殿。彼女達の口から聞きましたけど、ルミナの街で一体の敵を無効化したそうじゃないですか。北側に展開する部隊に仕掛けるのは陽動。ですからそこに彼女達を参加させてみては如何でしょうか??」
重い沈黙を破ったのは意外や意外。
侵略行為を受けた当事者であるランドルトさんであった。
「しかし、ですね。ランドルトさん達が最も守らなければならない女王を救出する重要な作戦に参加させる訳には……」
「それに私も今作戦に参加させて頂きたいと考えております。マリルさんを始めとした五名の主戦力に、私を含めた六名の補助戦力。総勢十一名で作戦を展開させれば成功確率も上昇しますよ」
「先生、私達は絶対に作戦の邪魔はしない。足も引っ張らない。だからお願い!!!! 私達を連れて行って!!!!」
フィロがマリルさんに改めて願いを放ち頭を下げると。
「先生、この通りじゃ。どうか連れて行ってくれぬだろうか」
「お願いしますわ」
「私からもお願いするわね」
「せんせい、シュレン先生がまもってくれるからわたしもいく」
彼女の生徒である四名がフィロに従ってキチンと頭を下げた。
「何だと!? そ、某は単独行動をするぞ!! 戦場でお主のお守はでき……。ンムグゥ!?!?」
「シュレン先生。だいじなばめんだからちょっとしずかにしようか」
あ、あはは。忍ノ者もちいちゃなお子ちゃまの前じゃあ形無しだな。
「戦いは貴女達が考えている以上に非情です。仲間の命が失われても心が揺るがない鉄の意思と覚悟はありますか??」
マリルさんが敵に向けるべき視線をフィロに向けると。
「勿論です。私達は誰よりも強くなる為に先生に師事しているのですから」
彼女は体の真正面でそれを受け止め覇気ある声でそう答えた。
うん、いい目だ。あの目をしている奴は天井知らずに強くなるぞ。
「はぁ――…………。分かりました。危ない橋を渡るのは今回だけですよ??」
暫しの沈黙の後、マリルさんが双肩の力をフッと抜くといつもの柔らかい笑みを浮かべると降参の言葉を放った。
「ヤッッッッタ――――――ッ!!!!」
フィロが渾身の雄叫びを放ち右手を天井に向けて勢い良く掲げ。
「はは!! やったぞ!! わしらも祭に参加するのじゃ!!!!」
狐のお子ちゃまが俺の頭を無意味にペシペシと叩き。
「ふふ、腕が鳴りますわね」
「いよぉしっ!! 私のあっと驚く魔法を悪者に思いっきりぶつけてやるわ!!」
蜘蛛と淫魔のお子様はそれ相応に喜び。
「シュレン先生。いっしょだね」
「ふぁから某ふぁたんふぉく行動をするふぉ言っているだふぉう!?」
ラミアのお子ちゃまは左手でシュレンの頭を撫でつつ、右手は珍しく良く動く口を塞いで柔和な笑みを浮かべていた。
「では作戦を改めて変更します。ハンナさんとフウタさんはフィロとフォレイン、エルザードと共に北側で陽動作戦を展開。他の人達はハーピーの里の人達にお願いをして島まで運搬して貰います。西側のシュレンさんはランドルトさんとミルフレアと行動を共に、南側のダンさんはイスハを連れて作戦行動を開始して下さい」
「何じゃ!! わしはコイツと一緒に行動するのか!?」
「俺達がお子様のお守をするのは分かりますけども、マリルさんは単独行動なので??」
頭上で素早く動く狐のお子ちゃまの手を払いつつ問う。
「私に誰か付いていると彼女達に新しい経験がさせてあげられない蓋然性がありますからね。北側の陽動作戦は一切の遠慮無しに暴れ回って下さい。それはもう島全体が揺らぐ程に」
い、いやいや。彼等にそれを言っちゃあ駄目ですよ??
島が揺らぐ処か島そのものが無くなってしまう恐れがありますので……。
「そういう事は俺様の専門だぜ!! ハンナ!! 俺様達が戦闘の狼煙だからな!? 洒落にならない位に暴れ回ってやろうぜ!!!!」
「勿論だ。俺の剣技を体の芯に刻み込んでやる」
ほらぁ、絶対こうなると思ったし。
「あ、相棒。言っておくけど絶対に相手を殺すなよ??」
「善処する」
さっきは努力で今度は善処ときたか!!!!
そんな気の無い善処は見た事が無いぞ!? 無駄な血を流す必要は無いの!!!!
「マリル殿!! 某は作戦変更を所望する!!」
口の拘束を素早く解いたシュレンがそう叫ぶものの。
「さて!! 皆さん!! 行動を開始する前に入念な準備をしましょうか!! 出発は夜の八時ですのでそれまでに仕上げる様にっ」
本作戦の隊長さんは彼の言葉を無視して景気良く柏手を打ち、作戦会議を終了させてしまった。
シュレンの気持ちは良く分かるぜ。
怪我人とお子ちゃまの二人の面倒と敵の相手を同時にしなきゃいけないし。まっ、ランドルトさんの怪我は治癒魔法で作戦開始までには治ると思うけど問題はミルフレアの存在だよな。
だが、器用な鼠ちゃんは作戦遂行と小さな御姫様を守る任務を同時に達成する事が出来るだろうさ。
「だ、だから某は作戦変更を願うと言っているだろう!!!!」
「シュレン先生、私をしっかりとまもってね??」
「断る!! 某は与えられた任務を確実に遂行する為……。ンムグゥッ!?!?」
「しずかにっ」
「ギャハハ!! シューちゃん!! 可愛い御姫様をちゃんと守ってやれよ!!!!」
「「「「「アハハハハ!!!!」」」」」
ミルフレアがシュレンの口を塞ぐと全員の口から放たれた陽性な声が部屋にこだまする。
作戦行動前にこの明るい雰囲気はちょっと不謹慎では無いかと思われるが静かな雰囲気よりもこっちの喧しい方が俺達らしいっちゃらしいし。
他の連中に合わせて陽性な笑い声を放ち、明るい雰囲気に合わせて己の膝を叩いて更に場を盛り上げてやる。だが、心の中では得も言われぬ感情が徐々に広がりつつあった。
その原因は至極簡単。そう、南の島に居る連中達の事だ。
敵性勢力を前にして尻窄むのは以ての外、敵前逃亡は論外。俺達に課せられた使命は今も拘束されているレオーネ女王様を救助するという只一点のみ。
それを果たさぬ限りこの感情は消える事は無いだろう。
そして願わくば、全員五体満足で再びこの素敵な雰囲気を味わいたいぜ。
何処かに居る幸運の女神様よぉ、どうか俺の慎ましい願いを叶えてくれ……。
家屋から飛び出た笑い声は空気を伝い空へと抜けて大空を舞う鳥達の羽を刹那に揺れ動かすが、彼が願う凡百の願いは神々が住まう天空まで届く事は無かった。
例え届いたとしても気紛れな女神は彼の願いを叶えるとは限らない。そう、願いとは自分自身で叶えるものなのだ。
彼はその事を良く分かっているのか。
周囲が湧く中、また此処に必ず帰って来るという確固足る意思を固め、人知れず強烈な決意を胸に秘めてその時に備えていたのだった。
お疲れ様でした。
さて、もう間も無く彼等が提案した作戦が展開されるのですがそのプロットの進捗具合があまり宜しくないのが現状ですね。
話の大筋は決まっておりその通りに書いてはいるのですけども細かい所で苦戦している次第であります。
この土日を使って少しでも進める様に頑張りましょうかね。
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