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今日も今日とて、隣のコイツが腹を空かせて。皆を困らせています!!   作者: 土竜交趾
過去編 ~素敵な世界に一時の終止符を~
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第二百十二話 黒翼の戦士

お疲れ様です。


本日の投稿になります。




 戦闘の余韻の熱を帯びた息が口から零れ、まだまだ冷め止まぬ体の熱を冷まそうとして体は俺の意識に従わず体外の新鮮な空気を取り込む。


 何度もそれを繰り返し行う事によって徐々に体温は下がって来るが心のド真ん中に灯った闘志は今も微かに燻ぶっている。


 心の闘志が消えぬ理由は至極簡単だ。俺達が直面している問題の解決に至っていないのだから。


 全ての問題を解決する鍵は間も無く手に入るとして、侵略行為を働いた悪者の処理という当面の問題をどう処理するかだよなぁ。



「よっ、殴られ過ぎた腹は大丈夫かい??」


「うぅっ……。痛過ぎて気持ち悪いぃぃ……」


 お腹を抑えて地面の上で力横たわる女戦士にそう問うが返って来るのは苦悶の声のみ。


 言葉を返せない程の痛みとは一体どれだけお腹ちゃんをポコポコと殴られたのだろう??


 これまで何度も相棒と組手を交わして来た俺なら分かる。


 アイツの拳を腹に一発受ければ呻き声が口から飛び出し、二発受ければ舌の上に酸っぱい液体が溢れ出し、三発受ければ地面に横たわり無意味に足をジタバタと動かして激烈な痛みを誤魔化す。


 彼女の傷み具合から、そしてこれまでの実体験から恐らく最低でも相棒の拳を十発以上お腹ちゃんに捻じ込まれたのだろう。


「ご愁傷様っ。暫くの間、その痛みは続くと思うけど死にはしないから安心しなって」


 取り敢えず労いの言葉を掛けてやるが。


「あ、アイツは馬鹿じゃないの!? もう止めてって言ったのにしつこく腹を殴って来てぇ!!!!」


 虎色の髪の女性は優しい返事を破棄してその代わりに丸い御目目ちゃんをキッと尖らせて俺を睨み付けて来た。


「あ、あはは。お前さん達は侵略者だろ?? 命があるだけ儲けものって考える事だな」


 ハーピーの里とルミナを占拠して自分達の都合を無理矢理押し付けて住民達を奴隷として使役する。


 第三者の視点から見れば悪の存在は明らかであり因果応報じゃあ無いけれどもそれ相応の報いは受けるべきだと思うからね。


 剣で体を貫かれるよりも拳でお腹をポコポコ殴られた方がマシであろうさ。


「う、五月蠅い!! 大体あんた達は一体……」


『キャハハハハ!!!! わ、分かった!! 分かったからもう勘弁してぇぇええ――!!!!』


 お腹を抑えている女戦士がちょいと痛んだ家屋から零れて来る笑い声を聞き取ると得も言われぬ表情を声が聞こえた方へと向ける。


「ど、どんな拷問をすればあんな笑い声を出すのよ……」


「ん?? そりゃあもう酷い拷問さ。生まれて来た事を後悔する程にね」


 強情な女戦士から勘弁してという言葉が出て来た事ですし、そろそろ新たな情報を入手出来そうだな。


 後はその情報を頼りに南の島に囚われている女王様救出作戦を練るだけ。


 間も無く全ての問題を解決出来る重要な鍵を入手出来そうな気配にホッと胸を撫で下ろして青き空を見上げると、東の空から妙に小さな黒い影が此方に向かって来る様を捉えた。



 んっ!? 新手か!?


 緩んだ気持ちを刹那に引き締めて一度は小康状態にまで下がった闘志を戦闘態勢まで高め、腰から短剣を抜剣してその時に備えていると青き空から一人の男性が静かに舞い降りた。



「……」


 顔立ちは恐らく三十代後半であろうか。


 額の負傷を覆う様に白い布が巻かれ、白き布は出血箇所から滲み出た血によって茶褐色に変色しており傷は額だけではなく、両腕の至る所にも出血の跡を確認出来る。


 世の男性が思わず唸ってしまう中々に渋い顔立ちの男性が真面目一辺倒な表情で無力化した女戦士達の状態を確かめると次に強力な警戒心を持っている俺に視線を向ける。


 その瞳は修羅場を潜り抜けて来た戦士の色であり体に纏う圧は相棒のソレと何ら遜色が無い。


 黒を基調とした服に隠されてはいるが積載している筋力は平均的な成人男性よりも多い事が服の盛り上がり具合から察する事が出来た。



 こ、こいつは一体何だ。


 恐らく背に生える二つの黒翼からしてこの街の住民だと察する事が出来るけども……。



「……っ」


 無言で俺を見つめ続けている彼に対して浅く腰を落として備えていると、男は何を思ったのか。


「……ッ!!!!」


 背に生える黒翼を消すと地面に無造作に落ちている敵が使用した細剣を拾い上げ、無抵抗の状態の女戦士に向かって勢い良く振り下ろすではありませんか!!!!


 ちょっ!? いきなり無抵抗な奴をブッ殺そうとしますかね!?


 両足の筋肉が全部ブチ切れても構わない勢いで前に飛び出して今も静かに気を失ったままの女戦士の前に無理矢理割り込んでやった。



「……っとぉ!! へへ、お兄さん。いきなりブチ殺そうとするなんてちょぉっと血の気が多過ぎるんじゃないのかい??」


 短剣の腹で剣を受け止め、両腕の筋力を総動員して男の力をせき止めてやる。


 今の力具合、そして目に宿る殺気からして本気で殺すつもりで打ち込んだな……。


「敵を排除して何が悪い。コイツ等は我々の里を襲っただけでなく、ルミナの住民も襲ったのだぞ」


「それは分かっているさ。俺達は偶々この辺りを通り過ぎた冒険者でね?? コイツ等を無力化してこれから南の島に囚われている女王様を救出しようとしているのさ」


 顔と同じ位に渋い声の男に対して返事をしてやると。


「何だと!? それは真か!?」


 殺意に塗れていた漆黒の瞳に微かな希望の光が灯った。


「嘘だと思うのならあそこの家の中に入ってみなよ。新しい情報が間も無く手に入ると思うぜ??」


 俺に対して振り下ろしていた剣をスっと降ろした彼に向かって優しい声色でそう言ってやる。


「拷問の類か。いいだろう、女王様を救出する為に情報は不可欠だ」


 彼が右手に握っていた剣を地面に向かって無造作に放り捨てると同時。


「ダンさ――ん!! 南の島の情報を入手出来ましたよ――!!!!」


 極悪拷問官が頭上で光り輝く太陽よりも明るい笑みを浮かべて扉から出て来た。


 あの陽性な笑みからして大変有意義な情報を入手出来たのだろうさ。


 史上最強最悪の拷問官が正体不明の男の顔を捉えると明るい笑みが消え失せ、代わりに驚愕の表情を浮かべた。



「ラ、ランドルトさん!?」


「マリル殿!?!?」


 ほぉ、男の名前はランドルトと言うのか。


 両者の驚き具合からして恐らくそれ相応に知った仲なのだろう。



「御無事でしたか!! 今から蜂蜜の集積場所と街の北側の家屋に集められている人質達の様子を見に行こうと考えていた所だったんですよ!!」


「総勢三百名の命は奴隷として働かされていたので何んとか無事です。それよりも一体何故此処に??」


「あ、はい。実はですね…………」


「んぉ!? 誰だテメェは!?!?」


「ダン。人質の移動を手伝え」


 拷問を終えて出て来た相棒達がランドルトさんの登場に驚くと、マリルさんがそれを一切合切無視して此方の事情を説明して行く。


 その間、彼は無言のままで深く頷き彼女の言葉を丁寧に受け取っていた。



「――――。そういう訳でルミナにお邪魔させて頂き、敵性対象に発見されてしまい戦闘が始まってしまったのですよ」


「成程……。戦の神も偶には粋な事をしますな。こうして戦いの申し子を送り付けてくれたのですから」


 ランドルトさんが俺達に対して警戒心を解くと双肩の力が思わずフっと抜けてしまう優しい笑みを浮かべてくれた。


 おぉ、怖い顔だけじゃなくて今みたいに優しい笑みも浮かべる事が出来るのね。


 さっきの一撃からしてとんでもなく血の気の多い人だと思いましたもの。


「相棒、ランドルトさんの笑みを見習えよ」


 マリルさんとのやり取りを眺めて居た相棒の左肩をちょいと突いてやる。


「ふんっ、俺には必要ない」


「あっそう。じゃあクルリちゃんが泣いていてもそんな怖い顔をずぅぅっと浮かべている訳ぇ??」


「それとこれは違う問題だろうが!!!!」


 うふふ、顔を真っ赤に染めて激昂する顔が何んと可愛く見えるのでしょう。


 相棒の不器用さは可愛い分類に属されていますのでクルリちゃんもそれを分かった上でコイツを揶揄うのだろうさ。


「はいはい、そういう事にしておきましょうか。ランドルトさん、コイツ等が襲って来た理由は蜂蜜の為。ある程度の情報は入手していますが事件当日の状況を詳しく教えて下さいます??」


「えぇ、構いませんよ。この不届き者達が現れたのは五日前の事です。その日は大変良く晴れて四ノ月の初旬とは思えぬ程に温かくて……」



 彼曰く、普段通りに生活していると突如として大勢の大雀蜂共が平和な里に襲来。


 突然の出来事に目を白黒させていると奴等は有無を言わさずに街の中を物色し始め、此方が抵抗する様なら武力で応えたそうな。


 貯蓄している蜂蜜に目を付けた奴等は各民家から蜂蜜を集め、更に働き始めた蜜蜂ちゃんが汗水垂らして集めた蜂蜜にも目を付けた。


 ハーピーの女王の身柄を盾にされ、ルミナの住民並びにハーピーの里の者達の必死の抵抗虚しく奴隷と成り下がり今日に至るそうな。



「――――。この者達の実力は並み程度ですが三名の幹部は中々の実力でした。私以外の者は既に倒れていた為、単騎で三名の力を抑え込む事は叶わず……」


「風の申し子であるレオーネ様の実力ならその三名を容易く無力化出来たのでは??」


「よぉ!! そいつ等の実力をもっと詳しく聞かせてくれよ!!!!」



 悔しそうに右の拳を握る彼に向かってマリルさんとフウタが同時に問う。



「女王様の御体は周知の通り弱く、自分自身の力を発揮すれば自分もそして里の者達も無傷では済まないと御考えて力を抑えたのでしょう。三名の力はいずれも風に特化し我々ハーピーよりも風を上手く操ります。風の流れに乗るという我々の力の扱いとは対照的に暴力的な風の扱いに終始圧倒されてしまいましたね」


「相手の実力は理解出来たけどよ。どうして女王様は体が弱いんだ?? 一族を束ねる者の体が弱ければ何かあった時に不味いじゃねぇか」


「おい、フウタ……。すいません、ずけずけと質問をしてしまって」


「いってなぁ!!」


 他所の台所事情に首を我が物顔で突っ込んだ彼の後頭部を軽く叩いてやる。


「構いませんよ。女王様は今から、そうですね……。三百年程前でしょうか。二十歳前後の時に突如として原因不明の病に罹患してしまいました。その時、丁度私は武者修行の旅に出ており女王様の容体はこの里に帰った時に初めて知りました。私が武者修行の旅に出て一年の間、女王様は病に侵され続け我々の懸命な看病によって何んとか一命を取り留めましたがその影響を受けて今も体が弱いのですよ」


 ほぉ、若い頃の病が原因で体が弱くなっちゃったのか。約千年生きると言われている体が丈夫な魔物でも流石に病気には勝てないって事ね。



「それじゃあ女王様の御助力を当てにする作戦は難しそうか……」


 体の前で腕を組みつつ小さな声を漏らす。


「ダンさんの仰る通りです。今ある戦力で南の島で拘留されているレオーネ様の救出に向かいましょう!!」



 マリルさんが軽快に声を上げるものの、俺の心には分厚い雲が立ち込めていた。


 相手は訓練を受けた二十名の戦士。しかもその内の三名の幹部は彼女達よりもべらぼうに風の扱いに長けていると来たもんだ。それに加えてレオーネ女王様を無傷で救出せねばならない。


 迎撃用に強固に形成されているであろう陣形、二十名を超える戦士、そして強力な力を持つ幹部。


 これで尻窄みしないのは頭がイカレた奴かそれとも戦う事やド派手な喧嘩が大好きな奴だろうさ。



「あぁ、腕が鳴るぞ……」


「暴れまくるぜぇ……」


 まっ、お前さん達は尻窄みする処か袖を捲って意気揚々と喧嘩を買いに行くでしょうね。


「おいダン!! どうしたよ!! 暗い顔をして!!」


「俺は喧嘩の事しか考えていないお前が羨ましいぜ」


「へへっ、褒めるなって」


 ううん、お母さんは褒めたんじゃなくて皮肉を言ったのよ??


 嬉しそうに口角を上げて後頭部を掻いている馬鹿野郎にそう言ってやろうとすると、とても大きな影が地面に現れた。



「あぁ――――!! ひょっとしてもう終わちゃった!?!?」


 この無駄に明るくて異様にデカイ声の主は……。


「フィロ!! 起きたのですか!?」


「うん!! もう全然元気!! くっそ――……。もう一暴れしたかったのになぁ」


 龍の姿のフィロが背に生える巨大な翼を器用に操り地面に降り立つとマリルさんに向かって悔しそうな声を出した。


 灼熱の炎や岩石の投擲等々。


 普遍的な物理攻撃なら容易く跳ね除けてしまうであろう厚みを持つ深紅の龍鱗に覆われた巨躯は地上から見上げると更にその大きさが目立つ。


 指に生えた四つの龍の爪は岩をも切り裂き、巨大な翼は大空の覇者に相応しい風格を備えている。


 久し振りに龍の姿を見たけども相変わらずでっけぇなぁ。まぁ巨龍一族のビビヴァンガの巨躯に比べればフィロの大きさは可愛いけどね。



「おぉ!! これが噂に聞くガイノス大陸に住むと言われている龍ですか!!」


 龍の姿を捉えたランドルトさんが目をきゅっと見開いてフィロを見上げる。


「態度と体だけ大きくなって知識は滅法上達しませんの」


「ちょっと先生!! それは言い過ぎ!!」


「先生の言う通りじゃん。お待たせ!! 将来世界最高の魔法使いになる私の登場よ!!!!」


「だ――!! わしよりも先に降りるな!!」


「マリル先生。お待たせしましたわ」


「シュレン先生、いくよ??」


「分かったからいい加減放せ!!」


 あらあらまぁまぁ……。数分前までの静寂が嘘の様に五月蠅くなっちまったな。


 フィロの背中からエルザードを先頭に続々と五月蠅い連中が下りて来ると周囲に蔓延っていた静寂が顔を顰めて街の端までトボトボと歩いて行ってしまう。


 この里の皆様は大変疲れていますのでもう少し静かに行動しなさい。



「むっ!? 誰じゃおぬしは!!!!」


 龍の背から乱雑に荷物を地面に放り捨てて俺達と合流を果たしたイスハが彼を見上げて問う。


「この里一番の実力者であり、黒翼の戦士と呼ばれているランドルト=グリファンさんですよ。皆さん、挨拶をしなさい」


「はは、一番の実力者はレオーネ様ですよ。皆さん、ご紹介に預かったランドルトと申します。以後お見知りおきを」


「うむっ!! わしは狐一族のイスハ=ヴォルペじゃ!!」


「ほぉ、狐一族……」


 ランドルトさんが小さな体且小さな胸をムンっと張ったイスハに向かって興味津々といった視線を向ける。


「私から順次紹介して行きます。あちらの綺麗な桜色の髪の女の子が淫魔のエルザード=レ=ウルカ。白き髪の女性が……」


 彼女達に代わってフィロ達を紹介して行くと彼は深々と頷きつつお子ちゃま達に先と同様の視線を向けていた。


「――――。そして最後に、ラミアの子ミルフレア=スターチスの手にしっかりと保持されている鼠さんがシュレン=ハガクレさんです。彼女達は私達の下で学び、彼等とはダンさんの冒険の途中で知り合い故合って現在は行動を共にしていますよ」


「龍に狐に淫魔、蜘蛛そしてラミア……。九祖の内六体の血を受け継ぐ者達がこうして揃うのは何かの縁を感じますな」


 うん?? 六体??


「えっと、ランドルトさん。彼女達は五人ですぜ??」


 数え間違いかなと考えて彼の大きな背に向かって問う。


「あ、すいません。教えていませんでしたね。私の祖先が九祖の内の一体なのですよ」


 マリルさんが普段と変わらぬ表情を浮かべて俺を直視する。


「じゃあ微乳姉ちゃんの祖先は一体誰なんだよ」



「私の祖先は『亜人』 と呼ばれる九祖の内の一体ですよ」



 亜人。


 その単語が出て来ると南の大陸の古代遺跡で見た壁画が脳裏に映し出された。



「え!? 亜人って……。九祖に反旗を翻したと言われているあの亜人ですか??」


「仰る通りです。この星が誕生した古の時代、私の祖先は魔物を従えて九祖に牙を剥きました。結果はダンさん達が知る通りであり、彼等に敗北した亜人は三つの神器により魂を封印されてしまいます。大戦の前、亜人は二人の子を残したと言い伝えられていますので恐らく私はそのどちらかの血筋なのでしょう」


 これはかなり貴重な情報なのじゃないのか??


 ほら、南の大陸で見た壁画には戦う前の亜人の姿や他の九祖達の姿が描かれていたけど亜人の子に付いての情報は不明瞭だったし……。


 この星の歴史や生命の誕生の鍵となり得る情報をサラっと説明してくれたマリルさんの顔をじぃっと見つめていると、当の彼女が続け様に口を開いた。


「さて!! 此処でこれ以上の長話をしている暇はありません!! フィロ達はランドルトさんの指示に従い蜂蜜の集積場に居る皆さんの救護と街の北側の家屋に居る人々の状態を確認して下さい」


「分かったのじゃ!!」


 マリルさんの指示を受けるといの一番でイスハ元気良く挙手をする。



「ダンさん達はこれから私と共に新たに入手した情報を頼りに南の島で拘束されているレオーネ様の救助作戦を練ります」


「おっしゃあ!! 俺様の天才的な頭脳で完璧な作戦を練ってやらぁ!!!!」


 此方側は先の戦闘の尾を引かず、相変わらず馬鹿みたいに元気なフウタが勢い良く天に向かって拳を掲げた。


 二人共元気一杯で宜しいですね。俺は今から胃が重くなる思いだぜ……。



「そっちの方が楽しそうじゃん!! 先生!! 私もそっちに混ぜてよ!!」


「同感!!」


 エルザードとフィロがマリルさんの下へと駆け寄る。


「人質の皆さんの容体を確認してから合流しなさい」


「ちぇっ、まぁそう言うと思ったけどね。ランドルトさん!! 蜂蜜の集積場に早く案内して下さいよ!! 私の大きな体でパパっと全員運んであげるから!!」


「拘束されてからまだ四日しか経ってないので里の者達も、そしてルミナの街の方々もある程度の余力は残されています。ですので体力の低下が著しい者だけを運んで頂ければ幸いで御座います」


「了解了解!! それじゃ取り敢えず行ってきま――っす!!!!」


 フィロが元気良く彼の言葉に頷くと龍の姿に変わり西の方角へと飛び去って行ってしまった。


「あ、因みに蜂蜜の集積場は東の森で御座います。それでは皆様、私の後に付いて来て下さいね」


 それをランドルトさんが微妙な視線で見送るとこの場に残った賢い者達に温かな声色で話す。


 話を最後まで良く聞けといつも貴女の先生から口を酸っぱくして言われているでしょう??


 何故君はいつもそうやって頭で考えるよりも先に体が動いてしまうのだろうか。全く以て疑問が残るばかりですよっと。



「では皆さん。私達は私達の仕事を済ませましょうか。ダンさん達はそこの敵さん達を拘束した後、あちらの家に運んで下さいね」


 マリルさんが目的地とは逆方向へ飛んで行った阿保龍を呆れた目で見送るとちょいと怖い足取りで空き家へと向かって行く。


「了承した。ミルフレア、これからは別行動だ。放してくれ」


 その背に続こうとしたシュレンがいつもと変わらぬ鋭い瞳の角度でお子ちゃまを見上げるが。


「やっ」


 当の彼女はシュレンの願いを拒絶し更に深く鼠の小さな体を握り締めてしまった。


「ふ、ふざけるな!! これは人命に関わる大事な仕事であって……」


「あ、シュレンさんは引き続きミルフレア達を見守ってあげて下さい。彼女達が言われた事をキチンと遂行したのかどうかを後で確認しますので」


「な、何だと!? 某は子供のお守の為に……。むぐぅっ!?」


「さ、いこうね」


 ミルフレアがいつもと比べて良く動く鼠の口を左手で塞ぐと東の通りの先に見える森の入り口に向かって歩き始めてしまった。


 あ、あはは……。シュレンには後でしっかりと作戦内容を口頭で伝えておこう。ここで揶揄おうものならとんでもないしっぺ返しが飛んできそうだし。



「ふぁなせ!! 某ふぁ作戦内容を綿密に練るふぃつようふぁ!!!!」


 最終最後までちいちゃなお子ちゃまの手に反抗している鼠ちゃんの姿を朗らかな目の色で見送って上げると続け様にうるせぇ龍が帰って来やがった。


「ちょっと!! 西には何にも無かったわよ!?」


「んっ」


 ぜぇっ、ぜぇっと荒い息を続ける龍に対して東に向かって親指をクイっと向けてやる。


「あっちか!!!! ちょっとぉ――!! 皆置いて行かないでよ――――!!!!」


「元気過ぎるのも考えもんだぜ」


「貴様に言われたら終わりだな」


「んだよハンナ!! 俺はそこまで馬鹿元気じゃねぇって!!!!」


 その五月蠅さがその証拠なんですよ――っと。


「皆さ――ん。早くして下さいね――」


「あ、は、はい!! 只今!!!!」


 良い感じに経年劣化した扉を開けて此方に振り返るマリルさんの微妙に怒った顔に従い己に課された仕事を完遂させる為に素早く行動を開始した。



 何はともあれ、取り敢えずハーピーの里とルミナの全住民の命は守られた訳だ。


 仕上げの仕事は女王様の救出のみ。


 最終最後に大変な仕事が残っちまったけど気を抜かずに仕上げて行きましょうかね。



『これフィロ!! 何故お主が先頭を歩くのじゃ!!』


『いいじゃん別に!! ランドルトさん!! こっちで合っていますよね!?』


『え、えぇ。合っていますよ』


 疲れた体に鞭を打つ様で大変恐縮で御座いますが、暫くの間お子ちゃま達のお守をお願いします。


 辟易にも呆れにも捉えられる彼の小さな声に対して忸怩たる思いを胸に抱き、今も静かに横たわっている敵戦士達を背嚢の中から取り出した適当な縄でグルグル巻きにすると。


「あぁ……、くそう。いい年にもなって敵の前でこんな醜態を晒すとは思わなかったなぁ……」


 情けなく鼻をクスンと啜る悲しい音が漏れて来る家屋へと向かって嬉しい労働の汗を流しながら運搬を開始したのだった。




お疲れ様でした。


PCの更新が異常に長ったので投稿時間が遅れてしまいました。


何ですか!? 更新に五時間も掛かるなんて!?


古いPCを使用している宿命なのかもしれませんがそれでも長過ぎですって!!!! その所為で執筆も遅れて投稿も出来ませんでしたし……。


今度の休みの日は家電量販店に出掛けて新しいPCの下見をしましょうかね……。



沢山のいいねをして頂いて有難う御座います!!


皆様の応援が執筆活動の嬉しい励みとなりましたよ!!



それでは皆様、お休みなさいませ。

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