表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今日も今日とて、隣のコイツが腹を空かせて。皆を困らせています!!   作者: 土竜交趾
過去編 ~素敵な世界に一時の終止符を~
1133/1237

第二百六話 目的地に到着!! されど彼女達の苦難は続く その二

お疲れ様です。


後半部分の投稿になります。




「おい、貴様等は一体何者だ」


 初対面の人に向かって挨拶も無く、普遍的な笑みも無く、いきなり貴様と言い放つ。


 これまで一体全体どの様な教育を受けて来たのかと問い正したくなる台詞を一人の女が吐く。



 黒に近い琥珀色の髪にちょいとキツメの目元。


 体に積載している筋肉量は厳しい訓練を受けているのか普通の女性と一線を画す程でありこわぁい口調も相俟って相手に警戒心を抱かせる出で立ちだ。


 黒の長袖に藍色の長ズボン、空に停止する女性が身に纏う服は三ノ月に良く似合うちょいと厚めの物でありどちらかと言えばマリル先生が好みそうな機能性に富んだ服なのですがぁ……。


 私は彼女の出で立ち、風貌、服装よりも腰に装備している細身の剣と背に生えているすんごい薄い虫の羽に視線を奪われ続けていた。



 な、何よアレは……。もしかして背中に大きな虫でも張り付いているのかしらね??


 森の中を歩いているとたまぁに横着な虫が耳元を通る時に奏でられるブゥゥンっという不快な音を奏でている女性が地面に降り立つと静かに口を開く。



「おい、聞いているのか。貴様等は一体何者だと問うているのだ」


 彼女の眼には警戒心が色濃く表れ体全体に強力な圧を纏い、何かきっかけがあれば直ぐにでも腰の細剣を抜剣して襲い掛かって来そうな雰囲気を醸し出し続けていた。



 おっと、いけない。


 このままじゃあ私達は不審者として捉われてしまうわね。



「こんにちは!! いやぁ!! 今日もいい天気ですよね!!!!」


 こういう時は先ず挨拶。


 うむっ、正に完璧な初手じゃあないか。


 景気良く右手をシュっと上げて正に完全完璧な処世術を披露したのですが、どうやら私達の前に立つ彼女が求めていたのは挨拶では無いらしい。


「餓鬼共。殺されたくなければ何用で此処に来たのかを述べろ」


 只でさえこわぁい目元がキュっと尖り挨拶や処世術は一切不要だと此方に伝えた。


「まぁまぁ、そう怒らないの。私達はこの街に用があって立ち寄ったのよ」


「用??」


「この近くにハーピーの里があるでしょ?? だからルミナに寄って蜂蜜を分けて貰おうかなぁ――って考えていたらどういう訳か人っ子一人いないし。この街が何でこうなったかお姉さん知らない??」


 腰に両手を当て、今も殺気に近い雰囲気を身に纏っている彼女にそう伝えた刹那。



「貴様等……。我々の蜂蜜を奪いに来たのか??」


 一瞬だけハっとした表情を浮かべた女性が威嚇に近い雰囲気を本物の殺気に変えて纏い左の腰に装備していた細剣をスゥっと抜いてしまった。



「は?? 奪いに来た?? ちょっと待って。あんた達、この街にあった蜂蜜を全部買っちゃったの!?」


 だから街の人達は新たなる蜂蜜を求めてハーピーの里へと向かって大移動をしているのかしらね。


 参ったわねぇ……。これじゃあマリル先生の御使いを果たせないじゃない。


「ねぇ悪いんだけどさ。小瓶に詰めるだけの蜂蜜を分けてくれない?? あ、勿論お金は渡すわよ?? 相場は全く分からないけど銀貨五枚程度で……」


 右肩に掛けている鞄から現金を取り出そうとしてゆるりとした所作で鞄のお口ちゃんを開いたのですが、どうやら奴さんはどうあっても私達に蜂蜜を譲渡する気は無いらしい。


「餓鬼共に手を出すのは本意では無いが我々は目的を達成する為に覇道を貫く必要があるのだ!!!!」


 右手に掴んだ細剣の切っ先を私の喉元に向かって突き出して来ましたからね!!!!



「ウ゛ンヌゥッ!?!?」



 とてもうら若き女性が放つべき言葉では無い台詞を吐いて刺殺に特化した剣の切っ先を回避。


「おらぁぁああああ!!!! テメェ!! 私を殺す気か!!!!」


 完璧だと自画自賛してしまう回避行動を取った私から距離を取り、離れた位置に身を置いた大馬鹿野郎に向かって思いの丈をこれでもかと叫んでやった。



 あ、あ、あ、あっぶなぁ!!!!


 少しでも気を切っていたらあの切っ先が私の喉元を貫いていたでしょうね!!


 一切の躊躇なく麗しき少女を刺殺しようとするなんてコイツ……、どうやら真面な奴じゃないわね。



「ふん。身の熟しだけは褒めてやろう」


 いやいや、お姉さん?? 私が聞きたいのはそういう事じゃなくて何で私を殺そうとした事なんですけども??


「は?? あんたの攻撃なんて赤子の頬を捻るよりもちょ――簡単なんですけどぉ?? 私はこれまであんたが想像しているよりも超絶厳しい訓練を受けて来たんだし」


「ハハハ、井の中の蛙大海を知らずとは良く言ったものだな。人の強さを貴様の尺度で測るなよ」


「こ、この野郎……。あんま嘗めた台詞吐いているとその形のイイお尻をひっでぇ大きさにしてやるわよ」


 背負っていた荷物を全部地面にポイっと捨て置き十の指を軽く鳴らしていると何やら首元に生温かい感覚が広がって行く。


 その元を確かめる為に右手の指先でそれを拭った。


「っ」


 あんれまぁ、躱したと思っていたのに切っ先が掠っていたか。


 右手の指先には深紅の血液がべったりと付着しており今もジンジンとした微かな痛みが右の首の側面に生じ続けていた。



「完璧に躱した筈だと思っていた様だな」


「お、おぉ勿論よ。でも今の初手であんたの力量は見切ったわ。もう二度と同じ手は通用しないわよ??」


「馬鹿か貴様は。それは躱したと貴様が勝手に思っているからだ。私が外してやった事を感謝しろ」


「はぁっ?? それこそ見苦しい言い訳じゃん。私の様な餓鬼に躱される生温い攻撃を仕掛けて来るんじゃないわよ。そういった嘗めた態度が敗北に繋がるって知らないの??」


 そうそう、これはマリル先生から口をすっぱぁくして言われ続けているわね。


 戦いの場で油断や驕った態度を取った者は必ず終焉を迎えるのだと。


「野生では不必要な戦いを避ける為に威嚇という行動を取る。今の初手はそれと似た行為だ。それも分からぬとは……。どうやら貴様は胸と同じで頭の中の脳も薄いみたいだ……」



「誰が残念無念の極薄胸板だゴラァァアアアア――――ッ!!!!」


 フンっと鼻を鳴らして数段高みから私を見下ろしている不届き者に向かって我武者羅に突貫を開始して正義の鉄拳をぶち込んでやった。



「ククク……。森の中を駆ける猪の方がもっと速いぞ」


 クソが!!!! 上空に逃げやがって!!


 私の憤怒を籠めた正義の鉄槌は虚しく空を切り、薄い胸だと罵った虫野郎は上空約十メートルの位置で鼓膜を辟易させる音を奏でながら私を見下ろしていた。



「はぁ――……。こうなると思って静観していたけどさぁ。もうちょっと何んとかならなかったの??」


 エルザードが重々しい溜め息を吐いて私を見上げる。


「ならん!!!! ってか聞いていたと思うけどぉ……」


「分かっていますわ。会話の内容からしてどうやら彼女、若しくは彼女のお仲間がこの街の住人を何処かへ移動させた筈ですわ」


「その理由を知りたいってのにあんたがいきなり戦いをおっぱじめるから交渉は決裂。不必要な戦いがこうして始まっちゃったのよ」



 んまっ、相変わらず蜘蛛ちゃんと淫魔ちゃんは冷たい反応です事。


 でも!! 私と同じでワクワクした戦いが大好きな狐ちゃんはもっと嬉しい反応を見せてくれるわよね!?



「ばか者が。口よりも先に手を動かしおって。先生がいつもおっしゃっておるじゃろう?? 武力で相手をせいするのはさいしゅうしゅだんであると」


 あっれ――?? おっかしいなぁ。


 ここは。


『儂も共に戦うぞ!!』 って嬉しい台詞を吐きながら肩を並べてくれるってのに。



「仕掛けて来た攻撃からしてかなりの力を有していますわ。イスハとフィロは前線で攻撃を受け止め、私とエルザードが後方支援。ミルフレアは危険ですから家の影に隠れていなさい」


「う、うん……。分かった」


 しかもいつの間にか隊の指揮をフォレインが取っているしっ。


 隊長である私の尊厳は一体何処へやら……。


「ねぇ、あんた。これが最終分水嶺よ。この街の住人に何をしたのか教えなさい」


 ミルフレアが家屋の影に隠れるのを見届けると、エルザードが腰に手を当てつつ上空で停止し続ける虫野郎に問う。


「それはこの私に勝てたら教えてやる。答えが欲しければ勝利を掴み取ってみせろ!!!!」


 うっひょ――!! 来た来たぁぁああああ!!!!


 いよいよ私好みの戦いが始まるわよ!!!!


「掛かって来なさい!! 私の膂力を嘗めない事ね!!!!」


 上空から飛来した鋭い切っ先を受け止める為に此方も街中で市販されている時価銀貨数枚の普遍的な剣を腰から抜き、耳障りな音を奏でて突貫して来やがった虫野郎の切っ先を受け止めてやった。


 市販の剣と刺殺に特化した剣が衝突した刹那。


「ぐぅっ!!!!」


 私の目の前で鉄同士が弾け合い視界が明滅する眩い火花がド派手に飛び散った。


「ほぅ、私の剣技を受けても芯は揺るがないか」


 停止状態からの急加速で得た突進力と虫野郎本人の膂力の合力は私が想像していた奴よりも数倍の威力を備えていた。


 か、体の芯は揺るがなかったけども一撃を受け止めただけで数メートル弾き飛ばされてしまったわね。


 だがしかぁし!! これは当然、織り込み済みなのよ!!!!



「イスハ!!」


「分かっておるわ!!!!」


「後方支援も楽じゃないわよねぇ」


 私の後ろで待機していたフォレインが蜘蛛の糸で虫野郎の足を絡め取り、エルザードが火の扱いを得意とする鍛冶屋さんも思わず唸ってしまう火球を放射。


 そしてモッフモフの可愛い尻尾を持つ狐ちゃんが宙に舞い虫野郎の後方から雷撃を放った。


 蜘蛛の糸による拘束、空気を焦がす火球、そして後方からの雷撃。


 異なる三方向からの攻撃により私は早くも勝利を予感したのですが、どうやら奴さんはまだまだ私達に底を見せていなかったらしい。



「温いぞ!!」


 体から眩い光を放つと魔物の姿に変わりイスハ達の攻撃を回避。


「ハハハハ!! 今の攻撃は良かったぞ!! これは思ったよりも楽しめそうだ!!」


 再び耳障りな羽音をブンブンと奏でつつ虫特有の黒い複眼で此方を見下ろした。


「え、えっとぉ。あんたって虫の魔物なの??」



 虎色の巨大な頭には二本の触角と戦闘に特化した鋭い顎が生え、捉えた獲物を決して見逃さない様に二つの黒き巨眼が顔の中央に確認出来る。


 漆黒の巨眼は己自身の闘争本能を表すかの様にキッ!! と鋭く尖り、太い胴体から四本の足が生えその先にはゴツゴツした爪が怪しく蠢く。


 ぷっくりと御太りになられた胴体の先端からド太い針の先端が覗き遠目だからよく見えないけども針の先端から無色透明な液体が地面に向かって滴り落ちている。


 大きな胴体の背には四枚の羽が生えており今も空気を捉えて激しく振動させて宙に浮かんでいた。



 森の奥でたまぁに見かけるとんでもなく大きくて戦闘に特化した蜂。


 偶発的に出会ったのなら相手を刺激せぬ様にそ――っとその場から去り耳障りな羽音が去ったのならホっと息を撫で下ろすのだ。


 森の中ならまだしも、人間の頭部と同じ位の大きさの雀蜂が街中でいきなり目の前に現れれば誰だってすっとぼけた声を出すでしょうね。



「いかにも、我々は雀蜂の魔物だ。この大陸から遥か離れた南南東の島から飛来したのだ」


「えっとぉ。遠路はるばるお疲れ様ですと労いたいのは山々なんだけどね?? どうしてこの大陸にやって来たのかその理由を教えてくれるかしら??」


 もしかして此処を拠点としてアイリス大陸を侵略するつもりなのだろうか。


 雀蜂って確か他所の縄張りを襲うって聞いた事があるし。


「ふっ、どうせ貴様達の命は此処までだ。それに私は久し振りの戦闘で高揚しているので教えてやろう」


 そりゃど――も有難う御座いますね。


 嬉しそうにカチカチと顎を噛み鳴らすバカでかい雀蜂ちゃんに向かって取り敢えず一つ頷いてやった。



「我々の生まれた島は主に虫の魔物達が占める。その中でも最強格である我々雀蜂を統べる女王に新たな子が間も無く生まれるのだ。新女王の誕生に備え栄養価の高い食物を探しに求めて各部隊が各地へと散った。我々の部隊はこの大陸に辿り着き、女王様の御体に相応しい食物を求めていたのだが……」


 あぁ、はいはい。そこでハーピーの里の蜂蜜に目を付けたって訳ね。


「この里の蜂蜜は真に素晴らしい。糖度は勿論の事、口に入れた瞬間に鼻から抜けて行く花の香が堪らなく美しい。これこそが女王に献上すべき物であると考え我々はこの地を占拠したのだ」


「街の住民とハーピーの里の者達の安否は??」


 エルザードが戦闘態勢を維持しつつ問う。


「手の空いた者は蜂蜜の摂取に使役させ、残りの者は里の中で身柄を確保している」


 ほう!! それは朗報ね!!


 てっきり今頃全員仲良く向こうの世界に旅立っているかと思っていたのに。


「つまり貴女達は蜂蜜を確保したらこの大陸から去るという事で宜しいのでしょうか??」


 フォレインが右手に剣を握りつつ私達の頭上で舞う無駄にデカイ雀蜂に話す。


「必要な量を確保したのならな。だが、これまで上質な蜜をみすみす見逃す手は無い。ハーピーの女王の身柄は既に手中に収めているので女王の身柄を盾にしてこれからも蜂蜜を献上させる予定だ」


 あっらぁ――……。向こうのお偉いさんは既に敵の手に落ちているのね。


「既に第一陣は我々の国へと帰って行った。我等の女王様もさぞお喜びになられるであろう」


「えっとぉ――、楽しそうに顎をカチカチと鳴らしているのは結構なんだけどさ。里の人とこの街の人間の事を考えた事ある?? 平和に暮らしていたら突然バカでかい蜂に襲われて身柄を拘束されているのよ??」


 カチッ!! カチッ!! と。


 岩をも容易く噛み砕けそうな鋭い顎を鳴らす雀蜂ちゃんに向かってそう言ってやる。


「彼等は新たなる女王とその母君に仕え、我々の種族繁栄に携わる事が出来る栄えある者達なのだ」


 いやいや、私が言いたいのはそういう事じゃなくてね??


 自分達の生活を突然ぶち壊されて尚且つ奴隷の身分に堕とされた事に憤りを感じ無い訳ないって言いたいんだけど??


「奴隷みたいに働かされていい訳ないでしょうって私は言いたいのよ」


「我々の社会では生まれた時から既に役目を与えられている。自由を謳歌するなど以ての外だ。人も魔物も己の役目を果たす為に生きている。そして彼等は新たなる役目を与えられた。そう……。女王の御身を気高く美しくする為に」



 勘違いというかそれ以上の履き違いをしている大馬鹿野郎に対してこれ以上諭しても無意味、か。


 魔物の姿の戦闘力並びに攻撃方法は全くの無知だけども隊を守らなきゃいけない隊長が此処で一肌脱ぐとしますかね。



「おっしゃ、あんたの言い分と目的は理解出来た」


 右手に持つ市販の剣を地面にぽぉいと放り捨てる。


「ほう、戦闘を止めて我々の下で働く気になったのか?? 貴様等はまだ若過ぎるが将来有望になりそうだ。我々の社会では強さが地位に直結する。女王様の為に日々研鑽を続けそれ相応の力を身に着けたのなら……」


「……」


 得意気に話している雀蜂ちゃんに向かって無言でスっと右手の手の平を翳してやる。


「何だ、その手は」


「それ以上喋るなって意味よ。勘違いしているクソ馬鹿野郎にこれ以上の言葉は不要だからね」


「貴様……。今の言葉、決して軽くは無いぞ」


 雀蜂がそう話すと只でさえ鋭角な複眼が更にその角度を増して行く。


「うっさいわね。さっきからこっちは世の道理を説いているのよ。人と魔物は互いに平和を好んで生活している。ある者は幸せな家庭を築き、ある者は研究に没頭して世に役立つ発明を、またある者は歌や音楽に幸せを見出す。そんな素敵な幸せが蔓延る社会をブチ壊そうとする輩を……。私達が許せると思っているの??」


「ワハハハハ!!!! 貴様等が平和を齎す使者だとも言いたいのか!? その強さで笑わせてくれる!!!!」


 こ、この虫野郎が!! こっちが大人しく平和的に解決を図ろうってのに馬鹿笑いしやがって!!!!


「あんた。その形態からして空中戦が得意そうよね」


「如何にも。空中戦の戦闘力では我々の国でも上位に属する。ハーピーの者達も中々の腕前であったが所詮はぬるま湯の中で育った虎だ。その牙の使い方を知らぬ獣の様に我々の前ではほぼ無力であったぞ」


「つまり……。あんた達はハーピーの里の人達を傷付けたのよね??」


「あぁ、勿論だ。女王様の身の為に働ける喜びを伝えたのに奴等は武力で応戦して来た。我々はそれに応えたのみ」


「ふぅん、そっか。何の罪の無い人達を傷付けたのね」


 両手の拳を静かに握っては開き、その時に備えた。



「あちらの女王の身柄を確保した時も滑稽であったぞ。全員が情けなく項垂れて奥歯を悔しそうに食みながらただ見守る事しか出来なかったのだからなぁ!!!!」


 雀蜂が癪に障る笑い声を放った瞬間、頭の中で何かがプチっとブチ切れる音が鳴り響いた。



「いい加減にしなさいよね!!!! あんたの様な当たり前の事が分からないクソ勘違い虫野郎共は私が一匹残さず排除してやるんだから!!!!」


 体の奥底で轟々と燃え盛る憤怒を糧にして魔力を最大解放。


「グルルルゥゥ…………」


 唐紅の龍鱗を身に纏う龍の姿に変わると私の手の平大の大きさまでに縮んだ雀蜂を見下ろしてやった。


「その猛々しい姿……。貴様は龍一族であったか」


「へぇ、龍の事知っているんだ」


「あぁ、この星の生命体を生み出した始祖とも呼べる九体の魔物の内の一体だからな。知らぬ方がおかしいだろう??」


「悪いけどこの姿になったら手加減出来ないからね」


「貴様に出来るのか?? 本物の戦いというモノを……」


「っ」



 雀蜂が私と同じ目線まで上昇して来ると先程とは打って違い桁違いの殺気と圧を身に纏った。


 彼女の覇気を真面に受け取ると体中の肌が一斉に泡立ち、両手両足の爪先が微かに震える。


 口から取り込もうとしている空気はまるで形を成したかの様に喉元で止まり体内に入る事を拒絶。


 体全身の筋肉が硬直して私の言う事をまるで聞いてくれない。



 これが本物の戦いって奴よね……。


 マリル先生もダンとハンナ先生も、そしてフウタとシュレン先生もこの殺気が漂う中で本物の戦いを経験して強くなったんだ。


 私も彼等と同じ高みに昇る為に……、ううん。皆と一緒に本物の冒険が出来る様に強くならなきゃ駄目なんだ!!!!



「エルザード!! 地上から援護して!!!!」


 体中にしがみ付く目に見えない鎖を気合で吹き飛ばしてやると私を見上げている彼女に向かって叫んだ。


「あんた馬鹿か!! 空中戦が得意な奴に空中戦を挑む奴が何処にいる!!!!」


「此処に居るわよ!! さぁ掛かって来なさい!! あんたの得意な戦場で叩き潰してやるわ!!」


 背に生える翼に万力を籠めて体中に風を身に纏うと青空へと向かって飛び立つ。


「それを慢心と言うのだ。私が弱者に本物の戦いの恐ろしさを刻み込んでやる!!!!」


 さぁ、始まるわよ……。死が蔓延る初めての実戦が。


 ここから先の油断は死に直結する事を忘れない様に自分に向かって強くそう言い聞かせると死神が薄ら笑いを浮かべて待ち構えている空の戦場へと飛び立って行ったのだった。




お疲れ様でした。


投稿がいつもより遅くなってしまい申し訳ありませんでした。正月が思いの外忙しくなってしまい、執筆出来る時間がかなり削られてしまいましたので……。


さて!! いよいよ始まりました2025年!! 


皆様はもう今年の目標を決めていますか?? 私の場合は勿論……。この作品を完結させる事です!!


現代編から過去編へ。自分で考えていた以上に連載が伸びてしまい読者様達に御迷惑を掛けていますのでね……。


何度も申しておりますが現在連載しているのは第一部の御話であり、この先には第二部そして第三部が待ち構えております。


完全完結にはまだまだ時間が掛かりますが遠い先のゴールよりも足元の地面をしっかり見て一歩一歩進んで行く次第であります。


今年の抱負も述べた事ですし今日はもう少しプロットを書いてから眠りますね。



いいねをして頂き有難う御座いました!!


執筆活動の嬉しい励みとなります!!



それでは皆様、お休みなさいませ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ