第二十三話 饗宴の始まり その一
お疲れ様です。
大変短い投稿になっていますが……。後半の編集を続けていると日を跨いでしまう恐れがありますので。取り敢えず、前半部分だけでもと考え投稿させて頂きますね。
それでは、御覧下さい。
日が沈もうとする一日の中で何処か寂しさを覚える時刻。
私は貴族の屋敷の一室内でちょいと辟易……。いいや、困っていた。
「う――む……。やはり……。ちょっとキツイわね」
私のすんばらしい深紅の髪にビシッ!! と合う真っ赤な色のシルク生地のドレス。
女性の体の線を強調する作りなので、スラァっと伸びた私の可愛い足ちゃんをこれ見よがしに世へと解き放つには持って来いだ。
尚且つ。
踝まで伸びたスカートの太腿辺りからスパっと切れ目が施され、私の最強最高の武器を強調出来る様に設計されている。
この切れ目。何て言ったっけ??
ん――……。分からんっ!!
普段着は大体ズボンだし、ましてやスカートは滅多に履かないからねぇ。
あ、いや。
抱えている問題はそこじゃないのよ。
切れ目から覗く最高で最強なあんよから問題の箇所へと視線を置いた。
「むぅぅ……。男は気付かないけど、女は気付くわよね??」
よぉぉく見ないと理解出来ない程に、程よくぽぉんと膨れたお腹ちゃん。
時間が経てば引っ込むかと思われるが……。
「流石に食べ過ぎた、か??」
式典が始まる前に軽く摘まみませんか、と。
アイシャって言ったっけ。あの姉ちゃん。
使用人が私達を誘って食堂内で軽食を提供してくれたのだが、私のお腹ちゃんは軽食では満足せず。
軽食から、重食に変換して頂いたのだ。
勿論、これには理由があるのよ。
警護中に食欲の悪魔が首を擡げて現れたらどうにも出来ないし?? 自分でも考えている以上に食う必要があったの!!
それに、服の採寸をしたのはお腹がペコちゃんだった午前中だったし……。その所為で膨らみが二割増しで目立ってしまう。
まぁ……。多少、腹が出ていたとしても。体の前で手を静々と組めば大丈夫よ。
「うむ。私に非は無いわね」
ツヤツヤのドレスの前で腕を組み。うむっ、と一つ頷いてやった。
しかし。
似合わないわね。
人生で初のドレス着用に至り、自分でもそう考えていた。
着るというよりかは、ドレスに着られているとでも呼ぶべきか。
幼い頃から野を駆け、魑魅魍魎が潜む森の中で暴れ回っていた私にとって。こぉんな服はお門違いなのよ。
汚れても、傷ついても構わない服が似合うのよねぇ。
あ、でも。
必要最低限の可愛さは求めているわよ??
どこぞのボケナス宜しく、機能性だけを重視する訳じゃないから。
手持ち無沙汰を誤魔化す為腕を上げ、そのついでに上段蹴りを空気相手にぶちかましていると。
『皆、着替えは終わった?? 式典の最終確認を済ませたいから顔を出してくれ』
廊下から軽い足音が響くと共に、ボケナスの念話が届いた。
『ん――。了解――。ユウ、出れそう――??』
何とも無しに隣部屋の友に問いかけてみた。
『もうちょい待って!! やっべぇ……。出ちまうよ……』
何がデルッテ??
まぁ、皆まで問いませんよ。どうせ、あれだし!!!!
『カエデは――??』
『ちょっとお待ち下さい……。スースーしますから……』
スースー??
何じゃ、そりゃ。
まぁいいや。
私が先に出るか。
高価な扉に手を掛け、いつも通りの所作で廊下へと出てやった。
『おう。待たせたわね』
ボケナスに普段通りに挨拶を放ってやるのだが。
「…………」
何だか狐に頬を抓られた表情を浮かべていた。
『何、どうしたのよ』
『え?? あ、いや。うん……。別に……』
ちょっとだけ頬を朱に染め、ポリポリと横っ面を掻いて私から視線を反らした。
ははぁん??
コイツ、私の変身ぶりに一丁前に欲情しやがったな??
いつも飯を作ってくれるお礼に、偶には奉仕してやっか。
『ふぅ――。いやぁ――。今日は蒸すわねぇ――』
スカートの切れ目を敢えて野郎の方へと向け、ヒラヒラと扇いでやる。
ど――よ。
マイ様の御足は?? 最高だとは思わないかい??
チラリと横目で野郎の様子を窺うと……。
「…………」
何だか、失神寸前の金魚みたいな顔を浮かべていた。
『どうしたのよ。パクパク口をひら…………。ぬぅぅっ!?!?』
『お待たせ――!! いやぁ――。着るのに戸惑っちゃってさぁ――』
健康的に焼けた肌に似合う満面の笑みで登場したのは竹馬の友だ。
私と同じくシルク生地で作られた緑色のドレスに身を包み、慣れぬ長いスカートに困惑しながら此方へと進み来る。
両肩を敢えて露出して健康的な印象を此方に与え、裾に向かってちょいとふわっと広がるスカートが良く似合う。
だが。
それよりも、誰しもが彼女のアレに視線を奪われてしまうであろうさ。
『んおっ!? あっぶねぇ。躓きそうだった』
皆様?? 御覧になられました??
アレが当館名物の化け物双丘で御座います。
余り注視しない事をお薦め致します。正気度が失われても此方は責任を負えませんので。
ドレスの胸元にはフワフワのレース?? だっけ。
それが装飾され、御山の頂点にはドレスと同色のリボンが鎮座し。苦しそうな顔を浮かべて御山を守護なされていた。
『どうよ!?』
ボケナスの真正面に立ち。
さぁ、褒めろ!!
そう言わんばかりに腰に手を当てた。
『あ、うん。似合うと思うよ??』
『んだよ――。煮え切らない台詞だなぁ』
そう話すものの。
ユウの顔は真夏の日差しに当てられた氷みたいに溶けちゃっていた。
ボケナスの赤面する顔が余程嬉しかったのだろうさ。
此れでお終いだと、ほっと胸を撫で下ろしたのが不味かった。
正真正銘、真打の登場は此れからであると忘れてしまっていたのだから……。
『皆さん、お待たせしました。打合せを済まし、会場へと向かいましょうか』
「「んなっっ!?!?」」
ユウと声を図らずとも合わせ、あんぐぅりと口を開いて麗しき海竜ちゃんを迎えた。
艶々の濃い青のドレス。
カエデの華奢な体に誂えた様な形に思わず言葉を失ってしまう。
長い藍色の髪を後ろに纏めて、きゅっと上げ。有り得ねぇだろと言いたくなる程に開いた背をより強調。
白い柔肌は同性である私でさえも思わず手を伸ばしたくなる程に煌めいていた。
あのまま外へ出て御覧なさい。
地中奥深くに潜むモグラが地面から飛び出て来て。
『ま、眩しいけど。頑張るっ!!』 と。
太陽の光に弱い視力を懸命に機能させ、穴が空くまで見つめてしまうだろうさ。
『どうかしました??』
カクンっと小首を傾げ、パチパチと瞬きを繰り返しながらボケナスを見つめた。
『あ、あぁ。御免。えぇ――っと……。あぁ!! そうだ!! 打合せだ!!』
ちっ。
見惚れやがって……。
私も女の端くれ。此処で引き下がるのは何だか負けを認めたようなもんだし。
釈然としない訳なのよ。
『カエデは正面入り口から向かって左側の扉、ユウは右。マイは正面扉の脇で待機していてくれ。不審な人物を発見、若しくは不穏な動きを見せる者が居れば情報を共有して……』
ボケナスが皆の前に立ち、テキパキと言葉を綴る。
その間。
さり気なく、ほんわかと、何気なくチラっと裾から足を覗かせてやった。
ほれっ!!
史上最強の龍様の御足だぞ!!
有難く拝めや!!!!
『レシェットさんが壇上に上がる前、一度着替えに出るからその間も監視の目を絶やさぬ様に。良いね??』
『理解しました。では、早速行動を開始しましょうか』
あ、あっれぇ――…………??
おっかしいなぁ??
何事も無かった様に。カエデと仲睦まじく肩を並べて一階へと進んで行っちまったぞ??
ってか、眼中に無かった??
シパシパと瞬きを繰り返しながら奴らの背中を見続けていると。
「――――。アレには叶わないって」
ユウが私の耳元でポツリと呟いた。
「は、はぁ!? 負けてねぇし!!」
「まっ、レイドは外面じゃなくて。内面を見てくれているから安心しなよ」
私の頭にポンっと手を乗せつつ話す。
「ふんっ。どうだか……。アイツもその辺の野郎と一緒で厭らしい目で女を見ているのよ」
「ふ――ん。――――――――。だから、足を見せたのぉ??」
「っ!?!?」
ちぃっ!!
流石、ユウね!!!!
私の行動は全て掌握済みってか!?
「ちげぇし!! 足が痒かっただけだし!!」
「あっそ。ほら、置いていかれちまうから行くぞ??」
私の肩を軽快に叩き、此方をじぃっと睨みつけて来る海竜さんの下へと。何だか見ていて心配になる足取りで向かって行った。
ユウの言う通り、ボケナスは外面を気にしない傾向があるからなぁ……。
まぁ――……。でも。
今回ばかりはカエデに勝ちを譲ってやろうか。
組手ではぜぇぇったい譲らないけどね!!!!
ユウの背中へ颯爽と追い付き、露出している肩にツツっと甘く指を這わせてやる。
ひゃっぁっ!! っと。
大変可愛い声で驚きを表現し、彼女が振り返った二秒後。
私のこめかみが痛みで大絶叫を放ち、宙に浮かされた体の先に生える足で彼女の腹部を蹴るものの。全く怯む気配が訪れず……。
数十秒間の拷問を受けた後、漸く解放されたのだった。
最後まで御覧頂き有難う御座いました!!
続けて編集作業を行いますが……。日が変わる内に投稿できるかどうか定かではありませんので御了承下さい。
そして。
ブックマークをして頂き、有難う御座います!!
夏に向かっての猛暑に執筆活動が日々萎んでしまっていますが……。大変有難い励みになりました!!