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今日も今日とて、隣のコイツが腹を空かせて。皆を困らせています!!   作者: 土竜交趾
過去編 ~素敵な世界に一時の終止符を~
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第百九十二話 覇王継承戦 決勝戦 第二試合 その四

お疲れ様です。


後半部分の投稿になります。




 魔力、筋力、そして燃え盛る闘気と勇気を乗せた拳を目の前に聳え立つ壁に向かって我武者羅に解き放つと。


「ズリャリャリャリャァァアアアアアア――――ッ!!!!」


「ウググゥゥッ!?!?」


 決して揺らぐ事の無かった巨躯と魔力の流れに初めて変化が現れた。


 過剰積載かと思われる巨躯の装甲が綻び、巨大な魔力の源から流れる魔力の流れが乱れ、ビビヴァンガの両目にほんの微かだが……。



 敗北の色を確認する事が出来た。



 このまま全力で殴り続ければ確実に勝利が俺の懐に舞い込んで来るのですが、生憎こっちもギリギリ何ですよね!!


「オラァァアアアアアア――――ッ!!!!」


 今まで白一色だった世界が色彩豊かな色を取り戻し始め、一切合切重みを感じ無かった四肢にまるで巨大な鉄球を括り付けられたかの様な重みが生じ始めたのだから。



 こ、此処で決めないと確実に負ける!! 腕が、足が千切れ飛んでも構わない!!


 だから……。



「いい加減にくたばりやがれぇぇええええ――――ッ!!」


 右の拳に烈火の力を籠めてビビヴァンガの顎を下から思いっきりぶち抜いてやった。


「グッ!?」


 拳に感じる微かな勝利への予感、そして漸く綻びを隙を見せてくれた奴の体の中央に鋭い鷹の目を向けてやる。



 此処だ!! 此処が勝利への最終分水嶺だぞ!?!?


 今此処で俺の全てを出し切るッ!!!!



「すぅぅ――……。我が拳、刹那千撃……」


 微かに腰を落として腰溜めの位置に両拳を置いて最高潮まで集中力を高めて行く。


 そして、ビビヴァンガの顎がガクっと下がった時を狙い済ました千撃を解き放った。


「烈火四星拳ッ!!!!」



「ゴッハァッ!?!?」


 顎、心臓、左右の鎖骨に一切の繋ぎ目の無い拳の連撃を放つとビビヴァンガの体が死に体となって巨大な隙を生させる。



 こ、この隙をどれだけ待ち望んだ事か……。


 そしてこの隙を生じさせる為にどれだけの犠牲を払った事か……!!



「わりぃな。俺は勝つぜ!!!!」



 右の拳に炎の力を宿し、左の拳に眩い光の力を宿す。


 魔力の源から強烈に流転する流れを左右の拳で留めて右の拳を奴の左の鎖骨付近に置き左の拳を左下方、対の場所に静かに置いた。



 外部からの攻撃に滅法強い巨龍一族を倒す為には内部からの攻撃が有効では無いのか、夕食時にフウタが訳も分からない激辛の木の実を食べた時にふと思い付いた。


 問題は内部に攻撃を与える方法だ。


 俺はシュレンみたいに放出系の魔法に秀でていないし、相棒やフウタの様に魔力の扱いにも慣れていない。


 テメェを倒す為に力の森の中で鍛えに鍛え、そして考えに考え抜いた。


 そんな不器用な俺が編み出した唯一無二の攻撃を食らいやがれ!!!!



双極穿破そうきょくせんはの極意!!!!」



 右手に宿す炎の力と左手に宿す眩い光の力。


 溜めに溜めた異なる二つの魔力を対の位置に置いた拳に流し込んでビビヴァンガの魔力の源へ向かって直接炸裂させてやった。



「グ、ゴッハァッ!?!?」


 魔力の源に俺の魔力が直撃するとビビヴァンガの口から朱に染まった液体が飛び出し、そして体に流転する魔力を乱された体は俺の予想通り完全に停止した。



 来た来た来たぁぁああ!!!! 勝機到来!!!!


 完全に停止したその体に向かって超激烈な一撃を見舞ってやるぜ!!


 頼むぜ!? 俺の体!!


 後一撃で確実に勝てるんだ!! だから動いてくれよ!?



「烈火……。桜嵐脚!!!!」


 左足の全ての筋力を総動員させて宙へと舞い右の爪先に炎の力を宿す。


「俺の……。勝ちだぁぁああああああ――――――ッ!!!!」


 今も微かな痙攣を見せる死に体の頭部に向かって願いを込め、そして勝利を手繰り寄せる最終最後の一手を解き放ってやった。














































 爪先の炎が空気を焦がし、ビビヴァンガの顎先に間も無く到達すると思われたその刹那。


「……ッ!!」


「なっ!?」


 死に体だと思われたビビヴァンガの体に力が戻り、そして瞳に光が戻ると俺の最後の一手が既所すんでのところで回避されてしまった。


「う、う、嘘だろ?? 絶対に動ける筈が無いのに……」


 辛うじて戦闘場に着地して力を取り戻したビビヴァンガを見上げてやる。


「貴様の体がもう少し強ければ、魔力が高ければ俺に勝てただろう。さらばだ、戦士ダン。俺はこの戦いを決して忘れないぞ」


 ビビヴァンガが右手に炎の力を宿して俺の顔面に目掛けて解き放つ。



「あぁ……。く、クソッタレ。後、後少しだったのに……」



 確実な敗北を彷彿とさせる恐ろしい音が刻一刻と迫る。


 此処から動け、逃げろ!! 躱せぇぇええ!!!!


 しかし、俺の体は一切の命令を受け付ける事無く必敗の一撃の直撃を許してしまった。



「ぐぁっ!?!?」


 左の頬に感じる痛みが身構える暇も無く頭に到達。


 ビビヴァンガの勝利を願う一撃は俺の意識を現実の世界から御先祖様達が暮らす世界に送り届けるのには十二分な威力を誇っていた。


 あ、あぁ……。畜生、駄目だったか……。


 ビビヴァンガが言っていた通りも――少し鍛える時間があれば勝てたかも知れないのになぁ……。



「一――ッ!! 二――――ッ!!!!」


 冷たい戦闘場と熱い抱擁を交わしていると非情の計上が開始されるが、何だかその音が女神の子守唄の様に聞こえて来たぜ……。


 わ、わりぃ。皆……、もうこれ以上は無理だ。


 二連勝して優勝に大きく一歩近付けたかったけど俺の実力じゃあ無理だったわ……。


「三――ッ!! 四――ッ!!!!」


 遠い位置から聞こえて来る子守唄の調によって猛烈に重くなってしまった瞼に抗う事なく、極上の柔らかさを提供してくれる戦闘場に身を預けたまま襲い掛かる眠気に身を委ねてしまった。

















「六――ッ!! 七――――ッ!!!!」


 闘技場内に響く計上の音が観客達の心を大いに刺激する。


「すっげぇぇえええ!! お、おい見たかよ!? 今の攻防!!」


「あぁ、勿論さ!! 俺はこの戦いを一生忘れないぜ!!」


 俺の勝利を確信した観客達が湧きに湧くが……。俺の体は戦闘が終わっても尚冷たい汗を流し続けていた。



 あの技が完成していたら、奴の力が今よりもほんの少し上回っていたら今頃俺は死に体となって戦闘場の上に横たわっていただろう。



 これ程までに冷たい汗を掻いたのは何時ぶりだ??


 ストロード様と対峙した時以来、か?? それとも初めての野生生物の狩猟以来か??


 記憶を幾ら深く掘り起こしても出て来ない事象に苛まれ、冷たい汗を噴出せずに努めていると歓声に湧いていた観客達が一斉に口を閉じた。



「……っ」


 あ、あ、有り得ない。


 何故起き上がる事が出来るのだ!?


「八――――ッ!!!!」


 恐らく審判役の男の計上の声に奴の魂が反応したのだろう。


 迫り来る敗北に抗う為にダンが上半身を起こし、そして『生きた目』 で俺の両目を確と捉えた。


「うぎぎぃ……。ま、待っていろよぉぉ?? 絶対に……。へ、へへ。絶対にテメェに勝ってやるぞ……」



 震える両手を戦闘場に着け、その力を利用して殆ど機能していない両足で立とうとする。


 まさか……、本当に戦うつもりか??


 その死に体で!?



「九――ッ!!!!」


「う、うぉぉおおおお――っ!! こんちくしょう!! ド根性見せてやらぁぁああ!!」



 だ、駄目だ……。アイツはこの世に生を、魂を残し続ける限り起き上がって俺を倒しに来る。


 俺の負けでも構わぬ。


 奴の魂を焼却させる猛火の攻撃で止めを刺すッ!!!!



「掛かって来い。俺は何度でもお前を倒してやる!!」


 両手に微かに残った魔力を籠め、改めて奴の目を捉えてやった。



「――――――。クソがぁぁああ!!!! だ、駄目だ。ビビヴァンガ、お前さんの勝ちだぜ」


「十――――――ッ!!!!」


「「「「「「ワァァアアアアアアアアアア――――――ッ!!!!!!」」」」」」



 奴にとっては非情の、俺にとっては歓喜の計上が終わりを告げると天を割る勢いの大声援が観客達から放たれた。


 上空から降り注ぐ激闘を讃える祝福の拍手と声援が俺達に向かって降り注ぐ。


 しかし、それでも俺の体は冷たい汗を流す事を止めなかった。



 もしも、ダンが立ち上がっていれば……。俺は勝てたのだろうか??


 これ程までに心が冷え、体が凍り付く戦いは生まれてから初めて経験かも知れぬ。



「ダン!! 大丈夫か!?」


「お、おぉ。何んとか生きてらぁ……」


「馬鹿者が。最後の最後で詰めが甘いからそうなるのだ」


「ここはせめて労って!!!! あの化け物相手に食い下がったんだぞ!?」


 ダン、か。その名は俺の心に深く刻み込まれた。


 そして礼を言わせて貰う。俺に戦いの喜びを教えてくれたお前に対して。


「後さぁ!! もう少しだけ優しく運んでくれない!? 左目がパンパンに腫れ上がってて上手く歩けないんだからさ!!」


「それは貴様の鍛え方が足らぬからだ」


「某もハンナの意見に同意しよう。手を貸してやるだけ有難く思え」


「し、し、辛辣ぅ!!!!」



「……っ」


 仲間達に担がれて東龍側に運ばれて行く奴の姿を見送ると静かに頭を垂れて礼を示し、漸く温かな汗が戻って来た事に安堵して重い体を引きずりながら南龍側へと戻って行ったのだった。




お疲れ様でした。


決勝戦で一番長い戦いの話を漸く書き終えてホッとしております。


過去編の主人公ですから一番長く話を書かなきゃいけないなぁっと考えていたら思いの外長くなってしまいましたよ。もう少し上手く纏めて書ければ良かったのですが、私の力ではこれが限界でした……。



これはプロット書く上での零れ話なのですが実は彼の勝敗が一番悩みました。その後の勝敗に大いに関係する位置で戦っているのもそうですが、すんなり勝つのも何だかなぁっと思い。悩みに悩んで本話の結果となりました。


さて、次話なのですがお尻の可愛い鼠さんが登場します。


中堅同士の戦いのプロットも悩み所満載なのでまだまだ予断を許さない状況が続いてしまいますよ……。



そしてブックマークをして頂き有難う御座いました!!!!


中堅戦のプロットが難航しておりますので温かな応援が励みとなり、執筆活動の嬉しい知らせとなりました!!!!


それでは皆様、お休みなさいませ。



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