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第二十一話 明日に備えて早く就寝しましょう その二

お疲れ様です!!


深夜の投稿になってしまい、大変申し訳ありませんでした。


何はともあれ、御覧下さい。




 己の鼓動さえも聞き取れてしまう大変静かな室内に両膝を確と折り曲げ、静かに佇む。


 例え周囲に耳障りな雑音が渦巻いていたとしても。この鼓動の音は聞き取れてしまうであろうさ。


 今からこの体に起こるであろう常軌を逸した災難。


 その先に待ち構える己の朽ち果てた姿を想像すると。恐怖感か将又得も言われぬ緊張感が心臓の鼓動を悪戯に速めて巨大な音を鳴り響かせてしまいますからね。



 両膝が悲鳴を上げ、いい加減に伸ばせと頭に命令するが……。



「「「「……」」」」



 それを良しとせぬ恐ろしい瞳を浮かべる四名が居ますので。


 もう少し頑張って下さいと両膝に告げた。



 貴女達は女性ですのよ??


 麗しい女性の笑みを浮かべたら如何かしら??


 勿論、横っ面に拳を捻じ込まれたくは無いので絶対に口に出しません。




「よぉ――。ボケナス。あんた、小娘に良い様に扱われ過ぎ」



 マイが口元をむぎゅっと折り曲げ、腕を組みつつ冷たい瞳で此方を見下ろしながら話す。



「あ、いや。その件に関して、ですね?? 彼女は此度の護衛対象でありまして。此方に不備があれば自分の首が吹き飛び。一生奴隷の様に齷齪働かせられる恐れがぁ……」



「あっそ。取り敢えず、首。いっとくか??」



 ユウが手刀の構えを見せ、薪割の要領で上空からブンっと勢い良く振り下ろした。



 それは首では無く。


 俺の頭をカチ割る動きですよ??



「か、勘弁して下さい……」



 額を床に擦り付け、許しを請う。


 何で俺が頭を下げねばならぬのだ。


 大体、レシェットさんが我儘を言い。剰え壇上で素敵な黄色の……。オホン。


 あれは事故ですからね。致し方ないのです。



 兎に角!!


 俺に不備は無い!! そう叫べたらどれだけ楽か……。



「何はともあれ。レイドの言い分は理解出来ました」



 俺が使用するベッドに腰かけ。


 ぷぅらぷぅらと足を揺れ動かすカエデが話す。


 お行儀が悪いですよ――っと。



「許して頂けるのですね!?」



 早春の香りを放つ床から颯爽と面を上げた。



「誰も許すとは言っていませんよ?? 話が進みませんのでこの件は一旦保留させて頂くという意味です」


「は、はぁ……」



 保留、ね。


 だがこの一件は落着の方向へと向かい始めた事に、人知れずホッと胸を撫で下ろした。



「レイド様ぁ。下着が見たいのでしたらぁ、穴が空くまで私が着用している下着を御覧になられても構いませんのよ??」


「あ、結構です」



 右の首筋にチクチクした痛みを与えて来る横着な蜘蛛のお腹を指で押し退けつつ言ってやる。



 チラリと見えただけで大説教を食らっているのだ。


 もしも、そんな事をしたら四肢を切断され。五臓六腑を海に放棄。


 肉片を鮫の餌にされた後に、残った骨は龍の炎によって灰へと還る。


 俺がこの世に存在した痕跡が全て無慈悲に消失してしまうので絶対に出来ません。



「まぁ、そうですの。視姦では物足りないと?? で、でしたら!! 私の御体を差し上げますわ!! さ、さぁ!! 貪る様に召し上がって下さいましっ!!」



 何処がどう捻じ曲がったらそう伝わるのですかねぇ。


 甚だ疑問です。



「カエデが話す通り、話が進まないからさ。続けてよ」



 ユウがカエデの隣に座りつつ話す。



「継承式典の予定、並びに服装に付いては話したけど。マイ達四人の中で一人だけ、使用人として手伝いつつ護衛の任に就いて欲しいって伺ったんだ」



 アイシャさんとの打合せについて端的に説明した。



「はぁ?? 何で使用人に扮しなきゃいけないのよ」


「何でも人手が足りないんだとさ」



 今も腕を組み、俺を見下ろす彼女にそう言う。



「私は嫌よ!!」


「何で――??」



 カエデの膝に頭を乗せ、コロンと横になるユウが話す。


 大変羨ましい姿勢ですね。


 俺も早く眠りたいよ。



「会場内で御飯食べられないもんっ!!!!」



 まぁ、そうだろうとは凡そ想像していたけど……。



「護衛任務中に食える訳ないだろ」


「その通りです。我慢して下さい」



 ユウとカエデが冷たい視線でそうは言うものの。



「ヤダッ!!」



 凶悪な彼女の食欲を御すことは叶わぬ様であった。



「では、使用人役を決める為。クジを引きましょうか」



 カエデが有無を言わさずにベッドから立ち上がり。俺の荷物の中へと手を突っ込んでクジ用の箱を取り出す。


 そして、テキパキと準備を整え。



「箱の中には白が三枚、赤が一枚入っています。赤い紙を引いた人が使用人役を務める。それで構いませんか??」



 準備完了を告げると、皆に対して小さな箱を掲げ。



「「「……」」」



 三名が渋々と頷いた。



「赤、ねぇ……。私って赤が似合うから絶対、その紙引きそうなのよねぇ……」


「それは関係ありません。確率の問題ですよ」



 先程と変わらぬ位置に座り、マイへ箱を差し出す。



「あっそ。じゃあ最初に引くわね!!!!」



 小さな穴に指を突っ込み。



「ん――。これよ!!」



 彼女が勢い良く取り出した色は……。



「うげぇ、白かぁ。きっしょ……」



 綺麗な色なのに何であなたは一々要らぬ言葉を付け加えるのですか??



「赤よりかはマシだと思いますがねぇ。そうですわよね?? レイド様っ」


「人それぞれだと思われます」



 赤が好きだったり。白、青、緑が好きな人も勿論存在する。


 この世には溢れんばかりの色が存在していますからねぇ。



「んふっ。では、次は私が引きますわっ!!」



 アオイが人の姿へと変身を遂げ。



「さぁ、って。白はどこかしらぁ??」



 細い指で摘まみ上げたその色は……。



「イ、イカサマですわ!!!!」



 何と真っ赤な紙ではありませんか。



「あはは――。アオイが使用人役かぁ。案外似合うんじゃね??」


「御断りしますわ!! ユウ!! 私の代わりにやりなさい!!」




 憤りの言葉を放ち、乱雑に赤い紙をユウの顔に放り投げた。




「何だかんだやる事多そうだし。あたしは式場内でいいや」


「カエデ!!」


「右に同じく」



「ちぃっ!! あ――ん。レイド様ぁ。愚か者達が私を虐げるのですぅ――」


「公正にクジで決めたんだから仕方ないよ。大人しく指示に従えばあっと言う間に終わるさ」



 此方の右腕をぎゅむぅっと両腕で抱き締め、横着なお肉の山へと挟み込むので。瞬き一つの間にそこから腕を引っこ抜いて言ってやった。



 それに。


 ちょっとだけアオイの使用人姿を見たいのは内緒です。


 普段は着物だっけ?? それしか着ないから彼女がどう変化するか楽しみですからね。




「はぁ――。面倒だなぁ。大体さぁ、人間が一人二人襲い掛かって来ても大した事無いって」


「マイ、危害を加えようとする人は狡猾です。あらゆる方法で敵性対象に対して、攻撃を加えようと画策するので注意が必要なのですよ」


「ふぅ――ん。ねぇ!! ユウ!! カエデの膝元の寝心地はどう!?」


「最高――だねっ。程よく柔らかく、程よく良い匂い。眠るのに最適な枕さ」



 ユウが寝返りを打ち。


 お腹、それと可愛い太腿ちゃんに鼻頭を当て。スンスンっと香りを嗅ぐ。



 カエデの匂いって程よく良い匂いなんだ。


 これまた不必要な情報が蓄積されてしまいましたとさ。



「ちょっと、ユウ……」


「別にいいじゃん。減るもんじゃないし」


「カエデ!! 私も片側貸して!!」


「止めて下さい!!」



 いつもの喧噪が始まる中。


 さて、どうやって鎮めようかと考えていると。




「レイド様」



 アイシャさんの静かな声が扉の向こうから聞こえて来た。



「あ、は――い」



 呑気な声を上げ、立ち上がろうとするものの。



「ぎぃぇっ!!!!」



 両足が痺れ。


 此処から動かずにその場に留まれ!! と。とんでもない痛みと痺れを与えて来やがった。



 そしてこれを深紅の龍が見逃す筈が無いのだ。



 足を引きずる此方へ、ベッドの上から颯爽と移動を果たし。



『あははぁ――。そぉっれ!!』



 満面の笑みで痺れる足に指先をちょんとくっ付けた。



「んぎぃ!! 止めろ!! 足が取れる!!」



 苛立ちを募らせる龍の激しい攻撃を受け続けるものの。


 息も絶え絶えに匍匐前進で扉の前へと這って行き。



「ご、御用ですか??」



 扉の枠にしがみ付く形で起き上がると扉を開け、彼女を迎えた。



「夜も更けた頃ですが、レシェット様がお呼びで御座います。お部屋へと移動を開始して頂けますか??」


「い、今からですか!?」



 夕食を終え、さぁこれから素敵な睡眠が始まりますよと。期待に胸を膨らませていたのに!!



「申し訳ございません。呼んでも来ない様であるのなら、レシェット様が直に呼びに行くと申しておりました。その前に移動を果たした方が宜しいかと」


「は、はぁ……。了解……。しました」


「御楽しみの所を邪魔して申し訳ありませんでした。それでは、失礼しますね」



 大変冷ややかな視線を浮かべ、此方を見下ろすと。


 そのまま廊下の奥の闇へと姿を消してしまった。



 御楽しみって事は何か如何わしい想像をしていたのでしょう。


 後で釈明をせねば……。




「はぁ――。じゃあ、行って来るよ」


「う――い。ねぇ、ユウ。屋敷の警護ってどっちの番だっけ??」


「しらねっ」


「ユウ達は午後四時から午前零時まで休憩。つまり、もう間も無く警護が始まる時間ですよ」


「え――。カエデ達じゃないの――??」


「私の計算に狂いはありませんので」



 此処に居るよりも、レシェットさんの部屋の方が安心かもね。



 しかし……。今から話しをしなきゃいけないのかぁ……。



 子供を寝かしつける為に絵本を読み聞かせる母親の気持ちをちょっとだけ理解出来ました。




 じゃあ行って来るよと右手を軽快に上げ。



 此方の胸元に収まろうとする横着な白い髪の女性の攻撃を躱し、その勢いで扉を開いて部屋を後にした。



最後まで御覧頂き有難う御座いました。


前話と続け様に投稿しようかと考えていたのですが、急な用件が入ってしまい。帰宅後に慌てて投稿させて頂いたらこんな時間に……。


そして、大変短い投稿で申し訳御座いませんでした……。

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