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今日も今日とて、隣のコイツが腹を空かせて。皆を困らせています!!   作者: 土竜交趾
過去編 ~素敵な世界に一時の終止符を~
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第百九十一話 覇王継承戦 決勝戦 第一試合 その一

お疲れ様です。


本日は二話分投稿させて頂きます。




 空高く舞う鳥達の翼の動きを刹那に止めてしまう大歓声が俺様を三百六十度、一切の隙間なく包み込む。


 鼓膜を盛大に震わす音圧が体内に侵入すると体中の水分を微かに揺らし、只立っているという状態なのに何だか体が微妙に動いている様な錯覚に囚われてしまう。


 俺様は立っているのかそれとも自分でも確知出来ない微々足る動きを見せているのか。


 それを確かめる為に両足を微かに上下させて足踏みをして両手の拳を閉じては開いてみたが……。


 俺様の体は普通に立っている状態であると再認識出来た。


 自分の体の状態が微妙に捉え辛いのは周囲で湧く歓声だけじゃなくて、俺様の真正面の存在も精神と体に多大なる影響を与えているのだろうさ。



「……」



 彼女の身長は遠目から見てざっと百九十以上はあるだろう。


 俺様を優に見下ろせる巨躯を誇るディアドラは試合開始の合図を待てないのか、微かに体重を前に掛けて今か今かとその時を待ち構えていた。


 彼女が前に出ようとする理由は俺様の体を性的に搾取する為では無く、一人の戦士として打ち倒す為。


 それはこの覇王継承戦が行われる戦いなのだから至極当然の理なのだが……、俺様は違う意味でディアドラの体を舐める様な視線で捉え続けていた。



「おっふぅ……。すんげぇイイ体……」



 体全体の皮膚は小麦色に焼けており健康的な印象を此方に与えてくれる。


 半袖のシャツから出た両腕には女性らしからぬ筋力量が積載されており、自重を支える両足にも過剰積載じゃね?? と思わず突っ込んでしまいそうになる逞しい筋肉が備えられていた。


 半袖のシャツちゃんは彼女の筋肉を、そしてぇ!! 胸元の内側からギュウギュウと押し上げてくる双丘に顰め面を浮かべており何か切っ掛けさえあればあの半袖のシャツはパンッ!! と軽快な音を立てて弾け飛んでしまうだろうさ。


 ちょいときつめの目元に鋭角な眉の角度、顔の中心を流れる様に通る整った鼻筋。


 美人ちゃんに位置付けられるであろう端整な顔とゴッリゴリに鍛えられた体の相対的な体の造りがこれまた俺様のナニかを多大に刺激し続けていた。



「フウタぁぁああ!! テメェ!! 鼻の下を伸ばしてる場合じゃねぇぞ!!!!


 ちっ、ダンの奴め。俺様が女の子と戦えるからって嫉妬しやがって。


「うるせぇ!! 誰だってあぁんなイイ体の女と対峙したら鼻の下を伸ばすわ!!!!」


 周囲の歓声に負けない勢いで叫んだ親友ダチに向かってそう言ってやる。


「ギャハハ!! 良かったじゃねぇか!! ディアドラ!! 誰も相手にしてくれないお前さんの体が気に入ったてさぁ!!!!」



 俺様の声が南龍側にも届いたのか。


 シュレンと相対する予定の中堅の野郎が腹を抑えて軽快な笑い声を上げていた。



「よぉ兄ちゃん!! 今の台詞は本当かぁ!?」


 俺様とダンと妙に気が合いそうな中堅の野郎にそう問うてやる。


「おうよ!! 随分と大昔にそいつと付き合っていた男がいたんだけどさぁ!! たった一回の夜の営みに耐えられ無くて速攻で別れちまったんだよ!!」


 はぁぁああ!?


 こんな上等な女の子とたった一回の夜の運動会で音を上げたっていうのか!?


「いやいや!! どんだけ情けねぇ体付きしてんだよ、その男は!!」


「まぁ話は最後まで聞けよチビ助」


「テメェ!! 誰が豆粒ドチビの助だゴラァァアアアア――――ッ!!!!」



 俺様の身長を揶揄った馬鹿野郎に速攻で噛みついてやる。



「俺達巨龍一族は子孫を残す時、愛を確かめる時。相手と一日か二日程度共に夜を過ごすんだけどさ。ディアドラの場合はそれが異常に長く、そして!! 常軌を逸した力で相手を求めるからさぁ大変って事なのさっ」



 ははぁん、成程ぉ。


 ディアドラをフった男は夜の相手を務められなくて別れを切り出したのか……。


 雄を求める雌に対して背を向けるのは生物として情けなくも思えるが、今の状態の俺様は人の事を言えねぇよな。



「カイベルト。それ以上不必要な事を言ったら殺すわよ??」


「わりぃわりぃ、でも皆知っている事だし別にいいだろ」


「今は戦いの場。ふざけた雰囲気は好きじゃないの」



 っと、今はナンパの場面じゃなくて戦いの場面だったな。


 ディアドラの様子がガラっと変わったし、俺様も本腰を入れて備えねぇと。



 だらけきった己の体に鞭を入れて気を引き締めようとするが……。何故か体の中に渦巻く淫靡な感情は霧散せずにその場に留まり続けていた。



 な、何でこの桜色の厭らしい感情が消えないんだ??


 いつもは戦いが始まると直ぐに消えるってのに。



「……っ??」


 己の体を見下ろしてその原因を探ろうとしていると進行役の男から真面目な声色が放たれた。


「それではこれより第一試合を始める。双方使用する武器はあるか??」


「俺様はねぇよ。ディアドラは??」


「無い」


 うん、ちょっと冷たい口調だな!!


 もうちょっと軽いノリの方が俺様も試合をし易いってのに。


「分かった。それではこれより第一試合を始める。双方構え!!!!」



 進行役の男から試合の始まりの合図が放たれそうになっているのにも関わらず、厭らしい気持ちは俺様の胸の中を相も変わらず独占し続けている。


 このままの状態で試合が始まったら恐らく、俺様は数十秒にも満たない速さで負けを喫してしまうだろう。


 な、何とか理由を探らねば!!!!


 微かに腰を落として正面奥に居る彼女の瞳を直視した刹那……。



「……ッ」



 頭の中でナニかがパンッ!!!! と弾け飛ぶ音が鳴り響いた。


 あぁ、そっか。そういう事だったのか……。


 悪いな、もう一人の俺様よ。今の今まで気が付いてあげられなくって……。



「それでは……。始めッ!!!!」


「ハァァアアアア――――ッ!!!!」



 開始の合図と同時に俺様に向かって一切の小細工無しで突貫して来るディアドラを捉えると下半身全体に強烈な血圧の上昇が生じた。



「……」


「何ッ!?」



 俺様に向けて来た右の拳をまるで赤子の肌に触れる様に優しく往なし、受け流して体位置を交換。



「何故追い打ちを……、ッ!?」


 刹那に出来た背に追い打ちを掛けない事に憤りを隠せない彼女が俺様の下半身を捉えるとその目がギョっと大きく見開いた。


 その理由は……、まぁ凡そこれの事だろうさ。




「ウ……、ウゥッ。グスッ……。や、やっとぉ……。やっと本来の俺様が帰って来たよぉぉ……」




 下半身の真っ赤な忍装束を内側からギュンギュンと押し上げている御柱と目が合うと思わず素直な声が出てしまう。


 数十日振りに男としての機能が復活を遂げると両目からポロポロと優しく温かな雨が溢れ出して来た。



「貴様!! 戦いの場で……。恥を知れ恥を!!」


 ディアドラが微かに頬を朱に染め、大変鋭い眉の角度で俺様を睨み付けて来る。


「先ずは礼を言わせてくれ。俺様の再起不能寸前までボッコボコにされた性欲を再び立ち上がらせてくれて……。本当に有難う」



 南のリーネン大陸で世界最高の性技を真面に受けてしまった俺様の性欲は今までの経験は一体何だったのか、これまで培って来た技術は一体何の為に存在したのかと。


 絶望に打ちひしがれ尚且つ先生の御業によって枯れ果てるまで搾精されてしまい、砂浜に打ち上げられたワカメみたいにカッラカラに干乾びてしまった。


 生も根も尽き果てた性欲ちゃんは灼熱の太陽が浮かぶ熱砂の上で干乾びてしまい胸の内一杯に広がる絶望感によって立ち上がる事を諦めていたのだ。


 熱砂と太陽の熱が性欲を乾かし続け、俺様の御柱はうんともすんとも言わず機能不全に陥った。



 しかし……、今日此処で俺様の心に素敵で優しい雨が降り注いだ。



 失明寸前にまで追いやられた性欲ちゃんの両目が彼女の体を捉えるともう一度あの快感を味わうべきだとして最後の力を振り絞って立ち上がったのだ。


 生命体は命の危機に瀕すると己の種を後世に残そうとして立ち上がると聞いた事もあるが……。


 今回の場合は生命の危機とディアドラが持つ女性としての魅力。


 その双方が俺様の再起不能に陥った性欲を立ち上がらせたのだろうさ。



「な、何を言う……」


「気が付かねぇのか?? ディアドラの体が世界最高峰の魅力を備えているから俺様の御柱は反応したんだよ」



「た、た、立ったぁ!! おい、ハンナ見ろよ!! フウタの御柱が見事にそそり立ったぞ!!!!」


 親友が喜々とした表情でハンナの右肩を大袈裟に叩いて俺様の御柱に指を差す。


「ふざけるな!! 某達に恥を掻かせるな!!!!」


「同感だ。今直ぐにそれを治めろ。さもなくば俺が切り落とす」


「お止めなさい!! フウタはやっと……、やっと男としての機能を回復させたんだ。お、俺はアイツの今の気持ちが痛い程理解出来るぜ」


 ダンが微かに浮かぶ涙を右手の甲でスっと拭うと。


「フウタ――!! 思いのままに戦え!! そして自信を取り戻したお前さんなら確実に勝てるからなぁ――――!!!!」


「おうよ!! 有難うな!!!!」


 この旅に出て出来た親友に格好良く右手の拳を掲げてやった。



「神聖な戦いの場で淫らな行動を取るな!!!!」


「そうだぞ!! 審判!! ア、アレは流石に反則だろう!?」


 ある観客達が俺様の限界寸前にまでそそり立った御柱を指差しつつ進行役の男に問い。


「まぁっ!! うふふ、久し振りにあぁんなに大きくなった御柱を見たわ!!」


「体は小さいのにアッチは御立派なのねぇ……」


 またある観客達は嬉々として俺様の御柱をうっとりとした表情で見下ろしていた。



「反則では無いが神聖な戦いには不釣り合いな現象だ。東龍の先鋒よ、人の目を汚す恐れがあるので今直ぐにソレを治めろ」


「ちっ、仕方がねぇな。俺様はこのままで戦いってのに」


「そんなモノを見せられて戦う此方の身を考えてくれ……」


「ギャハハ!!!! おっ立ったまま戦う奴なんて見た事がねぇぜ!!!!」



 ディアドラの呆れた溜息が吐かれるとそれを捉えたカイベルトが腹を抱えて大笑いをする。


 もう一人の俺よ、今はもう少し眠ってろ。そして次に起きた時にはたぁくさんの御馳走を与えてあげるからな??


 それまでの辛抱さ。



「ふ、ふぅ――……。さぁって、覚悟を決めますか」


 深く息を吸い込み長々と息を吐くと右手に力を籠め、そして丹田に強烈な気合を注入。


「デヤァァアアアア――――ッ!!!!」


 右の拳を今も元気溌剌と天に向かってそそり立っている御柱に一気苛烈に振り下ろすと。


「ギィィヤアアアアアアアア――――ッ!!!!」


 気の遠くなる痛みが御柱の中腹から腹の奥へと突き抜けて行った!!



「ウググゥゥッ!?!?」


 己の御柱を両手で抑え戦闘場の上を悶え打ちながら転がり続けるも強烈な痛みは消える事無く、寧ろ転がる度に痛みが増して行く様に感じてしまった。



「一――――ッ!! 二―――――ッ!!!!」


「ふ、ふざけんなぁぁああ!!!! 自打球で倒れたんだから計上カウントするんじゃねぇ!!」


 涙で微妙に視界が歪んだまま進行役の男を睨んでやる。


「ぜ、ぜぇっ……。ぜぇぇええ!! ふ――……。何んとか立つ事が出来たぜっ」



 戦う前からこんな痛みを受けても良かったのだろうか??


 まぁ男としての尊厳を失ったまま戦うよりもそして胸の内に広がるモヤモヤの意味を理解しないまま戦っていたら恐らく負けていただろうし。



「そのまま転がり続けていれば良かったのに」


 頬の赤らみが消えて戦士としての表情を浮かべているディアドラが俺様の目を確と捉える。


「それは出来ない注文さ。さて!! ディアドラちゃんよ!! 俺様からのお願いを聞いて貰えるかい!?」


「お願い??」


「この勝負に俺様が勝ったのなら……。一晩、いいや!! 二晩三晩!! 俺様とベッドの上で過ごしてくれ!!!!」



 覇気のある声で一切包み隠さず己の思いの丈を叫ぶ。


 やっと男としての尊厳を取り戻したのだ、これを使わない手は無いし。それとなにより、そのきっかけを与えてくれた張本人に恩返しをしたいのさ。



「ふふっ、ここまで馬鹿だと逆に尊敬してしまうわね」


「おっ!? って事は!?」


「その条件はフウタが私に勝つ事。しかし、私は誰にも負けないからその願いは一生叶わないわね」


 彼女がそう話すと両足をスっと開き、微かに腰を落とした。


 へへ、そうか……。いよいよ素敵な戦いをおっぱじめようって気なのね。


「よっしゃ!! じゃあ条件成就の為に死ぬ気で勝たせて貰うぜ!!!!」


 此方も彼女の心意気に応える様に戦闘態勢を整え終えた。



「「……ッ」」



 両者の間に存在する空気が対の位置から放たれる闘志と殺気によって熱せられ続け、時間が経つにつれて蜃気楼の様に揺らめき出す。


 いつどちらが動いてもおかしくない状況が続くと糸を張り詰めたかの様な空気が観客席へと伝播。


 観客達のひゅっと息を飲む緊張の音が微かに鼓膜を震わせた。



 どうする?? 俺様から仕掛けるか??


 ダン達から聞いた話によるとディアドラは西龍のあんちゃんの魔法を御自慢の腕力で掻き消したって言っていたし……。


 あの太い腕で抱き締められたら直ぐにでも昇天……、いやいや。今は戦いの場だから違うだろ??


 丸太を彷彿とさせる大量の筋肉が積載された太い腕で殴られたらきもぉち良い昼寝が待ち構えている事だろうし。迂闊に動かず相手の出方を見るべきだな。


 戦いでもベッドの上でも攻める事が大好物の俺様が見に徹し、ディアドラから一切視界を切らずにいるとどうやら彼女も攻めるのが大好きな様だ。



「そっちが動かないのなら……。こっちから行くぞ!!!!」


 此方の待ちの姿勢に痺れを切らしたディアドラが両足に力を籠めると思わず惚れ惚れしてしまう移動速度で俺様に向かって来やがった!!


「せぁっ!!!!」


「や、やるぅ!!」


 火の力が籠められた右の拳に対して上体を屈めて回避。


 空気をぶち破る鈍い音が響くと同時に何だか焦げ臭い匂いが鼻腔に届く。



 この焦げ臭い匂いは後頭部の毛が焼け焦げたものだな。


 完璧に避けたつもりだったけど相手の気迫、殺気によってちょっとだけ反応が遅れちまった。



「次は俺様の番だぜ!!!!」


 刹那にもビビっちまった情けねぇ俺様を叱り付けて気合を入れ直すと眼前に聳え立つ屈強な壁に己の拳を叩き込んでやった。


「ふむ……。踏み込みの速度、付与魔法と腕力。そのどれもが及第点ね」


 あ、あらら?? 全く堪えていないの??


 俺様の拳がみぞおちに直撃したんですけど??


「そりゃどうも!! 巨龍一族に及第点を頂けて幸いだぜ!!!!」


 彼女のみぞおちから拳をキュポっと引き抜くと左足に重心を置いて右足を素早く蹴り上げてやる。



 下からの急角度、攻撃の繋ぎ目を感じさせない流れに風の力を纏わせた足撃。


 全ての要素が綺麗に纏められた上段蹴りは俺様の予想した通りの軌跡を描いてディアドラの顎へと向かって行く。


 これ以上は無い自画自賛してしまう攻撃が空気の壁を突き破って間も無く到達しようとしたその時。



「人体の急所に向かって殺意を纏わせた一撃を一切の躊躇無く放てるのは良く鍛えられた証拠だ」


 彼女は特に表情を変える事無く俺様の見事な攻撃を左腕で受け止めてしまった。



 げぇっ!? 嘘だろ!? 左手一本で蹴りを受け止めやがった!!!!


 どんな腕力してんだよ!!


 人の足は自重を支える為に腕のそれよりも遥かに多い筋力を備えている。そこから繰り出される攻撃は腕よりも強力であるのは自明の理だ。



 そ、それなのにコイツは……。



「フウタの心意気に応えて私も……」


「ッ!?」


 やっべぇ!! 来るぞ!!


 足を元の位置に素早く戻すと両腕を体の前で交差させて大防御態勢を取った。


「殺意を纏わせた一撃を放つ!!!!」


 ディアドラの殺意と魔力と筋力を駆使した攻撃は俺様の大防御の姿勢を易々と崩し、猛烈な痛みが腹部に生じた。


「グェゲッ!?!?」


 まるで火の塊を直接腹に当てられた様な超激烈な痛みが生じ、その衝撃を真面に受けてしまった体が地面からふわぁっと浮かび上がる。


 そして、無防備になった俺様の死に体を見逃す程彼女は甘く無い。


「始まったばかりだけど、もう決めるわ」


「え、えへへ。手加減宜しく――」


 空中で微かに視線が合うとど――見ても強がりと思える口の角度でそう言ってやった。




「食らいなさい。大地壊撃グランドスマッシュ!!!!」




 ディアドラの体内から五臓六腑が捻る潰されてしまいそうになる程の魔力が迸ると宙に浮く俺様の右足を大きな右手で掴み、そして……。


 地面に這うゴキブリを平ぺったいナニかで叩き潰すかの如く、俺様の体を堅牢な戦闘場に思いっきり叩き付けやがった!!



「グブェッ!?」



 後頭部にかたぁい石が直撃すると頭にキチンと収まっている目玉が、脳味噌が飛び出してしまう常軌を逸した衝撃が襲い掛かって来やがる。


 チカチカと明滅する視界、吐き気がする程にグルグルと回る世界、そしてたった一撃で高めた気力が霧散してしまう威力。


 只地面に叩き付けられただけなのにこ、これ程の威力なのかよ……。



 と、言いますか。


 ま、ま、魔法というよりもこれは只の物理攻撃だろうが!!



「へぇ、まだ気を失っていないの」


「か、かぺぺ……」


 地面の上で微かな痙攣を続けているディアドラが俺様の右足を掴んだまま見下ろして来る。


「よ、よ、余裕――。こちとらこれ以上の攻撃を何度も受けて来たんでね。こ、この程度の攻撃じゃあ俺様は……」


 ヤられはしないと言おうとしたのだが。


「そう、じゃあもう一撃ッ!!!!」



 俺様が台詞を言い終える前にディアドラが右足を持ち上げ、更に先程よりも苛烈な速度で俺様の体を戦闘場に叩付けて来やがった!!


 こなくそぉぉおお――――ッ!!!! に、二度も同じ魔法……、じゃあない!!


 物理技を食らって堪るものかってんだ!!



「ギィィイイイッ!!!!」


 肝がキンキンに冷える速度で迫り来る平面に対して懸命に受け身の姿勢を取って少しでも衝撃を和らげようとするが……。


 どうやらそうは問屋が卸さないようだな。


「無駄よ。私の魔法は受け身すら意味を成さないのだから!!!!」


「だから!! これは魔法じゃなくて只の物理……。ゴハァッ!?!?」


 俺様が覚悟を決める前に大変かたぁい地面が顔面に直撃。


 星空に浮かべるべき大きなお星様がお目目から飛び出てしまった。



「ハァァアアアアアア――――ッ!!!!」


「ギィィエエ――ッ!?」



 俺様を地面に叩き付けるのはたった数度程度じゃあ満足せず左右へ何度も叩き付けて来やがる。


 お目目からお星様が飛び出たかと思いきや、間髪入れずに後頭部にとんでもねぇ衝撃が迸り御口から出したくも無い悲痛な叫び声が出てしまう。


 前後、左右。


 小さな餓鬼が玩具を振り回す様に俺様の軽い体を軽々と扱い剰え強烈な痛みを与える非情な攻撃の連続を受け続けていると意識がぼぅっとして来やがった……。



『フウタァァアア――ッ!! そこから逃げろ!!!!』


『気合を入れて奴の手を跳ね除けるのだ!!』


 ダンとハンナの声が水の中で聞く音の様に濁り、聞こえ辛くなって来たぞ。


 俺様もそうしたいのは山々何だけどよディアドラが俺様の足を離してくれねぇんだよ。


 それにこ、この何度も地面に叩き付けられる衝撃で御先祖様達が暮らす世界に俺様の意識が向かおうとしているし。


 すんばらしい威力の攻撃を受け続け徐々に気力と意識が奪われて行く中、決して聞き逃せない言葉が俺様の意識を現実の世界に引き留めた。



『馬鹿者が。二度も我等忍ノ者に恥を掻かせる気か』



 同郷の者であり尚且つ好敵手でもあるシューちゃんの御口からふざけた台詞が放たれると、俺様の頭の中でナニかがプチっと切れる音が響いた。



「はぁぁ――ッ!? 俺様が負けると思ってんのかぁ!?」


「そのままでは確実に負ける。一度では飽き足らず二度も敗戦を喫する気か、貴様は」



 あ、あ、あの童貞野郎が!! 俺様が手を出せない事をイイ事に調子に乗りやがって!!!!


 いいだろう!! じゃあ見せてやるよ!!


 俺様がこの窮地から一瞬にして逃れられる術を!!!!



「さぁ、これで決める!!!!」


 ディアドラが地面の上に叩き付けようと右腕に強力な力を籠めた刹那。


「えへっ、隙ありっ」


 彼女の豊満で中々の張り具合を誇る双丘を両手で思いっきり鷲掴みにしてやった。


「ッ!?」


「どりゃああああ――――ッ!! はっはぁ――!! 脱出成功っ!!」


「貴様……。神聖な戦いの場で……」


 にししっ、その羞恥に塗れた顔は中々に可愛いぜ??


 ディアドラが健康的に焼けた肌を真っ赤に染めて俺様を思いっきり睨み付けて来る様を捉えると、荒い呼吸を鎮める為に深い呼吸を続けて改めて対峙した。




お疲れ様でした。


現在、二話目の編集作業中ですので次の投稿まで今暫くお待ち下さいませ。

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