第百八十二話 激戦が行われる地へと
お疲れ様です。
本日の投稿になります。
良く晴れ渡った空から降り注ぐ優しき陽光と眼前に広がる朝食後の空になった食器の数々、そして何処からともなく吹く微風。
午前中の心地良いひと時に誂えた様な大変朗らかな光景を捉えると思わず陽性な感情の吐息が漏れてしまった。
「ふぅ――……。食ったなぁ」
久し振りにホカホカの御米ちゃんを腹一杯食べた御蔭か心だけじゃなくて体も大変満足しており、体を名一杯弛緩させて美しき青空を見上げる。
本当ならこのまま休日のお父さんの様に二度寝に興じるか若しくは気の合う友人達と共に釣りを開始したいのだが……。残念ながらそれは一切許されていない。
「これから龍一族と刃を交えるのだ。気を抜くな馬鹿者」
そう、だらしない姿勢で体を弛緩させている俺を大変こわぁい目付きで叱り付けた相棒の言った通り俺達はこれから数時間後に覇王の座を賭けた戦いに臨まなければならないのだから。
「わ――ってるって。でもさ、今から気を引き締めていたら戦いの時まで心がもたないぜ??」
「戦士足る者、常在戦場を心掛けろ。俺達が戦おうとしている者は龍の血を引く傑物達なのだぞ。気を抜いている様では生きる事さえ叶わないかも知れないのだ」
それはちょいと手厳しいと言ってやりたいのだが、相棒の言う事は確実に的を射ている。
他の魔物と違い龍族は種族特有の強さを有しており、例え武の道に通じておらずともその道に身を置く者でさえも思わず頷いてしまう力を有しているのだ。
ベッシムさんやシュランジちゃんがその良い例さ。
あの二人は戦士って訳でも無いのにそれ相応の筋力と魔力を有しているからなぁ。
数多多くの魔物達とは一線を画す力を持つ龍の血を受け継ぐ者達が武の道に足を踏み入れたらどうなるのか。
その強さは頑是ない子供でさえも明瞭に理解出来てしまう事だろう。
「俺を叱るばかりじゃなくてぇ、あっちも叱り付けたらぁ??」
空に向けていた顎をクイっと下げ、土鍋の向こう側でだらしなく仰向けになるフウタを顎で差してやる。
「けぷっ。ふぅっ!! 食ったなぁ!! 焼き魚をおかずにして米を食らう。これぞ正に理想的な朝食って感じだったぜ!!」
「五月蠅いぞ、フウタ。もう少し静かにしろ」
「嫌なこった。何でシューちゃんの命令を聞かなきゃいけねぇんだよ」
「はぁぁ……。もういい。その時が来るまで体を休めておけ」
はは、どうやら俺達のだらしない姿が強面白頭鷲ちゃんのカチカチに硬い心をへし折っちゃったみたいですねっ。
相棒が疲労を籠めた吐息を長々と吐き天を仰ぐと、頭上の太陽の光を刹那に遮る大きな影が俺達の頭上に出現した。
「――――。皆様、お早う御座います」
中々に御立派な体躯を誇る灰色の龍が大地に降り立つとその体には不釣り合いに映る大変礼儀正しい言葉を放った。
「お早う御座います、ベッシムさん。御米の差し入れ有難う御座いました。本当に美味しかったですよ??」
俺達の食糧難を見越してか昨日、態々北の領地から差し入れを運んで来てくれたのだ。
「御口に合って何よりです。それよりも……」
彼が人の姿に変わり大変物腰柔らかそうな口調で引き続き口を開く。
「本日は覇王魂ノ座で覇王継承戦が行われます。皆様、準備の方は宜しいでしょうか」
「えぇ、食器も洗い終えて装備も荷物も纏め終えています。後はぁ……」
食後の朗らかな景色からクルっと視覚を百八十度反転させて湖の方へ移す。
「成程。グシフォス様の出発を待つばかり、ですか」
そういう事。
そんな意味を籠めて一つ大きく首を縦に動かした。
「グシフォスの野郎は魚が一匹釣れるまで腰を上げないって強固な姿勢を取っていてさぁ。俺様達もお手上げって感じだぞ」
「あはは、それは大変で御座いますね。それでは皆様、必要な物資を持って移動の準備をして下さい」
ベッシムさんが乾いた笑い声を上げると綺麗な歩調で決して釣れない釣りに興じているグシフォスの下へと歩いて行った。
「さてと、こわぁい龍ちゃん達と戯れる為に準備を始めましょうかね」
と言っても殆ど荷物を纏め終えているので後は背嚢を背負う位なんですけども。
使い終えた食器類を野営地の一画に纏め、己が装備する大弓並びに二つの短剣を腰に収めて必要な物資が詰まっているまぁまぁ重たい背嚢を背負い終えると湖の方へ移動を開始。
「よ――っす、グシフォス。最後の最後まで悪足掻きしていたけど釣れたかい??」
両手で釣り竿を握り潰す勢いで握り締めている彼の背に問うてやった。
「ちっ、もう時間か。後三十分もあれば釣れたのだがな」
いやいや、俺達が来てから一匹も釣れていないのだから例え数日間の猶予を与えたとしてもその釣り糸は決して動かないでしょうね。
「グシフォス様。本日は……」
「言わなくても分かっている」
グシフォスが釣り糸を手繰り寄せ湖から仕掛けを回収すると地面に竿を静かに置き立ち上がった。
ほぉ――……。座高の位置からしてまぁまぁデカイと思っていたけど、コイツの身長は相棒と同じ位だな。
「帰って来ても釣りは出来るし、取り敢えず頑張ろうや」
俺より頭一つ抜けて背の高いグシフォスの背を景気付けとして優しく叩いてやった。
「貴様に言われなくてもそうつもりだ」
彼の体から眩い閃光が放たれ、その光量が収まると俺の眼前に一頭の深紅の龍が出現した。
あの黒龍とまではいかないが、相棒とほぼ同じ大きさを誇る巨躯を支える二本の足には大量の筋力が積載されており足の先と手の先には鋭い爪が備わる。
炎を連想させる赤き龍鱗は陽の光を反射して美しい輝きを帯び、軽い炎や鉄程度の攻撃なら容易く跳ね返してしまうであろう厚みがある。
口から覗く岩をも噛み砕く牙、頭頂部から生えた尖った両耳、紅蓮の瞳は森羅万象を全て捉える鋭さを有しているのだが。深紅の龍で最も目立つのはやはり巨躯の背から生えている両翼であろう。
両翼の内側は黒が目立ち外側は龍鱗と同じく朱が目立つ。
白頭鷲が空の覇者ならばあの深紅の龍は空を、大地を統べる君臨者とでも呼べばいいのか。
神々しささえ感じてしまう龍の姿を捉えると時間の流れを忘れて只々魅入っていた。
「先に行くぞ」
「どわぁっ!?」
深紅の龍が神々しい翼を激しくはためかせると暴風が吹き荒れ、地上の塵芥を舞い上げて空高く飛翔。
たった数秒の間であの巨躯が空の向こう側へと姿を消してしまった。
は、はえぇ……。あの飛翔速度、もしかすると相棒に匹敵するんじゃないのか??
「ほぉ、中々の速度だな」
いつの間にか白頭鷲の姿に変わった相棒が猛禽類特有の鋭い瞳で彼が空に描いた軌跡を見つめていた。
「グシフォス様の速さはこの大陸でも上位に位置しますので。それでは皆様、私の後に付いて来て下さいね」
「ハンナ!! 乗らせて貰うぜ――!!!!」
「失礼する」
「おっしゃ!! 相棒!! 一丁龍退治と洒落込もうじゃないか!!!!」
白頭鷲の立派な足を一つ大袈裟に叩き、触り心地の良い羽が生え揃う背に軽やかに飛び乗った。
「振り落とされない様にしがみついておけよ!!」
先に空に舞ったベッシムさんを追う様に彼が力強く翼を動かすと先程のグシフォスの飛翔に当てられたのか、それとも覇王継承戦に向けての景気付けなのか。
目玉が頭蓋の後頭部に引っ張られる錯覚を感じてしまう飛翔速度で大空の中へと舞い上がって行った。
「「ギィィエエエエ――――ッ!!!!」」
こ、この殺人的加速度ッ!! 何度体験しても慣れる気がしねぇ!!
「おや、もう追い付いたのですか」
先行していたベッシムさんに並走すると殺人的加速が徐々に減少。
「て、テメェ!! 俺様達を殺す気か!!!!」
体の自由を取り戻したフウタが右前足で彼の背を力強く叩いた。
「ふんっ、準備運動みたいなものだ」
その準備運動で出場選手でもある俺達が負傷したら本末転倒ですぜ??
相棒の背を力強く踏んづけてそう言ってやりたいがどうせこいつは聞きやしないし、善処しようとする気配すらも見せないので言いませんっ。
「ベッシムさん、覇王魂ノ座は大陸中央に存在すると仰っていましたけど。どれ位の時間で到着しそうですか」
相棒の飛翔速度が、心臓がきゃあきゃあ喚かない速度に落ち着いたので少しばかり緊張の色に染まっている彼の横顔に問うた。
「この速度ですと凡そ一時間程度で御座いましょうか。覇王魂ノ座に到着しましたのならダン様達は東龍の門から入場して下さい」
「東龍の門??」
「言葉足らずでしたね。覇王魂ノ座の入場口は東西南北に分かれており、それぞれの代表者が治めている方角から入場を果たします。選ばれし二十名の戦士が覇王魂ノ座の中央で一堂に会し、現覇王の言葉を待って覇王継承戦が開始されます」
ふぅん、先ずは開会式みたいなのを執り行いそれから血で血を洗う激闘が始まるのか。
「覇王継承戦の戦闘方法や取り決めは現覇王の口から直接言い渡されるので決して聞き逃さない様にして下さいね??」
「おう!! 勿論さ!!」
「所で、ベッシムさんは北の出身ですけど俺達と行動を共に続けても宜しいので??」
俺の頭上で無意味に燥ぐ小鼠の尻を注意の意味を含めて若干強めに突きつつ問う。
「私はあくまでも案内役で御座います。ダン様達を誘導したのなら北の観客席にて素晴らしい戦いを観戦させて頂きますよ」
「観客席?? 開けた地で戦う訳ではないのか??」
鼠の姿のシュレンが相棒の羽の合間から小さな鼻を覗かせながら話す。
もう、行儀が悪いですねっ。人と話す時はちゃあんと顔を出して話しなさいって口を酸っぱくして言っているでしょう??
「覇王魂ノ座は一種の闘技場の役割を果たしております。すり鉢状に作られた石製の外周に観客席が設けられ、その中央には激しい戦闘にも耐えられる石製の丸い戦闘場があります。戦闘が行われる場合、各代表者はその戦闘場に上り相手と戦う。そして観客席で観戦している者達の魂を震わせるのです」
へぇ、そういう仕組みなのですね。
造りが良ければ南の大陸に帰った時、ガイノス大陸の闘技場はこんな形でしたよ――ってゼェイラさんに進言してみようかしら??
「説明して頂き有難う御座います。東の領地の代表として恥じぬ戦いに努めさせて頂きますね」
「ふふっ、楽しみにしていますよ」
ベッシムさんが柔らかく口角を上げて少しだけ飛翔速度を上昇させると相棒もまた速度を上昇させて傑物共が待ち構えている大陸中央へと急いだ。
これから始まる戦いは龍の一方的な蹂躙なのか、将又龍の力に懸命に抗う素敵な戦いになるのか。
それは俺達の実力次第であろう。
龍の力は魔物の中でも一つ、二つ抜きん出ており種族特有の力を遺憾なく発揮されれば俺達の苦戦は必至。
しかし、そこに付け込む隙があるのでは無いだろうか??
ほら、龍一族はどの種族よりも優れているんだぞ――って上から見下ろす様。斜に構えている奴には幾らでも付け込めるし。
まぁ中には相棒みたいに武人気質の連中が居るだろう。
一部の隙も見当たらず、決して奢らず、自分の実力を過信しない相手と戦う破目になったらどうしよう……。
強固な壁をブチ破る為に策を講じるのが定石だが、幾重にも練った策をたった一撃で跳ね返してしまう力を持っていたら策云々処の話じゃねぇし……。
「はぁ――……」
気苦労、不安、そして若干の恐怖を混ぜた吐息を漏らして大きく天を仰いだ。
「はは、らしくねぇじゃん」
恐らく俺の気持ちを汲んだのであろう。
フウタが右前足で俺の頭を優しくペシペシと叩く。
「うっせ。誰だって死が待ち構えている戦いに臨みたくないだろうさ」
「そうか?? ハンナの馬鹿野郎は兎も角。俺様とシューちゃんは高揚しているぜ??」
「誰が馬鹿だ」
フウタの言葉が気に障ったのか、ハンナが鋭い瞳を更にキッと尖らせて此方に振り返る。
フウタ達は修練の為、相棒は更なる高みを目指す為か。俺の場合はどうだろう??
元より世界の広さを知りたいが為にこの冒険に出掛けたのだからぁ……。戦闘を通して龍一族の力をまざまざと思い知り、それを世間に広める為に戦闘に臨む。とでも言えばいいのかしらね??
まぁその戦闘で命を失っては意味が無いので、本当にヤバイと思ったら皆には悪いけど降参しよ――っと。
人知れず安全安心が確立されている退路を確保しようと考えているとベッシムさんと相棒が飛翔速度を落とした。
「皆様、到着しました。あそこが今回の覇王継承戦が行われる覇王魂ノ座で御座います」
どれどれぇ?? 俺達が命をやり取りを行うであろう場所はどんな所かしらね。
相棒の背の上を四つん這いの姿勢で移動し、地上に落っこちない様にしてそ――っと地上を見下ろすとそこには東西南北へと何処までも続く平原の中、天然自然とは一線を画す人工物が確認出来た。
ほぼ完全と思われる円状の人工物の外周には矮小な粒が蠢いており闘技場と聞いていたから蠢いている粒は観客であり、すり鉢状の中央にドンっと腰を下ろしているのは戦闘場だな。
天高い位置からでも覇王魂ノ座を確認出来るって事はかなりの大きさを有しているのだろう。
「では降下します。くれぐれも粗相の無い様にして下さいね??」
「ハハ、相棒。ベッシムさんの言った事を聞いていたかい?? お前さんの急降下は此処じゃ御法度なんだって」
「ふん……」
ハンナが悪態を付いた俺をジロリと睨み付けると大変ゆるりとした速度で旋回行動を描きつつ地上へ向かって降下を開始。
己の命を案じてしまう急降下とは打って変わって安全安心が保証されている速度で地上に降り立った。
「んは――!!!! でっけぇ!!」
相棒の背から軽やかな所作で降り、人の姿に変わったフウタが背の高い闘技場の外壁を見上げる。
所々に経年劣化の傷やヒビが目立ち若干の古ぼけた印象を此方に与えるが、闘技場の壮大さや格式の高さがそれを上塗りしてしまい人の口から容易く感嘆の声を勝ち取ってしまう。
「でかいだけじゃくて何処か厳かな感じがするよなぁ――……」
俺もその例に倣い、馬鹿みたいにポカンと口を開けて覇王魂ノ座の外壁を見上げていた。
「では私は観客席に向かいますので」
人の姿に変わったベッシムさんが俺達から向かって北の方角へと歩み出す。
「あ、そっか。ベッシムさんは北の領地出身だから其方で観戦するのですよね」
「ダン様の仰る通りで御座います。もう間も無く東龍の門から案内人が迎えに来ますので彼の指示に従い入場して下さい」
彼が静かに覇王魂ノ座の中へと続くと思われる大きな穴を指すと。
「よっしゃ!! 必要な荷物を持って移動しようぜ!!」
フウタが誰よりも先に少し離れた位置にある穴へ向かって駆け出して行った。
「全く……。いつもお母さんを置いて行くなっていっても聞きやしないんだから。じゃ、俺達も行きますね」
「健闘をお祈りしております」
接客業若しくは人と繋がりのある職業に就く人達が見本にすべき完璧なお辞儀に見送られて東龍の門と言ったか。
平屋一階建ての天井とほぼ同じ高さに作られた穴に向かって行くと。
「遅かったな」
俺達の事を一切合切考えず先行していたグシフォスがいつもの無表情で俺達を迎えてくれた。
「あのね?? こういう時は団体行動って相場が決まっているのよ?? 誰かが迷子になってはぐれたら大変だ――ってお母さんは口を酸っぱくして言っているじゃない」
「もう間も無く俺達も入場する。案内人の指示に従え」
あっれ!? 無視です!?
ヤレヤレと呆れた吐息を吐いた俺に一瞥する事も無く、変態的釣り好き野郎は通路のずぅっと先に見える光に向かってそう言った。
「早く始まらねぇかな!! 足が逸っちまうぜ!!!!」
「落ち着け馬鹿者。某達はあくまでも臨時の戦士なのだ」
「そうですよ――。横着な態度を取ったらお母さんがお仕置きしますからねぇ――」
「んだよ、ノリがわりぃな。ハンナもそう思うだろ!?」
「未だ見ぬ戦士達の力に高揚しているのは確かだっ」
東の選ばれし戦士達から高揚した雰囲気が放たれている。
比べっこが大好きな子達の事だ。きっとこれから始まるであろう激戦にワクワクしているのは理解出来るのですが、ちみ達は肝心要な事を忘れている。
そう、龍一族の力を余り見くびらない事だ。
南の黒龍から受けた一撃が良い例さ。
もしも俺がアレと同じ力を真正面から受け止めたらどうなるか??
体全身の皮膚が一瞬にして焼け爛れ、口から入った炎が肺を焼き尽くし、網膜の水分が蒸発。痛みで悶え打つ前に意識を失い絶命に至るであろう。
そんな奴等とこれから戦うんだぜ??
あぁしてワクワク感全開で居られるのはちょっとどうかと思うな――。
まっ、それでも?? 俺も全く高揚していない訳では無い。
これまで相棒と共に鍛えて来た武が龍一族に通用するのかどうか試してみたいし。
東龍の穴の前で燥ぐフウタと隠し切れていない高揚感を醸し出す横着息子達の姿を母親の温かな瞳を浮かべて見守っていると、穴の暗がりの中から一人の男性が一切の足音を立てずに俺達の前に姿を現した。
「――――。大変お待たせしました。各地の代表者が揃いましたのでご案内させて頂きます」
黒を基調とした清楚な服で身を包む背の高い男性が現れると俺達に対して静かに腰を折って美しいお辞儀を披露。
必要最低限の言葉を放つと東龍の通路に向かって踵を返した。
お、おぉ。いよいよ龍達との激闘が始まるのか……。
「よし、付いて来い」
東の代表者であるグシフォスが大股で彼の背に続きつつ俺達に指示を出す。
「おうよ!! さぁって!! 一丁ド派手に暴れ回るとしますかぁ!!!!」
「俺はお前さんの怖いもの知らずが羨ましいぜ」
軽快に進み始めたフウタの後に続き、杞憂やほんの少しの恐れを吐き出しつつ話す。
「巨大砂虫、鉱石百足、そして古代種の傑物でもあるジャルガンとの死闘を潜り抜けたその力を過信するなとは言わないが……。ダンは自分が思っている以上の力を有しているのだぞ。これまで培い積み上げたモノを信頼して戦いに臨めば相応の力を発揮出来るだろう」
俺の心の空模様を見越したのか、シュレンが正面の光を見据えながら声を掛けてくれた。
ま、まぁっ!! この子ったら!!
いつの間にお母さんの心を労わる優しい想いを持ってくれるようになったのかしらね!!
「うふふ、有難う。お母さんはシュレンが優しい子に育ってくれて嬉しいわよ??」
俺の右隣りを歩く黒頭巾に包まれた彼の頭を優しく撫でてあげると。
「や、止めろ……」
自分の行いを褒めてくれて嬉しい反面。
自分はもう大人なのだから子供扱いは止めてくれ、と。思春期特有の男の子の手の所作で此方の手を払ってしまった。
いつものやり取りを行っていると自分でも驚く程に双肩の力が抜けて行く感覚を掴み取ってしまう。
龍一族との戦闘を想像していた体と心はその先にある死という存在を察知して自分でも知らぬ内に強力な緊張感を生み出していたのだろう。
その蟠り、不必要な緊張感が抜け落ちると心に火が灯り拳に力と光が宿った。
さぁって……。此処まで来た以上、逃げ道は一切合切塞がれちまった訳だし。
フウタ程の乗り気じゃあないけれども馬鹿げた力を有している龍一族に一泡、二泡を吹かせてやろうとしますか!!!!
恐れや過信や驕りを吹き飛ばす為に己の両の頬を軽快にパチンと叩き、東龍のながぁい通路の先に待ち構えている光の下へと進んで行った。
お疲れ様でした。
出場する戦士達の触りまで書きたかったのですが、リアルが忙し過ぎ且微妙な夏バテが再発した為本日の投稿は此処までとなります。
お盆休みも終盤に突入しましたが、読者様達はどの様にして夏休みを過ごしていますか??
私の場合は来週に控えた富士登山に向けての準備に追われているといった感じでしょうか。週間天気予報では登山日の天気は曇りとなっていますので、まぁ大丈夫でしょうという楽観的な感情が湧く一方で初の富士登山で曇りは不味いのでは?? という不安もあります。
しっかりと装備を整えて登る予定ですので残す問題は体力でしょうか。
自分の力を過信せず、根拠のない自信は捨て置き、決して無理をしない。
これを念頭に置いて日本で一番高い山の頂上を目指します!!
そして、ブックマークをして頂き有難う御座いました!!
うだるような暑さの中、読者様からの嬉しい知らせを受け取り執筆活動の励みとなりました!!
それでは皆様、引き続きお盆休みを堪能して下さいませ。