第百七十九話 襲い来る獰猛な野生生物
お疲れ様です。
本日の投稿になります。
心の中の恐怖心が膨れ上がるに連れて心拍数が急激に上昇して行く。
五月蠅く鳴り響く心臓の音が鼓膜を震わせ、その音は他者にこの音が聞こえてしまうのでは無いかと有り得ない妄想を抱く程に大きい。
バックンバックンと五月蠅く鳴る心臓の原因は言わずもがな。俺達の正面で迎撃態勢を整えている超生命体だ。
この広い空間の天井までの高さは凡そ十五、六メートルなのだが奴は余裕を持って天井付近から俺達を漆黒の目で睨み付けて来やがる。
上半身を擡げて立たせているのにも関わらず下半身の体節には随分と余裕があり、体全部の節足は今直ぐにでも動き出せる様に怪しく蠢いていた。
こ、こんな化け物と対峙して怖がらない奴は果たしてこの世に存在するのでしょうかね……。
べっちゃりと手汗で濡れた左手で大弓を持ち、いつでも矢を撃てる態勢を取ってその時に備えていると。
「おらぁ!! 背中が御留守だぜぇぇええ!!!!」
命知らずと呼ぶべきか将又勇猛果敢と呼ぶべきなのか。
我が隊の切り込み隊長であるフウタが風の力を纏い鉱石百足の背に向かって突貫を開始するものの。
「ギィッ!!」
「ちぃっ!! 小太刀じゃあカスリ傷位しか付けられねぇか!!」
鉱石百足が長い体を器用に丸めて防御態勢を取り彼の攻撃をほぼ無力化してしまった。
「フウタ!! そっちに頭を向けたぞ!!」
「ギッ!!」
ハンナの鋭い剣撃が沢山ある節足の一部を切り付け。
「わ――ってるよ!! シューちゃん!! 援護宜しく――!!」
「某は貴様の尻拭いをする為に鍛えて居るのでは無いのだがな……」
「グゥッ!?」
フウタとシュレンの見事な連撃が数百本ある節足の一本を切り飛ばした。
奴を捉えても恐れを知らない者は此処に数名居ましたねっ。
普段は口喧しく保護者である俺の言う事を一切合切聞かない連中だが、事戦闘になると呆れる位に頼りになるぜ。
いつまでも弱気なままで居る訳にもいかねぇし。
お母さんもそろそろこの馬鹿げた戦いに参戦させて頂きましょうかね!!
「強面百足さんにお届け物で――っすっ!!」
大弓の弦を力強く引き節足と節足の僅かな間に確認出来る気門を狙って矢を射った。
「ギギッ!!」
「あんれまぁ……。巨大砂虫の時とは違って全く当たる気がしねぇな!!」
全長二十メートルを優に超える巨躯なのにも関わらず全ての部位を素早く動かし続け、奴の弱点でもある気門は素早い動きと節足の怪しい動きによって上手い具合に当たらない様になっている。
体節の一つに照準を絞って二射目を放つが。
「グググゥ……」
結果は一射目と同じ。
俺が放った矢はキンッ!! という甲高い音を放ち。とても生物が持つ装甲とは思えない硬度の装甲によってものの見事に弾かれてしまった。
素早い動きと節足で弱点を隠しているのは理解出来た。
ちゅまり、俺達の目下の目標は当初の予定通り奴を弱らせて頭を跳ね飛ばす事に変わりないのだが……。
その方法の一つである気門を潰す事が困難になった今、新たなる策を練らなければならない。
「ハンナ!! 気門に攻撃を加える事が出来るか!?」
「奴は絶えず移動して気門を守っているがこの馬鹿げた移動速度を落とせば可能になるぞ!!」
ハンナが岩で出来た周囲の壁、天井、地面の上を気色の悪い音を奏でながら移動し続けている鉱石百足を捉えつつ叫ぶ。
あ、うん。それが出来ないからこうして尋ねているのですよ??
「四の五の言ってねぇ攻撃を加えろや!!」
フウタが素早く動き続ける百足の体節に小太刀による攻撃を加えるが。
「ギシィッ!!」
「いでぇっ!! 畜生めが!! 速いくせにかてぇんだよ!!!!」
広い室内の方々に展開する俺達を余裕を持って取り囲める巨躯からはとてもじゃないけど想像出来ない素早さと持ち前の装甲の厚さで弾いてしまった。
さっきまで俺達が取り囲んでいたのにいつの間にか鉱石百足が俺達の外周を回って取り囲む形になっていますねぇ……。
べらぼうに大きい体なのにその速さはちょっと卑怯じゃないかい??
「悪戯に体力を消失させてしまうよりも考えて行動した方が理に適っているんだよ!!」
戦闘が始まってから漸く少しだけ速度を緩めやがったな!?
フウタの一撃を受けた鉱石百足がほんの僅かに移動速度を落とした刹那を見逃さず、最も近い位置にある気門へ向かって矢を射ってやった。
「ギギギィィイイッ!!!!」
うひょう!! 効いてる効いているぅ!!!!
鉄製の鏃が気門の奥深くに刺さり、肉の割れ目から濃い黄緑色の体液が零れ始めて地面へと垂れて行く。
俺が潰したのは数多ある気門のたった一つだ。しかし、その痛みは相当堪えた様で??
「ギ、ギギギ……」
戦闘が始まってから奴が初めて馬鹿げた移動速度を完全停止させ、痛みの元である矢の方へ顔を向けていた。
「野郎共!! 動きが止まったぞ!!!!」
まぁ俺が態々言わなくても攻撃大好きっ子達がこの千載一遇の機会を見逃す筈は無いよね!!
「分かっている!!」
「どぉぉおおおおりゃああああ――――!!!!」
「背が空いているぞ!!」
「シィィイイッ!!!!」
鉱石百足が三方向から殺意剥き出しで襲い来る戦士達を捉えると停止状態を解除。
再び馬鹿げた移動速度を維持して入り口から向かって右方向の穴の中へ姿を消してしまった。
「ちぃ!! 外したか!!」
「野郎は逃げて行ったのかよ!!」
「いや、その線は薄い」
「シュレンの意見に賛成だな。逃げるのなら相棒の攻撃を受けた時点で逃げている筈だよ」
アイツは俺達に勝てると見込んで襲い掛かって来やがった。
だが、思いがけぬ反撃を食らってしまい一旦退却して頭を冷やそうって算段だろうさ。
「俺達の攻撃方法、強さ、大きさ。それら全ての情報を改めて精査して襲い掛かって来るぞ」
「たかがデケェ虫にそこまでの脳があるとは思えないんだけど??」
「頭で考える必要無いって。自然の生存本能がそうさせているんだよ。取り敢えずどこの穴から襲い掛かって来るか分からねぇし。部屋の中央で死角を無くそうぜ」
「了承した」
俺の提案にハンナが頷くとそれぞれが背を預けて一切の死角を無くす強固な陣形を取った。
「「「「……」」」」
何処かの穴から聞こえて来る鉱石百足が移動する恐ろしい移動音が広い部屋に響き、生理的嫌悪感を与える虫特有の饐えた強烈な匂いが鼻腔を突くと一旦は収まった恐怖心が心の中を侵食して行く。
「ふ、ふぅっ。一体何処から襲い掛かって来やがる」
フウタが額から顎下に垂れ落ちて来た汗の粒を拭いつつ話す。
「それが分かれば苦労せん」
「シューちゃん?? こういう時は気の利いた言葉を使って相手の心を労わるんだぜ??」
「この場に居る戦士達にその必要は無い」
俺達の事を買ってくれているのは嬉しいのですけれども、少しばかり気の利いた言葉を放って恐怖心を紛らわせて欲しいのが本音ですわ。
俺の心臓はお前さん達みたいに超硬い鉄製じゃなくて、それ相応の柔軟さを持ち合わせた筋肉ちゃんで出来ていますのでね。
「あっそ。じゃあ俺様が気の利いた言葉を送ってやるよ」
「だから必要無いと言っているだろう。口を閉じて感覚を研ぎ済ませておけ」
「はは、お前達のやり取りが何よりの言葉……」
ん?? 何だ??
今、天井から微かにパラパラと砂が降って来た様な感覚がぁ……。
右手で左肩の砂をパパっと払い、何気なく天井へ向けて顔の全部を向けると全身の血液が一瞬で凍結してしまう恐ろしい姿を捉えてしまった。
「ギギギギィィイイイイイ――――!!!!」
「上だぁぁああああ――――!!!!」
阿保みたいにデケェ鉱石百足が降って来るとほぼ同時に叫び、死に物狂いで前方に飛び出してやった。
あ、あ、あっぶねぇ!!!!
少しでも違和感を覚えていなかったら今頃あそこの岩みたいに鋭い牙でバラバラにされていただろうさ!!
「この野郎!! 上から降って来るんじゃねぇ!!」
フウタが右手に持つ小太刀で左側面の節足の合間に刃を入れて節足を撥ね飛ばし。
「そこだぁぁああああ!!!!」
俺は目の前に突き立てられた節足の一本を黒蠍の甲殻で作られた短剣で切り落としてやった。
よっしゃあ!! 少しずつこうして弱まらせていけば弱点である気門を穿てる移動速度に減少す……。
「ギィッ!!!!」
鉱石百足の数珠繋ぎの巨躯が勢い良く回転。
苛烈な速度から猛烈な遠心力を得た尻尾の先端が視界の端から突如として現れ、刹那に回避行動を取るが……。
「う、うっそだろ!? うぐぇっ!?!?」
どういう訳か攻撃範囲の外に出た筈なのに尻尾の薙ぎ払いを真面に受けてしまい、ゴツゴツの強面の岩肌に叩き付けられてしまった。
「うっ……。いってぇ……」
何で避けた筈の攻撃を受けなければならないんだよ……。
黒蠍の防具で即死は免れたが呆れた衝撃を全て吸収出来る筈も無く、今も胸と背にかなりの痛みが生じている。
骨は折れていないけども全身の筋肉が程よく痛め付けられ、更に後頭部を打った所為か微妙に視界が定まらない。
この程度の痛みと怪我ならば全然大丈夫さ!! と。
俺の痛覚を知る由も無いもう一人の俺は声高らかにそう宣言していた。
い、いちち……。もう一人の自分は大丈夫と診断したけれども。
結構どころか、かなりの痛みなんですけどね!!
「ダン!! 大丈夫かぁ!!」
俺の様子を確かめる様にフウタが叫ぶ。
「これが大丈夫に見えるのか!? ああんっ!?」
未だ微妙に力が入らないあんよちゃんを叱り付けて大地に足を突き立ててやると思いの限りを叫んでやった。
「テメェ!! 俺様が折角心配してやったのにその言い草はなんだ!!」
「誰だって猛烈な勢いで岩肌に叩き付けられたらキレるだろうがよ!!」
クソ野郎が!! 俺の体を蟻の体を蹴り飛ばす様に軽く扱いやがって!!
その顔面にくっ付いている二つの目玉を穿ってやらぁ!!
「食らいやがれ!!」
相も変わらず馬鹿げた大きさの体を器用に動かしてフウタ達を翻弄している鉱石百足の顔面に向かって矢を射ってやった。
「ギギッ!!」
「ふざけんじゃねぇぞ!! 何だよ!! その阿保みてぇな硬さ……」
俺の想いを乗せた矢は目玉の脇をスっと抜けて奴の顔面に着弾。
鏃が装甲に触れると刹那に矮小な火花が散り鉱石百足の防御力の高さを改めて思い知る事となった。
しかし、今の一撃で奴の装甲云々よりも先程俺が食らった尻尾の雷撃のカラクリを見抜く重要な種を入手する事が出来た。
い、今……。矢が瞳に着弾する時、ニュウって奴の体が前に伸びなかった??
もしかしてぇ……。コイツ、ある程度体を前後に伸ばす事が出来るんじゃねぇか?? ほら、数珠繋ぎの特徴を生かしてさ。
「相棒!! どうやらそいつは数珠繋ぎの体を利用して微妙に体を伸縮させる事が出来るぞ!!」
恐らく、というかこの特徴を生かして尻尾の一撃を俺に叩き込んだのだろう。
相手の間合いを完璧に把握してその攻撃範囲から逃れたのにも関わらずクシャクシャに丸めた紙みたいに吹き飛ばされたし。
「貴様が攻撃を受けた際に感じた違和感の正体はそれか」
「そういう事さ!! やい野郎共!! 今感じている奴の間合いの範囲を一割から二割程度増して備えろ!!」
敵の攻撃範囲を把握するのは己の生死を別つ重大な要素だ。
戦いの素人さん達は適当に図るけどもその道を極めし者程相手の間合いに敏感になる。そりゃあ自分が殺されるかも知れない戦いに身を投じているのだ。
敏感にならざるを得ないのは自明の理さ。
鉱石百足は俺達が自分の攻撃範囲に身を置きたがらない事を理解して体を伸ばして攻撃を加えたのか、それとも自然の闘争本能がそうさせたのか。
生憎俺の足は二本であり、足が百本ある百足では無いのでそれは理解に及ばないが猛烈なる野生の勘があの攻撃を繰り出したのだろう。
「一割二割って言うけどよぉ!!」
フウタがキュっと目を見開いて天井を縦横無尽に動き回る百足を見上げる。
そ、そうなのだ。
ただでさえ広大な攻撃範囲を一割から二割増すとこの部屋全てが奴の攻撃範囲にすっぽりと収まってしまうのですっ。
「最初から何処にも逃げ場がねぇのは分かってんだろうが!! 我慢して戦えや!!」
「うるせぇ!! 死神の鎌が首に掛けられたまま戦うのは誰だって嫌に決まっているだろうが!!」
御尤もです!!
フウタが叫ぶ通り、俺達全員の首には今も冷たい鉄の鎌がピッタリと掛けられているのだ。
少しでも油断すれば。
『キヒッ!! さぁ――、おいで。甘美な香りが漂う死の国へ……』
骸骨姿の彼若しくは彼女が巨大な鎌を勢い良く引き、俺達を死の世界へ誘ってしまいますもの……。
鉄の硬度よりも更に硬度を増した生唾をゴクリと飲み込みその時に備えていると。
「ハンナ!! 来るぞ!!」
シュレンが叫ぶとほぼ同時に鉱石百足の巨大な頭が上空から降り注いで来やがった!!
「ギギィッ!!!!」
「フンッ!!」
相棒の剣と鉱石百足の牙が宙で衝突すると視界が刹那に明滅してしまう火花が飛び散る。
天井からの突撃速度そして自重を生かした鉱石百足の突撃はかなりの勢いを有しており、相棒は衝突位置からかなり離れた場所まで後退させられてしまった。
奴の攻撃を刹那に見切りそれを受け止める勇猛果敢な行動は尊敬に値するが、俺はぜぇぇったいに受け止めようとは思わん!!
だって気色悪いじゃん!? 目の前で己の肉を食らおうとして四つの牙がワチャワチャと蠢くんだぜ!?
それに鉱石百足の口からはムワァっした饐えた臭いが発せられているだろうし。
だがしかしっ!!
刹那にとは言え、鉱石百足が止まったのは僥倖だぜ!!!!
戦場で動きを止めてぼぅっと突っ立っているのは死を意味するんだよ!!
「食らぇぇええ――――ッ!!!!」
正面の気門に向かって矢を射ると。
「ギャハハ!! 後ろのあんよが御留守だぜ――!!!!」
「勝機ッ!!!!」
俺と同じ考えに至ったフウタとシュレンの小太刀が体節にある気門を鋭く切り裂いた。
「ギギギィィッ!?!?」
あはっ!! 俺達の攻撃の効果は超覿面っ!!!!
鉱石百足が上半身を高く掲げると痛みに悶え打つ様に細かく痙攣を開始。
「ギギギギッ!!!!」
痛みからそして俺達から逃れる様に穴の中へ再び姿を消してしまった。
「へっ!! おとといきやがれってんだ!!!!」
フウタが鉱石百足の大きな尻尾を捉えつつ人差し指で鼻の下を得意気に擦る。
「奴は再び態勢を整えて襲い掛かって来る。それまで気を抜くな馬鹿者」
「シュレンの言う通りだ。さっきと同じ陣形を取って死角を無くすぞ」
「了解了解っと……」
端整な顔に大量の汗を掻いている相棒の指示に従い、だだっ広い部屋のほぼ中央で先程と同じ陣形を取り敵の襲来に備えた。
さっきは天井から襲い掛かって来たし、前後左右だけじゃなくて上からの雷撃にも備えましょうかね……。
「「「「……ッ」」」」
再び俺達の間に刹那の沈黙が広がる。
相も変わらず大量の節足が奏でる気色の悪い音が洞窟内にこだまし、俺達の恐怖心を悪戯に刺激した。
「よぅ、次はどんな攻撃が襲い掛かって来るんだろうな」
フウタが俺達に視線を向けず、正面の穴並びに天井付近へと視線を送りつつ問う。
「知らねぇよ。どうせ俺達の隙を窺いつつ襲い掛かって来るのだろうさ」
巨大な顔に備わるデケェ牙が俺の肉を美味そうに食む姿を想像すると寒気がしやがる。
此処でくたばる訳にもいかないのでこの素晴らしい集中力を継続させるとしますかね……。
ドックンドックンと五月蠅く鳴り響く心臓の頭をヨシヨシと撫で、恐怖心に駆られて逃げ出そうとする体を必死に抑え付けて襲撃に備えていると俺の正面の穴に妙な影が確認出来た。
「来るぞ!! 俺の正面……。へぇっ!?!?」
鉱石百足の大きな頭が穴の中から飛び出て来るかと思いきや、俺の想像は悪い意味で裏切られてしまいましたねっ!!
穴の影の中から鉱石百足が大きな口をパカっと左右に開くと岩をも溶かしてしまうであろう灼熱の火炎を吐き出して来たのだから!!
「ィィイイギギギギィィイイ――ッ!!!!」
「ギィィヤアアアア――――ッ!!!! ほ、炎がぁああああ!!」
この位置では真面に火炎を食らってしまうと判断した頭が、体が素直な反応見せて右方向に回避行動を取る。
しかし、奴が吐き出した炎の範囲はとぉぉっても広大であり飛び付いた先にも死しかない事が理解出来てしまった。
だ、駄目だ!! ここでも直撃を食らう……!!
回避行動じゃなくて防御態勢を取らないと!!
口と目を閉じるとこれから襲い掛かるであろう恐ろしい痛みと熱に対して覚悟を決めたが、どうやら俺の覚悟は不発に終わった様ですねっ。
「ふぅんっ!!!!」
シュレンが己の魔力を高めると迫り来る炎と俺達の間にすんばらしい厚みを持つ結界を展開してくれたのだから。
「シュレンっ!!!!」
「さっすがシューちゃん!! 頼りになるぅ!!!!」
「止めろ!! 近付くな!!」
あはは、口では嫌だと叫んでも結構……。
「魔力の維持が出来んだろうが!!!!」
「いでぇっ!!!!」
あ、いや。本気で嫌がっている様ですね。
シュレンのお腹ちゃんにヒシと抱き着くフウタの頭に渾身の一撃を叩き込んだし。
「ギィィ……」
「シュレン、助かったぞ」
三度穴の中に引っ込んで行った鉱石百足の頭の様子を探りつつ相棒が話す。
「隊を守るのが某の役目だ。しかし、今の炎を連発されるとかなりキツイぞ」
野郎が放った炎の残り香が洞窟内の室温を高め只何もせず立っているだけで肌に汗が滲む。
焼け焦げた地面、洞窟内に漂う白む湯気と黒煙、そしてたった一度の放射で苛烈に上昇した室温。
これらの判断材料からして真面にあの炎を受けたらタダでは済まないと容易に理解出来てしまいますよっと。
「じゃあどうするんだよ。俺様達も穴に突入して鉱石百足の頭を引っこ抜くか??」
「それはぜっったいに嫌だ!! 穴に入っていっても待ち構えているのは毒牙と炎だぜ!? それに穴の中は奴の住処だ。あの中が何処に繋がっているのかすら俺達には伺い知れないんだし」
穴の中で奴を発見に至っても接近を嫌った奴は炎を放射して俺達を焼き尽くすだろうさ。
絶対死が待ち構えている狭い穴よりも、俺達を確実に殺そうと様子を窺い続けている奴の習性を利用して此処で待つ戦法を取った方が隊の生存率が上がるんだよ。
「某もダンの意見に賛成だ。突入しても待ち構えているのは死、のみ」
「ちっ、臆病共が。俺様は待ちの戦法は好きじゃないってのによ」
「好き嫌い言っていられる状況じゃないでしょうが。野郎が出て来る時に備えて待つ。これが現時点での最良な作戦さ」
「此処で死んじまったら可愛い女の子を抱けないしぃ、今は仕方が無く従ってやるぜ!!」
不能野郎が良く言うぜ。
前歯の裏側まで出て来た言葉をゴックンと飲み込み次なる襲撃に備えて集中力を高めて続けていた。
お疲れ様でした。
今日も暑かったですよねぇ……。最近は冷たい物ばかり食べているので本日は趣向を変えて温かいカレーでも食べようとの考えに至りいつもの黄色い看板が目印のカレー店に行って参りました!!
久々にピリっとした香辛料の匂いを嗅いで食欲が刺激されたのか、いつも通りのチキンカツカレー400グラムをペロリと完食する事が出来ましたよ。
いや、食欲減退の時にカレーはイイと聞いた事がありますが正にその通りでしたね。これからは無理をしてでも夏バテ時にはカレーを食べよう。そう考えた一日でした。
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それでは皆様、エアコンの適切利用に心掛けてお休みなさいませ。