第百七十七話 鉱石百足が棲む地
お疲れ様です。
本日の投稿になります。
砂と埃が舞う地上とは違い上空の空気は大変清らかであり、胸一杯に清らかな空気を取り込むと下降の一途を辿っている気分が幾分か和らぐ。
空の中は重厚な雲が幾つも漂い濃霧と同程度の雲の中を抜けると澄み渡る青き空が俺達を迎えてくれた。
このまま平和が蔓延る大地に降り立って美味しい御飯を片手に友人達と和気藹々と語り合えればどれだけ楽か。
物は試しじゃあ無いけども偶には自分の我儘を押し通すのも大切だとは思うのですよ。
「よぉ、相棒。あそこの開けた大地に降りて小休止しないかい??」
俺達を乗せて空の中を突き進む白頭鷲ちゃんの白き後頭部に向かって望み薄の願いを放つが。
「貴様は馬鹿か。目的地に着くまで降り立つ訳にはいかん」
クソ真面目な相棒は俺の可愛い願いを頑として跳ね除け剰え思いっきり睨み付けて来やがった。
目的を達成する為に愚直に進むのは大切だと思うんですけども、ずぅっと肩を張り詰めたままだとその道の途中で挫折してしまいますぜ??
まっ、例えそう言ってもコイツは俺の言う事を聞きやしないしそれに鉱石百足を討伐するまで俺達に一切の自由行動は許されていないのだ。
「ベッシムさん。もう此処はゴルドラドが治める北の地ですか??」
相棒の左隣り。
彼と何ら遜色無い速度で空を舞う薄い灰色の龍の横顔にそう問う。
「えぇ、その通りです。ダン様達が北の領地に足を踏み入れる事並びに鉱石百足の討伐の件は既に了解を得ていますが……。余所者が領地に足を踏み入れる事を嫌う者も居ますので目立つ行為は控えて頂けると幸いです」
ほらね?? 俺達が大地に降り立って馬鹿騒ぎをしていれば目くじらを立てた龍達が押し寄せ、早く化け物退治に行けと尻を蹴飛ばして来るのですよ。
休もうにも休めず、逃げようにも逃げ出せず。
俺は一切合切の行動を縛られながら恐ろしい百足が棲む洞窟に強制的に運ばれている最中なのだ。
これも全てあの変態的に釣りが好きな阿保野郎の所為だと思うと無性に腹が立ってきませんかね??
釣りが好き過ぎてお偉いさんの命令よりも己の欲望を優先させ、何度も打診を受けても腰を上げずに己の我を通す鉄の心はある意味真に素晴らしいと思います。
しかし!! それには程度ってもんがあるんだよ。
アイツが覇王の下命を無視し続けた結果、俺達は己の命を賭けて鉱石百足を討伐せねばならないのだからさ。
しかも鉱石百足を無事に討伐してもだよ?? 筋骨隆々のこわぁぁああい龍ちゃん達と覇王の座を賭けて戦わなきゃいけないんだよね??
どうして人の命は一個なんだろうなぁ――……。二つ、三つあればそれ相応の危険が襲い掛かって来ても大丈夫さ!! と高を括って望めるのだが生憎人の命はたった一つ。
そりゃあ慎重にならざるを得ないのですよ――っと。
「所で……。どうしてグシフォスが治める東の地に戦士は居ないのですか??」
「おぉ!! 俺様もそれが気になっていたから聞かせてくれよ!! 丁度暇だったし!!」
このままでは得も言われぬ重圧に圧し潰されてしまい自分の実力が発揮出来なくなってしまう。
そう考えて気分を紛らわす為にちょいと気になっている事を問うてみた。
「やはり気になりますよね。これから話す事は他言無用、それと私の独り言として捉えて貰って構いません」
ベッシムさんが縦に割れた鋭い瞳孔を俺達に向けると此方も彼の意図を汲み、静かに頷いた。
「グシフォス様の父上は先代の覇王でした。彼が治める東の地は他の領地と何ら変わりない栄え具合でしたが……。ある日を境に東の地に住んでいた龍達が各地へと移住を始めてしまいました」
「へぇ、アイツの父ちゃんってまぁまぁ偉い人だったんだなぁ――」
鼠の姿のフウタが俺の頭の上で器用に寝返りを打ちながらそう話す。
「先代覇王は人間の妻を娶りそして数年が経ってグシフォス様が生まれました。嫡男の誕生に東の地は喜びに包まれるかと思いきや……。グシフォス様の出産に耐えられなかった奥様が亡くなられ、先代覇王は絶望に打ちひしがれてしまいました。日に日に成長するグシフォス様の姿を見ても何の感情も湧かなかったのか、彼に何度も辛く当たったそうです。そんな折、当の本人は何も言わずにこの大陸を去って何処かへと旅立って行ってしまったのです。正に青天の霹靂と呼べる事態に東の地に住む龍族は混乱を極めたのです」
「成程……。その日を境にフォートナス家を見限った人達が移住を開始したのですね」
俺がそう話すとベッシムさんが肯定の意味を示すかの様に静かに一つ頷いてくれた。
「グシフォスの父ちゃんが旅立って何年経過したんだよ」
「約十年でしょうか。音信不通なので彼が今何処に居るのか、そして存命なのかは誰も知る由もありません」
現覇王の在期が約三百年だからぁ……。少なく見積もっても先代覇王の年齢は三百を余裕で越えている。
魔物の寿命は約千年と言われているので。
「覇王の座に就いていたのだからある程度の力を持っているし、何処かで存命しているでしょうね」
そう、何処かの地で朽ち果てていないのならその命を光輝かせているだろうさ。
「ダン様の仰る通りだと宜しいのですが……。彼の人望は厚く、礼儀を欠かさぬ姿勢に対して他の龍族も尊敬の眼差しを向けていました。それに継承召喚の使い手であり……」
おっと、全く聞き覚えが無い言葉が出て来たぞ??
「その継承召喚とは一体??」
話の腰を折って申し訳無いと思うがどうしても気になったので問うてみた。
「我々の世界を想像したのは九祖であると御存知ですよね??」
「勿論。龍を含む超馬鹿げた力を持つ九体の魔物の呼称ですよね」
「始祖の龍の正当な血筋を脈々と受け継ぐ者だけが発現出来る御業、とでも申しましょうか。沢山子が生まれても継承召喚を可能とするのはたった一人のみ。彼の力や進むべき道に尊敬していた龍達は彼の取った自己中心的な行動に軽蔑し、見限り、他所の地へと移住を始めました。私もまだ幼い頃のグシフォス様に移住を勧めましたが……」
「グシフォスはそれを頑として跳ね除け、今日に至るまであの湖で釣りに興じている訳か」
俺達の話に興味を持ったのか将又到着までの暇潰しに最適かと思ったのか。
相棒の羽の合間から鼠の姿のシュレンが顔を覗かせ、小さな鼻をヒクヒクと動かしつつ話す。
「グシフォス様は生まれた地を愛しています。それに自分が居なくなれば治める者が居なくなり北、若しくは南の領地に併合されてしまうと考えて残る決意をしたのでしょう」
ん――……。その線も濃厚だけど幼い頃にその考えに至るとは思えないんだよねぇ……。
「多分、ですけど。グシフォスは自分の父親が帰って来た時の事を考えたのでは??」
「先代覇王の事をですか」
「えぇ、帰る場所を確保したかったとか」
先代覇王の絶望や苦しみを紛らわせる長き旅が終わり、いつか傷ついた心を癒して帰って来ても帰る場所が無ければまた旅立って行ってしまう可能性もあるんだし。
「成程……。心優しきグシフォス様がそう考えていても何ら矛盾はありませんよね」
心優しい人は隣の釣り竿の糸を切る真似はしないと思いますっ。
「んな訳あるかよ。ど――せアイツはあそこで釣りがしたいから残りたかったんだと思うぜ」
「何であそこまで釣り好きなのか、それは分かります??」
暇潰しの延長線上なのか、俺の頭を無意味にペシペシと叩くフウタの右前足を払いつつ問う。
「これは私の推測ですけど、グシフォス様が幼い頃に父上から釣りを勧められそして偶々釣り上げた魚を料理して差し上げた所……、それを大変気に入ってくれたとか。酔っ払ったグシフォス様の口から零れた言葉でしたので信憑性に欠けますけどね」
いや、多分それは的を射ていると思います。
ほら、洗濯物を取り込んで褒められたとか、料理の手伝いをして褒められたとか。巨大で真っ黒な虫を捕まえて母親に大声を上げられ……、これは違うな。
まぁ兎に角、子供の時分は大人に褒められる事を覚えるとそれを馬鹿の一つ覚えみたいに反芻しますのでね。
「先代覇王が仕事を放棄して旅立ち、その息子は現覇王の命令を無視して釣り三昧。そんな奴によく許嫁が出来たな??」
フウタが相も変わらずだらしのない姿勢のまま話すので。
「いや、多分それは血脈が大いに関係している筈だぜ」
それを咎める意味も込めて彼の妙に硬いお尻の毛を突いてやった。
ん――……。シュレンの可愛いお尻の毛並と違ってこっちの毛並は妙にかてぇな。
「はは、ダン様は中々に鋭いですな」
ほら、やっぱり。
「あん?? どういう事だよ」
「話の流れから分かるだろう。先代覇王は九祖の血を受け継ぐ言わば超貴重な血統って奴さ。恐らく、グシフォスもその継承召喚とやらを可能としている。高貴な血を絶やすよりも自分の領地にその血を招き入れて戦力増加を図れば……」
「あぁ、そういう事か。要はグシフォスじゃなくてアイツの血脈を求めた政略結婚って奴だな。いい加減手を離しやがれっ、くすぐってぇんだよ」
納得したフウタが己の尻を突き続けている俺の手を邪険に払う。
「当初はそうでしたが……。今となってはシュランジェもグシフォス様の事を好いておりますので婚姻は秒読み段階かと」
家庭を顧みない程の釣り好きと結婚してもお先真っ暗でしょうに……。あ、でも子供さえ生まれればいいのだから夫の愚行はやむを得ないって感じか。
「有難う御座います、何から何まで話して頂いて」
「ふふ、いえ。これはあくまでも私の独り言なので」
薄い灰色の龍の口元が微かに上向き俺の顔を直視する。
それを捉えた俺もベッシムさんの中々にカッコイイ龍の顔を捉えつつ笑みを浮かべてあげた。
人に歴史ありと言われている様に、あの変態的釣り好きの奴にもまぁまぁ重い歴史があるんだなぁ……。
そしてグシフォスも俺と相棒と同じく家族が側に居らず、家族を欲する寂しい感情を持って成長した。
俺の場合は賭け事や冒険で、相棒の場合は剣や里を守る仕事で、そしてグシフォスは釣りで。
それぞれが寂しさを紛らわせる術を持っているがそれはあくまでも己の心を守る防衛手段であり、問題の根本的解決には至っていない。
釣り以外にも己の心を許せる家族が出来ればあの釣り好きもきっと変わるだろうさ。
俺もいつかは家族を持って心に空いてしまった隙間を埋めるべきなのでしょうかねぇ……。
まっ、暫くの間は横着坊主達の世話でてんてこ舞いなので所帯を持つのはお預けって事でっ。
未だ見ぬ家族の姿をぼぅっと思い浮かべて空の中を漂っていると漸く目的地に到着したのか、相棒が鋭い声色を放ち注意を促した。
「見えて来たぞ」
「やっと到着かよ!! ダン!! 地上を見たいからもっと淵に寄りやがれ!!」
はいはい……。お母さんはちゃあんと貴方の言う事を聞いてあげますからねぇ。
俺の頭を右前足でペシペシと叩く小鼠の指示に従い四つん這いの姿勢で相棒の背の淵付近に到着。
口喧しい小鼠と寡黙な小鼠と共に鉱石百足が棲むと言われている地上を見下ろした。
東側には何処までも続く大海原、西に視線を向ければ緑豊かな大地が地平線の先まで続く。
大地と海の狭間に俺達の目的地でもある山が確認出来るが、山と呼ぶには少々物足りない身長である。しかし標高はかなり低いと思われるがそれでも山は山だ。
自然の雄大さを物言わずとも主張し続けており、山の麓には薄っすらと森が生い茂りこの位置からでも自然豊かな場所であると容易に判断出来た。
「ベッシムさん。あの山が??」
「その通りです。鉱石百足は山の南側の麓の洞窟に棲んでいます。それでは私に付いて来て下さいね」
「分かりました。おい、相棒。ベッシムさんの後に続いて普通に!! 降下を開始しなさいよ!?」
さり気なく翼にグッ!! と力を籠めた相棒に強力な釘を差してやる。
「ふんっ、言われずとも分かっている」
ど――だか。俺が注意をしなかったら馬鹿げた速度で降下していたくせに……。
物資や装備も背に乗せられておりしかも此処は北の領地なのだ。
目立つ真似は御法度なのですよ――っと。
相棒がムスっとしたままの顔で安全安心が確保された速度の旋回行動を続け、数時間振りに母なる大地の上に足を着けると元気良く背伸びをしてやった。
「ん――ッ!! 到着!!」
はぁっ、空気もうめぇし妙な暑さを感じる事も無い。
直ぐ南側に生い茂る森を見つめつつ森の香りがふんだんに含まれた空気を胸一杯に取り込んでやった。
「へぇ――……。自然溢れる良い場所じゃねぇかよ」
「あぁ、魔力が抑えられる摩訶不思議な感覚もしないからな」
人の姿に変わったフウタとシュレンが物珍しそうに周囲へと視線を送る。
「皆様、あそこを御覧下さい」
鼠二匹と同じく人の姿のベッシムさんがなだらかに上って行く山の麓のある地点を指差すのでそれに従い視線を送った。
「此処から約数十メートル登った先に洞窟の入り口があります。中は暗闇に包まれていますが私が光球を翳して明かりを確保しますので御安心を。そして鉱石百足が棲んでいる洞窟の奥地までご案内致します」
「え?? ベッシムさんも討伐に加わってくれるのですか??」
必要最低限の荷物を背嚢の中に詰め、そして黒蠍の甲殻で作られた防具を身に着けつつ問う。
大枚を叩いて制作した防具だから俺の命をキチンと守って下さいねっと。
「私の役目は案内で御座います。グシフォス様の代理であるダン様達に力添えをするのは止めろと言う指示も出ていますので」
「あ、そういう事だったんですね。でも案内役を買って頂き有難う御座います」
洞窟の中が入り組み迷子になったら余計な体力を消耗しちゃうし。
「よぉっ、ベッシムさんよ。どうして洞窟の中の状態を知っているんだ??」
既に己の荷物を纏め終えたフウタが大変だらしない姿で問う。
「あそこの洞窟にこれまで何度も足を運んだ者が居まして。帰還した者から内部の状態や鉱石百足の特徴等の情報を纏めて管理しています」
ベッシムさんは覇王の側近というよりも情報管理や出納等の庶務を担当しているって感じですよねぇ。
ほら、真面目な話し方や姿勢等々。キチンと仕事を熟す真面目な感じがしますもの。
「んじゃあ自分で足を踏み入れるのは初めてって訳かい??」
「フウタ様の仰る通りで御座います。私が先導役を務めますが鉱石百足と戦闘になりましたのなら一旦安全な場所まで退避させて頂きます。ダン様達が万が一敗北を喫した場合には、可能であるのならば死体を洞窟の外まで運搬させて頂き山の麓に埋葬させて頂きます。遺書は書かれましたか??」
い、いやいや……。さり気なく恐ろしい事を言わないで下さいよ。
「本当の家族は既に他界していますので遺書は書きませんっ」
「俺様も書かないかな――」
「某も不要だ」
「最初から負けを想定して戦いに臨む者は戦士では無い。ベッシム殿、案内を頼む」
背に愛用の剣、左の腰に天下無双八刀の一振り月下美人を携えた相棒が洞窟の入り口付近を鋭い眼差しで睨み付ける。
「畏まりました。では皆様、此方で御座います」
ベッシムさんが大変力強い歩調でなだらかなに上って行く山の麓に足を乗せると俺達も彼の後に続いた。
「相棒、月下美人を使用するのか??」
んっ!! 見た目通りに絶妙に登り易い山の麓ですな!!
ちょいと細かい砂利が足の裏を掬おうとするがそこまで登り難さは感じ無かった。
「まだ俺の腕前では十に一つ会心の一撃を与えられれば万々歳だ。万が一の時に備えて、という奴だな」
ミキシオン陛下から頂いた時は十五に一つだったのにもうチミは十に一つまでの精度を会得したのかい??
確か、剣の達人は十に一つでも会心の当たりを得られれば上出来と言われていたから……。相棒はもう既にその領域まで達していると呼べるな。
「運否天賦に掛ける戦いは好まん。鉱石百足と対峙した時は普段通りこの剣を使用するから安心しろ」
彼が背の剣の鞘にそっと手を添える。
「んっ、了解。頼りにしているぜ?? 相棒っ」
彼の背を優しくポンっと叩き、俺達の先導役を務めているベッシムさんの中々に御立派な背を目印として死が蔓延る洞窟の入り口に向かって進み続けて行く。
なだらかに上って行く坂道に足を乗せ、軽い運動によって増加する呼吸を続けていると肌にじわぁっと汗が浮かぶが山から吹き下ろす風と此処まで香る森の優しい匂いが運動を全く苦にさせない。
軽い登山って感じですけども、これから大変恐ろしい生物が棲む洞窟に突入しなきゃいけないんだよなぁ……。
危険生物の討伐の任がなければ気の合う友人達とお弁当でも持って登山に洒落込みたい思いだ。
山の麓から登山を開始してから約三十分程度だろうか。
俺達の先導役を務めているベッシムさんが目的地付近に到着すると歩みを止めた。
「到着で御座います。此処が……、鉱石百足が棲む洞窟ですよ」
木造建築物の二階から三階建ての高さの洞窟の入り口の奥には光が広がる此処とは違い大変恐ろしい闇が跋扈している。
闇の中に何かが蠢いている様な錯覚が足を踏み入れる事を躊躇させ、洞窟の奥からビュウっと吹く風には生物の物らしき饐えた臭いが確認出来た。
う、うぅむ……。
洞窟の中に足を踏み入れていないのにも関わらずもう既に嫌な予感がビンビンするぜ……。
「お、おいおい……。ダン、これを見てみろよ……」
フウタが洞窟の入り口付近の砂と砂利が混ざり合う大地に片膝を着けて注意深く地面を見つめている。
「ん?? これは何かが……、移動した跡か??」
彼の視線を追うと周囲の地面よりも数十センチ窪んだ軌跡があり、地面の硬さからしてかなりの質量を持った物体が移動したと容易に想像出来る。
その移動の痕跡は洞窟の入り口から山の麓まで続いていた。
「だろうなぁ。洞窟から出て山の麓まで移動して生き物を食らい……」
「そして此処に戻って来た、か。ベッシムさん、鉱石百足の生態や特徴を教えてくれますか??」
手に付いた砂をパパっと払いもう既に突入の準備を終えている彼の背に問うた。
「畏まりました。では洞窟の中を移動しながら鉱石百足の特徴をご説明させて頂きますね」
「宜しくお願いします。うっし!! 野郎共!! 化け物退治と洒落込もうぜ!!!!」
此処まで来たらもう引き返せないしそれと怖いもの見たさじゃあないけれども、龍一族の脅威となり得る超生物の姿を見てみたいという冒険心が沸々と湧いて来るんだよね。
俺一人なら岩の影からそ――っと鉱石百足の恐ろしい姿を確認した後、足音を消音させて即刻踵を返すのだが。
「おうよ!! 俺様の力を存分に発揮させてやるぜ!!」
「某が殿を務める故、安心して進むが良い」
「あぁ、了承した」
三人の暴れん坊が居るのでそれは決して叶わない。
彼等の手綱を取って制御したいのは山々だけど一人一人の力はかなりのモノになるので俺一人の力では不可能なのだ。
暴れ回る役目は三名に任せてお母さんは最後方からワンパク坊主達の大冒険を見守りましょうかね。
「さぁって、藪を突いたら鬼が出るか蛇が出るのか……。ワクワクと恐怖。何とも言えない気持ちがせめぎ合っているぜ」
シェファの父親から譲り受けた大弓、二刀の短剣、黒蠍の甲殻で制作した防具、そして必要最低限の物資が詰まった背嚢。
全ての装備を確認し終えると心の中にしがみ付く恐怖を吐き出し、その代わりに勇気を取り込んで弱気な自分の尻を蹴飛ばしてやった。
「おっせぇぞ!! さっさとこっち来いや!!!!」
「はいは――い。そんな慌てても百足さんは逃げませんからねぇ――」
ベッシムさんを先頭に続々と洞窟に突入して行く最後尾に居るフウタに向かってそう話すと闇と死が蔓延る洞窟に向かって記念すべき第一歩を踏み出したのだった。
お疲れ様でした!!
投稿が遅れてしまい大変申し訳ありませんでした……。
酷い夏バテも徐々にですが良くなってきましたよ。
妙な気怠さ、無気力等々。夏バテの症状が体に出て、その中で一番きつかったのはやはり食欲不振でしょうか。食わねば元気が出ないのに、全然食欲が湧いて来ない。
生きる為に食う行為を捨てた生物が辿る道の先には……。まぁ皆まで言わなくても分かります。
そうならない為にも結構無理をして食事を続けていました。
まだまだ暑い日が続きますので読者様達も夏の暑さには十分に気を付けて下さいね??
そして、ブックマークをして頂き有難う御座いました!!
夏バテで萎れかけている執筆活動の嬉しい励みとなりましたよ!!
それでは皆様、お休みなさいませ。