第百七十五 最弱の地
お疲れ様です。
本日の投稿になります。
南の大陸で跋扈するうだるような暑さは此処では鳴りを潜め、この世の理から外れた規格外の生命体が蔓延る森の中はその様相とは裏腹に大変心地良い空気が漂っている。
南の環境に慣れ過ぎた所為かこの涼しさはちょいと肌寒さを覚える程だ。徐々に西へ傾きつつある太陽の強さもこれに関与しているのであろう。
しかし、幾ら涼しくても激しい運動を続ければ話は全く別。
背にずっしりと重く圧し掛かる相棒の体重と自重を合わせた状態で歩き続ければ汗も大量に吹き出ようさ。
「相棒、もう少しの辛抱だから頑張れよ??」
「……」
額から零れ続ける汗をクイっと拭い。
お化け飛蝗を撃退してから目覚める気配すらない相棒の体にそう呟いてやるが、彼から返って来るのは無言の答え。
俺達をあのふざけた大火球から身を挺して守り、更に意識を失ったまま地上に叩き付けられれば意識を失うのも当然さ。
それにこの大陸に至るまで巨大な翼を動かし続けて蓄積された疲労もある。
今は静かに眠って失われた体力を、怪我を回復させてくれ。それまで俺達が命に代えてもお前さんを守ってやるからさ。
「ハンナはまだ起きそうにないのか??」
先行するフウタが微かに歩みを送らせ、此方と平行する形で歩みながら問う。
「ぐっすり眠っているぞ」
「そっか。中々起きないのは疲労の事もあるだろうし。今はゆっくり休ませてやろうや」
彼が静かにそう話すと大変温かな視線を相棒の端整な横顔に向ける。
普段は口喧しく、女に目が無く、超絶だらしない奴だが友人を思い遣る心は人一倍強いんだな。
「某も同意する。その為にも早くこの森を抜けるべきだ」
俺達の先導と索敵を担当しているシュレンが此方に振り返らずにそう話す。
この森に酷く似合っている冷静沈着な声色だが、言葉の端からそして背から溢れ出る温かな雰囲気が確認出来る。
彼もフウタと同じく相棒の体が心配なのだろうさ。
「お母さんは嬉しいわよ?? 貴方達がお父さんの怪我を心配する温かな心を持ってくれて」
仕事で酷い怪我を負い、ベッドの上から抜け出せない父親の姿を案じる子達の姿を捉えた母親の心情を抱いて言う。
「テメェは俺のお袋かよ」
ヤレヤレ。
そんな感じでフウタが長い溜め息と共に話す。
「そういう気持ちが刹那に湧いたって事さ。だけど、なんでアイツは無警告で襲い掛かって来たんだろうなぁ??」
木々の合間から覗く空へ向かって視線を向ける。
俺達を包み込む最悪な状況も露知らず晴れ渡りやがって……。俺の心の空模様と同じ位にもう少し位曇っても良いんだぜ??
「俺様達の言葉が通じなかった、若しくは聞こえなかったのはこの大陸で使用されている言語が違うからとか??」
「それも有り得るけどさぁ……。相棒の生まれ故郷であるマルケトル大陸でも、大蜥蜴が跋扈するリーネン大陸でも言葉が通じたんだぜ?? 此処だけ通用しないのは流石におかしいだろ。そしてぇ、この仮説が正しければあのクソッタレは言葉が理解出来ているのにも関わらず俺達に襲い掛かって来やがったんだ」
思い出すだけでも腹が立つ。
こちとら必死に遜っていたってのに有無を言わさずに鋭い爪を、灼熱の大火球をブチかまして来やがって。
もしも復讐する機会があればあのドデカイ腹に渾身の一撃を見舞ってやる。
まぁ……。例え地上で巨大な黒龍と顔を鉢合わせたとしても俺の身長を加味すれば相手の胴体まで怒りの鉄拳は届きませんけどね!!!!
「言葉が通じるのに襲い掛かって来たのは……。恐らく領域侵犯を危惧しての事だろう。この大陸に住む龍は排他的。その情報から凡その理由は伺えるだろう」
シュレンが俺達の進行を阻もうとする太い枝を小太刀で切り落として話す。
ここまで俺達が特に歩調を変えずに進めたのは彼の斥候の御蔭なのさ。
「だろうなぁ――……。でもよ、もう少しやり方ってもんがあるんじゃねぇの?? 俺様達の生まれ故郷でも流石にあそこまではヤらねぇって」
「フウタ達の国も排他的なの??」
ちょいと気になったので少し汗ばんだフウタの横顔を見つつ問う。
確か……、国の名前はカムリだっけ。
カムリでは機関を一手に纏める頭領を守る忍ノ者が存在する。
彼等の階級は下ノ段から上ノ段。そしてその上には最強格である四強が存在する。
華菱、天霞雲、飛嵐、焔凰。
四強を指す名は四つありその中でも最強の焔凰は華菱を目指すフウタも引き腰になる程の強さを持つと聞いた。
そして彼等は中ノ段に上がる為に今もこうして国外修行に勤しんでいる訳だ。
「いんや。普通だと思うぜ?? あ、でもシューちゃんの里はちょっと毛色が違うな。余所者は里に足を踏み入れさせないぞ――って感じだもの」
へぇ、そうなんだ。
「某の里は寿山の麓で暮らす能天気な者達とは違う。素性の知れぬ者を招き入れる気がせん」
「あぁ!? 誰が能天気で頭スッカラカンのお気楽野郎だってぇ!?」
御免、シュレンの言葉結構……。いや、確実に正中線のド真ん中の的を射貫いていますよ??
お前さんの生活態度を鑑みれば一目瞭然だろうが。
大正解!! っと。意気揚々と叫んでやりたいが周囲に潜む化け物達を此方に招く訳にもいかんので此処は静かにしておきましょう。
「某は客観的に物事を言ったまでだ」
「あっそう!! だったら俺様も言わせて貰うぜ!? コソコソと湖の周りで生活しているからそぉんな根暗な性格に育っちまうんだよ」
「貴様……。某の里を愚弄する気か??」
「していませ――んっ。そっちが客観的にって言ったからこっちも客観的に揶揄ってやったんだよ」
「貴様の口からその様な難しい言葉が出て来るとは……。正に青天の霹靂だな」
「は?? へきれ……。え??」
「青天の霹靂。急に思いがけない出来事が起こるって意味さ」
何度もパチクリと瞬きをしてシュレンの背を見つめているフウタに言葉添えをしてやる。
「ふっ……。ダン、済まぬな。俺の同郷の者の頭が足りず迷惑を掛けてしまって」
いえいえ――、どういたしましてっと。
「い、生きて行く上で必要な言葉さえ知って居ればいいんだよ!!」
「それならば教えてやる。中ノ段、上ノ段。そして四強。我々が武功を収めて昇格する時には技術の試験だけでは無く、教養の学科試験もあるのだぞ」
「マジかよ!? それ初耳なんだけどぉ!?」
フウタが丸い瞳をキュっと縦に開いて素直な驚きを表す。
「安心しろ。貴様の頭では一生掛かっても中ノ段には登れぬからな」
「そんな事言わないでさ!! 空き時間があったら試験で出そうな問題を教えてくれよ!!」
フウタが先行するシュレンの側に駆け足で向かって行く。
「例え試験内容及び問題を知っていたとしてもお前には絶対に教えん」
「そんなぁ!! じゃ、じゃあ今度可愛い女の子がいるお店を教えてやるから!! ほら!! 俺様の里から南へ向かってぇ……」
「そんな情報は不要だ!! それとそれ以上近付くな!! 歩き難いだろう!!」
あはは、口では罵り合っていたけども本当は物凄く仲が良いじゃないか。
喧嘩する程仲が良い。
相棒と俺との関係によく似た絆を温かな視線で見守っていると不意に清らかな水気が含まれた風が俺達の頬を撫でて後方へと流れて行った。
「うん?? 空気が変わった??」
「俺様も今感じたぜ!!」
「ふぅ――……。これで漸く一息付けるな……」
微妙に近くに居るフウタから距離を取ったシュレンが前方を眺めると、俺達が求めていた光景が不意に現れた。
眼前一杯に広がる青き湖は太陽の光を反射して美しい輝きを放ち、此処に至るまでの旅の疲労、黒龍との戯れ、そして飛蝗擬き達との戦闘を労わるかの様に前方から微風が優しく吹く。
水辺には生物が集まると言う通説の通り、開けた空間にあの飛蝗達が跋扈しているかと思いきや俺達以外の存在は今の所確認出来なかった。
もう間も無く夕刻に突入する太陽の傾きから放たれる優しき陽光、そして良く晴れた空に誂えた様な景色に思わず双肩の力がふっと抜け落ちてしまった。
はぁ……。すっげぇ綺麗じゃん。
周囲の状況を確認したら取り敢えず一休みしましょうかね。
「んぉ!! 滅茶苦茶綺麗な湖じゃねぇか!!」
フウタが煌びやかな瞳を浮かべて湖へ向けて視線を送り。
「あぁ、某もその意見には同意する」
シュレンは俺と同じく双肩の力を抜いて警戒を僅かながらに解いた。
「風光明媚な場所だが奴等の存在も確認出来ないし、暫くの間此処でハンナの容体が安定するまで野営するか」
相棒を背負ったまま湖の近くまで移動して天幕を張る絶好の場所を探していると、俺達以外の生物を初めて視認する事が出来た。
「……」
一人の男が背の低い草が生え揃う大地の上で呑気に居眠りを続けている。
仰向けの状態で両手を後頭部へと回し、太陽の光を嫌がる様に顔の上に麦わら帽子を被せ呼吸は物凄く安定しているのか。大変ゆっくりと胸元が上下していた。
何処からでも目立つ赤のシャツにちょいと痛みが目立つ紺色のズボン。
そして腰のベルトには使い古された釣り竿が括り付けられており、彼の頭の近くには水を張った桶が置かれていた。
危険と死が蔓延る森の直ぐ近くで居眠りですか。
それを可能としているのは此処が安全な場所なのか将又この男が化け物級に強いのか。
それは定かでは無いが取り敢えず声を掛けてみますかね。
「あ、あの――……。すいません、今お時間宜しいでしょうか」
相棒を静かに横たわらせ、今も静かに眠り続けている彼に優しく問う。
「……」
う、うむ。
朝一番のベッドの上で恋人に囁く程度の声量じゃあ起きない程に熟睡していますね。
黒龍の件もあるし、彼の安眠を妨げていいものだろうか??
腕を組みさて次の行動を深く考えていると口喧しい野郎が俺の思慮深い考えを容易くぶち壊してしまう行動に至ってしまった。
「よぉ!! 兄ちゃん!! 釣れないからってそこで寝て居たら飛蝗に食われちまうぜ!?」
「っ!!」
フウタが後先考えずに眠り続ける彼の肩を仰々しく揺れ動かす様を捉えると声にならない声を出してしまう。
「お、お止めなさい!!!!」
まだ泳ぎを覚えたての子鴨が激流に向かって勢い良く飛び込もうとする母鴨の気持ちを胸に抱き、横着を働いたフウタの頭の天辺を強く叩いてやった。
「いてぇ!! 何すんだよ!!」
「此処は龍一族が治める大陸だ。さっきの黒龍でそれは痛い程理解しただろ?? それなのにテメェが見ず知らずの男性に失礼な態度を取るからそれを咎めてやったんだ」
「けっ、どの道此処を使用出来るかどうか尋ねなきゃいけないんだし。俺様はその手間を短縮してやったんだぞ??」
違う、そうじゃない。
お母さんは相手の想いを汲み、大変慎ましい行動に至りなさいと伝えたいのです。
「短縮し過ぎだ。お前さんはもう少し社会で通用する処世術をだなぁ……」
この世の道理を説こうとして口を開いた刹那。
「……っ」
危険な森の近くで居眠りを続けていた男性とバッチリ目が合ってしまった。
右手に麦わら帽子を持ちその腕は中々の筋力量が積載されており、シャツの内側から押し上げる胸筋も武に通ずる者であると確知出来てしまう程に御立派だ。
蓬髪気味の朱の髪に顔の中央を真っ直ぐに流れる鼻筋、ちょいと体全体に傷が目立つのは恐らく森の近くで生活しているからであろう。
整った顔付だと頷ける顔にも幾つかの傷跡があり若い顔立ちからして恐らく俺達と同年代だろうな。
大胆な行動と彼の体付きからしてそれなりの力を有しているという俺の仮説は立証された訳なのだが……。
彼の魔力や力の鼓動云々より、俺は男の朱の瞳に視線を奪われていた。
真っ赤に燃える炎よりも強い赤が目立ちその瞳の奥には底知れぬ力の鼓動が確かに確認出来た。
「あ、お、お早う御座います。俺達はあのふざけた森の中を命辛々脱出しましてぇ。こうして湖に辿り着いたのですが。貴方は此処の所有者なのですか?? 差し支えなければ友人が傷付いていますのでそれが回復するまで此処を使用させて頂きたいのですけれども」
お得意様にペコペコと頭を下げる御用聞きよりも大変遜った口調で今も俺の目を直視している彼に問う。
「……」
朱の髪の男性が徐に上半身を起こして俺達に何か言うかと思いきや……。
「ちっ」
腰に括り付けている釣り竿に当たりが無い事を確認すると憤りの感情を含めた舌打ちを放った。
「あのぉ――……。此方の話は聞いています??」
彼の大変御立派な背に問う。
「あぁ、聞いている。貴様達は『力の森』 を抜けて来たのだろう??」
「力の森??」
「……」
『あそこだよ』
彼がそう言わんばかりに俺達がつい先程抜けて来た森へと向かって指を差した。
「あのふざけた飛蝗が跋扈する森はそう呼ばれていたのですね」
「ほぉ、あの飛蝗と会敵したのか??」
朱の髪の男性が釣り竿の位置を微調整しつつ話す。
いや、釣り云々よりも俺達の話を聞く姿勢を見せて下さいよ。
「魔力が抑えられていて苦戦しましたけども、三体の飛蝗を撃退しました。ま、まさか飛蝗を殺してはいけない決まりなので!?」
人の縄張りで勝手に暴れ回り剰え縄張り内の生物を殺めてしまう。それがどういう意味を指すのかは分からない訳では無い。
多くを語ろうとしない彼に慌てて問うが。
「歯向かって来たのだから殺す。それが力の森の決まり事だ」
はぁ――、びっくりして損したぜ。
「よぉ!! 俺の名前はフウタっていうんだけど、兄ちゃんの名前は何だ!?」
いやいや、名前よりも先に聞く事があるでしょうに。
「こいつの質問は聞き流して構いません。俺の名前はダンで、此処で横たわっているのはハンナ。そして向こうで俺達の行動を一切合切気にせずテキパキと天幕を設置しているのはシュレンと申します」
先ずは相手の名を聞くよりも先に己の名を名乗る。
当たり前の処世術に則って軽い自己紹介を終えると彼が初めて俺の要望に応えてくれた。
「グシフォスだ」
「へぇ!! 中々カッコイイ名前じゃねぇか!! まぁ俺様には遠く及ばないけどな!!」
「名前を教えて頂き有難う御座いますね。続いての質問なのですが、この場所を使用させて頂く許可を頂けます??」
「好きに使え」
おぉ!! こりゃ本当に有難い!!
これで相棒がゆっくりと休める場所を確保する事が出来たぜ!!
「有難う御座います!!」
「但し一つだけ条件がある」
「条件??」
「俺の釣りの邪魔をするな。それだけは絶対に守れ。もしも破ったのなら……。東の地のから出て行って貰うぞ」
グシフォスさんが大変鋭い視線を俺達に向けてそう話す。
「東の地?? って事はグシフォスがこの辺り一帯を治めているのかい??」
「貴様等……。何も知らずにこの大陸にやって来たのか??」
グシフォスが相も変わらず己の態度を改めないフウタを捉えると呆れた吐息を吐いた。
「大変申し訳ありません。何分、離れた位置にある大陸ですので……」
「はぁ――、丁度良い。厄介事を招き入れて釣りが出来なくなる恐れがあるからな。この大陸で絶対的な仕組みを教えてやる」
有難う御座います。
その意味を籠めて彼に一つ大きく頷くと、グシフォスさんが湖の果てに向けて遠い視線を浮かべながら口を開いた。
「この大陸は大まかに分けて四つの龍一族が各地方を収めている。北はゴルドラド、西はマルメドラ、南はバイスドール。そして東はフォートナスが治めている。それぞれが縄張りを持ち、その領域に勝手に足を踏み入れたのなら手痛い歓迎を受ける」
手痛い歓迎。
その言葉を彼から受け取るとあの黒龍が俺達に攻撃して来た真の理由が理解出来てしまった。
「成程……。だからあの黒龍は俺達に攻撃を仕掛けて来たのか」
「先程迸った魔力の圧……。まさかお前達、南の巨龍一族の攻撃を耐えたのか??」
グシフォスさんが大変驚いた瞳の色で俺を見上げる。
「俺達に敵意は無いと言ったのに黒龍が有無を言わさず襲い掛かって来て。そしてハンナが奴の大火球を受け止めて力の森に墜落したのです」
「奴の火球を受け止め尚且つ傷付いた仲間を担いで力の森を抜けて来たのか!! わはは!! それは愉快だな!!」
い、いやいや。全然愉快じゃあありませんよ。
寧ろ超絶最低不愉快な気持ちを胸に抱いて此処に来ましたもの。
「貴様達が持つ魔力と纏う空気……。ふぅむ、悪くはないな」
グシフォスさんが顎に手を添えて俺達に視線を向ける。
「お褒め頂有難う御座いますね。領域侵犯の他に絶対順守すべき事項はあります??」
「各地に足を踏み入れる事が出来たのなら必ず族長の命に従え」
「つまり、話の流れからして。今現在俺達は東の地に足を踏み入れているので東を治めるのは……。フォートナスでしたね。族長の命に従うのは理解出来ましたがその人は一体何処に居るのです??」
これ以上、龍一族とドンパチやっていたら身がもたないしさっさと滞在の許可を得たいのです。
「あぁ、その事か」
グシフォスさんが再び大地の上にコロンと横になりもう間も無く日が沈む茜色の空へ向かってフっと吐息を漏らし、そして意味深な朱の瞳を此方に向けた。
「それでは貴様達に条件付きだが東の地に滞在する許可を与えよう」
「エ゛ッ!? じゃ、じゃあフォートナスの現当主は……」
「あぁ、俺の事だ。グシフォス=リエロ=フォートナス。最弱の東の地を治める龍だ」
彼がそう話すと再び麦わら帽子を顔に被り、体を弛緩させて柔らかい吐息を漏らし始めた。
族長っていうからもっとお年を召した方だと思ったのに……。
まだまだ若そうな彼だが実力は本物であるが故、東の地に住む人から慕われているのだろう。そう考えなければその若さで族長なんて務まるとは思えないからね。
取り敢えず滞在の許可を頂けましたので野営の準備に取り掛かるとしますか。
「シューちゃん!! 何とか滞在の許可を貰えたぜ――!!」
「止めろ!! 近付くな!! 天幕が設置出来ないではないか!!!!」
「こらこら……。釣りの邪魔をするなと言われたばかりに騒いでどうするの」
もう間も無く沈み行く太陽の茜色の光を浴びて騒ぎ立てる兄弟に対して呆れた溜息を吐き、この様子じゃあ野営地の完成は恐らく完全に太陽が沈んだ頃になると容易く想像出来てしまう。
「ったく、しょうがねぇな。お母さんが居ないと全く仕事が捗らないんだからっ」
相棒、もうちょっとだけ辛抱してくれよ?? それと口煩い鼠の声が体に障るだろうけどそれは我慢してくれ。
今も静かな寝息を立て続ける相棒を担ぎ上げると微妙に傾いている天幕に向かって遅々足る速度で向かって行ったのだった。
お疲れ様でした。
今日も暑かったですよね……。現在、夜虫も寝静まる深夜なのですが外の空気はむわっと蒸し暑く、肌で感じ取れる熱帯夜にちょいと顔を顰めております。
この暑さが二か月近く続くと思うと少しだけテンションが下がってしまいますよ。
皆様も熱中症には気を付けて下さいね??
そして、いいねをして頂き有難う御座います!!
猛暑の中での執筆活動の嬉しい励みとなりました!!
それでは皆様、お休みなさいませ。