~プロローグ~
お疲れ様です。
本日より龍が統べる大陸編が始まります。
網膜が焼かれてしまう様な強力な日差しでは無く、人の肌をやんわりと温めてくれる大変朗らかな日光が青く澄み渡った空から降り注ぐ。
巨大な湖畔に波打つ凪がそれを受け止めると様々な角度で光を反射する。
複雑な角度から襲い来る光を嫌がっているのか将又自分の思う様に事がいかないからなのか。
湖畔の淵で一人の男が仰向けの状態のまま麦わら帽子を顔に被り小さな寝息を立てていた。
彼の腰のベルトには使用用途を間違えているのではないのか??
他人にその様な錯覚を与えてしまう使い古された一本の釣り竿が括り付けられており、彼は当たりを確かめる様に時折目覚めて釣り竿擬きに手を添えるのだが。
「……」
釣り竿擬きは彼の淡い期待に応える事無く本日も不動の姿勢を貫いていた。
森の隙間からそして上空から微風が吹くと湖畔の水面を揺らして彼の憤りをスっと拭う。
しかし、微風程度では彼の憤りは霧散する事は無く。沸々と体温を上昇させてしまう。
釣りは当たりを楽しむもの、僥倖を越える効用を期待するのならば直ぐに当たっては楽しめない。釣り竿擬きがピクリとも動かないのは魚の気分の所為。
釣れない事に怒りを覚えても仕方が無い。
此処は一つ、持久戦といこうじゃないか。
「ふぅっ……」
彼は自分の釣りの腕前を棚に上げ、体の良い言い訳を己に放つと長々と鼻息を吐いて体を弛緩させた。
その姿を捉えた空を舞う小鳥達はよくもまぁ日がな一日釣れない釣りに興じていられるものだと、大地に寝そべり続ける男に対して憐憫とも呆れとも捉えられる歌声を放ち空の彼方へと飛翔して行ったのだった。
お疲れ様でした。
直ぐに後半部分を投稿致しますので、もう少々お待ち下さいませ。