第百七十二話 牽衣頓足を断ち切って その一
お疲れ様です。
本日の前半部分の投稿になります。
俺の生まれ故郷では真夏に位置付けられる太陽の光が雲一つ無い青空の中で燦々と光り輝く。
人生の中で最強の部類に近い日差しは地上で暮らす者達の肌を悪戯に焦がし、大地を煮沸させる。
南の大陸の気候にある程度慣れて来たとは言え直射日光を浴びるのは流石に体に堪える。良い感じに使い古された外蓑で日差しを遮り、十分な水分補給をしても体は正直だ。
今直ぐ日陰に入れと物言わすとも自然に足が日陰へと向かいそうになるのをグっと堪えて数えるのも億劫になる大蜥蜴ちゃん達の合間を縫いつつ北上を続けていた。
「おい!! 早く持って来い!!」
「は、はいっ!!!!」
「朝も早くから精が出ますよねぇ」
大勢の大蜥蜴がこれから引っ越しでもするのですかと問われてしまいそうになる沢山の木箱を両手に持ちすれ違って行く。そして追い抜かされて行く人波へと向かって素直な声を出す。
今の荷物の量からして新装開店の準備だろうか??
ほら、南通りから一本入った道に新しい雑貨屋さんが出来るって聞いたし。
活気に溢れる事は経済が潤沢に回っている証拠なのですが、せめて人が普通に歩ける空間を捻出して欲しいものさ。
只歩いているだけでも通行人と肩が触れ合いそうになっちまうもの。
「あぁ全くだ。これだけ人が多いと……、魔物の姿に変わって自由な空へと飛翔したくなるぞ」
俺の右隣り。
朝一番からブスっとした表情を浮かべている相棒が俺の心の声を代弁してくれた。
「活気溢れる街、そして盛大に晴れてくれるのは新たなる旅路に相応しいけどよ。も――少し控え目にして欲しかったのが本音だぜ」
顎をクイっと上方に向けて強過ぎる日差しに向かってそう話すと。
『ハハ、俺なりの餞別という奴さ!!』
今も強烈に輝く太陽がニッコニコの笑みを浮かべて俺達の新しい門出を祝ってくれた。
まぁ、土砂降りの雨よりかは晴天に恵まれた方が気持ち良く出発出来るけどさぁ。程度ってもんを覚えて欲しいものだ。
しかし、この強過ぎる日差しも暫くの間はお預けだと思うとちょっとだけ。ほんの少しだけ寂しい気持ちが湧いてしまい心の六割を占拠していた。
俺の冒険の発端となったあの地図のバツ印の意味を探す為に俺達はこれから北西へと向かう。
その大地の名は、ガイノス大陸。
キマイラ達から聞けば、古の時代から龍が大陸を治めており彼等はどちらかと言えば排他的であり他種族の存在は確認出来ないと聞く。
龍一族は他種族に比べて身体的に優れており、巨龍族に至っては相棒の翼が小さく見える個体も居るそうな。
そんなべらぼうな強さを持つ龍が治める大地に勝手にお邪魔させて貰ってもいいのだろうか??
不法侵入者として罰せられないだろうか??
幾つもの不安要素が胸の中で渦巻く一方、未だ見ぬ大地に恋焦がれている陽性な感情も確かに存在する。
俺一人なら確実に迂回するだろうが、今なら話は違う。
「ふぁ――……。寝過ぎた所為か頭がぼぅっとするぜ」
「貴様……。某と同じ様に荷物を運べ。だらしがないぞ」
人の姿で荷物を運搬するシュレンが俺の右肩に留まりつつ大欠伸をする小鼠を険しい目元で咎める。
「あぁ?? 嫌なこった。俺様は今日も!! 朝一番でおッ立たなかったし。絶賛体調不良だからなぁ」
それは果たして体調不良に含まれるのでしょうか??
甚だ疑問が残るばかりであります。
「下らない事を喋る暇があれば二本の足で歩け。厳しい環境に身を置き、修練の為にこの大陸に訪れたのだろう??」
ハンナが相も変わらず不機嫌そうな顔で正面から向かって来る大蜥蜴を睨みつつ話す。
もう少し目力を抑えたらどう?? 大体の人達がお前さんの醸し出す圧に恐れをなして道を開けていますのでね。
「これから営業前のシンフォニアに立ち寄って、んでその足で王宮に向かうんだろ?? 俺様とシュレンは王宮に出禁を食らっているし。その都度変身したら疲れちまうからこの状態でい――のっ」
フウタが体の良い言い訳を放つと俺の頭の天辺に上り、頭の上で器用に寝転ぶ。
その様子を捉えたお姉さん達からは。
「やだっ!! あの男の人の上で寝転がる鼠可愛くない!?」
「うんっ!! ちょっと小汚い毛並だけどね!!」
「せめてもう少し真面な言葉で褒めろっつ――の……」
『小汚い』
微妙――な感想の声を頂き、それに憤りを感じたフウタは怒りとも呆れにも似た声色が漏れてしまった。
口喧しい連中だけどその実力は本物。
そう、彼等が俺の冒険に付き合ってくれるお陰で危険とワクワクが蔓延る龍の大地へ出発する事が出来るのだ。
「わりぃな、お前達。態々俺の我儘に付き合ってくれて」
心の水面に浮かぶ言葉をそのまま伝えてあげる。
「ふんっ、俺は鍛える為に生まれ故郷を出たのだ。礼を言われる筋合いはないっ」
だとしたらど――して前髪がふっっわぁって浮かび上がっているのでしょうか??
お前さんはもう少し己の感情を抑える練習をすべきだぜ??
「某もハンナと同じ考えだ。龍一族が持つ実力……。是非ともこの目に焼き付けておきたい」
「俺様はまぁっ、ついでって奴かなぁ。向こうの大陸に俺様の、その……。ふ、ふぜ……」
はぁいもう少しですよ――。頑張って主治医に症状を伝えましょうねぇ。
「ふ……。グスンっ、だ、駄目だ言えねぇ……」
残念無念。
心因的外傷を罹患している患者は己の症状を伝えきる前に病院から退出してしまったとさ。
「北西に向かう前に生の森の中央の友人、聖樹ちゃんに挨拶をするんだけどさ。その時にお前さんの不能……」
「不能って言うな!!」
不穏な単語を捉えたフウタが上体をガバっと起こし、右前足で俺の頭を勢い良くペシペシと叩く。
「――――。体調不良についての治療方法を聞いてみるか?? 彼女は呆れる位に長生きをしているから治療方法があるかも知れないし」
「おぉ!! それは良い考えだな!! ワハハ!!!! 切れ味が悪くなった俺様の聖剣もいよいよ完全復活って訳だ!!」
フウタが立ち上がると器用に前足を動かして己の股間辺りをきゅっと抑える。
「それは切れ味が悪い処か鈍ら刀であろう」
「某も同意する。敵を斬れぬ武器を持つのは正に愚の骨頂だ」
「うるせぇぞ!! ほぼ童貞野郎と童貞がぁ!! お、俺様はなぁ!! 史上最強の女性と一騎打ちを果たして、それで……。それでぇ……。ウゥ、グスッ」
「あぁ、はいはい。フウタは頑張ったよ。だから少しだけ休めってお前さんの聖剣は立ち具合でそう言っているのさ」
女性の扱いが下手な二人の気持ちも分かるが、俺はお前さんの苦痛を痛い程理解出来る。
俺も暫くの間不能になる代わりに天に昇る心地良さを与えてくれる世界最高の性技を受けて見ませんか?? と問われたら勢い良く首を縦に振るだろうし。
「ダ、ダンぅぅうう!! やっぱり俺様の気持ちをしてくれるのはお前だけだよ!!」
「ふぉういたしふぁして……」
フウタが俺の顔面にへばり付き、腰を前後にヘコヘコと動かして泣き叫ぶ。
「持つべきものは親友だよな!!」
「ふぁかったらから今直ぐにどふぇ。前が見えん」
「へへっ、わりぃねっ」
フウタが再び頭上に上って行くと王都を四方に走る大通りが一箇所で交わう中央通りが見えて来た。
その中心には本日も英雄シェリダンの銅像が凛々しい立ち姿を披露しており、東西南北から押し寄せる馬車達が思い思いの方向に進もうとしていた。
人の多さもそうだが、交通量も馬鹿みたいに多いよなぁ……。
俺の生まれた大陸の王都もこれと似た感じだが魔物の大きさを加味すると体感的にはこっち方が混雑している様に見えるな。
「んぉ――。今の馬車の荷台に積まれていた野菜の数を見たかよ」
「微妙に痛んでいたし、馬達に与える様じゃないの??」
「あぁ、その線もあったか。ンッ!! ダン!! あれ見ろって!! 超可愛い女の子が乗っているぜ!?」
あ――、もううるせぇなぁ……。少し位黙っていられないのかよ……。
頭の上でやいのやいのと騒ぐ小鼠の言葉に対して適当に相槌を放ち、交通整理のお兄さんの言葉を待っていると。
「はぁぁああ――い!!!! 進んで下さいねぇ――!!!!」
本日も大量の汗を掻く大蜥蜴のあんちゃんから進行の許可を頂き、大勢の人に紛れて北上を再開。
そして、通い慣れた店舗の前に到着すると三名の女性が俺達を迎えてくれた。
「お早う――!! 今日も暑いわね!!」
「今日で暫くお別れだと思うと寂しいですね」
「あはは!! フウタ!! 皆みたいに荷物を持たないと駄目だよ!!」
大勢の人が行き交う中でも決して埋もれる事無く咲き誇る三輪の花達の眩い煌めきを捉えると心に陽性な感情が湧くと共に、寂しい風がふっと流れて行ってしまう。
レストが話した様にこの笑みは暫くの間お預けなんだよな……。
でも、此処で躊躇しちゃ駄目だ。
後ろ髪惹かれる思いは確かにあるけどまた戻って来れば良いだけの話。
「よぉっす!! 旅立ちの挨拶に来たぞ!!」
その様子を微塵も醸し出さず、普段通りの口調と表情で第一声を放った。
でもいつも通りに装えたかどうかは自信が無い。
「うむっ!! 殊勝な心掛けね!!!!」
「お前さんは何様のつもりだよ」
腕を組みウンウンと頷くドナにそう言ってやる。
「口を酸っぱくして言っているけどあんたは此処の従順なる僕なのよ?? 今回だけ見逃してあげるけど次に戻って来たら嫌って程の依頼を押し付けてあげるからね」
それは勘弁して下さい。
俺の体は一つであり、それを越える仕事量を与えたのならぶっ倒れてしまいますからね。
「まっ、それは半分冗談だとして」
半分なんだ。
「ほい、これ」
ドナが少しだけ頬を朱に染めて俺の手の平に収まりそうで収まらない大きさの四角い青の布を渡してくれる。
「これは??」
「あ、あぁ。お守りみたいな物よ。次の大陸は危ないって言っていたし?? べ、別に深い意味とか無いからっ」
ははぁん、そういう事ね。
別れの際だってのに正直じゃない奴め。
「有難うね。大切に持っておくよ」
意外とズシンとした重さを持つお守りを右の内ポケットに仕舞ってそう話す。
恐らくこの重量からしてお守りの中身は鉄板とかその類であろう。
「うむ!! あ、そうだ!! ちゃんとお土産を持って来てよね!! 約束だよ!?」
「分かっているって。昨日も同じ台詞を言ったでしょう??」
「ハンナさん、決して危険な真似はしないで下さいね??」
「ぜ、善処しよう」
「フウタもシュレンも気を付けて行くんだよ――??」
「おうよ!! 世界中に俺様の強さを知らしめてやるぜ!!!!」
「はぁ……。某はもう不安だぞ……」
それぞれが雑談を交わしつつ暫しの別れの挨拶を済ませて行く。
皆の表情は明るいがその端には太陽の光を陰らす様な薄い雲が掛かっている。
別れは寂しいものだと十二分に理解していたが……。深めた絆、構築した信頼関係と比例する様に人との関係性は別れに対して多大に影響を及ぼすみたいだ。
ドナと雑談を交わしているだけなのに一言話すにつれて心がズキンと痛むのがその良い証拠さ。
「――――。はは、相変わらず馬鹿しているな??」
「私が値切ろうとしても値切らないあの店が悪いのよ」
「その豪胆な性格を少しでもお淑やかなにすればきっと値切ってくれるぜ??」
「善処しよう!! さて、と。そろそろ時間よね」
名残惜しい、別れが辛い。
己の心に浮かぶ空模様を全面に押し出した表情のドナが静かに呟く。
「そうだな。ハンナ!! そろそろ行くぞ!!」
距離感をちょいと間違えたレストの対処に右往左往している相棒の横顔へ向かって叫んでやる。
「分かった」
「うっし。ドナ、じゃあ俺達は行くよ」
温かな眼差しを浮かべたまま彼女に向かって右手を差し出してあげる。
「んっ。決して無理はしない様に。これだけは約束して」
ドナが俺の右手をぎゅっと掴むと真剣な眼差しで此方を見上げる。
「分かった、約束する」
「本当かしらねぇ??」
「俺が今まで約束を破った事があるかい??」
「無い!! 理解しているのならいい!! 気合入れて世界を見て来なさい!!」
俺との硬い握手を解除すると無防備な背中を力の限りに叩いてしまう。
「いでぇっ!! ったく……。最後の最後位しおらしく見送ってくれよ」
「それは私らしくないしっ。兎に角、私達はここでダン達が帰って来るまでずぅっと待っているからね。帰る場所を無くしたら、前を向けなくなったら帰って来なさい。いつでも迎えてあげるからさ」
ドナの言葉を受け取ると心臓が本当に嬉しく鳴いてしまった。
俺達の事を真に想う彼女の言葉がこうも大きく響くとはねぇ……。
俺も日和った……、というよりもドナの存在が俺の心の中で占める割合が大きいからそれだけ響いたのだろう。
「そうするよ。どうしようもない馬鹿な俺達の世話を見てくれて有難う、そしてどうかこれからも叱ってやってくれ」
「あはっ!! 勿論よ!! 私はその辺の教育に厳しい母親よりも手厳しい事で有名なんだからさ!!」
「だろうなぁ。目くじら立てて襲い掛かって来そうだもん」
俺がそう揶揄うと。
「こ、このっ!! 旅立ちの日を数日遅らせてやる程に痛めてやるからそこに直れ――ッ!!!!」
横着なラタトスクちゃんが右の拳を握り締めて襲い掛かって来やがった!!
「ご、ごめんってぇ!! そ、それじゃあ俺達は行くからぁぁああ――――!!!!」
旅立ちの日に重傷を患うのは御免だとして王宮の方へ向かって駆け始めた。
「あはは――!! ば――かっ!!!! 頑張って行って来なさいよ――!!!!」
「お――う!!!!」
頭上の太陽よりも明るい笑みを浮かべているドナに元気良く手を振り続けながら北へと進んで行く。
彼女の姿が拳大の大きさに変わり、親指の大きさに変わり、そして米粒の大きさになっても俺は腕を振るのを止めなかった。
彼女が俺にしてくれた事に対しての厚意に応える様、ドナの姿が完璧に消えるその時まで決して振り返る事は無かったのだ。
――――。
「行っちゃったね……」
ダン達の姿が人の波に消えて見えなくなるとミミュンが寂しそうにポツンと言葉を漏らした。
「うん。最後の最後までダンらしいって感じだったね」
私の視界から消えるまでダンは決して振り返らず、私に向かってずっと手を振り続けていてくれた。
義理人情に厚い彼らしい所作。
もう後五分、あの姿を捉えていたらきっと私は彼の下へと向かって駆け出していただろう。
駆け出さぬ様、そして……。両の目から温かな雫が零れない様に必死だったよ……。
「彼等は私達……、ううん。この街に対して本当に色々よくしてくれた。その恩は忘れないでいましょう。そして帰って来たのなら温かくもてなしてあげようね??」
私の感情を汲んだのか。
レストが本当に優しく肩に手を乗せてくれた。
「わ、分かってるわよ……。で、で、でもぉ。ヒグッ!! ウゥッ……。やっぱり別れは辛いよぉ……」
友人の温かな思いやりが私の最後の砦を破壊。
これまで必死にせき止めていた涙がとめどなく溢れ出してしまった。
「ド、ドナぁ……。泣かないでよぉ……。私も我慢していたってのにぃ……」
「ご、ごめん。で、でもさダン達は帰って来るって言っていたし。次に来た時、乙女達を泣かせた罪は重いと体と財布に教えてあげようね」
グスンっと鼻を啜り、今も流れ続ける別れの雫を手の甲でクイっと拭う。
「それは良い考えね。ハンナさんの気に入りそうなお肉屋さんを探しておきましょうか」
「むぅ?? レストさん?? そこでど――してハンナさんだけが出て来るのかなぁ??」
「ふふ、同じ女なら分かるでしょ?? 彼の心を何んとか射止めようとしたけど……。ハンナさんの心の中にはたった一人の女性しか映って居ないみたいだったし」
ほ、ほほう!! やはりあの距離感はそういう事だったのね!?
「彼が戻って来るまで女を磨いておきましょうかね。そして、一段階美しく賢くなった私に刹那にでも心を奪われる様な事があれば……」
レストが静かに言葉を漏らすと目を細めてハンナさんが去っていた方角へと視線を送る。
「ね、寝取るって事かな!? うわぁ、レスト大胆だねぇ」
「時に女は大胆に行かなきゃいけないのよ。ドナがダンに襲い掛かった様にね」
「ブフッ!!!!」
彼女がさり気なく放った一言に思わず盛大に咽てしまった。
「な、何で知っているのよ!! レスト達は午後一番まで眠っていたじゃん!!」
私達がこ、行為を終えたのは午前中だったのに……。
「喉が渇いて起きてね?? その時に二階から野獣の雄叫びが聞こえて来たのよ。『も、も、もうダメ――――ッ!!』 ってね??」
レストが私の声色を真似すると顔が煮沸したかの様に熱を帯びてしまった。
「し、知らない!! ほら!! あんた達!! 開業の準備があるから行くわよ!!」
レストが王都の中央で本日も変わらぬ堂々とした出で立ちを誇る職場へと大足で向かって行く。
「へ――、ドナってその時は結構激しく叫ぶんだ」
「あ、あれはダンが悪いのよ!! 私の弱い所を的確に攻めて来てぇ……」
「「弱い所ぉ??」」
「ち、違う!! 今の無し!! 聞かなかった事にしてぇ!!」
「一度耳に入れちゃったからねぇ」
「それは難しいわ。では、開業準備をしつつ彼の卓越した性技について御伺いしましょうかね」
「ぜ――――ったいに嫌ッ!!!!」
王都に住む人々の依頼を請け負う施設はそれに応えるべく営業時間が始まると物静かに扉を開くのだが、本日はどういう訳か少々仰々しく開かれた。
開かれた扉からはうら若き乙女達の燥ぎ、騒ぎ立てる明るい声が漏れている。
いつもと変わらぬ光景の中の異変に気付いた大蜥蜴達は少しだけ首を傾げるのだが。
「大体!! レストだって卑怯だよ!! ジリジリとハンナさんに近付いて行ってぇ!!」
「女の嗜みという奴よ。それよりも、さっきの話の続きを聞かせてよ」
「は?? さっき??」
「ほら、後ろから激しく突……」
「わぁぁああああああああ――――――ッ!!!!」
あぁ、あの元気な受付娘さんが今日も暴れていたのかと。
「さぁって、今日の依頼は何にしようかなぁ――っと」
「清掃業ばっかじゃねぇか。偶にはガツンと稼ぎたいぜ」
「激しく同感――っ」
この街の名物になりつつある活発快活娘さんの大絶叫を耳にして大いに納得するとそれぞれが、それぞれの道に向かって静かに進んで行ったのだった。
お疲れ様でした。
長文となってしまいましたので前半、後半に分けての投稿になります。
現在、サッポロ一番塩ラーメンを食しながら後半部分の編集作業中ですので次の投稿まで今暫くお待ち下さいませ。
沢山のいいねを有難う御座います!! そして誤字脱字の報告も嬉しいです!! 先程修正させて頂きました。