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今日も今日とて、隣のコイツが腹を空かせて。皆を困らせています!!   作者: 土竜交趾
過去編 ~素敵な世界に一時の終止符を~
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第百六十八話 二人、良く晴れた空の下で その二

お疲れ様です。


後半部分の投稿になります。




 空に漂う雲の様に、大変心地良い浮遊感を感じて空のお散歩を楽しんでいると私の目の前に好意を寄せている男性がふと現れた。


 彼はいつもの素敵な笑みを浮かべて私を当然の様に揶揄って来るのだが……。どういう訳か今日だけは真剣な面持ちで私の顔を直視していた。


 その瞳の色は真剣そのものでありいつものお茶らけた感じは一切感じられず、私はその真意を確認する為………。




 何故かダンが着用していた服装を有無を言わさず全て剥ぎ取ってしまった。




『イヤァァアアアア!!!!』


 女々しい叫び声を放つのなら組み伏せて唇を奪い。


『これ以上は駄目だってぇ!!』


 私から逃れようものなら両腕でしっかりと体を確保して内から猛る色情に任せて彼の体を貪り食い、ある程度満足すると再び心地良い浮遊感が戻って来たのでそれに任せて深い眠りに就いた。


 そして、まるで王様が使用しているかの様な大変寝心地の良いベッドの上で世界最高の眠りを享受していたのだが……。



「ん――…………。あっつぅ!!」



 急に熱気がムンムンと漂う蒸し風呂の中に放り込まれた様な感覚を受けて目を覚ます。



「……」


 ボゥッとしたままの頭で見慣れた自室の景色を見渡していると熱の発生源を確認出来た。



「むぅ。いつもは掛けない毛布を掛けて寝ていたから……、って!! エッ!?!?」



 な、何で私生まれたままの姿で寝ていたの!?


 春の木漏れ日の様な、爽やかな光の中に曝け出された己が双丘を捉えると素直な驚きが口から出てしまった。



 最後の記憶は確かぁ……、あぁそうだ。ダンにお酌を頼んでいた所まで覚えているわね。


 って事はレストかミミュンが酔い潰れた私を部屋まで運んでくれたのだろう。



 急に上半身を起こした所為か、それともお酒がまだ体に残っている所為か。


 こめかみにズキンっとした痛みが走って行く。



「いてて……。今日は休みだからいいけどちょっと飲み過ぎたわね」


 両手で優しくこめかみを抑えて痛みを誤魔化すと大変気持ち良い風が吹き込んで来る窓の外へ視線を送る。



 今は……、午前中って所か。態々時計を見なくとも日差しの角度で大体の時間を把握出来る。


 折角の送別会だったのに記憶が有耶無耶なのはちょっと勿体ない気がするわねぇ。ダンと過ごす大切な時間がものの見事に抜け落ちているのだから。



 まっ、もう一日位付き合わせれば大丈夫でしょ。


 ほら記憶が曖昧だからもう一晩飲むわよ――って誘えばダンならヤレヤレって感じで付き合ってくれるし。


 全然真面目そうに見えないけどその実けっこ――真面目で、しかも友達想いの優しい男性。


 口では嫌だと言いながらも自分の用事よりも友人の頼み事を優先しちゃうお人好しさんっ。



 知り合ってから幾度無く素敵な会話を続けて来た彼の顔を頭の中でぽ――っと思い浮かべているとベッドの左脇から何やら物音が聞こえて来た。



「ウ゛、ウゥ゛……」


「ッ!?」


 はぁっ!? だ、誰か居るの!?



 てっきり一人で爆睡していたかと思ったのに、突如として人の存在が確認出来てしまうと血の気が一斉に失せて行く。



 う、う、嘘でしょ?? 私が裸って事はだよ??


 隣に居る人と熱い夜を過ごしたって事になるわよね!?



「……っ」



 神様!! ど――か変な人でありませんようにっ!!


 祈る思いで毛布の端を掴み、徐々に持ち上げて行くと……。



「あ、暑いぃ……」


 私同様生まれたままの姿のダンの汗まみれな顔が出て来た。



「はぁぁ――……。良かっ、いやいや!! よくないから!!!!」



 何でダンが私の隣で寝ているのよ!! し、し、しかもシーツがとんでもない事になっているしっ!!!!


 それよりもま、先ずは昨晩の様子を確かめないと!!!!



「ちょ、ちょっと起きなさいよ」


 彼が纏っていた毛布で体全身を隠し、何だか全身に酷い擦り傷を負っているダンの肩を掴み激しく揺らしてあげる。


「お、お早う御座います……」


 錆び付いて全然動かない扉を開ける様に腫れぼったい瞼をギギと開き、私の姿を捉えると枯れた声で朝一番の挨拶を告げてくれた。



「は、はよ。えっと、起きていきなり悪いけどさ。い、一体何があったのか説明してくれる??」


 私がしどろもどろにそう話すと。


「覚えていないの??」


 ダンが何だか寂しそうに鼻をクスンっと啜り目に矮小な涙を浮かべた。


「う、うん。全然覚えていないかも……」


 夢の中では想いを寄せる男性と肌を重ね合わせていたけども、まさか現実でもそれが行われているとは思わないでしょ。


「じゃ、じゃあ教えてあげるよ。悲惨で残酷な数時間を……」


 彼が目から零れて来る涙をスっと拭うと、思わず耳を疑いたくなる言葉の数々が出て来た。



 ダン曰く。


 酔っ払った私をこの部屋に運んで来たまでは良かった。


 それから酒の力によって枷を解除した私はまるで飢えた獣の様に彼に襲い掛かったそうな。


 夜が更け、早朝が訪れても凶悪な逢瀬は終わらず。私が体力の限界を迎えて意識を失った所で漸く残酷な夜が終わったらしい。



「だ、だから全身傷だらけなんだねっ」


 取り敢えずアハハと笑って己の失態を誤魔化す。


「ヤメテって言っても無理矢理抑え付けて……。逃げ出そうものなら万力で掴み、剰え首筋に噛みついて来たんだぞ??」


 ほら、見えますか!? と言わんばかりに左の首筋に出来た噛み跡を見せつけて来る。


「ま、まぁっ酔っ払った私に近付いたダンが悪いって事で」


 何かに怯える様に体を丸めて防御態勢を保持している彼の頭をヨシヨシと撫でてあげた。



「ったく……。ひっでぇ目に遭ったぜ」


「その割には何だか嬉しそうだけど??」


「そりゃあ……、なんだかんだ言って気持ち良かったし??」


「「ぷっ、あはは!!!!!!」」



『気持ち良かった』



 その言葉を受け取るとダンと私は示し合わせた様に瞳を宙で交わし、そして馬鹿みたいに口を開いて笑い合った。


 ダンとの甘い夜を余り覚えていないのは残念だけど、こうして笑い合う事が出来たからまぁヨシとしましょうかね。



「朝から笑わせてくれるわね??」


「しんみりした朝は苦手なのさ。所で、そろそろその毛布を返してくれるかい?? 生まれたままの姿だとちょっと恥ずかしいんだよ」


 彼が私の毛布を剥ぎ取ろうとするが。


「だ――め。私も裸だもん」


 右手で彼の手をペチリと叩いてやった。


「そっか……。それじゃあ……、ちょいと明るいけど二回戦を始めますかね……」


「へっ!? ちょ、ちょっと待っ……。んんっ!!」



 彼が私の体を優しく抱き締めるとまるで愛猫に接吻キスをする様に、甘く切ない口付けをして来た。


 全然嫌じゃないけど私も一人の女性だ。


 男性からのお誘いを何でもかんでも了承する様な軽い女に見られたくは無いのよ。



「も、もう。駄目だよ……。こんな明るい時間に」


 物凄く優しい力で彼の男らしい体をそっと押し退けてあげた。


「男女の営みに時間は関係無いさ……」


「やっ!! ちょっとぉ!! 駄目だってばぁ!!」



 ダンが巻き付けている毛布の頭の中に無理矢理頭を入れると私の弱い所を的確に攻めて来る。


 何故そこを知っているのか、ふと疑問に思ったのだが……。


 あ、そうか。酔っ払っている私に教えて貰ったんだね。


 一人勝手に納得して彼の優しい愛の行動を受け止めてあげた。



「ドナの体は正直だけど……。どうする??」


 彼が毛布の中から出て来ると大変意地悪な笑みを浮かべて私を見つめて来る。


「うぅん……。そ、その宜しくお願いしますっ」


 恥ずかし過ぎて顔から火が出て来るんじゃないかと錯覚してしまう顔の熱を何んとか堪え、現時点で出来る精一杯の了承の答えを彼に伝えてあげた。


 それから私達は太陽が燦々と輝く時間にも関わらずベッドの上で愛を囁きつつ互いの肌を重ね合わせ続けていた。








































「――――。はぁっ、んっ……」



「ほ、ほら!! 奥様聞こえました!?」


 彼女達が住む近くの裏路地で井戸端会議を行っていた主婦の一人が大変驚いた顔で声の発生源と思しき場所を指差す。


「え、えぇ!! 勿論!! 朝も早くから盛っていますわね!!」


「若いっていいわよねぇ……」


 淫靡な声を捉えて鼻息荒く興奮する大蜥蜴も居れば、昔を懐かしむ様に頬に手を添えている大蜥蜴も居る。


 主婦達は夫の若しくは家事の愚痴よりも若い男女が奏でる愛の歌に夢中の様だ。




「もっとぉ、もっとして……」




「もっと!? 何処をもっと攻めているのかしらね!?」


「でもあそこの家主って確かシンフォニアの受付嬢ちゃん達が使用している家よね??」


「そう言えば……。最近若い男が『出入ではいり』 しているのを見かけましたわよ」


「「出入りってぇ……」」


「ち、違いますぅ!! そういう意味じゃあありません――!!」


 一人狼狽えている大蜥蜴の主婦に攻撃の矢が突き刺さる。


 攻撃の矢を放つものの、主婦達の全聴覚は普遍的な家の窓に注がれていた。




「やぁっ……。そこはだ、駄目ぇ……」




「まぁ!! 駄目ですの!?!? そろそろ果てる寸前なのかしら!?」


「きっと男性が女性の弱い所を的確に攻めているに違いないですわ!!」


「そ、それはそうなのですけどぉ。こ、この……。柔らかい肉を激しく突く様なパンパン!! と等間隔に響く音ってもしかしてぇ……」



「「「キャアアアア――――!!!!」」」


 いい歳をした大人達がその淫靡な様子を想像すると、皆一様に両頬に手を添えて嬉しそうにイヤイヤと首を振り。


「「??」」


 その姿を捉えた事情を知らぬ者達は首を傾げて彼女達の前を通り過ぎて行く。



「ど、どうせなら最後まで付き合いませんと!!」


「そうですわね!! それにしても女性の相手をしている殿方は中々の継続時間ですわ!!」


「うちの夫とは雲泥の差という奴ね!! さ、さぁ!! 皆さんそろそろ来ますよ!? 今日一番の歌声ぜっちょうがぁ!!」



 主婦達の井戸端会議は愛の歌の絶好の観覧席となり。彼女達は鼻息荒くそして興味津々といった面持ちで舞台ベッドの上で今も行われている二人の愛の賛歌に酔いしれていた。



「んんぁぁああっ!! も、もう駄目ぇぇええ――ッ!!!!」




「「「よっっっっしゃぁぁああああああ――!!!!」」」



 そして愛の行動が始まって最初の最高潮を彼女が迎えると主婦達が熱き拳を握り締めて空を穿つ様に勢い良くその腕を掲げた。


 本日も爽快に晴れ渡る空。


 何処までも広がる青き空の下で交わされる愛の歌と観客から放たれる感嘆と驚愕の声は平和な日々に誂えた様に良く映える。


 愛の歌声が響く舞台ベッドから魂を揺さぶる声が途絶えるその時まで主婦達は観覧席から一切動こうとせずいつまでも。そう、いつまでもその歌に魅了され文字通り釘付けとなっていたのだった。





お疲れ様でした。


後半部分の加筆に手間取ってしまい深夜の投稿になってしまいました。大変申し訳ありませんでした。


そして、残り数話程度彼等の日常にお付き合い下さいませ。全てに区切りを付けた後に彼等は新しい大陸へと旅立ちますので。



私が住む地方はいよいよ梅雨入りなのか、最近はムシムシした日が続いております。


今年の夏は何をしようかなぁっと考えながら日々を過ごしているのですが、まだ微妙に暑さに慣れていないのか。何かを思いつく前に光る箱へ文字を叩き続けている日々ですね。


新しい大陸の登場人物の名前、構成や現代編と矛盾していないか等々。プロット作成の忙しい日々に追われていますよ……。



それでは皆様、お休みなさいませ。

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