第百六十二話 怪しい月夜 男の性 その一
お疲れ様です。
本日の前半部分の投稿になります。
地上を明るく照らしていた太陽が大欠伸を放ちながらベッドへと向かい、その代わりに満天の星空の中に月が眠気眼を擦りながら静々と現れる。
月が放つ怪しい光を直接体に若しくは視覚から取り込むと人々は淫靡な感情を抱いたり、疚しい感情を湧かせてしまう。
何故その様な力を月の光が持っているのかは今も解明されていないが良く晴れた月夜にはそういった行動に及ぶ者が出現すると言い伝えられているのだ。
かく言う俺もその一人であり、心に渦巻く形容し難い感情を誤魔化す為。
美しい夜空の下で月に向かって猛々しく吠える狼の雄叫びを放ちたいがそれを実行してしまうと確実に怪しい奴だと友人達から冷たい目で見られてしまうので、その感情を抑えつつ場の流れに合わせて晩酌を続けていた。
「ふぅ――……。いい味の酒だな」
あの晩餐会の夜に出された琥珀色の酒をチビリと口に含み柔らかい吐息を漏らす。
酒の香が鼻にすぅっと抜けて行くと心に陽性な感情が自然と湧く。
「態々ティスロが用意してくれたのだ。有難く飲めよ??」
左隣のグレイオス隊長が顔面の鱗を微かに朱に染めて俺の手元を見つめる。
「わ――ってるよ。美味い酒を用意してくれて有難うね」
俺から向かって斜向かいの椅子に礼儀正しく腰掛ける彼女に軽い笑みを送った。
「どういたしまして。おつまみもご用意していますので召し上がって下さいね」
そりゃ勿論!! お酒のつまみに持って来いの料理ばかりですからねっ!!!!
食堂の八人掛けの机の上に並べられた料理の品々に改めて視線を送る。
辛めの香辛料でピリっとした味付けをしてある根菜類の炒め物、海で獲れたサザエの刺身に帆立の揚げ物。
これだけの品を一人で用意するのは大変だったろうに……。それを残すのは作法として御法度だよな!!
「ふぁむっ……。んむっ!! サザエのコリコリ感が堪りませんな!!」
白濁の貝の身を口に運び、奥歯で身を噛むと中々強烈な弾力が歯を押し返して食感を楽しませてくれる。
程よい塩味に歯が喜ぶ噛み応え。
久し振りに海の幸を堪能しているって気分だぜ。
「あぁ、確かに美味いな」
俺の右隣り。
酒よりも食に没頭する彼が微かに口角を上げてサザエの身の食感を楽しんでいる。
「だろ?? 俺が潜って獲って来たんだから有難く食えよな」
得意気に鼻息を漏らすと彼の左肩を少々乱雑に叩いてやる。
「ふんっ、そこまで威張れる程の味では無いだろう。あの自爆花の実に比べれば雲泥の差だ」
文字通り命がけで数日間掛けて採取した至高の甘さを提供してくれる実と、たかが数十分掛けて獲った貝を比較しちゃあ駄目でしょうに。
「ダンからその話は伺いましたけど、本当に美味しかったのですか??」
俺の正面。
晩酌の席が始まってからチビチビとお酒を飲み続けているレシーヌ王女様が相棒の顔へ視線を送る。
彼女の顔はほんのぉりと朱に染まり整った顔立ちもあってか、やたらと可愛く見えてしまうぜ。
「この世の物とは思えぬ美味さだった。願わくばもう一度味わってみたいのが本音だな」
「俺はぜっったいに嫌だぜ!? もう二度とあぁんな危険な目に遭いたくないし!!」
自爆花の実は確かに舌と脳が蕩けてしまう美味しさだったけども、一歩間違えれば俺は今頃棺桶の中で腐り果てていたのだ。
至高の美味さを求める為だとしても危険な橋を渡るのは勘弁願いたい。
「あの花の実は勿論の事、自爆花の葉で淹れられたお茶も大変高級ですからね」
ティスロが手元のグラスに並々と注がれているお酒を一気にクイっと飲み干す。
真面目な見た目と違ってかなり酒が強い様だな。飲み始めてから一切表情が変わっていないし。
「市場に出回った場合、一体幾らの値が付くので??」
グレイオス隊長の正面の席に腰掛け、自分の速度で酒を飲んでいるトニア副隊長が話す。
「そうですね……。入手難易度の所為もあってか中々市場に出回りませんので恐らく金貨数枚、いや。十枚は確実にしますね」
大枚叩いて運良く入手出来た幸運な者は俺達の様に死ぬ思いもせず、なぁんの苦労もしないであの極上の味を堪能出来るって訳だ。
羨ましいやら妬ましいやら……。
「たかが実一つで金貨十枚か。ダン!! 俺が実の採取の依頼を申し込んだら受けてくれるか!?」
「却下」
「せめてもう少し悩む振りくらいみせろ!! それが友人に対しての態度か!?」
「ぐぇっ!!」
即答した事に対して憤るグレイオス隊長が俺の首をグイグイと絞める。
普段は力の制御が出来ているが今宵は酒の力もあり、いつもより五割増しした力に目を白黒させてしまった。
「ゴホッ……。隊長も現地に行ってみたらそのヤバさに尻尾を巻いて逃げるだろうさ」
「王都守備隊の隊長は恐れを知らぬ!! 植物如きに恐れをなして堪るものか!!」
はい、一名様あの世へご案な――い。
「今の声量を群生している花の近くで叫んだら木っ端微塵だぞ。それに花から実を外す順番も、警戒心の弱い個体の見付け方も知らねぇだろ?? 簡単に獲って来た様に見えてその実滅茶苦茶苦労したんだから」
まぁその分、天に昇る旨味を享受する事が出来ましたけどね。
「グレイオス隊長、世の中には適材適所という言葉があります。キマイラの巣窟に突入した時も感じましたよね?? 彼等の斥候能力と環境適応能力の高さを」
トニア副隊長がちょいと冷たい瞳で彼の顔をじぃっと見つめる。
「ま、まぁそうだが」
「ダンからその話も伺いましたけど突入時の様子をもう少し詳細に聞かせてくれます??」
「い、いや。それはぁ……」
うふふ、王女様に自分の失態を説明するのはちょいと億劫になりますよね――。
しかも彼は俺達と違って王都守備隊の隊長という大層御立派な肩書もあるのだ。おいそれとは口に出せないでしょうに。
「私も聞きたいです。是非ともお聞かせ願えませんか??」
「ほら、隊長。現職の魔法科学部の職員と王女様直々の御命令ですよ?? 我々はそれに答える義務があるのです。突入の前の準備段階から罠が襲い掛かって来る時点までを詳細に説明すべきです」
「もう勘弁してくれ!! 俺の判断は間違っていたと認めるから!!!!」
「「「あはは!!!!」」」
顔を真っ赤に染めて机に突っ伏す彼の姿を捉えるとこの場に居る全員が口を開いて陽性な笑い声を放った。
酒の席に相応しい音に心が嬉しい音を奏でてくれる。
このまま晩酌の時が深夜まで進めばぁ……。う、うふふ。ぐぬふふぅ!!!!
それはもう素敵な大人の時間に突入する事でしょうね!!
酒の席で皆さんは注意散漫でお気付きでは無いとお思いでしょうがぁ、普段よりも衣服の防御態勢が甘いのですよ??
「ふぅっ、ちょっとお酒が入って暑いですね」
お酒の効果によって体温が上昇し、それを逃そうとしてシャツの胸元を摘まんで新鮮な風を胸元へ送る。
レシーヌ王女様の双丘の標高は平均的ですがっ、肌理の細かさは他の追随を許さずまるで新雪の様にサラサラしている。
揺れ動くシャツからチラっと見える淫靡な陰りが素敵であり赤らんだ顔の表情も相俟って男の性をグイグイと刺激してしまう。
「レシーヌ王女様。お水をお持ちしましょうか??」
無防備なまま前のめりになって彼女の容体を確認するティスロの胸元は一言で説明するとぉ……。
破壊力抜群って感じか。
清楚な制服を脱いで今は私服に着替えているので新鮮な感じがしますが、彼女が着用する衣服は所詮飾りみたいなものだ。
彼女の動きに合わせてたわわに動く果実の揺れ幅に視線が釘付けになってしまう。
「隊長、顔を上げなさい。そして早く己の失態を赤裸々に語るのです」
トニア副隊長も現在は私服姿だ。
深い青の半袖から覗く日に焼けた肌が健康的な印象を与え、時折席を立った際に覗くあんよちゃんの程よい発育具合に心がときめいてしまう。
怪しい月の光の効果、そして酒の力。
この二つの力によって女性陣は普段よりも数倍妖艶な力を持ち、男共……。まぁ正確に言えば俺一人かも知れないが。
俺は彼女達が知らず知らずのうちに放つ雌の力に引き寄せられてしまっていた。
さぁ――、皆さん。記憶が無くなる程に沢山のお酒を飲んで下さいまし。
私はぁ、皆さんがぁ、酔いつぶれた頃を見計らって野獣の様に襲い掛かりますのでねぇっ。
心に沸々と湧く厭らしい感情を懸命に抑え込み酒の席に合わせた笑みを浮かべてその時を伺い続けていると。
「ふぅ――、笑い過ぎて少し疲れてしまいましたね」
「本日は朝も早かったですし、そろそろお風呂に入って就寝しましょうか」
俺の予想とは裏腹に酒の席はお開きの流れの方向へ向かって行ってしまった。
な、な、何ですと!?!?
それは寝耳に水なんだけど!?
「空いた食器は一纏めにして机の上に置いて下さい。御風呂から上がったら私が片付けますので」
「あぁ、すまないな」
ハンナが食を続けながらティスロに一つ頷く。
「いえ、これも私の務めですので。さて、では先ずは女性陣から御風呂を使用させて頂きますね」
ティスロが軽快な笑みを浮かべて席を立つとそれに合わせてレシーヌ王女様とトニア副隊長が彼女に続く。
「浴槽には既に水を満たしてありますので後は私の魔法でお湯に変えるだけです」
「ティスロの湯加減は熱いのでいつもより少し温めにして下さいね??」
「王女様の言う通り。温めの湯で筋肉の疲れを取らないと翌日に残るから」
「え――……。熱めの湯じゃないと浸かった気にならないのですが……」
彼女達が年相応なキャッキャッとした明るい会話を継続させながら部屋から退出するとむさ苦しい男共達だけが部屋に取り残されてしまった。
俺の理想は全員が酔い潰れて、彼女達を介抱する名目で熱ぅい夜を過ごす筈だったのに……。
本日の夜の計画が早くも総崩れとなってしまったがこれは逆に僥倖と捉えるべきだ!!
美女三名の湯浴み姿を拝める事が出来るまたとない好機なので!!!!
三名の女性の介抱から一転。
浴場での欲情発散計画を遂行する為、俺は先ずこの堅物二人の目を逃れなければならぬ。
「ふぅ――。相変わらずこの酒は美味いな」
浴場方向へ遠ざかって行く彼女達の足音と会話の音を断腸の思いで見送り、己の気を紛らわす為に目の前の酒をクイっと口に運ぶ。
「そうだな!! ちょっと強いのが偶に瑕だがその強さを一切気にせず飲めるのが嬉しいぞ!!」
グレイオス隊長が大分怪しい呂律で酒を一気に飲み干す。
「プハァッ!! 酒も美味いし、料理も美味い!! 護衛の名目で島に訪れたがこれはいい休暇になりそうだぞ」
「そうそう、偶には羽目を外せって。ほれ、もう一杯ど――ぞっ」
彼の空になったグラスに琥珀色の液体を並々と注ぐ。
「おぉ!! 気が利くな!!」
ククク……。俺の計画も知らないでガブガブと酒を飲みおって……。
こりゃ楽勝で一人は無力化出来そうだぜ。
と、なると最大の問題はコイツだな。
「ハンナは酒のお代わりはどうだ??」
さり気なく、そして流れに逆らわぬ様にハンナに酒を差し出すが。
「いらん。俺はこの机の上に並べられた食を片付けねばならぬ使命があるからな」
クソ真面目且ムッツリ野郎を酔わせて無力化する作戦はどうやら有効じゃないようですねっ。
ハンナは俺の酒を断ると目の前の料理を己が口へと運び始めてしまった。
酒で酔い潰す作戦も駄目だし、少しでも俺が厭らしい気持ちを覗かせたら感づかれてしまうし。
ちぃっ、一番面倒な相手だぜ……。
「そう言えばお前達はいつこの大陸を発つのだ??」
グレイオス隊長がサザエの刺身を大きな口にひょいと放り込みながら問うて来る。
「ん?? あ――……。相棒と相談したんだけどさ、キマイラ達との交渉はいよいよ大詰めに差し掛かっていて。行政側とアイツ等との交渉が纏まったら北西のガイノス大陸に向かう予定だよ」
本当はもう少しこの大陸で冒険を続けていたけど……。
旅のきっかけとなったあの地図のバツ印の意味を解き明かさないとね。
「そうか、寂しくなるな」
「デカイ図体に似合わず随分と感傷的じゃねぇか」
酒をチビリと口に含み寂し気な吐息を漏らした彼の肩を軽快に叩く。
「お、俺はだな!! 貴様達ともっと共に鍛えて高みに昇りたいと考えているんだぞ!!」
「グェッ!?」
俺の刺激が彼のナニかを刺激してしまったのか。
大変御立派で太い十の指が俺の首をグイグイと締め上げ、突然襲い掛かって来た本日二度目の力に再び目を白黒させてしまった。
「わ、分かったから!! 俺達の冒険が一段落したらまた戻って来るからこの手を離せ!!!!」
「ワハハ!! そうかそうか!! 戻って来るのか!!!!」
無駄にデカイ大蜥蜴が酒くせぇ息を吐き散らしながら俺の双肩をガッッチリと掴む。
「俺だけじゃ無くて守備隊の連中もきっと寂しがるからな。戻って来たのなら……、守備隊の一員として加えてやってもいいぞ?? 話は俺からゼェイラ長官に伝えておく。お前達は国王様から準貴族として騎士の爵位も与えられているし、すんなりと了承されるだろうさ」
「いんや、それは結構。俺はいつまで経ってもしがない冒険者だし、それに相棒は生まれ故郷に最愛の人を残してこの旅に出ているんだ。な?? そうだろ??」
「さ、最愛はさて置き。俺は里の戦士の務めがあるのでその話は了承出来ないな」
ハンナが微かに頬を朱に染めて箸の手を止める。
と、言いますか。俺達が軽い戯れを行っている間に殆どの食料を平らげたのかよ。相変わらずの食欲だな……。
「だったらダンだけでも俺達が貰うぞ!?」
「あぁ、そうするといい。地の果てまで逃げ遂せるのなら俺が捕まえて来てやる」
「勝手に話を進めるんじゃねぇ!! 俺にだって自由に過ごせる権利があるんだぞ!!!!」
このままでは本当に一生むさ苦しい大蜥蜴ちゃん達に囲まれて過ごす事になってしまうので声を荒げて抗議の声を解き放ってやった。
「俺達と共に鍛えるのが不満なのか!?」
「そうだよ。昼は兎も角、夜は鼾が五月蠅くて眠れやしねぇし」
あの鼾はどう頑張っても慣れる気がしないもの。
「貴様ぁ!! 隊長がここまでして勧誘しているのに首を縦に振らないのか!?」
こ、この酔っ払いめ!! 正義の鉄拳を受け取りやがれ!!!!
「いい加減にしろ!! この酔っ払いがぁ!!!!」
酒くせぇ鼻息が掛かる距離にまで急接近して来た大蜥蜴ちゃんの顎先目掛けて右の拳を放つと。
「グォッ!?」
普段なら容易く躱せる筈なのに酒の効果もあってか、彼は俺の拳を真面に食らって椅子から転げ落ちてしまった。
やべっ、イイ感じに入っちゃったけど大丈夫かしら??
「おいおい。こんな生温い拳を躱せないなんてぇ……」
「スグォォオオ……」
何だ、気を失ってそのまま寝ちまったのか。
「はぁ――……。漸く五月蠅い奴が寝てくれて幸いだぜ」
「同感だ。ダン、貴様の前にある料理は食さないのか??」
ハンナが横目で俺の目の前に置かれているサザエの刺身に視線を送る。
「もう腹が一杯で食えねぇよ」
「それなら俺が貰うぞ」
彼が素早い所作で俺の皿を奪うと手元に引き寄せ、晩酌が始まった時と一切変わらない速度で食を進めて行く。
「食い過ぎると吐くぞ」
「大丈夫だ。最近は肉体を酷使していた所為か、自分が想像している以上に栄養を欲している」
願わくばこの旅行中にその呆れた食欲が収まってくれればいいけど……。
この先も底なしの食欲が続く様であれば我が家の家計は破綻してしまいますのでねっ。
「何事も分相応にしておけよ」
ハンナの肩を優しく叩くと椅子から静かに立ち上がり食堂の扉へと向かって行く。
「何処へ行くのだ」
「便所だよ。用を足したらそこで泥酔している大蜥蜴を二階へ運ぼうぜ」
「ゴゴガァ……」
今も近所迷惑な鼾を吐き続け、この世の幸せがいぃっぱい詰まった様な安らかな寝顔で眠り続ける大蜥蜴ちゃんへ顎を差してやる。
「了承した。では俺はこの机の上に並べられている料理を全て食らい尽くしておくぞ」
「ん――、宜しく――」
逞しいハンナの背に向かって軽やかに手を振って廊下に出ると。
「――――。ク、ククっ。ヌフフゥ……」
自分の意思に反して口角が厭らしい角度にニュゥっと上向いてしまった。
よ、よぉぉおおし!! 今の完璧な流れ、そして演技!!
俺って舞台俳優になれるんじゃないの!?
自画自賛じゃなくて傍から見ても完璧な離席具合に思わず百点満点をあげたい気分だぜ。
「ふ、ふぅ――。落ち着け、ダン。まだ第一関門を突破しただけなのだから……」
屋敷の裏手の扉へと続く廊下を大変静かぁな足取りで進みつつ己にそう言い聞かせる。
ハンナを騙せたとしても浴場にはもう一人大変厄介な人物が居るのだ。
己の気を殺し、気配を消失させトニア副隊長の索敵に引っ掛からぬ様に屋敷の裏手を進んでいかなければならない。
「落ち着けよぉ……。此処からは己との戦いなのだから……」
抜き足差し足で廊下を進み屋敷の裏側へと到達。
美女へ夜這いを仕掛ける様に優しい所作で御立派な裏手の扉を開き、美しい夜空の下と出た。
「ふふっ、星達もそして月も俺の行為を褒め称える様に光り輝いているぜ」
『それは語弊です。私達は地上で暮らす者達の清らかな心を照らす為に光り輝いているのだから』
夜空一杯に広がる宝石達に呆れた溜息を吐かれ、悪態を付かれるもののそれを完全に無視すると屋敷の左翼側へと移動を開始した。
今頃三名の柔肉ちゃん達が己の美しい肌を尚光り輝かせる為に入浴しているって考えると大変イケナイ気持ちがグングンと湧いて来ますなぁ!!
桃も羨む曲線具合のお尻ちゃんにぃ、日がな一日眺めて居ても飽きない滑らかな肌、そして!! 極上の柔らかさを与えてくれるプルンっと張った双丘ッ!!!!
「グフッ……。グフフノフ!!!! これだから止められないぜ!!」
周囲に誰も居ない事を良い事に素直な厭らしい声色を放ち、屋敷の角に到着した。
ふぅ――む……。トニア副隊長が窓の外で警戒をしているかと思ったけどその様子は見受けられないな。
屋敷の角から気配を消してそ――っと浴場付近の様子を覗き込むがとんでもねぇ実力を持ったラタトスクちゃんの姿が見えない事に一つ安堵した。
どのようにしてあの桃源郷に近付こうか。
入浴中の三名に確知されない完璧な方法を頭の中で纏めていると。
「あっ、も――。ティスロ。御風呂のお湯が熱すぎますよ??」
「申し訳ありません。温めにしようと努めたのですがいつもの癖で……」
「偶には熱い湯に入るのも宜しいのでは??」
浴場の天井付近に備わっている窓から三名の女神達のくぐもった声が聞こえて来た。
その声色は年相応にキャイキャイとした感じであり、考えを纏めようとしている冷静さを煩悩に塗り替えてしまうには十二分の力を備えていた。
あ、うん……。このまま素直に行こう。そして己が眼に美しい裸体を刻み込もう。
今日はきっと一生忘れられない日になりそうだ。
「そ、それでは出発しましょうかねっ」
金貨数十枚を優に超える価値のある絵画なんかメじゃない三名の浴場の風景を己の記憶に刻み込む為に、勇気ある一歩踏み出した。
お疲れ様でした。
現在、サッポロ一番味噌ラーメンを食しながら後半部分の編集作業を続けておりますので次の投稿まで今暫くお待ち下さいませ。