第百五十九話 休暇へ向けての前準備
お疲れ様です。
本日の投稿になります。
本日はお日柄も良く、ご両人の幸せな誓いの日には持って来いの空模様で御座います。
結婚式の御挨拶に出て来そうな言葉が本当に良く似合う青空が砂の大地に立ち続けている俺達を朗らかな笑みを浮かべて見下ろし続けている。
日が昇って未だ時間が浅い所為か、南の大陸特有の強烈な光の強さは然程感じず。俺達はまだ夜の余韻が残る爽やかな空気が漂う早朝の一時を過ごせていた。
「ふわぁぁ――……。ア゛ァっ、ねっみぃ」
こちとら朝の四時に起きて必要な装備と物資を整え安宿から大変遠い訓練場まで徒歩で向って来たのだ。
欠伸の一つや二つは自然と出て来るのが普通だよなぁ。
誰も居ない訓練場の上で足を投げ出し、両手を土に付けてだらしない姿のまま俺から離れた位置に居る相棒の横顔へと視線を送った。
「……」
彼は静かに座したまま左の腰にキチンと収めた白い鞘に手を掛け浅い呼吸を続けている。
その姿は武士という言葉が大変似合うのだが……。今日から俺達は休暇に出掛けるので物騒な所作並びに訓練は控えて欲しいのが本音だ。
「よぉ――、相棒――。会心の一撃は自由自在に出せる様になったのかぁ――」
彼がミキシオン陛下から受け賜った天下無双八刀の一振り、月下美人。
刀匠の魂が籠められた月下美人ちゃんは大変気紛れな心の持ち主であり相当な剣の使い手でも十に一つ会心の一撃が出れば万々歳なのだが……。
「フンッ……」
手に入れたばかりの彼はまだまだ大変我儘な刀を自在に操れる筈も無く、会心の一撃は良くて十五に一つの状態であった。
俺からの言葉を受け取ると一度だけ此方を睨み付け、刹那に荒ぶってしまった心の水面を鎮める為に精神を集中し始めた。
「要はアレだ。付き合い始めた女性の心を理解すればいいんじゃねぇの――??」
月下美人とハンナは知り合ってからたった二日しか経っていない。
柄を握り締め思いのままに刀を振る。
これを男女関係に例えるのなら、男性が女性の体を好き勝手に弄る様なものなのかな。
そんな体だけの関係を構築するよりも先ずは互いの心を通わせる努力に専念すべきだと思うんだけどなぁ……。
「それはクルリの心の話をしているのか??」
「まぁ……、お前さんの場合はそうなるか。試しにクルリちゃんのきゃわいい顔を想像しながら刀を振ってみろよ」
「分かった。――――。フンッ!!」
彼が静かに頷き、そして正座の姿勢を解除して鞘から刀を振り抜くと。
「あ――……、うん。何だか本当に頼りない音だったな」
今の音を例えるのなら、そうだな。
道の端に生えている名も無き雑草の葉を軽く振った時の音に良く似ていたぞ。
「貴様の言った通りに振った結果がコレだ」
「俺を睨んでも駄目だって!! 多分、だけど刀に宿っている魂がクルリちゃんに嫉妬しちゃったんじゃね??」
女心は複雑且難解。
男である俺達は彼女達の心を完全完璧に理解するのはながぁい年月を掛けても不可能だ。
遠回りになってしまうが、何度も試行錯誤を繰り返して刀がどんな想いを抱いているのかを理解していくのが大事だと思うのです。
と、言いますか。あの刀は男が使用する前提で作られていないんじゃね??
ほら女性は女性の大変難しい心を理解出来る様になっているのだから。
「刀が嫉妬、か。では今度はこの刀に籠められている魂を熱く想い……。幻の敵を屠ってやる」
彼が最愛の女性を愛しむ様に刀身を見つめて上段から素早く刀を振り下ろしたが。
「ん――……。然程音に変化は現れないよな」
先程よりも少しだけ重くなった様に感じたがそれでも会心の一撃には程遠いモノであった。
「一体何が駄目なのだ!! これでは実戦で使用出来ないではないか!!」
「ギャハハ!! あ、相棒――!! 激昂しちゃ駄目だって――!!」
激昂して憎悪を籠めた瞳で鞘を睨みつける相棒を指差して早朝に不釣り合いな声で豪快に笑ってやった。
宿屋の淵で健気に刀を振っていた時も俺と同じ様にフウタも笑っていたっけ。
『ブハハハ!! ひ、ひぃぃ!! 苦しいぃ!! 何だよ今の空振りの音はぁ!! 棺桶に両足突っ込んだ爺ちゃんが必死になって刀を振った音じゃねぇか!!』
腹を抱えてベッドの上で笑い転げる彼の姿がふと脳裏に過って行く。
アイツ等今頃何しているのかなぁ――。
まぁ褒賞授与式で頂いた金貨を等分に分けて渡してあるから何不自由なく三日間を過ごせると思うけどね。
『うっそ!? こんなに貰っていいのかよ!!』
『大切に使えよ。シュレン達は何か買うのか??』
『金貨五十枚、か。某は食に、そして武器装備に使用しよう』
『俺様は歓楽街で豪遊するぜ!! へへっ、超高級店を見付けてあるからそこでぇイイ女の子を見付けるんだぁ……』
シュレンの過ごし方なら余程上等な装備を購入しなければ大丈夫だと思うけど、フウタの野郎はちょいと心配だな。
この街の経済を活性化させるのは良い事なのだがアイツの性欲は底なしだし、有り金全部歓楽街に突っ込まなきゃいいけど……。
家に息子二人を残して二泊三日の旅行に出掛けた母親のモヤモヤした気持ちを胸に抱いて相棒を眺めて居ると。
「……ッ」
彼は何故か此方に向けて刀を構えてしまった。
「相棒。刀が向いちゃイケナイ方向に向いているぜ??」
彼との距離は目測凡そ十五メートルなのだが、奴の馬鹿げた踏み込みの速度を加味すると完全完璧に安心出来ない距離だ。
「貴様等はこの二日間、俺の努力を笑い続けていた。そのふざけた気持ちを両断して修正してやる……」
刀を静かに鞘に収めると己の背が此方に見える様になるまで上半身を捻り、下半身に強烈な力を籠める。
「いやいや。俺はフウタ程笑っていないじゃねぇかよ」
「それでも癪に触ったのは事実だ。その報いを受けろ」
「その鈍らで出来るのかなぁ――?? ほぉらっ、ハンナちゃん。お母さんは此処ですよ――」
どうせいつも通りの凡打が放たれるのが関の山でしょう。
レシーヌ王女様が到着するまでもうちょっと時間があるし、このままだらしない姿で待機していよ――っと。
体全身の力を虚脱させ、華麗に空を舞い何処かへと飛んで行く鳥の飛翔を眺めて居ると彼が己の憤怒を籠めた一閃を解き放った。
「ハァッ!!!!」
ハンナがその場で鞘から刀を振り抜くと同時。
「ッ!?」
俺の視界が急に乱れ始め地面へと落下して行く。視界が一度、二度静かに回転すると己の体に起こった悲惨な姿を捉えてしまった。
首は見事に横一文字に両断され、切断面から大量の血液が噴き出して己が体を深紅に染めて行く。
ゴポゴポと溢れ続ける血流は次第に収まり、体に指令を送る頭部を失った体は無音のまま大地へと横たわり微かに意識に残る頭部だけの俺は無残な死体を只何も言わず眺め続けていた。
「――――。ギィアアアアッ!? は、はぁ!? い、一体何が起こった!?」
慌てて両手を動かして首に触れると頭部は胴体とキチンと繋がっており、大量の血液が噴出する事も無く無傷のままであった。
「ほぅ。ダン、貴様は俺の斬撃が見えていたのだな??」
静かに月下美人を鞘に収めた彼が然程驚いた様子を見せる事無く此方を見つめる。
「く、首が綺麗に斬られて頭がコロコロ――って……。ひょっとして会心の一撃が俺の首に直撃したのなら今みたいに斬られていたって事か??」
額から大量に零れ落ちて来る汗を手の甲で拭う。
「恐らくな。この刀の乾坤一擲は例え斬撃が相手の体に届かなくても精神にまで影響を及ぼす様だ」
と、とんでもねぇ力じゃねぇかよ……。
例え攻撃を外したとしても相手の精神を削り、そこから生まれた隙を穿てば勝機を見出せるのだから。
「相棒、頼むから人に向かって今の斬撃を放つのは止めろよ?? 下手したら精神がヤられて本当に死人が出てしまう場合があるからな」
「善処しよう」
「善処じゃなくて絶対順守しなさい!! お母さんは人殺しの道具を振り回すのは止めろと言っているのですよ!?」
思わず立ち上がり子供が面白半分で包丁を振り回している様を叱り付ける口調で叫んでいると。
「お早う!! 朝も早くから元気一杯だな!!」
「二人共、戯れるのは後にしなさい」
「お早う御座います、ハンナさん。本日もいい天気ですね」
本日の休暇に帯同する四名が大量の物資を両手に持つグレイオス隊長を先頭にして訓練場にやって来た。
「おはよう――っす。そしてレシーヌ王女様、御機嫌麗しゅう」
筋骨隆々のグレイオス隊長達には普段通りの態度で、レシーヌ王女様にはそれ相応の態度を取って朝一番に相応しい挨拶を放ってあげた。
「ダン、御早う御座います。何やら驚いた顔を浮かべていましたけど一体何があったのですか??」
人の姿のレシーヌ王女様が鍔の広い麦わら帽子を被り、帽子に出来た影から此方をじぃっと見つめて問うて来る。
「あぁ、実はですね……」
今し方起きた殺人未遂事件の詳細を話してあげると。
「お、おいおい。穏やかなじゃないな」
「ふむ……。素晴らしい力を持っているわね。後で時間があれば貸してくれないかしら。最近、グレイオス隊長は訓練を蔑ろにしているのでそれを修正する為にも必要だから」
「流石は天下無双八刀の一振りですね。相手に当ててもいないのに精神を攻撃するなんて」
「宝物庫に保管されていたのは使い手が現れなかったから。その理由の末端が見えた気がしましたね」
若干一名を除き驚きの声を上げた。
「トニア副隊長!! 俺を斬ろうとしても駄目だぞ!!」
「尻尾程度なら許容範囲では?? ほら、斬られたとしてもまた生えて来るのでしょう??」
「そ、それはそうだが……」
「それよりも早く人の姿に変わって下さい。ハンナに負担を掛ける訳にはいかないので」
いつも通りの隊服に身を包んだトニア副隊長が変な汗を方々に飛ばす大蜥蜴をジロリと睨む。
今日から楽しい休暇なのに態々隊服を着て来なくてもいいのに……。
そのキチンとした隊服を見ていると何だか肩が凝ってしまうのですよっと。
「ハンナさん。物資と私達を乗せて飛ぶのですけど……。翼は傷んでいませんか??」
「あぁ、問題無い」
ティスロもトニア副隊長と同じく黒を基調とした清楚な制服に身を包んでおり、新たに現れた四名の中で私服を着用しているのはレシーヌ王女様だけだな。
「……」
「な、何ですか。何も言わず此方を見つめて……」
濃い青の頑丈なズボンを履き、ちょっとだけ冒険した開き具合の胸元が目に嬉しい白いシャツ。
そして頭からすっぽり被っている鍔の広い麦わら帽子が夏を爽やかに装飾する。
「あ、いえ。私服姿を初めて拝見させて頂いたのですが……。大変良く似合っているなぁっと思いまして」
芸術性の深い作品を眺める様に、右手を己の顎に添えて彼女の爪先から頭の天辺までじっくり吟味しつつ話す。
俺は絵描きじゃないけど、もしもその才があるのなら彼女に絵の題材になって欲しいと頼み込んでいるだろうさ。
「あ、有難う御座います。夕方から深夜まで着て行く服装についてティスロ達と考えていたのですが……。やはり動き易い服装にした方が良いとの結論に至ったので」
それは賢明な判断でしょう。
強烈な日差しを避ける為の帽子は間違いなく正解だし、城内を軽く移動する訳でも無いので頑丈な靴は必須。
世間一般からかなり離れた意識の持ち主ならお前さんはこれから一体何処に行くつもりなのだい?? と。思わず突っ込みたくなる軽装で登場する筈だし……。
「あ、でも相棒の背に跨ったのなら帽子は脱いで下さいね。強い風で飛ばされてしまいますので」
「抑えるだけでは駄目ですか??」
「え?? ずぅっと抑え付けているのなら問題は無いですけど……」
あ、そっか。
最近までずっとシーツを被って生活していたし、人に素顔を見られるのがまだ慣れていないのかしらね。
「御安心下さい。この場に居る者は全員レシーヌ王女様の素顔を良く知る人物ですので帽子を外されても構いませんよ」
「そ、そうでしたね。ふぅ――……。いけませんね、早く素顔を晒す事に慣れませんと」
レシーヌ王女様が小さく微笑み小恥ずかしそうにモチモチの頬を掻く。
その姿がまた愛らしいの何の……。
ぬ、ぬふふぅ。これから俺達六名はだ――れも居ない無人島へと旅立つ。
若い男女が狭い場所で過ごせばどうなるのか?? その結末を想像出来ないのは真の童貞ちゃんだけなのさっ。
だがしかし、ここで一つとぉっても大事な事を懸念せねばならない。
そう、レシーヌ王女様は一国の王の愛娘であり国の超重要人物を傷物にしてしまっては恐ろしい極刑が待ち構えているのだ。
一時の快楽を取るのか将又断頭台行きの片道を取るのか……。
「実に悩ましいですわっ!!」
彼女の平均的な標高の双丘をじぃっと見つめつつ思わず叫んでしまった。
「何が悩ましいのです?? 私でよければ相談に乗りますよ??」
クソ下らない事を王女様に相談してしまうと確実に牢屋にぶち込まれてしまいますのでね。
「あはは、機会があれば相談しますよ」
「是非。ダンには本当に世話になったので少しでもいいから恩返しがしたいのです」
ウゥ、そんな穢れ無き眼で俺を見つめないで。
俺の心は本当に汚れているのだなぁっと改めて自覚すると、兵舎へと続く坂道から何やら騒々しい音が聞こえてきた。
「隊長――!! 物資は何処に置きますか――!?」
「おっも!! この木箱には一体何が入っているんだよ!!」
い、いやいや!!!! チミ達はそれをぜぇんぶ相棒の背に乗せるつもりかい!?
「あ、あのねぇ……。百人の部隊が持ち運ぶ様な物資を持って来て一体全体どうするつもりなんだよ」
王都守備隊の連中が続々と物資を運んで来るので思わず隊員達に突っ込んでしまった。
「二泊三日の小旅行だが今回の旅にはレシーヌ王女様も帯同する。何かあっては国の一大事に繋がる恐れがあるからな!! それに備えての物資だ!!」
人の姿に変わったグレイオス隊長が大きな口を馬鹿みたいに開いてそう話す。
「ハンナの翼なら余裕だろう!?」
「俺は運び屋では無いんだぞ。それに先日も説明した通り、運べる重さの限界は大人十名程度だ。その量は余裕の積載過多だ」
「お――い!! こっちこっちぃ――!!」
「ふぅ!! まだ沢山あるからな!! 此処に積んでおけ!!」
ハンナが己の周囲に積まれて行くたぁくさんの木箱を大変ちゅめたい瞳で睨みつける。
仕方が無い。
このままじゃ無人島に到着する前に墜落してしまう恐れがあるので取捨選択に取り掛かりましょうかね。
「必要な物資だけ持って行けば良いんだよ。どれどれぇ?? この木箱には何が詰まっているのかなぁ――っと」
一番手前の木箱をパカっと開いて中身を確認すると。
「お、おいおい。何でこの木箱には大量の靴が入っているんだよ」
女性物の靴がこれみよがしに詰め込まれており、ほんのりと汗臭い香りが鼻腔を穿った。
「それはレシーヌ王女様が使用する靴だ。何かの拍子で靴が壊れたり、気分で靴を変えたい時もあるだろう??」
「これ、全部いらね。次ぃ!! 持って来い!!」
木箱の淵を爪先で蹴り付け、王都守備隊の隊員に向かって指示を出す。
「おう!! これは必要かな!?」
お次は沢山の白磁の皿、ね。屋敷にある程度の調理器具や家財道具は置かれているだろうし……。
大体、小旅行なのに皿を持たせるってどうなのよ??
上流階級の人々の思考を理解するのは全く以て難解だぜ。
「いらん!! 次!!!!」
「はいよぅ!! これはどうだ!?」
小さな汗を撒き散らしながら隊員が持って来た木箱の中身は分厚い毛布がキチンと畳まれて詰め込まれているので当然却下。
「これもいらん!! どんどん持って来い!!」
「ダン!! こ、これはどうかな!?」
「むぅっ!?!?」
ラゴスが少々慌てた様子で持って来た木箱の中身はなぁぁああんと!! 大量の女性物の下着ではありませんかぁ!!!!
な、なんてこったぁ!! こ、これは間違いなくお宝じゃあありませんかっ!!
『お、おい。これってもしかするともしかするよね!?』
ラゴスの肩をガッ!! 抱き寄せ、二人にしか聞こえない声量で話す。
『お、恐らく……。し、しかし。王女様って意外と大胆な色合いも好みなんだな……』
女性物の下着は青系統の色合いが目立つのだがその中には目が痛くなる様な鮮やかな赤や妖艶な色合いの紫も確認出来た。
しかも先程の靴と違ってものすごぉぉく良い匂いがするし!! 自分を抑え付けていないと今にも下着の海に頭から突っ込んでしまいそうだぜ。
これはどうしよう……。可能であれば全部お持ち帰りしたいけど……。
「オホン、ラゴス君っ?? これはぁ、俺が個人的に預かるからネっ。だからそのまま下がってよぉ――し」
そうだよ、そうじゃん!!
俺一人で木箱を運んで、それで小旅行中の際にさり気なく島の何処かへと隠して。それから旅の終了と共に何食わぬ顔で持ち帰ればいいんじゃん!!
完璧な作戦に一つ大きく頷き、大変慎ましい所作で小さ目の木箱を己の足元に置くと背中から大変恐ろしい気が発せられた。
「ダン……。ちょっといいかしら??」
「ヒャイッ!?!?」
レシーヌ王女様のちゅめたい声色が響くとほぼ同時に背筋の肌が泡立ってしまう。
「今の一連の流れを貴方の後方から確認していたのですけど、その木箱を一体どうするおつもりで??」
勿論持ち帰るつもりですぅ!! 何て言った日には首と胴体がサヨナラを告げてしまうのでね。
「ヘッ!? い、いやぁ……。これはですね、あのですね……」
「ラゴス。木箱を決して開けずに私の部屋まで運びなさい。もしも途中で開いた場合……」
「は、はいぃ!! 了解しました!! 今直ぐに運びますね!!」
彼が俺の足元から小さい木箱を持つと脱兎が思わず口をポカンと開いて呆れてしまう速度で城内へと駆けて行ってしまった。
「あ、あぁ……。お宝ちゃん達がぁ……」
「さてと、ダン?? まだまだ荷物の取捨選択が残っていますのでね。私が貴方の後ろから逐一監視してあげますので引き続き作業に没頭して下さいっ」
「りょ、了解しましたぁ!!!!」
後ろ髪引かれる思いでラゴスの背を見送ると俺の目の前にドンドン積まれて行く木箱の蓋を開いては閉じて取捨選択を続けて行く。
俺が作業に没頭している間。
「……ッ」
「ひ、ひぃ!! まだこんなにあるのかよ!!」
地獄の底で亡者をいたぶる悪魔よりも恐ろしい瞳を浮かべたレシーヌ王女様が俺の所作を見逃すまいとしていた。
これ以上の狼藉は死に繋がると理解した俺は至極真面目な様子を醸し出し、額から流れる汗を拭う事も無く小旅行に向けての選別作業を続けていたのだった。
お疲れ様でした。
帰宅時間が深夜になってしまい、何んとかキリの良い場所まで書いていたらこんな夜更けになってしまいました……。
本来であればもう少し書きたかったのですが体力の限界を迎えてしまったので本日は此処までとなります。
さて、本日の執筆のお供はエイリアン2だったのですが……。何んと今年の初秋頃にエイリアンの新作が公開されるのです!!
今からワクワクが止まりませんね!! 予告編は余り見ず、前情報無しで映画館に突貫しようかと思います!!
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週末の執筆活動の嬉しい励みとなりました!!
それでは皆様、お休みなさいませ。