第十六話 受動的な愛犬
お疲れ様です!! 本日の投稿になります!!
遅い時間になってしまい、申し訳ありません……。
室内を照らす蝋燭の温かい橙の色。
夜に相応しい色なのですが……。
「……」
正面。
椅子に座り、ぶっきらぼうな御顔で此方を見上げる御方の顔色とはまるで正反対な色に包まれ。直立不動の姿勢で彼女の言葉を待ち続けていた。
端整な御顔が台無しですよ??
忠告はしません。どうしてかって?? これ以上彼女を怒らせる訳にはいかないからであります。
「それで?? 話を聞こうかしら」
誰にでも分かる憤りを籠めた声色で此方に問う。
「えっと……。ユウや他の仲間達との事、でしょうか??」
おずおずと声を上げ、今現在の御主人様に確認を得る。
「そ。大体さぁ――。あの人達、本当に強いの?? レイドより全然弱く見えるんだけど」
あはは。
残念ですね。人は見た目によらないのですよっと。
「自分の実力が、例えるのならこれ位の高さだと仮定します」
己の腰の位置に木の床と平行に手を置く。
「彼女達の実力は……。そうですねぇ。この屋敷の二階部分の天井辺りでしょうか」
継承召喚、魔法、素の実力。
それらを加味した結果の高さなのです。
「信じられないなぁ――。藍色の髪の子なんてすっごく華奢じゃない」
「見た目は華奢ですが、徒手格闘も難なく熟します」
知り合って間もないカエデの格闘術は可愛い児戯みたいなものだったけど。
マイ達や師匠に鍛えられていく内に最低限の技術を物にしましたからね。
只、他の連中が群を抜いて強過ぎるからそれが目立たないだけなのですよ。
「それは追々確認するとして。さっき目を合わせていた、あのユウって人との関係を詳しく教えなさい」
「詳細に??」
「何処で出会ったのか、どうしてレイドの任務に携わる様になったのか。あなたとお父さんは信用したかも知れないけどね?? 私は素性も知らない人を信用しようとは思わないのよ」
うむ。
実に理に適った考えであります。
さ――って、どうやって説明しようかな。
『ユウ、今いいか??』
『どした――??』
随分と落ち着いた御声ですね。
今は警護中なのですからもう少し緊張感を持って下さると助かります。
『いや、今さ。レシェットさんに尋問を受けていて。ユウや他の皆とどうやって知り合ったのかを教えろって言うんだ』
『あぁ――。はいはい。ん――――……………………。レイドとあたしの馴れ初め、かぁ』
もしもし??
馴れ初めって言葉の意味、知っていますか??
『魔物と知られたら不味いからぁ。一緒にオークを撃退したらバッチリ意気投合して、んでもってお互いの体の関係を……』
『私達は元傭兵。レイドが不帰の森でオークと戦闘をしている時に偶々通りかかった我々に救われた。不帰の森に我々が居たのは己を鍛える為。この設定で説明して下さい』
ユウの見当違いな答えをバッサリ!! っと。そしてプッツリと海竜さんの御声が切り裂いてしまった。
『何だよ!! カエデ!! 邪魔して!!』
『これ以上余計な詮索を防ぐ為に、これが最良な答えです』
『カエデ、有難う。その設定で説明させて貰うよ』
『レイド様ぁ!! 私の事は妻であると説明して下さいませっ!! 後!! レイド様のお部屋のベッドでお待ちしておりますので!!』
一部の御方の問い掛けを無視し。
さり気なく部屋割りをカエデから伺い、改めてレシェットさんに口を開いた。
「――――。彼女達は元傭兵です。自分が任務で不帰の森の中へと突入した際、オークに襲われ。彼女達に窮地を救われました。それから行動を共にする様になったのです」
「レイドは任務だから分かるけどさ。彼女達はなんで危険な森の中に居たのよ。確か、南に広がる不帰の森って立ち入り禁止区域でしょ??」
速攻で突っ込んでくるあたり。カエデ同様、頭の回転が早いのかも知れないな。
「時間をかけ、言葉を発せない彼女達から身振り手振りで情報を得た所。どうやら己自身を鍛える為に森の中に居たようなのです。敢えて死地に飛び込み、己を鍛える。素晴らしい考えの持ち主達ですよ」
納得がいったのか。
将又、いかないのか。
微妙な表情を浮かべつつ足を組み替える。
そして、細い指先で顎をちょいちょいっと突いた。
「まっ、いいでしょう。金目当ての方が楽で助かるからね」
「金目当て??」
「傭兵はお金で動く。つまり、お金さえ積めば此方の思い通りに行動してくれるって意味よ。彼女達は元傭兵なんでしょ?? 問題が起こればお金で解決出来るからね」
お金持ちならではの考えですねぇ。
羨ましい限りです。
「じゃあさ!! その任務について教えてよ!!」
「外部に情報を漏らすのは立派な軍規違反なのでお話しできません」
任務の内容は例え、仲間内にでも口外してはいけない決まりなのです。
俺は堂々と軍規違反を犯すどこぞの上官とは違うのだよ。
此処に来て初めての拒絶に、どこか感無量な思いが湧いてしまう。
こうしてきっぱりと断る事も時には必要なのですから。
「ふ――ん?? 御主人様に逆らうんだ??」
「逆らう、逆らわないも軍規違反を犯す訳にはいきません」
「へぇ――……」
お願いします。
どうか、どうか!! そこで手を止めて下さい!!!!
膝元に置いていた手をゆぅぅっくりと、此方に見せつけるかの様に胸元へと移動させ。
『これが最終警告よ??』
そう指し示すかの如く。
ボタンに指を掛けてしまった。
「言えませんよ!! 立派な犯罪者になってしまう恐れがありますからぁ!!」
「別にいいじゃん。犯罪者になっても。出所したら家で飼ってあげるし」
絶対嫌です!!
自分は愛玩動物では無いのです!!
あの横着な手を止める言葉が無いか、猛烈な勢いで考えを捻り出していると。背後から扉を叩く音が響いた。
「失礼致します。レイド様、お食事の用意が整いました」
しめた!!
この隙に乗じて!!
レシェットさんからクルリと踵を返し、助けを求めに扉へと進もうとするのですが。
「そうはさせないわよ?? すぅぅぅ――――……」
シャツのボタンをパチンっと外し。
お胸に一杯の空気を取り込んでしまった!!
「わ、わぁっ!!!! 駄目です!! 止めて下さいっ!!」
俺の体は音より速く動ける訳じゃない。
扉を開く前に、レシェットさんが大声を上げ。その声を聞きつけたアイシャさんが扉を開くと着衣を乱し。
およよ、と泣く当主の娘が……。
室内に男一人、女一人。
これ以上ない状況証拠の誕生って訳だ。
「じゃあ、話してくれるっ??」
「分かりました」
降参です。
その意味を籠めて両手をパッと上げた。
「その代わり!! 絶対!! 他言無用ですよ!? 誰かに話したら俺の首が飛んでしまいますからね!!」
「うんっ!! 約束する!!」
嘘臭い笑みだ。
こうして、徐々に弱みを握られてしまうのだろう……。
強く言えない自分が恨めしい。
「レイド様?? 宜しいでしょうか??」
あ、しまった。
扉の前で待たせたままでしたね。
レシェットさんの着衣を確認。
「……」
女の武器から手を外し、お行儀良く膝元に手を置いていた。
よし、これなら。
「どうぞ、お入りください」
「失礼致します。――――。お食事はカエデ様、アオイ様とご同席する形で摂って頂きます。既に御用意が出来ていますので足を御運び下さいませ」
やっと休憩か。
腹も減って来た事だし、丁度良いや。
「では、食堂に移動させて頂きますね??」
御主人様に確認を取るが……。
「駄目よ。レイドは此処で食べなさい」
「はい??」
大変我儘な御主人様は飼い犬の自由を、おいそれとはお許しになられないようです。
『此処で餌を食うのよ』 と。
飼い犬の前でまざまざと見せつけるかの様に、御主人様がお座りになる前の机をポンっと叩いてしまった。
「アイシャ、食事。持って来て」
「畏まりました」
いやいやいやいや!!!!
「あ、あの!! そこまで御迷惑を掛ける訳にはいきませんので移動させて……」
「――――。コホンッ」
不穏な音が響き、背後を確認すると。
「いいのかなぁ?? 出て行ってぇ??」
物凄くわっるい笑みを浮かべたレシェットさんが足を組み、勝ち誇った姿勢で堂々と俺を見つめていた。
「アイシャ、早く持って来なさい」
「では、もう暫くお待ち下さい」
「は、はい……」
きっと俺は大変情けない顔をしているのだろう。
もう間も無く十六になるお子様に良い様に扱われているのだから。
「さぁ!! レイド!! 任務の内容を話しさない!!」
「分かりましたよ、言えばいいんですよね?? 言えば……」
「あはは!! 良い感じに素が出て来たじゃない。さっき、一人称の事を初めて俺って言ったし。良い傾向だわ。このまま、私好みに調教してあげるから」
もう何でも好きな様にして……。
どうせ俺に拒否権は無いのだから……。
軽快な笑みを浮かべる彼女に対し、此方はまるで病院から抜け出して来た重症患者の如く。
大きく項垂れながら初任務について話し始めた。
◇
怪しい月の光が緑の絨毯の上に降り注ぎ、深夜の光景を美しく装飾する。
耳を澄ませば夜虫の歌声が響き、初夏に相応しい風がさっと吹き。私の髪を撫でて通り過ぎて行った。
景色は大変宜しく、数多蠢く人間が放つ雑音も聞こえない此処は快適であると私の心は肯定しているのですが。
はぁ……。
レイド様がお近くにいらっしゃらないと思うだけでこうも体が寂しく感じてしまうのですわねぇ。
彼の姿を追い求めるかの如く。
屋敷をグルリと取り囲んでいる鉄製の柵付近を夜に相応しい速度で歩む。
いつかは……。
柔らかい月光を浴びつつレイド様と御手を繋ぎ素敵な夜のお散歩をしてみたいですわね。
言葉は少なくとも、繋いだ手を通して互いの感情が互いの心を温める。
レイド様が私の香を含んだ呼気を吸い、私がレイド様の男の香を含んだ呼気を吸う。
淫らに絡み合ったお互いの感情を含めた呼気を吸えばどうでしょう!?
彼が野獣の如く私の体を地面に押し倒し……。荒々しい所作で必要最低限の服を剥ぎ取る。
彼の猛った命の延べ棒が私を貫き…………。
『アオイ、何してるの??』
あら、残念。
これからが素敵な展開でしたのに。
屋敷の裏手に差し掛かると、屋敷の壁に背を預け。楽な姿勢でちょこんと座るカエデが私の姿を見付けて声を掛けて来た。
『確知出来ない程の魔力を含ませた糸を柵に張り巡らせているのですわ。侵入しようとした愚か者がこの糸に触れれば、若しくは一箇所でも寸断すれば途端に察知出来ますの』
『ふむ……。見事な練度の魔法ですね』
魔法と種族特有の能力を掛け合わせたモノとでも呼びましょうかね。
少なくとも!!
レイド様の貴重なお金、食料を無駄に浪費する愚か者よりかは優秀なのですわ!!
蜘蛛一族は他の種族を凌駕する程に優秀なのです!!
レイド様は優し過ぎますわ。
正義の鉄槌をあの愚か者に下すべきですのに、優しい御顔を浮かべてばかり……。
妻である私がもう少し強く言うべきですかね??
この事案は……。レイド様と一夜を共にした時に話し合いましょう。
『それはどうも。後、もう少し本から顔を離したら如何です?? 目が悪くなってしまいますよ??』
蝋燭の炎よりも矮小な光を額付近に浮かび上がらせ、此処に立ち寄る前に購入した本を貪る様に読んでいた。
『これ以上離したら字が読めない。それに、これ以上光を強くしたら人にバレちゃう』
今の光だけでも十分怪しいですけどねぇ。
まぁ、優秀な彼女です。人の接近を許す訳ないので許容範囲ですね。
『では、私は表へと向かいますわ』
『うん……。宜しく』
せめて、面を上げて見送りなさい。
あぁいう所がまだまだ垢抜けていないと言うべきなのでしょう。
裏手側から、屋敷の正面から見て左側の区画へと移動を果たし。
周囲に人の姿が見当たらない事を確認すると……。
「んふっ。私もちょっとおさぼりですわっ」
蜘蛛の姿へと変わり、屋敷の壁を伝い。
屋敷の屋上部分へ颯爽と移動を果たした。
ふぅむ……。
レイド様のお部屋は此方から見て二階部分の左手、そして五つある部屋の右端……。
きっと彼は精魂尽き果てて眠りに就くでしょうから、私がそれを補助する必要があるのです。
レイド様のお部屋の真下へと到着し、糸を放射。
その糸を伝って窓枠に到着した。
「流石、レイド様ですわね」
お部屋の明かりは消灯されており、尚且つ窓にはしっかりと施錠がされていた。
侵入者を防ぐ施錠なのですが……。私にとって、此れしきの施錠など。無意味に等しいですわ。
「それっ」
蜘蛛の糸で練った細い撚糸を窓の隙間から侵入させ、施錠を解除。
「――――。失礼致しますわぁ」
夜虫の歌声よりも矮小な声を放ち、レイド様のお部屋へと到着した。
彼が居ない部屋は大変な虚無に包まれていますが……。
レイド様が私と同じ寂しい気持ちを抱かぬ様!! 妻である私が最低限の仕事を果たさねばならないのです!!
人の姿へと変わり、彼が使用するであろうベッドに……。
「――――――――。あらっ……。これは……」
潜り込もうと果たそうとしたのですが……。
レイド様が御使用になられる白のシャツが視界に飛び込んで来てしまい、思わず陽性な歩みを止めてしまった。
ふぅむ??
ベッドを温め、私の香りで満たすのは当然だとしてですわよ??
常日頃からご使用になられるシャツにも香を移すべきですわよね??
壁に掛けられているシャツを手に取り、襟元に鼻頭を当ててスンスン、と。彼の香りを求めて嗅いでみると。
「すぅぅぅぅ――……。ふぅぅ」
しっかりと洗濯されていますわねぇ……。
残念ですわ。
ですが!!
レイド様が明日も仕事に専念出来る様に私が香り付けの任を請け負いますわ!!
「そぉれっ」
彼のシャツを胸に抱き、ベッドの中へと侵入を果たし。
彼に募る想いを誤魔化す様に足を擦り合わせ、馨しい女の香を周囲へと譲渡し始めた。
◇
此方の食欲をググンっと刺激する馨しい香りを放つ素晴らしき食事。
そして、配膳された食事の向こう側には軽く口角を上げて笑みを浮かべる美少女。
他人から見れば何んと贅沢な、と。罵られる事もやむを得ない状況なのですが……。
今現在が任務中である事を努々忘れてはならぬと己にそう言い聞かせ続けていた。
そりゃあそうでしょう。
少しでも気を抜けば、腹を空かせた野良犬如く配膳された食事に貪り付きそうですもの。
「では、頂いても宜しいでしょうか??」
御主人様の御命令を待つ犬の様に大人しくし続けて居たのだが……。
もうそろそろ限界なのです。
食に対し、逸る気持ちを抑えつつ声を上げた。
「普通に食べさせても面白くないわよね??」
「はい??」
レシェットさんの普通の定義と、俺の普通の定義にはどれだけの差が存在するのか理解に及びませんが……。
その差を埋める為に何かをしろと申すのですか??
「御主人様の指示に従うのが忠犬の役割なのよ」
「はぁ……。では、どうしろと??」
這いつくばって食えって命令は勘弁して下さい。
「ん――。じゃあぁ、私が質問するから。一つ答えたら一口食べていいわ」
その質問の内容の程度にもよりますけども……。
内容如何によっては黙秘もやむを得まい。
「では!! 質問するわねぇ。レイドってさ、今まで彼女出来た事ある??」
何だ。
簡単な質問じゃないか。
身構えて損したよ。
「ありません。それでは頂きます!!」
大人の拳大の大きさを誇るパンを一口で迎え入れ、御口の中で転がし始めた。
ふまい!!!!
絶妙な小麦の甘味と、しっとりとした柔らかさが腹ペコの体になんと心地良い事か。
「あのねぇ……。パンは一口大に千切って食べるのが作法なのよ??」
それは理解しています。
質問の連続を断つ為に、敢えて大き目の一口にしているのですよっと。
「次の質問はぁ――……。ん――……。今、好きな人っている??」
「居ません。強いて言うのであれば、そういった関係を構築する人物を特定する時間が無いのが本音ですね」
鶏肉を半分に切り分け、口の中にぎゅむっと。半ば強引に押し付けながら話す。
「忙しそうだものねぇ。あの人達とはそういった関係を築こうとは思わないの??」
「おふぉいませんね」
俺がそういった感情を抱いたとしても。
向こうは一族を代表する方々の血を引く者なのです。庶民生まれの、田舎育ちの自分としては畏れ多くてとてもじゃないけど、ね。
「ふぅん。まぁ、信用してあげる。もうちょっと味わって食べなさいよ」
ギュムギュムと懸命に咀嚼を続ける此方を見つめ。
愛犬が美味そうに餌を食らう姿を愛おし気に眺める様に、目元を柔和に曲げた。
「味わっていますよ?? 美味し過ぎて咀嚼が止まらないのです」
「そっか。――――。はい、あ――――んっ」
いやいや。
未だ質問に答えていませんよ??
机の上に置いてあったフォークを手に取り、切り分けておいた鶏肉さんに突き刺して此方に差し出す。
「えっと……」
「ほら、早く食べなさいよ」
突然の出来事に言葉を詰まらせていると。
「レイド様、宜しいでしょうか??」
扉の向こう側からアイシャさんの声が届いた。
「あ、はい。何でしょうか??」
席を立ち、扉を開いて廊下へと出る。
「此れからの護衛に付いての打ち合わせをさせて頂きたいと考えお呼び致しました」
何もそこまで畏まらなくても。
静々と頭を下げた彼女に対し、此方も小さく頭を垂れた。
「レシェット様の護衛は午前五時まで受け持つ事は可能で御座いましょうか??」
午前五時、か。
「はい、大丈夫ですよ」
予想よりも長い時間ですが、これも任務ですからね。
承りましょう。
「有難うございます。明日の午前八時にレシェット様の朝食、午前九時からは正午までは勉学。そして、食事を済ませ。午後からは乗馬のお時間になります」
ふむ。
簡単な時間割で助かりますね。
「つきまして、レイド様は午前五時から正午まで休んで頂き……。午後からの乗馬のお時間に付き沿う事は可能で御座いますか??」
「可能ですけど……。その乗馬は何処で行うのですか??」
流石に敷地内で馬を乗り回す訳にはいかないだろう。
景観を損なう恐れがあるので。
「南側から街を出て東へと向かった先に専用の乗馬場を所有しておりますので、其方で行います」
乗馬場も所有しているのですか。
貴族の名は伊達では無いですねぇ……。
「了解しました。では、午後一番に正面玄関へ……」
「御自身の馬に騎乗して街の出入口で待機して頂けますか?? 差し出がましい様ですが、是非ともレシェット様に御助力を頂けたからと」
「そこまで乗馬の技術に自信はないのですけど……。それでも宜しいのなら」
「構いません。それでは、宜しくお願い申し上げます」
美しい角度で腰をキチンと曲げ。
「それでは引き続き、レシェット様の護衛をお願い致します」
そう話すと、廊下の奥に待ち構えている闇の中へと姿を消してしまった。
乗馬、ねぇ……。
俺自身の技術云々より、ウマ子の賢さに助けられているのが本音です。
人に教える程卓越した乗馬技術は無いし……。
「ちょっと――!! 早く帰って来なさいよ――!!」
「あ、はぁ――い!! 只今ぁ!!」
御主人様の御怒りの声を受け、颯爽と扉を開く。
打ち合わせの時間が予想以上に長引いた所為か。
先程までの陽性な感情を含めた表情は霧散。
機嫌を損ねてしまった御主人のご機嫌を取る為、もう間も無く深夜に突入するという時間なのに駄犬は愛嬌良く御主人様の御命令を従順に遂行するのでした。
最後まで御覧頂き有難う御座いました。
そして……。
ブックマークをして頂きありがとうございます!!!! 本当に嬉しいです!!
連載は私一人の力だけでは無く。
皆様のお力があってこそ連載を続けられているのだと、痛感しております。
これからも精一杯精進させて頂きますので、どうか温かい目で見守って頂けたら幸いです。