第百五十一話 死地への飛翔
お疲れ様です。
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夜の静寂を多彩に彩る虫達の歌声が徐々に盛大になり今宵の宴を華麗に装飾する。
月もそして星達も地上から奏でられる虫達の音にうっとりとした表情を浮かべているのだが、広い訓練場の上に立つ者達の表情は皆一様に緊張の色に染まっていた。
そりゃあそうだ。あの小さな水晶がこの街の、レシーヌ王女様の運命を握っているのだから。
「……」
周囲で固唾を飲む者達とほぼ同じ顔色を浮かべて件の水晶へと視線を送る。
東の空から徐々に月が夜空に向かって昇り始めて暫くするとその光を吸収し始めた超危険物である月下の涙が微かにそして緩やかに明滅を開始。
淡い水色の光を放つ水晶は今の所暴走する様子は見られず、ティスロは水晶に向かって無言のまま両手を翳していた。
相棒は良い集中力って言っていたけどさ、あの集中力をこれからも継続させる事が出来るのだろうか??
今は……。殆どの人達がぐっすりと眠る深夜って所か。
無言のまま夜空を見上げると大変お美しい真ん丸の月は頂点から傾きつつあり、地上で暮らす者達に大雑把な時間を無言のまま告げていた。
これから約数時間後に俺達はあの超危険物を海上投棄する為に東の空へと向かう。
「ふぅ――……」
眠気を覚ます、疲労を吐き出す。
様々な用途の意味を籠めた息を吐いてハンナの横顔に視線を送ると彼は今日が人生で最後の日になるかも知れないってのにいつも通り静かに、粛々と過ごしていた。
パッと見は正座をして心落ち着かせる姿勢を取っている様に見えるが……。実は眠って居たりして??
「にしし……」
それを確かめるべく、四つん這いの姿勢で彼に近付いて行くが。
「――――。それ以上近付いたら斬るぞ」
彼は目を瞑ったまま右手を左腰に当てて悪戯心満載の笑みを浮かべている俺に警告を放った。
「起きていたのかよ。ずぅっと無言のままだから眠っちまったんじゃないかって心配したんだんぞ」
「この状況で眠れる方がどうかしている」
そりゃ御尤もで。
「その剣はどうする?? ここに置いて行くんだろ??」
「そうする予定だ。海上投棄をする際に紛失してしまう恐れがあるからな」
でしょうねぇ。俺も腰に巻いてある短剣二刀は置いて行くとしますかねっ。
それから特に何を言う訳でもする事も無く、訓練場の中央に無言のまま視線を送り続けていると城から訓練場に続く坂道の方で何か動きがあったのか。
静寂に包まれていた訓練場に刹那の雑音が広がって行った。
「こ、国王陛下!!!!」
ん?? 国王陛下??
誰かさんの慌ただしい声が響くと同時。
「「「「「ッ!!!!」」」」」
この場に居る全員が地面に片膝を着いて国王陛下一行を迎える準備を瞬時に整えた。
「皆の者、各々楽な姿勢を取れ」
「はっ……、しかし……」
「これは命令だ」
「そうですか、分かりました。皆の者、陛下の言葉に従い各自動き易い体勢に移行しろ」
「「「「ハッ!!!!」」」」
ほぅ、あの人がこの国を治める国王陛下なのか。
行政のお偉いさん達が着用する黒を基調とした清楚よりも遥かに格式が高く、高貴な印象を与えてくれる深い藍色の制服に身を包んだ大蜥蜴さんが各々の労を労わる様に方々で待機する者達へ温かな声を掛けて行く。
「こんな夜更まで……。普段の執務もあるのに苦労を掛けるな」
「ハッ!! 恐縮であります!!」
「随分疲れた顔だが大丈夫か??」
「はいッ!! これから三日三晩不眠不休で戦える体力を残してありますので安心して下さい!!」
彼と言葉を交わす者達は皆一様に声に覇気を纏わせて返答しているのだが、その顔は何処か嬉し気であり高揚感に包まれている様に見える。
現場に居る者だけでなくこの場の空気も彼が登場する事によってガラっと様変わりした感じかしらね。
これを例えるのならぁ……。
面倒な仕事をサボっていたら強面現場監督が仕事場に颯爽と登場して労働者に檄を飛ばすって感じかしらね。
全く尊敬出来ない上司なら嫌々とそして渋々と作業を再開させるのだが、尊敬出来る上司なら話は別だ。
上司に向かって冗談の一つや二つを飛ばしつつ温かな感情を胸に秘めて作業に取り掛かる事が出来るのだから。
つまり愚劣なる王なら場の空気は更に悪い方向へと舵を切り、優秀な王なら場は高揚して士気もうなぎ登りとなる。
どうやらこの国の国王様は後者の様だな。
誰しもがその瞳の中に尊敬という二文字を刻みつつ現国王。フォルダード=ジゼ=ミキシオン様を見つめていた。
「彼等は何処に居る」
ミキシオン陛下がとある高官に優しい口調で尋ねると。
「はっ、もう間も無く作戦実行に取り掛かりますのであちらの後方で待機しております」
背の高い高官は俺達の方へ向かって静かに手を差した。
いやいや、彼等って俺達の事じゃないでしょうね?? 作戦開始前に余計な重圧は受け取りたく無いんだけど??
取り敢えず胡坐の姿勢を解除して相棒と同じ正座の姿勢に移行すると俺の悪い予感はどうやら大的中してしまった様だ。
「お前達がダンとハンナだな??」
「は、はいっ。私達の様な下々の者に対してこの様な大役を任せて頂き誠に有難う御座います」
俺達の前に立った大蜥蜴さんに向かって静々と頭を垂れて挨拶を送る。
国王陛下の体型は街で跋扈する大蜥蜴と何ら変わりなく声は渋い大人の男という感じだ。
外見的特徴は普遍的であるのだが纏う圧は他の者と一線を画す。
彼が纏う圧は森の奥地にひっそりと生える大樹の枝に安心して留まって羽を休める鳥の様に、他者を威圧するというよりも他者から信を自然と寄せるであろう大きな物であった。
「今回の作戦は娘の……、いいや。この街に住む人々の命を脅かす恐れがある。そして我々の自分本位な作戦実行によりダンとハンナの二名の命が危ぶまれてしまう。それでも私達に力を貸してくれて有難う。改めて礼を言わせて貰うぞ」
「そ、そんな滅相も御座いません!! お願いしますから頭を上げて下さいっ!!」
一国の王が一庶民に頭を下げちゃ駄目でしょうに!!!!
「私の肩書は一国の王だがそれと同時に一人の父親でもある。娘の危機を何度も救って来た恩人に礼を述べるのは当然の事だ」
ミキシオン陛下が静かに頭を上げると柔らかい口調で俺と相棒を見下ろす。
「それはそうかも知れませんが……。おほんっ!! ではミキシオン陛下の温かな想いを胸に秘め作戦に臨みますね」
「ダン、ハンナ。娘を宜しく頼むぞ」
彼が俺達に対して静かに頷くとティスロの正面に用意された椅子に腰かけているレシーヌ王女様の下へ向かって静かに歩いて行った。
「はぁ――……。びっくりしたぁ」
突然訪れた超お偉いさんとの挨拶を終えると素直な言葉が口から漏れて来てしまった。
「ふむ、良く出来た王ではないか」
俺とは真逆の吐息を漏らしたハンナがミキシオン陛下の大きな背を見つめる。
「お前なぁ、少し位は緊張しろよ。相手はこの大陸を治める王様だぜ??」
「果たして俺と貴様の命を賭してまでこの作戦に参加する意味があるのか。その見定めとして彼の目を直視していたが……。どうやらその価値は十分にある様だな」
えっとぉ、一体チミは何様なので??
双方の立場から加味すれば見定める方は向こう側なんだけど??
「国王殿の目の色は一切の濁りが無く清らかな物であった。しかしその中にも威厳溢れる物を感じた。纏う圧は他を圧倒する暴力的な物では無く他者を包み込む様な壮大さが微かに含まれていた……。彼のそして此処に居る者全ての願いを乗せて俺達は東へと向かう価値はありそうだぞ」
クズ野郎の為に大切な家族の命を差し出す訳にはいかねぇし、そりゃ見定めは必要だけどさぁ。何も国王相手にする事かしらね。
だが、相棒が己の命を賭してまでも作戦に参加する意味はあると頷いてくれたのだ。出来の良いお兄ちゃんはそれを確と受け止めましょうかねっ。
「そりゃ結構――。後は……、アレが始まるのを待つだけか」
月の光を集めている月下の涙の前で相も変わらず素晴らしい集中力を披露しているティスロの背中へと視線を送った。
「……っ」
魔道水晶が放つ明滅の光は夜が始まった頃に比べて明るくなり、今は頭上に浮かぶ月よりも強き輝きを放ち広い訓練場の上に点在する者達の顔を仄かに照らす。
ティスロと月下の涙の前で静かに座すレシーヌ王女様はベールに包まれてその表情は窺ぬが、体全体から醸し出す雰囲気からしてティスロの身を案じている様が容易に感じ取れた。
「「「…………」」」
レシーヌ王女様の背後で静かに立つ国王様と王妃様。
そして訓練場の上で固唾を飲んでその様を見守っている者達の視線を一手に集めているティスロが本当に静かな声を出した。
「皆さん、お待たせしました。術式を打ち消す魔力が溜まりました」
おぉ!! いよいよその時が来たのか!!!!
「そ、そうか!!」
「いよいよ始まるのですね!!!!」
「おい!! 総員配置に就け!!!!」
「「ハッ!!!!」」
号令に従い王都守備隊の隊員がレシーヌ王女様の後方へと向かって物凄い勢いで駆けて行く。
彼等の手には柔らかな布や緩衝材が確認出来、恐らく魔道水晶から発せられる衝撃を受けて後方に吹き飛ばされてしまう王女様を受け止める為に背後へと回ったのだろう。
さてと、此方も準備を始めようとしますかね。
『相棒、準備はいいか??』
正座の姿勢を速やかに解除。
軽い屈伸運動を続けながら相棒に問う。
『抜かりはない』
『レシーヌ王女様が強い衝撃を受けて後方に吹き飛ばされてから魔物の姿に変われよ?? 今回の作戦は彼女に内緒で行うんだから』
一応理解していると思うけど、ね。
『しつこいぞ。一度言えば理解出来る』
『確認の為だよ。さ――って!! いよいよ始まるぜ?? この街を容易く消滅させてしまう程の魔力が放たれる瞬間が!!』
刻一刻と光の強さを増して行く魔道水晶。
その光量は地上に二つ目の太陽が誕生してしまったのでは無いかと錯覚してしまう程の物だ。
訓練場の上に立つ全ての者の視覚を奪ってしまう光を放つ魔道水晶が一際強烈な明滅を放った刹那。
「理に服わぬ神々の雷よ、我に屈せよ……。そして世に漂う泡沫の想いを打ち砕け!!!!」
ティスロの手元から目も開けていられない強烈な一筋の光がレシーヌ王女様へ向かって直進するとその光が王女様の体の周囲に展開する目に見えない膜の様な物と衝突した。
「「「どわぁっ!?!?」」」
一筋の光と透明な膜が交わり合うと腹の奥にズンっと重く響く爆音が鳴り響き、衝撃波が天蓋状に広がって行きその様子を見守っていた者達の体を大きく揺らし。
「「「いつっ!!!!」」」
レシーヌ王女様の体を包み込む膜を光が打ち払うとこの場に居るほぼ全員が軽く頭を抑えた。
俺達を除く者達が頭を抑えたのは認識阻害が解けたからなのだろうか??
その理由は定かでは無いが彼女からかなり離れて居る俺達でもこれだけの衝撃を受けたのだ、爆音と衝撃波の爆心地に居るレシーヌ王女様は嫋やかに座っている訳にはいかねぇよな。
「きゃあああああっ!?!?」
光が透明な膜を打ち砕くとレシーヌ王女様は俺の予想通り激しい衝撃波によって後方に吹き飛ばされてしまった。
「「ふんっ!!!!」」
「……」
後方に待機していた筋骨隆々の大蜥蜴に受け止められた彼女は糸が切れた操り人形の様に全く動く素振すら見せなかった。
だ、大丈夫かな??
かなりの勢いで吹き飛ばされたけど……。
「王女様!!!! 御無事で御座いますか!?」
「……」
どうやら気を失っている様だな……。
無理もない、彼女は俺達の様に鍛えている訳でもなく普通の体なのだ。あれだけの衝撃波を真面に受けて気を保っていられる方がおかしいか。
彼女を受け止めた大蜥蜴がレシーヌ王女の肩を激しく揺らして状態を確認するが目を覚ます気配は無い。
「レシーヌ!!!! 大丈夫か!!!!」
ミキシオン陛下と王妃様が堪らず愛娘の下へと駆け寄り安否を確認する。
「良かった、息はあるな」
「あなた。今はそれよりも……」
「う、うむ。レシーヌ、失礼するぞ」
ミキシオン陛下が恐る恐る彼女が頭からすっぽりと被るベールに向かって手を伸ばす。
「「「……ッ」」」
その様子をこの場に居る全員が固唾を飲んで見守っていた。
頼むぜぇ……。上手く行ってくれよ……。
認識阻害が解けないのなら俺達の飛翔は完全に無意味になってしまうからな……。
「――――。は、ハハ。良かった!!!! む、娘の顔が元に戻ったぞ!!!!」
「「「「ウォォオオオオオオオオ――――――ッ!!!!!!」」」」
ミキシオン陛下が涙ながらに娘の顔を直視すると力強く己の胸に抱き締め、その様を捉えた者達が歓喜の雄叫びを放った。
「ふぅぅ――……。どうやら解除は成功したみたいだな」
歓喜に湧く者達の姿を捉えるとほっと胸を撫で下ろす。
「まだ安心するのは早計だ」
「分かっていますって。ティスロ!! 月下の涙を持って来てくれ!!!!」
周囲の者達が大喜びする中、一人静かに険しい表情を浮かべて魔道水晶に手を伸ばした彼女に背に向かって叫んでやった。
「認識阻害の解除は成功しました!! 後はこれを海上投棄するだけです!!」
広い場所で魔物の姿に変わった相棒の側で待機している俺に駆け寄り、今も激しい明滅を続けている水晶を受け取る。
「お、おいおい。何だよ、この不安定な光は……」
一瞬だけ強い光を放って闇を払ったかと思えば、その光が水晶の中央に素早く集まり圧縮された光は蝋燭よりも儚く揺らぎ。それから直ぐ先程の眩い明滅を繰り返す。
一定の光では無く不規則な光を放つ水晶は素人目でもかなりヤバイ代物であると看破出来てしまった。
「月下の涙はもう既に臨界点に達しています!! 内側に秘められている魔力はいつ破裂してもおかしくない状態です!!」
聡明な彼女が鬼気迫る表情を叫ぶって事はそれだけ危険な状態なのだろう。
「了解!! さぁ相棒!! レシーヌ王女様はあの衝撃波に耐えたんだ。俺達は彼女の頑張りに応える為に特大の祝音を海の上で奏でてやろうぜ!!!!」
予め用意していた頑丈な麻袋の中に魔道水晶を仕舞って相棒の背に乗ると東の空へ向かって指を差す。
「了承した。では……、行って来る」
ハンナが己の前で嫋やかに両手を合わせているティスロに向かって静かに瞳を向け。
「はい。御武運を……」
それを真正面から受け止めた彼女はハンナの瞳を確と捉えて声援を送った。
あ、あの――……。そういう雰囲気を醸し出すのは水晶を捨ててからでも構いませんかね??
今の俺達に必要なのはこぉんな甘い空気じゃなくて。
「頼むぞ!! お前達!!!!」
「必ず生きて帰って来いよ!! 俺達は待っているからな!!」
「「「「ウゥゥゥオオオオオオオオ――――ッ!!!!」」」」
そうそう、こういう暑苦しい声援なのさ。
「もう少し静かにしなさいよね!! レシーヌ王女様が目覚めちゃうでしょう!?」
巨大な翼を一つ大きく動かしてふわりと宙に浮かんだ俺達に向かって雄叫びを放った王都守備隊に向かって叫んでやる。
「仲間が死地へ向かうんだ!! 声援を送らない方がおかしいだろうが!!!!」
「その通りッ!!」
ったく!! 最後の最後までむさ苦しい連中だぜ!!!!
「有難うよ!! お前達の想いも翼に乗せて飛ぶからなぁぁああ――――!!!!」
再び相棒が力強く羽ばたくと訓練場に居る連中達があっという間に米粒大の大きさに変化してしまう。
巨大怪鳥が強烈に羽ばたいても地上に悪影響を及ぼさない高度に達すると彼が緊張感を含ませた声を放った。
「ダン、行くぞ」
「あぁ、宜しく頼む。俺はお前さんの羽の合間に潜り、そして力の限り羽を握り締めておくから安心して飛ばせよな」
「了承した。さぁ……、今宵の俺の翼は一味違うぞ。風の壁を突き抜け、そして音よりも速く飛翔してみせる!!!!」
う、うん。気合十分なのは良いんだけどね??
その背に乗る俺の体も少し位は心配してもいいんだよ??
バックンバックンと不穏な音を奏でる心臓ちゃんの頭を必死に撫でていると遂にその時が訪れてしまった。
「行くぞぉぉおおおおお!!!! ゼァァアアアアアアア――――ッ!!!!」
「ヒィィギャァァアアアアアアアア――――ッ!!!!」
瞬き一つの合間に俺の体は呆れた加速度によって羽毛の中で地上と平行する形で横一文字となり、少しでも気を抜けば後方に引き飛ばされてしまう馬鹿げた力に対抗すべく相棒の羽を両手でしっかりと握り締めた。
か、体が後方に引っ張られて行くぅぅうう!!
何だよこの常軌を逸した加速度は!?!?
「あ、相棒!! これが精一杯か!?」
お願いします!! これ以上の加速はどうか勘弁して下さいっ!!
「まだまだぁ!! 俺の翼の力を侮るなよ!! 必ずや時間までに海上へ到達してみせるッ!!!!」
どうやら先程までの加速度は王都に影響を与えない為のモノだった様だ。
「ゴワァァアアアアアアアア――――ッ!?!?」
この世のモノとは思えない加速度が発生すると目玉が頭蓋の方へと引っ張られ、胃袋から酸っぱいモノが込み上げて来やがった!!
こ、これだけの速度で数時間我慢しろってのか!?
た、耐えられるかな?? この体……。
気を失ってしまえば俺の体は相棒の背から投げ出されて地上へ落下してしまい、作戦成功の可能性を低めてしまう。
そうならない為にも奥歯を噛み砕く勢いで羽を掴み続けてやる。そして、必ず友人達の下に帰って来てやるからな!!
「あ、相棒!! 俺はまだまだ行けるぜ!! だから思いっきり飛ばせ!!」
「言われずともそうする!! 大空を支配する翼の力を見くびるなよ!!!!」
断固たる決意をした数秒後に己の口から発した言葉を早くも後悔してしまう殺人的加速度が体を襲う。
「イヤァァアア!! やっぱり駄目ぇぇええ!! も、もう少し速度を落としてぇぇええ―――――!!!!」
俺の懇願を完全完璧に無視した大空を支配する怪鳥は空気の壁を破り、音をその場に置き去りにして東の果てへと向かって行く。
「お、おい。何だよあれは……」
「鳥、か……?? それにしては大き過ぎるな」
泣こうが叫ぼうがお構い無しに進んで行く白頭鷲は空に一筋の美しい雲を描き、深夜にも関わらず活動を続けている地上の者達は世にも珍しい現象を捉えると皆一様に首を傾げて雲を描く物体の先へと視線を送る。
数十秒、数分後にその物体は彼等の視界から完全に消失。
空に漂う一筋の雲が上空に流れる風によって消えるまで彼等はこの現象を己の記憶に刻み込もうとして本日も美しく晴れ渡る星空を見上げ続けていたのだった。
お疲れ様でした。
買い物の後に執筆を続け、取り敢えず書けた分だけ投稿させて頂きました。
遂に始まった大型連休。皆様は如何お過ごしでしょうか。
私の場合は予定通り買い物に出掛けたのですが……。いやぁ、今日は良い買い物が出来ましたよ。
かなり気に入った形と色合いのジッポを購入して大変満足出来ました。まぁ値段もそれなりにしましたがこういう時は躊躇しちゃ駄目ですよね!!
明日は部屋の掃除と洗車、そして執筆作業と忙しい休日になりそうですよ。
それでは皆様、お休みなさいませ。