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第十五話 愛犬の躾は始まりが肝心

お疲れ様です!!


本日の投稿になります。


それでは、御覧下さい。




 舌が渇きを覚え、喉がいい加減に休んでくれと懇願を放つものの。




「…………」




 真正面に座る我儘なお嬢さんは話を止めるな、と。


 夜空に浮かぶ星々の瞬きよりも美しく、大変煌びやかな瞳を浮かべていますので。止めようにその機会が中々訪れずに困惑している次第であります。



 孤児として育ち、ワンパク坊主の幼少期に、四苦八苦しながら勉強を続けた横着小僧期。


 盛り上がりに欠ける残念な生い立ちを話していると自分でも何だか虚しくなりません??




 幻の秘宝を発見した!! とか。


 歴史的価値のある遺跡を発見した!! とか。



 人の歴史に輝かしき足跡を残す事柄もなければ、人の人生の価値観を変える発見も無い。


 裕福な家庭からしてみれば普遍的で無価値な人生だと判断してもおかしくない生い立ちですのに。



 何が楽しいのやら。


 甚だ疑問が残りますよ。



「――――――――。そして、退所する歳を迎え。そのまま孤児院を退所するのは恩を仇で返すと考えた自分は二年間そこで勤め。入隊可能な歳になってからパルチザンの入隊試験を受け、今日に至ります」



 ふぅ。


 やっと話終える事が出来たぞ。



 やれやれ。



 そんな感じで額に薄っすら浮かぶ汗を拭うのだが。



 彼女の好奇心は留まる事を知らぬ様だ。



「孤児院での生活は理解出来たわ。次は訓練生時代の話を聞かせて??」



 煌びやかに輝く瞳の光を継続させ、話のお代わりを所望してしまいましたとさ。




 水分補給もままならないのにもっと話を寄越せ、と??


 これ以上口を開き続けたら干からびて、鰺の干物になっちまうよ……。



「訓練生時代、ですか。特筆すべき事はありませんよ?? それに聞いたとしてもレシェットさんの生活とは掛け離れた事ばかりですので共感は……」


「あのね。レイドに決定権は無いの。決定権を持っているのはあくまでも私。私が話せと言ったら話して、服を脱げと言ったら脱ぎなさい」



 ごめんなさい。


 後者は了承出来ません。



「はぁ、了解しました。では、ニ十期生として入隊を果たし」


「ん――ん。ちがぁう」



 小さな御顔を横にフルフルと振りつつ話す。



「入隊試験の時から話して??」



 そ、そんな前から!?



「だって興味あるもん。どんな試験内容だったのか」


「面白くありませんよ??」


「いいの。さ、話なさい」



 はぁ――……。


 話さなければ己の社会的地位が危いのでね。


 致し方ないといった所でしょう。



 情けない舌と喉に喝を入れ、再び口を開いた。



「入隊試験は二日間に分けて行われました。初日の午前中に学科試験、午後に体力試験。そして、二日目が面接試験でした」



 ふんふんっ、と。



 これまた興味が湧いてしまったのか。


 若干前のめりになって伺う。



 そして、例のアレが御目見えしてしまいそうになるのでソコから視線を外して言葉を続けた。



「学科試験では計算問題や、法律の問題について出題されました。体力試験は身長、体重の測定。短距離走、長距離走、腕立て伏せの回数及び腹筋の回数を。そして、面接試験では試験官に志望理由を問われましたね」



 あの時の面接官。


 物凄く怖い顔を浮かべていたのを今でも覚えているよ。


 何もそこまで睨まなくてもと尻窄んでしまいましたからね。



「何人受けて、何人受かったの??」


「確か……。約六百名受けて、二百名の合格でしたよ」



 倍率は凡そ三倍でしたからね。



「二百名?? 随分と少ないわね」


「――――。レシェットさんは知らなくてもいい情報かと思われますが……。合格した人数は、その前年に軍を除隊した者。並びに、戦死した者の数なのです。失われた数を補充する形で毎年採用試験が行われているのですよ」



 そう。


 一年の間で約二百名もの尊い人命が奪われてしまったのだ。


 あの醜い豚共の所為で……。



 俺達は失われた二百名の無念を晴らすために雇われた。


 訓練初日、だだっ広い訓練場で指導教官が声を大にして叫んだ内容ですからね。忘れる筈が無い。



「そっか……。ごめんね?? 暗い話をさせて」



 んっ!?


 急にどうしたのかしら!?


 しおらしくなるなんて意外だったので、少々呆気に取られてしまった。



「私だってこの国に住む者なのよ?? 亡くなった方々の冥福を祈るのは当然でしょ」



 俺の表情一つで察したのか。



 むすっと眉を寄せて話す。



 一般常識は御持ちなのですね。そこは流石、貴族の娘さんといったところか。



「それで!? 入隊してから何を習ったのよ!?」



 おっと。


 急に表情を変え過ぎですよっと。



「習う習わない以前に、先ずは兎に角走らされ続けました。何でも?? 直ぐに音を上げる奴にはこの仕事は似合わないと、ふるいに掛ける感じです」


「まぁ、野を駆け続けたレイドにとっては簡単な訓練内容よね」



 その通り、と言いたいのですが。



「いいえ。体力に自信がある自分ですが、当時の自分は根性まで鍛えられていた訳ではありませんからね。同期の連中と愚痴を零し、励まし合い。数名の脱落者を出しながらも何んとか一か月を過ごしました。入隊して一か月後からは、剣術、戦術、生存術、馬術等々。 戦闘に必要な技術と情報を頭の中と体に叩き込まれました」



「ふぅん…………。色んな事を学ぶのねぇ。只、戦うだけの無頼漢って訳じゃないのか」



「剣を振るうのは愚か者でも出来る。真に勝利へと導く者は知恵と勇気を持つ者。汝、勇者足る者で在れ。ですよ」



 訓練所でもう何度も聞かされ、いい加減聞き飽きてしまった訓示を話す。



「勇者、ね。レイドは勇者より、勇者の付き人って感じよね!!」



 年相応にきゃはっ!! と軽い笑みを浮かべて此方を揶揄う。



「荷物持ちが似合う従者です、か」



 まぁ、似合うっちゃ似合うね。


 今もそんな感じですし。



「レイドも馬術を習ったんでしょ?? 実は、今私も習っている所なのよ」



 馬術は昨今の貴族の間で流行っている習い事なのかしら??


 シエルさんも習っていたと仰っていましたし。



「馬術で大切な事を教えてよ。参考にしたいから」


「馬は大変賢い動物です。人が不安な顔を浮かべていたらそれを瞬時に察知し、騎手の事を小馬鹿にした走行をし。自信に満ちた顔を浮かべて、手綱をしっかりと握ればそれが馬に伝わります。そして何より、馬を好きになる事が一番大切ですよ」



 我が相棒も賢過ぎるのが長所なのか、短所なのか。


 理解に及びませんが……。


 ウマ子とは他の連中よりも太い絆で結ばれているとは思う。




 只、足が遅いって話すと。



『貴様!! 今、何んと言った!?』



 分厚い唇をクワッ!! と開いて襲い掛かって来るので。それだけが残念ですよね。




「馬を好きになる、か。うんっ、参考になったわ」



 腕を組み、ふむっと一つ頷く。



「じゃあさ!! 次は剣術の話を……」



 彼女がグイグイと椅子を引っ張りながら此方に詰め寄って来ると同時。



「レシェット様。お食事の用意が出来ました」



 アイシャさんの声が扉越しに届いた。



 まさに救いの一声だな。



「え――。これからが良い所だったのにぃ……」



 ぶすぅっと。


 パンパンに頬を膨らませて話す。



「はは、先ずは食事を摂っては如何ですか??」



 よし!!


 これで少なくとも一時間は休める!!



 憤りを示した彼女に対し、俺は心の中で小さく拳を握ってしまった。



「まぁ、そうね。じゃあ、行きましょうか!!」



 ――――――――――――。


 はい??



「行きましょう?? 自分は屋敷内の警護の任に就こうかと考えているのですが??」



 巡回しつつ、屋敷内の詳しい構造を頭の中に入れておきたいし。



「はぁ?? 何言ってんのよ。レイドは私の命令を聞けばいいって言ったでしょ??」



 えぇ、そうですね。



「私が付いて来なさいよ言ったらついて来るのよ!! 行くわよ!!」


「ちょ、ちょっと!! 腕を引っ張らないでくださいっ!!」



 むんずっと右腕を掴まれ、勢いそのまま扉を開けて廊下へと連れ出されてしまう。



 この姿を見たアイシャさんが。



『あらあら……。これは……。うふふ。お盛んなお年頃ですね??』 と。



 憐憫にも、驚愕にも似た表情を浮かべ。


 夜に相応しく無い声量を放ち続ける此方の後を僅かに口角を上げつつ、素晴らしい所作ですねと見倣ないたくなる無音歩行で続いて来た。

















 ◇









 屋敷の正面玄関の前で姉ちゃんから警護の説明を一通り受け、それを適当に頷いて肯定し。


 屋敷の表側は宜しく――っと、ユウに一任し。私は一人無駄に強い西日から逃れる様に屋敷の裏手へと移動を開始した。




 それから数時間後の屋敷の裏手。


 今にも星が落ちて来そうな空の下、炎に炙られ薪がパチッ!! と弾ける爽快な音が響く。鼻腔に届く煤の香りと煙の苦い香りを嗅ぐと、あら不思議。


 お腹が減るじゃあありませんか。


 体の奥底に染み付いた癖とでも言いましょうか。いや、条件反射か??


 兎に角!!



 この時間帯にこの香りは体に宜しく無いのよ。




 構造的に屋敷の左手側の通路のずぅっと奥の突き当りに位置する場所で、目の細い姉ちゃんが小一時間程前からえっこらよっこらと井戸から水を汲んではでけぇ窯に水を運びザブン!! っと投入し続けている。



 よくもまぁ単純な労働をそこまで続けられるな?? と。



 屋敷の壁に背を預けて座り、休日のお父さんの姿を模倣しつつ何とも無しに姉ちゃんの姿を眺め続けていた。



 背の高い窯の下ではもうもうと炎が揺らめいている。


 つまり、あれは風呂の支度よね。




 でっけぇ窯の下には円筒状の筒が接着しており、それが屋敷の内部へと続いている。


 時期を見計らい、筒と窯の内側境目にある鉄製の仕切りをバッ!! と開くと。フツフツと湧いたお湯が筒を通って屋敷の浴場らしき場所へと流れて行く。


 高低差を利用した造りについつい感心しちゃうわね。



 んで。



 屋敷からもう一本飛び出ている筒は地面にグサッ!! と突き刺さっている。


 あれは恐らく排水溝の役割を果たしているのだろう。



 庶民の家に風呂は……。あぁ、あるっちゃあるか。



 馬鹿でけぇ木の桶に直接ザブンっと入る者を見た事があるし。だが、少なくとも浴場はあるまいて。



 裕福な家庭にのみ与えられた特権、か。




 ――――。つまりぃ。



 裕福な家庭であると言う事はだよ!? 食事も期待して良い訳だ!!


 今から楽しみでワクワク感が止まらないわ!!




 素敵な食事が待ち構えていると考えてしまいますとぉ……。



「ジュルッ」



 自分でも予期せぬ涎の余波が口内を襲った。


 落ち着きなさい?? お腹ちゃん。


 御飯はもうちょっとの辛抱なのよ??



 逸る食欲を御しつつ、遠目で風呂支度の様子を眺めていると。背中側の食堂の中から男女の話し声が聞こえて来た。



「あはは!! そうなんだ。レイドは真面目君だからねぇ」


「真摯に職務に臨む態度と仰って下さい」



 んなっ!?


 何ですと!?!?



 ボケナスが小娘と共に食堂に入って来るではありませんかぁ!!



 あ、あんにゃろう!!


 私が腹を空かせて警護しているってのに、一人だけ飯を食らうつもりかぁ!? 許さんぞ!?



 食堂の入り口側から離れた位置の窓から、そっと野郎の表情を窺うと……。




 あっり??


 何だか、疲れてる顔ね。



 机越し。


 小娘の向こう正面に座ってずぅっと口を開いている。


 その言葉を受け、小娘が時に笑い、時に大きく頷いていた。




 ははぁん。


 アイツ、身の上話をしろって言われたなぁ??



 自分の事を話すのが得意じゃないアイツにとって、それは苦手な分類に位置するし。


 辟易している顔が良い証拠よ。



 どれ。


 正面から覗いて、笑わせてやっか。


 小娘に歯向かえない憤りを霧散させてやる、海よりも深い私の思慮を有難く受け取れや。



 ボケナスの顔が正面に映る窓へと移動しようとしたその刹那。



「ギャババッ!?!?」



 ご、御馳走が此方から見て右側の厨房から出て来やがった!!!!


 ホクホクのジャガイモさんに、真ん丸のパン。


 琥珀色の液体のスープにぃ!! 肉汁滴る鶏肉ぅぅううううう!!!!



 ふ、ふざけやがってぇ!!



 何で私がお預けを食らわなくちゃいけないのよ!!



 ギリリっと奥歯を噛み締め、一切憤りを隠す事無く。ボケナスの顔が正面に見える窓枠へと移動を開始した。














 ◇













 屋敷の出入口から見て右手の廊下を進み、突き当たった扉を開くと。


 この建物に比例した大変お広い食堂が出現した。



 シエルさんの屋敷の食堂も広かったけど、ここも十分広いよなぁ。




 初体験なら圧倒されたかも知れないが、ふふ……。


 既に経験済みなのでそれ相応に圧倒されつつも、肩身が狭くなる思いは不思議と湧いては来なかった。



「じゃあ、話の続きを聞かせてよ」



 いつもその席に着いているのであろう。


 無駄に長い机の向こう側へと移動し、窓枠に近い位置に腰掛けた。



「続き……。訓練生時代の話で宜しいですよね?? では、一日の訓練の始まりから終わりまでざっと説明させて頂きます」



 宜しくっ!!



 軽快な笑みを浮かべ、机の上に両肘を立て。


 小さな御顔をその上の両手に乗せて傾聴の姿勢を取った。




 その姿はまるで細い茎の上に咲いた一輪の美しい花、ですね。


 大変似合っていますよっと。




「一回生、二回生も午前六時に起床し。眠気眼を引っ提げながら訓練場へと移動し。三キロ走行します。着替えを済ませたのなら大食堂で朝食を摂り、各教室へと移動して午前九時から午後五時まで座学を。若しくは訓練を受けます。午後五時以降、午後八時までの間に食事を済ませ。午後十時までの就寝の間は自由時間になります」


「結構長いんだね?? 自由時間」



 ふっ……。


 そうは見えますけども、実はこの時間が大切なのですよっと。



「自由とは名ばかり。その時間は第二の訓練時間と呼んでも差し支えありません。各教官から与えられた課題、己の足りない箇所を鍛える為の運動。山積された仕事を片付ける為に用意された時間なのです」



 この時間が苦痛と感じる時期もあった。


 疲れているのだからさっさと寝かせてくれよと思いましたからね。




「ふぅん……。只走って鍛えるばかりじゃないのねぇ」


「ある程度の知識、技術が求められますからね。力だけを揮うのは傭兵の仕事ですよ」


「訓練の内容は大雑把に理解出来たからぁ――。お次は同期の人の話をしてよ!!」



 同期の連中、ね。


 馬鹿騒ぎが好きな奴だったり、馬鹿みたいに食う奴だったり、馬鹿みたいな事をして教官に叱られたりする奴だったり。


 詳細を話したくないのが本音であります。



 さて、どう包んで話そうかと考えていると。



「――――――。お待たせしました。本日のお食事になります」



 アイシャさんが此方の胃袋を悪戯に刺激する食事を左手側に見える厨房と思しき扉の向こう側から運んできてしまった。



 素晴らしい所作でレシェットさんの前に並べられて行く食事。



 どうにかして一口、二口頂けないだろうか??


 勿論、強請りませんよ??


 俺はどこぞの卑しい龍とは違いますので。





「あれ?? アイシャ。レイドの分は??」


「レイド様の分は皆様とご一緒に摂れる様に御用意致しますので」



 ほっ。


 良かった。


 御飯抜きで我儘に付き合わされるかと思ったよ。



「ふぅん……。そっか。じゃあ、先に頂くわね??」



 どうぞ、お召し上がりください。


 その意味を籠めて一つ大きく頷いた。



 フォークとナイフをお上品に扱い、鶏肉を器用に切り分け。



「はむっ……」



 小さな御口へと運ぶ。


 美しい所作は貴族の気品溢れる感じですよね。



 少なくとも……。















「ガルルルルゥ!! バッハァ!!!!」



 窓硝子の向こう。


 大変恐ろしい鼻息を荒げて硝子に顔を密着させる者とは大違いですよ。



『おい、屋敷の警護はどうした??』


『バルルルッ!!!! ガヌァ!!!!』



 こりゃいかん。


 食欲の鬼が絶賛大暴走中で言葉を話せなくなってしまっていますね。



「レイド?? どうし…………」



 俺の視線を不審に思ったのか。


 上体を捻って窓へと視線を送る。



「あはははは!! 何よ、この人!!!! 餌を求めて壁に張り付くヤモリみたい!!」



 ケラケラと軽快に笑い。



「は――い、ヤモリさんっ?? 美味しい御飯はこっちですよ――??」



 切り分けた鶏肉を深紅のヤモリへと向けると。



「ガブッ!! アングゥッ!!!!」



 食わせろやぁ!!!!!



 そう言わんばかりに鋭い爪で窓硝子を引っ掻き始めてしまった。



 不味い。


 このままでは窓硝子を破壊されかねん。



『ユウ、今何処に……』



 怪力無双の彼女へと依頼を放とうとしたのだが。



『はいは――い。おちつこ――ね――。あたし達の御飯はまだまだ先ですからねぇ――』



 此方が頼む前に、窓から恐ろしい怪物を引っぺがし。


 そのままズルズルと引っ張って行ってしまった。



『ばなせぇ!!!! アイツの首根っこ引っこ抜いて!! 飯を強奪するんだからぁ!!』



 俺の不穏な声を受けて既に移動を開始していたのか。


 本当、頼りになりますよ。



『レイド。あたしとマイが組んで警護の任に当たっているから』



 窓から姿が消える刹那。


 ユウが此方をチラリと横目で窺いつつ話す。



『と、いうことは。カエデとアオイが同じ組ね。了解、詳しい時間は後で教えて』


『ん――。分かった――。おらっ、地面引っ掻いても無駄だ。あたしの力から逃れられると思うなよ??』



 このガリッ……。ガリって音は地面に爪を突き立てる音でしたか。


 後で庭園の地面を均し、並びに二人に差し入れを持って行こう。


 屋敷、並びに庭園の景観を破壊されたらたまったもんじゃ無いからね。



 ユウへと温かい眼差しを送り終え、レシェットさんへ視線を戻すと。



「………………」



 何だか超絶不機嫌な顔になっていた。



「どうかされましたか??」



 分からない時は質問。


 これは、常識です。



「ねぇ、あの人とレイドの関係って??」


「あの人?? あぁ、ユウの事ですか。彼女とは仕事……。いえ、良き友人ですよ」



 疲れた時にユウの笑みって凄く助かるんだよね。


 快活な友人の笑みを見ればだれだって元気がでるもんさ。



「――――。嘘ね」



 はい??



「絶対嘘!! 視線合わせただけでも分かり合ってる気がしたし!!」



 いや、それは念話という大変便利な魔法の御蔭でありまして。


 決して視線一つで理解し合える訳では無いのですよ。



「赤い髪、藍の髪、白、緑!! 皆可愛くて綺麗だから怪しい!! 覚悟しなさいよ!? きっちり搾り取って白状させてやるんだからっ!!」



 え、えぇ……。


 何で視線一つ合わせただけで此処迄怒られなきゃならんのだ。




 端整な御顔に似合わない憤怒を表す皺を鼻と眉間に寄せ。


 己の鬱憤を晴らす様に、美しい所作が霧散してしまった姿で食事を速攻で終わらせると……。




 私がお前の飼い主だ。



 そう言わんばかりに此方の襟を掴み、少し前の狂暴な龍と似た形で半ば引きずられる形で食堂を退出してしまった。


最後まで御覧頂き有難う御座いました。


そして、ブックマークをして頂き有難う御座います!!


日に日に暑さが増し、執筆に対する力が衰える中。嬉しい励みになります!!

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