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第50話 お城へ!

「意外と、準備に時間がかかるわね」


 わたしはモリーをはさんで、となりにすわっているミランダに言った。


「車じゃねえんだ」


 操縦席からボブが言った。いくつものスイッチを入れていく。


「飛ばせそう?」

「ウチが、何代続く運転手だと思ってんだ。あんたが雇った馬の御者とは、ちがうぜ!」

「魔法使いは、わたしじゃない! それに、そのへんはハッキリ思いだせないの!」

「ジャニス、あれも憶えておりませんの?」


 ミランダが小声で聞いてきた。


「ほら、おふたりは、ちぎりを結んだこともあるんでしょ?」


 言いたいことはわかった。なんて言っていいかわからず、無言で、うなずいた。


「はあ、良かった!」


 ミランダは、安堵のため息をついた。暗いからわからないけど、ぜったい、わたしの耳は真っ赤だ。


「なんの話だい?」

「ボブ、早く飛ばしなさい!」


 ミランダのお叱りに、ボブは前をむいた。わたしは、抱きついているモリーを見つめ、抱きしめ返した。


「もうちょっと、がんばってね。急いでエルウィンに会わなきゃいけないの」

「明日じゃダメなの?」

「そうね、絶対に今日なの。今日しかないの」


 ボブが静かに「行くぞ」と言い、最後のスイッチを押す。ヘリコプターのプロペラが回転しはじめた。ゆっくりと、機体が持ちあがる。


「絶対に会わないと。もう、ずいぶん待たせたわ」


 暗闇の中を、ヘリコプターは急速に空へ登っていく。


「スタンリーですわ!」


 ミランダが、鳴っている自分の携帯を差しだした。スタンリーは、ビバリーからの連絡で状況はわかっていた。しかしエルウィンを北の塔に送り、いまは、もう家だと言う。


「スタンリー、いまグリフレットは?」

「連絡つきません。塔の前にいると思います」

「ほかの人は?」

「お城には、グリフレットしかいないと思います。夕方に、すべて帰しました」


 どのみち、わたしが行かないと魔法は解けない。急ぐしかなかった。


「塔は外から無理って、言ってたわよね」

「そうです。扉に鍵穴はありません」

「鍵を壊すことはできる?」

「やってみないとなんとも。鍵はかなり頑丈なやつです」


 ああもう、誰もいないのが歯がゆい。操縦席から、ボブが声をあげた。


「城の前に降りたい。庭が傷んでいいか、聞いてくれねえか?」


 たしかに、お城のヘリポートは敷地の外れだと言っていた。だが、スタンリーは困ったように答えた。


「庭は危険です。段差が多く、平らな場所は意外に少ないのです。それに庭木の枝は、下から見るより実際は大きく広がってます。ヘリコプターの羽根にかすれば大惨事ですよ!」


 わたしは聞きながら、ボブに首をふって危険だとジェスチャーした。


「池の上はどうです?」


 ボブに池の上は? と伝えた。親指を立て、オーケーと返してくる。電話のむこうで、さわいでる声が聞こえた。


「よせ、今は急いでるんだ」


 そんな声が聞こえた。なにか、もめているようだ。


「おばさん、おばさん!」


 意外な声におどろいた。


「ジェームス?」

「池はダメ! グリフレットさんが、釣りであけた穴を見たんだ。今年はあんまり厚く凍ってないって思った。スケートぐらいならいいけど、ヘリコプターなんて無理だよ!」


 ジェームスの話をボブに伝えた。


「くそっ!」


 ボブがなげく。


「とりあえず、わかったわ。ありがとうジェームス!」

「おばさん、おばさん、がんばって!」


 ジェームスから携帯を取りあげたらしく、スタンリーに変わった。


「とにかく私も、すぐに行きます」


 スタンリーとの電話を切って考えた。ヘリコプターを降ろす場所を探して、塔の扉を破って。間に合うだろうか。


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