8:アオイ
いつも読んでくださってありがとうございますm(__)m
森の中を慎重に進んでいく。目的地の遺跡の場所は聞いてあるから問題は無い。森の歩き方は師匠に叩き込まれたから慣れたものだしね。
「……遺跡自体にはあまり期待はしないでおこうかな」
しばらく進んでいくと大きな洞窟が見えてきた。ここがリークウッドで聞いておいた遺跡の入り口。奥はそんなに深くなくすぐに入り口が見つかるとか。
「どこかな~」
中に入ってキョロキョロとしながら辺りを見回していると、洞窟の一番奥に大きく入り口と書かれている木の看板が残っていた。大分くたびれている看板で文字もかろうじて読めるくらい。その側には巧妙に岩にカモフラージュされている扉があった。。
「観光地化の失敗の名残か……何か見てて切なくなるなぁ。それにしてもよく見つけたね、こんな扉」
こういう事例はきっと数えきれないくらいあるんだろうなぁ。しかしこれは言われないと扉だと気付かないよ。看板に従って入り口を開けて中に入ってみると、外の洞窟とは違って中の様子は全く違っていた。
人工物だと分かる床に元は照明があったであろう天井の穴。壁にはモニターが付いていてもう何も映してはいない。ここは私が目覚めた研究所と同じような建物だった。
「……何もいないみたいだね」
一応気を付けながらも遺跡の中をいろいろ歩いてみたけれど特に何もなかった。念のためてるてる坊主からPM10RLアサルトライフルを引っ張り出してはいたのに。
やっぱり聞いていた通りだったみたいだね。一応開かずの扉っぽいところは遠目に見つけているけれど、施設自体の電源も死んでいるみたいだし開けるのは無理そう。
調査団が開かないからって装飾品扱いするくらいだし。
「それでもダメ元で行ってみようかな」
内心の不安を誤魔化すようにわざと明るく振る舞ってみる。自分の記憶に関わる可能性もあったから心の準備はしたのだけれどあまり意味は無かったみたい。
自分が何者かも掴めない私はただその恐怖から目をそらして怯えていた。外ではその怯えを見せないようにしていたから、一人ぼっちでこんな場所にいると余計に心細くなってくる。
開かずの扉まで来たけれどやっぱり電源は死んでいるようだ。壁にロック解除のパネルがあるけれど電源が死んでれば意味も無い。
それに見た感じ手の平をスキャンするタイプの様だから登録されていなければどうしようもないしね。
「やっぱり無駄足かぁ……」
分かってはいたけれどショックだ。落ち込んだ私は壁に手をついて溜息をついた。まぁ、そうそう上手く手掛かりなんか見つからないよね。
『認証完了……ロックを解除します』
ロックを解除かぁ……出来たら良かったなぁ……ん?……今なんて言った!?
シューっと音を立ててドアがスライドして開いていく。開いたドアの向こうは更に奥まで通路が広がっていた。
まっすぐ伸びた通路は奥にある大きめのドアまでつながっているようだ。明かりは着かないから証明関係はまだ死んでいるみたい。奥の大きめのドアまでたどり着くと勝手に開いた。
「……何で開いたんだろう? まさか私に関係あるのかな?」
期待と不安が入り混じったまま私はドアの中へと入って行く。入った部屋の中は私が眠っていた研究所の保管室のような部屋だった。
部屋の中央には私が着ている全身スーツみたいな服が保管用のカプセルの中に入っている。すごく長いマフラーが付いているんだね。保管カプセルの前には魔法陣みたいなのもあるし
「……これ何だろう?」
カプセルをつついてみても何の反応も無い。部屋の奥には大きなモニターが壁にあるけれど無反応だし。これ以上はどうしようもないと帰ろうとしたとき後から声が聞こえてきた。
『……来てくれました……ブ。……のためにこの子を……します』
慌てて振り向くとモニターに白髪のふわふわとしたもこもこヘアーのお姉さんが映っている……だから誰この人!?
『あとはよろしくお願いね……』
しかも音声は途切れ途切れでよく聞こえなかったし!!
お姉さんはそう言うとモニターから消えてしまった。いったい誰によろしくなのなら。
「わけ分かんないよ……というかさっきの誰?」
『この研究所の統括管理AI“ノーザンリリー”です』
「え!? あれAIだったの! 人間だと思ってた」
『私の母のような存在です』
AIがお母さんか~ところで、私は誰と会話しているのだろうか?
慌てて辺りを見回すと保管カプセルの前にある魔法陣に一人の女の子が立っていた。年の感じは見たところマリッサちゃんと同じくらいかな?
私と同じように腰まで延びた銀色の髪が印象的な美少女だった。
『どうかしましたか?』
いつの間に現れたの? 気配?とか全然なかったけれど?
「あなたは……誰?……なのかな?」
『私は独立支援情報処理統括AI“Artifact Of Intelligence”あなたのサポートが主な役割です』
……どうしよう……理解が追い付かない。AIって言った? 今。だったら目の前にいるこの子は何なのだろう? え? え?
「……オートマータってこと?」
『違います。この姿はホログラムです。確かに依然作られたことがあるオートマータを模して製作されていますが』
……ヘルプミー。どういうことか分からないけれど、分かることはただ1つ。
「……ハズレかぁ」
私の記憶を取り戻せるわけじゃなさそうってことだ……無関係じゃなさそうだけれど。
『ハズレ? どういうことでしょうか?』
私は少女に自分の記憶がないことと、この体に入ってしまっている理由が分からないことを話した。
『なるほど……つまりはあなたは記憶がないから何も分かっていないというわけですね』
「……ざっくりまとめられた」
『そもそも記憶がないのにその体と無関係だと確信する理由はあるのですか?』
何となくだけれどこの体は自分の身体じゃないという感覚がある。そうとしか言えないけれど。
『その体はゴーレムを破壊するために作られたオートマータです。中でも究極のゴーレムと呼ばれている12体のゴーレムを破壊することが最重要課題です』
「ムリムリムリ!! ゴーレムとなんて怖くて戦いたくないし、そもそもゴーレムに関わるのも嫌だよ!!」
『……どうやら本当に何もかも情報が足りていないようですね……少し待ってください』
少女はそう言って後の大きなモニターに何かを映し出した。映像にはアニメキャラクターがと一緒に映像が出てきた。それはゴーレムの映像や戦う人の映像だった。
『まず、今から約1000年前にあるAIが暴走した結果大量のゴーレムが地上にあふれ出しました。これらのゴーレムがどこから来たのかなどは……どうやら私のデータも経年劣化のせいで結構壊れているようですね……バックアップを回収次第また説明します。話を戻しますが、結果人類はゴーレムとの戦争になりました』
「……ちょっと待って……今1000年って言った?」
『故障などが無ければですが』
嘘でしょう!? 並行世界に来たからこんなファンタジーな世界にいると思っていたのに……1000年も経ってればこんなファンタジー有り得ないって言いきれないじゃない!!
思わず肩を掴もうと手を伸ばしたけれど手は少女をすり抜けてしまう。
「で、でも月が2つあるから私のいた世界じゃない可能性も……」
『月が2つですか……無事なデータの中にそのことに関するデータはありません』
「……それで、戦争の結果は? まさかそれもデータ破損?」
だとしたら何のデータが無事なのか聞いた方が早いかも。私がそう尋ねると少女はしばらく考え事をしたあと頷いた。
『……そうですね。現在ゴーレムに関する無事な情報はこの程度です。あとはあなたのそのオートマータの体が12体のアルティメットゴーレムを破壊するための物だということと、そのためには各研究施設であなた専用に用意された強化改修を受ける必要があるということです』
「私がこの世界の人間じゃなくても?」
『そもそもその体に入るのはオリジンAIというAIの予定です。従ってあなたがそうでない可能性があるのならば私はオリジンAIを探す必要があります』
……私っていったいだれなんだろうか。この体の本当の持ち主が別にいるのなら返さないといけないよね……でもどうすればいいの?……それに私はどうなるの?
あまりのショックに私はうなだれてしまった。これからどうしよう、正直当ても無いし手詰まり感が凄い……そうだ!
『ねぇ、だったらさ協力できないかな? 私はそのオリジンAIを探す手伝いをするからあなたは私の記憶と元の世界に帰る方法を探す手伝いをするの。期限はお互いの目的が達せられるまで……どう?』
この体のことを良く知っている人? AI?がいてくれた方が良いしね。何かあっても私じゃ対処できないし。
『悪くはなさそうですね……どうやらあなたはそのオートマータエヴォルブの体を上手く使えていないようですし』
オートマータエヴォルブ?……なんじゃそら?
『その体の正式名称です。最新式の第四世代のオートマータを元に製作されたオートマータの中でも高性能なオートマータです。特化型の第四世代には劣る部分はありますが、最大の特徴は拡張能力の高さです。理論上アップグレードを繰り返し続ければ常に最新の状態でいられます』
それってかなり凄いことなんじゃないだろうか……だって普通は型落ちになっていくのに。だからさっき強化改修って話が出たんだ。納得。
「なおさらあなたの手助けが必要みたいじゃない……それじゃこの条件で決まりね。私はクーディグラ、あなたは?」
『クーディグラ……ですか。何故そのような名を名乗っているのかは不明ですが了解しました。ちなみに私に名前はありません』
え!? 無いの!……うーん、無いと不便だしなぁ。よしそうだ!
「“Artifact Of Intelligence”だからAOI! アオイでどう!?」
『アオイですか……了解しました。これからはアオイとお呼びください』
アオイはそう言ってぺこりと頭を下げてきた。つられて私もぺこりと頭を下げる。
「それでどうすればいいのこれから?」
『少々お待ちください』
アオイはそう言って私に魔法陣?の中に入るように言ってきた。大人しく入るとアオイと重ってしまう。そして光ったかと思うとアオイの姿は消えていた。
「あれ? どこ行ったの!?」
『ここです』
頭の中からアオイの声がする! ビックリしていると視界にアオイが入ってきた。
『問題なくダウンロードできました。今、あなたの中の空メモリを使用してあなたの中に入りました。これからはこのような形でサポートします。システム面の管理は任せてください。ちなみに今見えている私はクーディグラにしか見えません。網膜に投影しているだけなので。一応ホログラムで他者にも見えるように出来ますが』
頭に人が住み着いた! あ、AIか……ってちがーう!! 微妙なホラー感のある話なんだけれど。
『クーディグラは思考するだけで会話可能です。私も他者との会話は可能ですが、基本的に避けた方が良いでしょう』
……細かく考えるのは止めておこう。今はとりあえず強力な助っ人をゲットしたということでいいや。
『あとはロックを解除したのでそこのスーツを着てください。オートマータエヴォルブのために用意された特別な防具です』
この全身スーツ……今着ている全身スーツと何も変わらないんだし一応着てみようかな。おや、意外とよく伸びるし着やすいぞ!……後は上から防具を付ければ……。
『その対万象防御スーツ”陰陽大極衣”は普通の銃弾程度ではダメージを受けません。さらに外見を状況に合わせて変化させることが出来ます。もちろん質量を超えるような形には変化できませんが、普通の服装くらいなら問題ないでしょう』
おお! それなら普段着でもこれを使えるってことだね。でもどうやって変えればいいの?
『クーディグラのシステムを少々いじる必要がありそうですね。起動時にトラブルがあったのか正常にシステムが作動していません。今日中には修正は終われるでしょう』
だったらその間にいろいろと漁ってみようかな。何か見つかるかもしれないしね。
『でしたらいろいろ集めてください。必要になるので』
ん? まぁいいけれど? さてと、それなりに広そうだし使えそうなものを探しに行こうかな。
主人公パワーアップ!