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どうか、この世界を私たちに守らせてください。  作者: 華蘭蕉
Act two 第二幕 恐怖と喪失。そして、憧れ。
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スキャーリィ編 30話 特異能力3

 引き続き私、筒美つつみ紅葉もみじはふみふみちゃんを交えら黄依きいちゃんの特異能力エゴの練習をしていた。


「『加速衝撃インビジブルインパクト』ッ!」

「おぉ……」

「ふむ……」


 空気を震わす轟音が鳴った瞬間、真っ直ぐと衝撃が海に伝わり周り海水を割る。しかし、先程より安定して力が伝わったためか、力が分散せずにより遠くへと衝撃が伝わったのが分かった。


「はぁ……はぁ……流石に『僻遠斬撃リモートインパクト』の連続使用は身体に堪えるね……」

「本来なら連続使用なんて出来るものでも無いけどね」

「練習はこんなもんにして少し休憩するか?」


 ふみふみちゃんがアホ毛を揺らしながらそう提案してきた。


「そうだね、そろそろ休憩したいかも」

「あっそう言えばセンセイから伝言。『DRAG(ドラッグ)を使う時になったら俺様も呼べよ』だってさ」


 彼女は青磁せいじ先生の性根が腐ったような声のモノマネをしながら言う。


「あはは……ふみふみちゃんものまねうまいね! 了解、分かったよ」

「しかしセンセイ、なんだかんだでモミジのことめちゃくちゃ心配してるよな」


 此方に顔を覗かせながらふみふみちゃんは喋る。


「あの人はそういう人なの。大切だった人達が壊れてくのを何回も見てる。だから、失うのが怖くて、口では照れくさくて人を馬鹿にするような物言いしか出来ないし、それで自分が嫌われる事で多くの人を救えればそれで良いって本心から思ってる。全く難儀な人だよ」

「私から見ればあの人は自尊心の塊にしか見えないんだけどね」


 黄依ちゃんは苦笑いしながら言う。


「きっとそれも含めて『色絵しきえ青磁せいじ』なんだよ」

「そっか……」

「それもそうだな」



 ……そのまま、私達は海沿いにある護衛軍の地方支部へと歩いて帰った。


 そこへ帰り、休憩室に行くとてるてるさんがソファーに座り、その妊娠で膨れたお腹をさすりながら休憩していた。此方に気がつくと優しく声をかけてくれた。


「あっおはよう! 紅葉もみじちゃん、身体の調子は何ともない?」

「お陰様で、何とか黄依ちゃんの特異能力エゴを使えるようになりました。まだ少し練習が必要だと思いますが、あの感情生命体エスター……確か名前は……」

「『恐怖スキャーリィ』」


 やっぱり、あの感情生命体エスターは恐怖が元になって生まれたやつだったか。


「そう、『恐怖スキャーリィ』を倒すには充分なくらいだと思います」

「分かったわ……私は衿華えりかちゃんと『恐怖スキャーリィ』の闘いを遠くから最後まで見ていた。それで分かった事も多々ある。それも含めて後で話しましょう」


 今は別に話す事があると言わんばかりにてるてるさんは話の腰を折った。丁度私も彼女に聴きたい事があったことを思い出す。


「分かりました、ですが一つ聞きたい事があります」


 私は携帯電話を取り出して、先日バス内で祖父ししょうに尋ねた衿華ちゃんの過去についてのメールを出す。


 すると彼女はまじまじと画面を見つめて、辛そうな面持ちで言葉を吐いた。


「やっぱり……そうなのね」


 祖父ししょうとのメールの内容はこうだ。


『突然ごめんね。前、師匠が会った子にふき衿華ちゃんっていたじゃない? 彼女、10年以上前に大病を患って護衛軍の本部で治療してもらってたみたいなんだけど、何か心当たりあったりする?」

『蕗か……確かにその苗字に心当たりはある。色んな事情があって俺から言えた義理じゃないが、おそらく大将補佐の天照てんしょうが一番事情に詳しかった筈だ。詳しい事を知りたいなら奴に聞け』


 何やら唯ならぬ事情を感じ、衿華ちゃんのDRAG(ドラッグ)を使う前に知って置いた方が良い事だと思った。


「分かったわ。私も丁度その話をしようと思ってたの」


 すると、奥の方から特徴的なサイドテールを揺らしながら薔薇ばらちゃんが顔を覗かせた。


「その話、わたくしも伺ってもよろしいですの?」

「げっ……爆発女」


 黄依ちゃんは彼女の顔を見た瞬間、苦虫を噛み潰したような顔をした。しかし、薔薇ちゃんはそんな事は一切気にせず、顔に涙を浮かべながら私に抱きつく。


「えっ⁉︎」

筒美つつみさん、ご無事で何よりですわ。本当に……本当に……蕗さんを失って辛かったでしょうに」

「ありがとう、薔薇ちゃん……心配してくれて。でも、もう大丈夫だから。それに薔薇ちゃんも……」

「今は自分をしっかり持たなきゃいけませんわっ! ですから、蕗さんの事……わたくしの親友の事ちゃんと胸に刻み付けたいのですわ!」


 薔薇ちゃんは私から身体を離し、てるてるさんに向かって口を開く。


「……分かったわ、薔薇ちゃん。貴女の気持ちを考えたらそうだものね」

「ご無礼しました……わたくし涙を流すなんてはしたない……」


 黄依ちゃんの方を見ると目を潤わせ、唇と拳を噛み締め『私だって』という表情をしていたが、私が見ているのを気付くと直ぐびっくりして、苦虫を噛み潰したような顔に戻った。


「別に良いのよ、それくらい。じゃあみんな席に着いて楽にしてくれると嬉しいわ」


 てるてるさんは涙ぐみながら、みんなを席に座るように誘導する。


「今から話すのは衿華ちゃんの過去、というか衿華ちゃんのおばあちゃん……私の師に当たる蕗羽衣(はごろも)先生の話よ」

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