表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どうか、この世界を私たちに守らせてください。  作者: 華蘭蕉
Act two 第二幕 恐怖と喪失。そして、憧れ。
88/370

スキャーリィ編 21話 償い3

「何言ってんだ……? モミジ……?」

「……は?」

「分かりませんか? じゃあもう一度言います、私衿華ちゃんのDRAG(ドラッグ)を持ってるんです」


 口を開いた瞬間、蘇芳すおうちゃんに胸ぐらを掴まれた。


「蘇芳ちゃんッ!」

「お前、自分が何言ってんのか分かってんのか……?」

「うん。私はあの局面で、皆んなを助ける事ができた」


 そして私は掴まれた手を払い除けて言葉を放つ。


「全部私が悪い」


 瞬間、私は天照てんしょうさんから平手打ちを喰らった。


「やめなさいッ……」

「どうして」

「さっきも言ったじゃないッ! 衿華えりかちゃんがどんな気持ちで私達を助けたか……」

「だから……それが必要なかったって言ってるんでしょッ! なんで衿華ちゃんが命を賭けたか今ので分からなかったのッ⁉︎」

「なんで、そんな事軽々しく言えるのよッ! 分かる訳無いじゃない⁉︎ 人が死んでるのよ……? 貴女を助ける為に……貴女のパートナーが死んだのよ……?」


 天照さんは一瞬固まり、自分の出した言葉に疑念を持ち始める。


紅葉もみじちゃんを助ける為に……衿華ちゃんが命を賭けた……? その理由は……」


 私は衿華ちゃんから作ったDRAG(ドラッグ)を腰掛けカバンから出した。


 そう……DRAG(ドラッグ)は自身の特異能力エゴを強化する為の物。


 人間の細胞内に存在する『DAYN(ダイン)』というERG(エルグ)の分解機能を持つ細胞内器官を、『特異エゴDAYN(ダイン)』という特異能力エゴを現実に引き起こす為の器官に変質させる為の薬だ。


 通常、他人のDRAG(ドラッグ)を使った所でその効果は意味を発揮しない。


 しかし、例外もある。

 性行為に及ぶ関係性であったのならその効果を発揮する。そして、それは一度だけ過去に事件としてあった。それは護衛軍の幹部なら知っている事だろう。


 勿論、衿華ちゃんとはそういう関係性に一時的にはあった。だから、彼女は私に『憧憬』という感情を抱いた……いや違う。私が彼女に『憧憬』を抱かせたんだ……


「……紅葉ちゃん……貴女の言っていることは本当なの?」


 コクと頷く。


「……どうやら本当みたいだな……モミジッ……! よくお前そんな精神状態で特異能力者エゴイスト感情生命体エスターにならないで済んだなッ!」

「えぇ……だって私の身体には別の人間の臓器が入っても身体に異常が無かったから」


 すると、天照さんは頭を抱えた。


「なんなのよこの子……そんなの元大将から聞いて無いわよ……」

「次から次によくポンポンとそんな爆弾発言やら地雷案件をかませるよなぁッ……! つーか今まで言って無かっただけかッ……!」


 もう一度コクッと頷く。


「ならよ……お前ちゃんと落とし前はつける気であるんだよな?」

「勿論」

「なら這ってでも戦え。腕がもがれようとも、足が千切れようとも、全てを失おうとも戦え。もし、エリカの事を一度でも忘れて、これから生きていこうモノなら私がお前を殺す」


 歳下の女の子から向けられたのは殺意だった。あれだけの笑顔を向けてくれた女の子がこんな顔をするなんて思いもしなかった。


 だが、これでいい。


 これであの感情生命体エスターに対して心置きなく戦えるのなら私は嫌われたって構わない。私がDRAG(ドラッグ)を使っても、何をしてもアイツを殺さなくちゃいけない。


 喩えそれを達成しても、衿華ちゃんに対して償えるなんて思わない。


 だからこそ、私はこの悲しみを抑えつけて、冷酷に淡々とあの感情生命体エスターに復讐をしなければいけない。


「それで、お前それ使う気なのか? 感情生命体エスターになるとかなら絶対にやめて欲しいんだが」


 蘇芳ちゃんは私の持っているDRAG(ドラッグ)を指差し、私を睨みながら言う。


「勿論。でもさっきも言った通り私の中には違う人の臓器が入ってる。だから、それを使って感情生命体エスター化をなんとか出来る特異体質らしい……詳しい事はこの人から聞いて」


 カバンに入っていた携帯を操作し、青磁せいじ先生の電話番号にかける。意外にも彼は直ぐ電話に出た。そして、人を馬鹿にするような声が耳に響く。


「もしもし、こちらは色絵しきえ青磁だ」

「もしもし、先生? 紅葉だけど」

「んだよ、お前かよ。忙しいからかけてくんじゃねぇよバカが。どんな用だ? 話してみろボケ」

「急だけどDRAG(ドラッグ)を使わざるおえない状況になったの」


 手短に説明してもらおうと彼に話題を振ろうとする。しかし、返って来た言葉は予想以上に最低なものだった。


「あっやっぱり? んで誰が死んだんだ?」


 軽く、まるで当然の事を聞いてきているようなものだった。


「……は?」


「はっはっはっ! どうせ香宮かみやこう感情生命体エスター化したやつにやられたんだろ? あれは俺様が作った感情生命体エスターだ……! この事分かって俺様に連絡してきたんだろ?」


 その言葉を聴いた瞬間私に芽生えたのはこの男への怒りだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ