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どうか、この世界を私たちに守らせてください。  作者: 華蘭蕉
Act two 第二幕 恐怖と喪失。そして、憧れ。
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スキャーリィ編 20話 償い2

 私の兄としての名前は筒美切手(きって)、実の名を色絵しきえ青磁せいじ。彼はDRAG(ドラッグ)を作った功績から護衛軍で特異能力者エゴイストを研究する事を許された人間。


 そして、それと同時に私の祖父である元護衛軍大将の筒美つつみ封藤ふうとうから護衛軍にいるであろう調査員を暴くために、秘密裏に樹教への潜入調査を依頼された人間であった。


 もし、衿華えりかちゃんが本当に樹教であるならば、彼の目の前に現れた時点で捕まってしまっていたのだろう。しかし現実はそうではなかった。であるなら、衿華ちゃんが樹教では無いことは自明だ。


 では、何故衿華ちゃんは護衛軍に樹教が潜入しているかという可能性を知ることができたか……


 青磁先生や瑠璃くん、そして祖父に会ったあの日の事を思い出す。


 そういえばあの時、祖父に会った時青磁先生に『樹教の件で来た』と言っていた。


 まさか……衿華ちゃんはそれだけの言葉でここまでの行動を起こしたの……? そこまでして、私達に罪なく逃がそうとする為だけにそうしたの……?


 それに……


「ハァ……ハァ……」

「どうしたッ⁉︎ モミジッ⁉︎」

「まさかッ……」

「何だよッ⁉︎ 分かるように説明しろよッ⁉︎」


 こんな事誰かに説明すれば、関わって来た人全員の努力が水の泡になる……説明出来るわけがない……


 だって、私達の前に現れたあの感情生命体エスターを作ったのは……


 青磁先生の作ったDRAG(ドラッグ)が原因だから。


 あれだけイレギュラーの感情生命体エスターがいるのは彼が裏で関わっていた可能性が高い。もしくは樹教への信頼を得る為に行った事なのか……?


 待て、まてまてまてまて……


 私はそれを知らないながらも、なんとなく危機的な状況にあったのは理解していた。それはその対策として、青磁先生から黄依きいちゃんや衿華ちゃんから作ったDRAG(ドラッグ)を作って渡して貰っていたからだ。


 まさか、青磁先生は全てを……衿華ちゃんの特異能力エゴがあの感情生命体エスターの『衝動パトス』に効果が有る事を読んで私にDRAG(ドラッグ)を託した……?


 というかあのDRAG(ドラッグ)を作った時点で彼は既に樹教の監視下に置かれていたとしたら……部屋……青磁先生の部屋にあった違和感……確か青磁先生に花を鑑賞するなんて無かった筈なのに、あの部屋にはジャスミンの花があった。


 そういう事か……だからあの時込み入った話をしないように私を馬鹿にしながら喋っていたのか……


 最悪、公園で話した私の過去や青磁先生の過去も敵に知れ渡ったという可能性もあるのか……いや、それなら祖父か瑠璃くんが気付くか……


「……結局私がまた理解が及ばなくて助けられた筈の人間を助けられなかったのか……」

「……は?」

「ごめんなさい……今の言葉は忘れて……」

「大丈夫……? 紅葉ちゃんさっきから顔色が悪いようだけど……? 気持ちは痛いほど分かる……でも、こんな職業柄こういう事はよくある事だから、慣れろとは絶対に言わない。でも折り合いは多少なりともつけて欲しい」

「はい……」


 これは流石にこの二人には隠さなくてはいけない……特にこの二人は樹教とは何も柵の無い人達だ。真実を知ればきっと樹教から命を狙われる……関係の無い人達は巻き込む事はできない。


 だから、今はそれよりも全ての状況を理解した上で私だけが取るべき行動を取らなくちゃいけない。衿華ちゃんが死んだのも全て私の樹教への復讐がきっかけだ。


 そう、私の父は樹教の教祖にして先代の贄『漆我しつがくれない』によって命を奪われた。それ以降、私は暴力を嫌うようになりながらも、自身を鍛える為母元から離れ祖父の元で筒美流奥義を学んだのだった。


 そして、家族を樹教に奪われた青磁先生、そして祖父の協力を得て樹教の情報を得ようとしていた。これが私の復讐の内容。


 ならば私が今取るべき行動は一つ。


 あの感情生命体エスターを殺さねばいけない。


「……私、あの感情生命体エスターに対抗する方法を思いつきました」

「モミジ……お前……さっきから様子がおかしいぞ」


 蘇芳ちゃんは戦慄したような表情で此方を見る。


「実は私、衿華ちゃんのDRAG(ドラッグ)持ってるんです」

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