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どうか、この世界を私たちに守らせてください。  作者: 華蘭蕉
Act two 第二幕 恐怖と喪失。そして、憧れ。
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スキャーリィ編 13話 エリカ2

「そんなわけ無いでしょッ⁉︎ 衿華ちゃん! 私は貴女の過去を知っているわ! だって貴女は羽衣はごろも先生のま……」

痛覚支配ペインハッカー

「ーーッ! ……なんでよッ⁉︎ そんな事しても何も……まさか貴女ッ!」


 天照大将補はまた気になるような事を言う。


 しかし、一度始めた事だ。もう後には引けないし、引かない。なるべく、手加減をして、お腹の赤ちゃんには負担がかからないように、それに痛みでトラウマにならないように、彼女に痛みを走らせる。


「ねぇ、少し黙っててくれる? 黙らないともっと痛くするよ? 実は衿華、まだまだ特異能力エゴを使えるの。お腹にいるお子さんの事考えれば分かるよね? これは衿華にとっても、組織にとっても予想外の事態なの。あの子……あの感情生命体エスターはね、思わない形で進化しちゃったの。そうなったら駆除しなくちゃってねって上から言われていたの。それであの子の『恐怖』っていう特性を知っていた衿華は衿華自身の特異能力エゴであの子の衝動パルスを打ち消したの。衿華の特異能力エゴは集中すれば衝動パルスよって体内に吸収された感情の原因物質を神経を通じて止める事ができる」


 実際に衿華の特異能力エゴ衝動パトスに干渉出来たのはそれが理由だろう。まさか、衿華の特異能力エゴにそんな使い道があったなんて、思いもよらなかった。もっと、使いこなせるようになっていれば違った運命だったかもしれないのに。


「あと、もう一つ命令があってね。任務中もし、全滅しそうな目にあったら衿華自身の命より、貴女達の命を守りなさいって言われたの。貴女達は環境にすら干渉をする特異能力エゴ特異能力エゴの二つ持ち。いわゆる、とても希少な観察材料なの。だから、今から言う事を守れば、貴女達の命は確実に救えるよ。安心して、命に換えても貴女達を守るから」


 二人ともこちらを睨みつけるが気にせずに話続ける。


「まず、天照大将補佐。貴女には感情生命体エスターの周りの海上をずっと凍らせて貰います。勿論、拘束状態でも使えますよね? もし一瞬でも途切れたら、特異能力エゴで痛みを支配しますよ。だから、やめないでくださいね。衿華は海の上では戦えませんから。それを確認次第、衿華は船を降ります。そしたら、蘇芳ちゃんは意地でも船を運転してね。それで衿華を置いて、ここから逃げて。それが貴女達がここから命を守れる条件です」


 冷たく、淡々と吐く。衿華が説明している間にも人が喰われていく。


「やっぱり、エリカ、お前……いやもういい、そこまでして私達の身を案じてくれていたのか……」

「なんで……なんでよ……これしか方法は無いのッ⁉︎」


 もう、犠牲者は出せない。だから早く。お願い。


「……分かったわよッ! 『環境操作ウェザーフォーキャス』ッ! ーー絶対零度アブソリュートゼロ


 再び海面に氷が一面に張り巡らされる。


「ありがとう。これで、衿華の願いは叶いそうだね。それじゃあ、衿華が存分に戦えるように先にこれを使います」


 DRAG(ドラッグ)の箱をポケットの中から取り出す。


「クソがッ……!」

「ごめんなさい……」


 そして、箱を開けて錠剤を取り出す。


「護衛軍での生活とても楽しかったよ。さようなら」


 ドラッグ《DRAG》口内に含み、ガリッと噛み砕いたあとにごくんと飲み込んだ。


 これで、衿華は一線を超えた。もう人間じゃ無い。


 これからアイツを倒そうが、倒さまいが、一生紅葉ちゃんの顔は見れないだろう。


 それに、アイツを倒した時点で、衿華の方が生きていたら、衿華は自殺する。本当はこうなってしまった時は紅葉ちゃんや黄依きいちゃんに殺して貰いたかったけど。


「さっこれで準備は整ったから、衿華は船を降りるよ。ちゃんと逃げてね、蘇芳ちゃん」


 船を飛び降り、蘇芳ちゃんへかけた特異能力エゴを解いた。すぐに船は動き出すが、感情生命体エスターは船を追いかけ、船ごと喰おうとする。


「そんな事、絶対にさせないから」


 それを阻止する為に本気で特異能力エゴを使う。決して人では耐えられない、痛覚への刺激。


痛覚支配ペインハッカーッ!ーー精神崩壊メンタルコラープス

「!hcuo&hcuo&hcuo&hcuo」


 すると、感情生命体エスターは痛みに苦しむように触手をくねらせ、空間を揺さぶらせるくらいに大きく叫び声を上げる。


「凄い……直接触らないでも、痛みを与えられる。それに、全然限界を感じない……。こんな状況で『希望』のような特異能力エゴ


 そういえば、誰かにジャノメエリカという品種には『希望』という花言葉もあったと教えられた。一体誰が私に教えてくれたのだろうか。でも、今はもしかしたら『孤独』という花言葉の方が合っているかもしれない。


「そっかぁ……一人か……いや、お前もいるのか」


 先ほどの攻撃で、感情生命体エスターの矛先は衿華に向いた。


 最後に、最悪な嘘ついて、大好きな人を泣かせて、仲間に置いてかれて、今から人間まで辞めて、衿華は死んでいく。


「でも衿華はね、今この時の為に生まれてきたって思えると苦しんだ甲斐が有ったなって少し救われた気分になるよ。あはは……意味わかんないよね。衿華、今が人生で一番幸せなんだ……ほんと、幸せってなんなんだろうね?」


 心の奥底から、紅葉ちゃんに対する膨大な程の『憧憬』が止めどなく湧いてくる。切なくて、悲しくて、愛おしくて。でも、そんな『私らしくありたい』という感情。


 さあ……ここからだ……。彼女達の船が港まで安全に着けるまで時間稼ぎをしなくちゃ。


「来ていいよーーッ! 衿華は四肢がもがれようとも、どれだけ辱められても、人間を辞めてもあの人達を守るから」


 全て怖く無い。お前になんて誰も『恐怖』しない。


「『痛み』なんて……『恐怖』なんて……衿華の『憧れ』の前には敵わないッ!ーー『痛覚支配ペインハッカー』ーー精神崩壊メンタルコラープスッ! これ以上、あの子を不幸になんてさせやしないッ!」


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