スキャーリィ編 3話 所要
バスにはすでに6、7人が乗っており誰も彼も尉官以上の人間であった。中には大将補佐の天照輝さんや一佐の所要がいた。
「というわけで、こいつらを連れて行く事にしたからな」
「僕はいいけどさぁ、踏陰ちゃぁん! それはちょっとまずいでしょぉ!」
少し鼻につくような喋り方をする少しイケメン風の彼が所要であった。そして、いわゆる彼が護衛軍一の変態野郎と呼ばれる人であった。
「人との距離が測れない意識高い系のムカつくナルシストみたいな喋り方やめろカナメ」
「それは僕の特異能力を発動させる為にやってる事だから大目に見てくれよぉ! それに今はそう言う話じゃなくてぇ! 」
「こいつらの事だろ? 説得したけどダメだったから連れてきた。なんかあっても全力で守れるようにするぞ?」
「マジィ⁉︎ ……でもまぁいいか。どんな事でも経験するべきではあるしね。んじゃあ、念の為君達からの『嫌悪感』も補充だね」
そういうと彼は私達に近づいて、話しかける。
「やぁ! 衿華ちゃぁん今日も可愛いねぇ! 流石護衛軍の癒しの天使っ! 今日の任務で怪我をしたらサポート頼むよっ!」
「えぇ……?」
衿華ちゃんは私に見せた事が無い本気で嫌そうな顔をする。彼も特に悪い事を言っている訳では無いのだが、何故か彼の言葉の節々に対して生理的に嫌悪感が湧いてしまう。
「うへぇ〜! いい『嫌悪感』だぁ……! じゃあ、次は黄依ちゃん、君はそうだね、うん。身体中どこから見ても絵になる体型をしているよね。初めて見た時からモデルさんかなんかかなって思ってたけど。あっでも、胸は小さめかもっ!」
前言撤回、これはセクハラ。黄依ちゃんは貧乳だから全体のバランスが整って良いんだよ。
「紅葉……この人セクハラで訴えていい?」
「いいと思うよ、私は黄依ちゃんに関しては貧乳派だし」
「いやぁ……流石に困るよ? あっ困るっていうのは嬉しすぎて困るって意味ね。僕、ドがつくほどマゾだから監禁から放置プレイまで全然受け入れられるけど」
「カナメ、TPO」
「僕の特異能力にTPOなんて通じないよっ!」
「誰かこの変態を止めてくれ」
「ウハァ……年端もいかない可愛い少女とアイドルや女優並みの美少女達から溢れ出る『嫌悪感』たまらないっ! そう例えるなら可憐に咲く花々のような蜜の味がするっ!」
彼の恐ろしいのは、謎にプライドがありボディタッチなどはしないのだ。まぁそれ以上に恐ろしい日本語が飛んでくるが。
そもそも彼は人に『嫌悪感』を持たせ、『嫌悪感』を力にして身体能力の向上等をする、まるで感情生命体のような特異能力を持っている。その為今はこのような行動をして、嫌悪感のストックをしているのであろう。全く、人に対して厄介な能力すぎる。というか、捕まって欲しい。
「さて、次は白夜くん」
「黙れ、殺すぞ。変態野郎」
「少し待なよっ! 流石に嬉し恥ずかしBLな展開は僕の趣味じゃないから、君に対してそういう目で見たりしないよっ!」
「つまり、私達は百合的な目で見るんかい」
まぁ、数日前までは実際にそうであったが。
「はっはっはっ! そういう事だよっ! だけど百合の間に挟まろうとする男は良くない。NTRは僕の趣味では全くないんだ」
そういえばそれを考えると瑠璃くんの扱いって一体どうなるんだ? そもそも、瑠璃くんは男の子? それとも女の子? いや、人間じゃないのか? というか人間ってなんだっけ?
「さて話を戻して、白夜くんには妹さんの……」
「口を縫い付けるぞ?」
「いいっ『嫌悪感』だっ……!」
「アンタ、人生幸せそうだな」
「応ともさっ! さて、薔薇ちゃんはと……」
薔薇ちゃんの方を見ると、彼女は高圧的に黙って所要一佐の方を睨んでいた。
「どうしたんですの? 何か私にいう事でも有りまして?」
「つっ強い『嫌悪感』だっ……! 流石お嬢様なだけあるっ! 喋りかけただけで嫌われるとはっ!」
「品位を疑いますわね」
「僕の品位は疑う為にある」
「何言ってんのこの人、頭大丈夫?」
「僕は至って通常通り。さて、僕に対してそんな罵声を浴びせた紅葉ちゃん君はと……」
まじまじと顔や胸、足を見られる。
「ふむ……紅葉ちゃんはなんか幸薄そう」
「それ本当にただの悪口だからね?」
「後、女の子にモテそう。護衛軍の女性に『一番抱かれたい女の子』でランキングとったらぶっちぎりで一位になりそう」
「あー確かに女の子なら紅葉ちゃん」
「分かるわ」
「そっそんな女の子同士なんて何を考えていますの⁉︎」
「何の話だよ! 」
謎に天照大将補から同意を得て、白夜くんが珍しく赤面をする。衿華ちゃんや黄依ちゃんはうんうんと頷き、薔薇ちゃんは黄依ちゃんの方をみてもじもじしている。
「ここは地獄?」
「割と性癖に関しては僕はまともなのかもしれない」
「それは無いと思うよ?」
「しかし、君からは『嫌悪感』が感じられない。くぅ……やはり同類は駄目かっ……」
「いや充分貴方の事嫌いだからね? というか、今さらっと同類扱いしたな?」
「あぁ……そういうの、そういう『嫌悪感』もっと欲しいっ!」
私は人の『嫌悪感』に欲情する彼を見て、敵じゃ無くて良かったと安堵した。