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どうか、この世界を私たちに守らせてください。  作者: 華蘭蕉
Act two 第二幕 恐怖と喪失。そして、憧れ。
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スキャーリィ編 2話 覚悟

 私達は護衛軍本部の正門につく。


「さて、集まったか」


 そう呟いたのは、先程の電話の声と同じ少女声だった。その、小学生のような見た目をした彼女は顔に眼帯、そして一つあらぬ方向に曲がっているくせっ毛が特徴的だった。彼女の名前は踏陰ふみかげ蘇芳すおうちゃん。護衛軍の一佐だった。


 周りには、私、黄依ちゃん、それに衿華ちゃんのグループと同期で別グループの水仙すいせん薔薇ばらちゃんやみさお白夜はくやくんもいた。


「全員参加か、今年の奴らは勇敢だな……」


 言葉とは裏腹に暗く彼女は言う。もちろんそのテンション同様にいつも活発に動いている筈のくせっ毛は全く動いていなかった。


「だけど、勇敢さと命を落とす事は違う。正直これから私達が相手にしようとしてるのは全く格の違う理不尽だ」


 そのまま私達の一人一人の目をその片っぽだけの瞳で見てくる。その瞳も暗く、まるで私達に対して怒っているようなものであった。そして、悲しさが感じ取れるそんな表情もしていた。この少女はどのような人生を送ればこんな顔ができるのだろうか。


「最終警告だ。お前らは来るな」


 そう言いながら、彼女は眼帯を外す。


「……」

「クソが……」


 瞼には深く何かの模様が彫られていた。瞳の部分だけは、綺麗な義眼が使われており、おそらく本来の彼女の瞳にも皮膚と繋がるように、その何かの絵が彫られていたのであろう。


「この目の傷はさ死を表す骸の顔を表したものだったんだよ。そして、この傷を付けたのは手口が同様だったハクヤやアサヒの両親を殺した感情生命体エスターの仕業だ。奴は親子を狙い、親を殺し、子供は生かしながら身体の一部を持ち去るという特徴的で共通点のある行動をする。私もそいつに両親を殺され、特異能力者エゴイストにされた。そして、奴は嬉々として私の目にその絵を描いた後、その片目を持って行かれた」


 どちらにせよ、少女の身にそのような事をする人間は出し難いにも程があると思った。それと同時に、12歳の彼女がその傷を受けなお、今こうして生活をしているとは思えない程、凄惨たる傷痕だった。


「その感情生命体エスターの正体は殺人衝動に駆られた『ただの人間』の慣れ果ての姿だ。そして、今から相手をするのは暫定ではあるが護衛軍の元『特異能力者エゴイスト』の感情生命体エスターだ。それに彼は感情生命体エスターになる前はお前らよりも位の高い、二佐の香宮かみやこうだ。これ以上酷いものを見たくなかったら、黙って帰れ」


 もちろん、みんなはそんな傷痕を見て顔を顰め、特に白夜くんは自分の片腕の二の腕を触り俯く。確か白夜くんの両手は義手でできている、そんな話を黄依ちゃんから聴いたことがあった。


 そして、さっき衿華えりかちゃんが言っていたことは事実だった。


 しかし、みんなは自分がどんな辱めを受けようとも、どんな死に様を晒そうともそんなこと関係ないという、覚悟で皆は来ていた。誰も足を後ろに歩ませなかった。


「きっと、ここにいる皆んなは何かが怖いからここにいるんじゃありません。私達は人を守りたいからここにいるんです」

「そうか……」


 蘇芳ちゃんは軽く嘆いた後、眼帯を再び目に戻して、私たちに対してさっきよりも柔らかい声色でもう一度口を開いた。


「良かったよ。今年の奴は全員生半可な覚悟で来ている訳じゃ無いって事が分かった。その意思が分かっただけでも十分さ。じゃあついて来い、責任は全部私が取ってやる。ただ、お前らの事は必ずしも守りきれないと思うから何があっても自己責任だ」


 彼女はそういうと、駐車場の方に向かって歩き出す。おそらく、これから向かう所がとても遠く、温存する為にバスでも使うのだろうか。その予想は当たっていた。二十人は余裕で入りそうなバスがそこで待機していた。


「これから向かうのは静岡の伊豆半島にある下田市だ。そこで、それらしき感情生命体エスターの目撃情報が出た」


 私達は説明を受けながら、そのバスに乗り込んだ。


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