モノマネイド編 3話
すると、モノマネイドはその見た目から想像したような声を出す。
「!nuf#detalumis/aykk&aykk」
「声も同じじゃない……よくもまぁ他人の地雷を踏む事をいけしゃあしゃあと……あなたには特別一番派手なので苦しんで貰おうかしらッ!」
天照大将補はベッドに座りながら、バチバチという静電気のような音をたててモノマネイドを威嚇する。
「白夜さん……絶対天照大将補怒ってますわよね?」
「まぁそうだろう。妊娠中なのに夫は仕事で半年ほど会えていない、そんな時に夫の姿をした感情生命体なんて現れて、自分を騙してたなんて分かったら誰だってキレたくはなる」
「そこっ! 私の心情を説明するなっ!」
一瞬電気が迸り、鋭くバチッという音がなった。
「おっ怒らせないで下さいまし! 白夜さん!」
「事実陳列罪かよ」
白夜さんがぼそりと呟くと天照大将補が物凄い勢いで此方を睨んできた。
「たくっ。まず、どうしてこんな所に感情生命体がいるのよ?」
「それが、気付いたらそこに居たんですわ。会議をしていたら同じ顔の方が二人居て」
「なるほど、それじゃあ恐らく人を媒介としない自然発生型の感情生命体か……確かに病院が近いし、特異能力者だって数十人単位でいる。何が起きても可笑しくは無いから、可能性としてはあるかもしれないわね」
「でも今はそんな事より目の前のモノマネイドを!」
すると、天照大将補は首を傾げ言う。
「うーん、あぁこいつの名前ね。モノマネするイドそれでモノマネイドね。えっとそれなら大丈夫よ、あの人の特異能力はあの人にしか使いこなせないから、真似たパチモンなんかじゃ使いこなせないし何か出来たとしても、今みたいにせいぜい温度を下げる事くらいしかできないわよ」
確かに言う通り、特に病室に変わった様子はなかった。強いて言えば、二人が何かをする事によって普通の状態にしているようであった。それが温度の話に繋がるのであろう。
「それに、それくらいなら私の特異能力ーー『環境操作』で無効化出来る。後は雷でこいつを焼くだけ」
すると、彼女の周囲から雷が発生し、モノマネイドにそれが刺さった。だが、
「hhhhhha!erom/em@fo#erac&ekat」
モノマネイドは変身を解き、元の棒人間のような姿になりながら口を開き高らかに笑う。
「……気味が悪いですわね」
「変身は解けたようだが……」
「手応えがないわ……この感情生命体普通のとは違うわよ」
すると、病室のドアが開く。筒美さんと霧咲さんが到着したようだった。
「薔薇ちゃん、白夜くん、てるてるさん! 大丈夫? 生きてるよね⁉︎」
「えぇ、大丈夫ですわ! ですが……」
「水仙、不味い、また奴の姿が妹になった」
モノマネイドの方を見ると白夜さんとは別でまた霧咲さんが愉快そうに笑っている姿に見える。
「!aykk&aykk」
「……そこにいるのはまさかッ! 葉書お姉ちゃん⁉︎」
「嘘……お母さんがなんでこんな所に。さっき下の病室に居た筈じゃ……」
そして、筒美さんや霧咲さんも違うように見えているようであった。私から見ると霧咲さんが二人居て何か不思議な空間だった。
「そういうこと、こいつが例の感情生命体ね……なんて胸糞が悪い事をしてくれるのかしら」
「同意見よ、紅葉。こいつ、早死にしたいのかしら」
筒美さんが自分で自分の頰をパシンと叩くと突然またモノマネイドの姿が変わり、皆が驚く。
着物姿の全く人間とは思えないほど綺麗な人形のような少女。どこかで似た雰囲気の人を見たことがあるのかもしれないが紛れもなくそれは見たことの無い人だった。
「enoyreve♪yb☆deciton¥eb#ot/nuf&si◆ti」
「今度は誰だ……少なくとも俺の知り合いでは無い。ちなみに今奴は着物を着ている」
「えぇ、私もそう見えるわ」
白夜さんや天照大将補が比較的薄い反応をする中、筒美さんは身体中を震わせ怒り心頭に声を荒げる。
「今度は瑠璃くんに姿を変えた……? この感情生命体人の地雷を踏むのがなんでこうも得意なんだろうね? どう思う、黄依ちゃん?」
「えぇ、流石に私もあんたの気持ちを考えたらキレそうだわ」
「潰すよ、黄依ちゃん」
「はぁ……気を付けなさい。あの子の特異能力は敵に回すと厄介よ」
そして、今度はモノマネイドが可愛らしい声をあげ笑いながら何かを呟く。
「!elffuhs&ecnatsbus」
すると、まるで色絵翠さんのような瞬間移動で、視界から一瞬でモノマネイドの姿が消えた。