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どうか、この世界を私たちに守らせてください。  作者: 華蘭蕉
interlude──間奏曲『The seven flowers」
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間奏 鎌柄鶏*

 死喰い(タナトス)の樹が生えてから約200年、生き残った人間達はより進歩した技術、科学を用いて200年前よりももっと進んだ文明を発展させた。その文明の産物と呼べる、都会のビル群の『上』に私は立っている。


 それは私がこの世の食物連鎖の頂点であるという事を示したいからやっている事だ。


 一人称では、私と名乗っているが私は男であり、化粧をしている。上半身はいつも脱いで、男の象徴たる胸筋を見せびらかして街を歩いているのである。


 それで、警察に通報される事3回……全て私の事情聴取をしようとした警察官を皆殺し……いや全て食べ尽くして、その子達を樹にも運ばせず、存在を消した事さえある。


 人間のタンパク質ほど美味しいものは無い。豚肉のような触感から生まれるあの脂身は何度も何度も罪を犯しても得たいと思える肉なのだ。それに同類の命を殺しているという罪悪感もたまらない。


 男の肉、それも特に男性器が美味い。私が女のふりをしているのもそれが理由なのである。こちらから不審者の振りをすれば寄ってくるのは女ではなく、男であるから。しかも、不審者の相手をするのは大体鍛え抜かれた警察官。また、あの死にかけた時生存本能で勃起した男性器や死後硬直で固まった男性器が食べたくなってきたじゃないか……


 意外と自分の肉も美味いのかもしれないと思うとズボンの股間部分が膨らんだ。


 チャックをおろして出すとそこに立派なものが生えていた。私はそこに思わず齧り付き、引き剥がす。


「ぁあぁァァァァアア! おいじい! ざいごうぅあ!!!」


 舌に広がる鉄の味と、二つの玉のコリコリとした感触がたまらなく愛おしい。


肉体再生リジェネーションぅう!」


 私の特異能力エゴを使い、先程引きちぎった男性器を再生させた。


 ーー私の名は鎌柄かまつかげい


 私は先日、朔田さくた菊二きくじと呼ばれる研究者と協力……いや彼に対して自分が『樹教である』という嘘をついて接触した人間だ。


 私はほとんど何があっても死なないこの身体故に象徴として祀られている自死欲タナトス感情生命体エスターにシンパシーを感じ、樹教を信仰しているのであるが、彼女達から異端者として排斥された人間である。理由は私が自死欲タナトスサマへ奉納する筈だった死体に手を付けたからであった。


 そして、樹教とのよりを戻す為、そして教祖様に気に入られる為に特異能力者エゴイストを彼に作って貰おうとしたのだが……


「失敗したァァァァアア! 護衛軍ゥ! 許せない! あのメスガキどももいつか喰ってやるッ! 喰ってやるからなァァァァアア!」


 あの後、余計に樹教から異端者として扱われたのである。


 樹教の存在が、余計に危ないものであるという報道をされてしまったから。


 なので、そろそろ身の置き場所を考えなければ、人生を謳歌できなくなってしまう。


 柵から離れようとした瞬間、背後に殺意を感じる。


「誰よッ!」


 振り返る間も無く首を切り落とされた。姿の見えない誰かがこの私の首を一瞬で切り飛ばした。


「やはりこの位ではコイツは死なないか……」


 憎しみが篭っているが印象に残らない若い男の声。男の声がしたという事は、彼には男性器が付いているということ。なら、美味しいものが付いている。特異能力エゴの出力を上げてより肉体を回復させる。


「チッ……思った以上に再生が速い。失敗だ。やはりコイツには接触するべきではなかったか? しかし、放って置くのも不味い、ここは彼に申し訳ないが撤退か?」

「やっぱり誰とかどうでもいいから、貴方のち●ぽを喰わせなさいよォォォオオオ!!!」


 顔を引っ付けて、振り返るが一瞬だけしかその姿は見えなかった。機械的な仮面を被り、黒いコートを着た姿だった。更に、仮面やコートの所々に日本語とも英語とも違うであろう見たことの無い文字が一文字毎にバラバラに書かれているのが特徴的だった。


「消えた……? 胸糞悪い気分だわ。通り魔に刺された最悪の気分ね」


 ペタリとその場に座る。


「あぁ……お腹すいたわ。肉が食べたい」


 すると、屋上に通じるドアが開き、この建物の警備員らしき人が灯りを持って近づいてくる。


「あのぉ〜先程屋上から男性の怒鳴り声が聴こえてきたんですけどぉ」


 中年の男性くらいだ。少し太っていて脂身があって少しくどいかもしれない。


「ちょっと、貴方そこで何をしているんですか?」


 どんどん近づいてくる。


「ねぇ、そこにいる貴方……? 私今お腹が空いて苛立っているの」

「……は? 警察、事によっては護衛軍の方をお呼びしますからね?」


 そして、私の腕を掴む。


「取り敢えず! 事務所まで来てもらいますよ!」


 彼がその言葉を言い終わった瞬間、彼は自分の身に起きている事に気がついた。


「ヒッ! 腕がッ! 左腕がッ! 無い!」

「あら、脂身も美味しいじゃない」


 大量の血液が屋上を濡らす。


「ウワァァ!」

「ダメよ逃げちゃ。これから死喰い樹(タナトス)の腕が来る前に全部食べるんだから」


 彼はすぐに逃げ出そうとするが、それよりも早く私が動き、片足を剥ぎ取る。


「ギャァアア!」

「これで逃げられないわね」


 恐怖に顔を歪めながらジタバタと無い手と足を動かそうとするが、それでも彼は動く事が出来ない。


 そして……


「あっ膨らんでるわね」


 そう、生き物は死にかけると子孫を残す為に生存本能が働いて、無理矢理にでも身体が興奮してしまう。彼のズボンのチャックを下ろす。


「人肉嗜食の人ってよく男性器が美味しいって言うのよ?」

「やめろぉッ! やめろぉッ! 」

「それじゃあ、この世に生を生んだ神様に感謝して、イタダキマス」

「ぴっ……バァァォア!」


 それが彼の断末魔だった。

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