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どうか、この世界を私たちに守らせてください。  作者: 華蘭蕉
interlude──間奏曲『The seven flowers」
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樹教2

 力が右手に集まっていき、香宮かみやこうは確実で正確に特異能力エゴを放とうとするが、それがあたかも当然のように不発する。


「ッ……⁉︎ ……出ないのかッ⁉︎」

「残念。」


 彼はこの対面の不利さを理解して、すぐに礼拝堂から抜け出そうとする。が、既に扉の外側の廊下には私達の仲間が居た。


「キシィ! キシシシシシシシシシシシシシィィ! オマエ、モウ、ナカマ! ナカマ! オマエ、スグ、エスターにナル! クレナイサマがエスターにスル! ダカラ、ニゲルナ!」


 不気味な声を出し、自分の身体を形成しながら自分の目玉をほじくっている少女がそこに居た。


「なんだ……こいつはッ⁉︎」

「ズット、カンシシテタヨ?」


 急に現れた彼女に対し香宮洪は動揺し、私達の方へと少しずつ後退りをしながら、もう一度、特異能力エゴを使おうとするが発動すらしない。


「何が……起きてる?」

「彼女たちのことを紹介するわね。その子は幹部の真理亜まりあ。そして、貴方の後ろにいる子が茉莉花まつりか。」


 私が特異能力エゴで体を植物の蔓に変え、彼を拘束する。


「やっぱり、ずっと私達から情報収集するためにおとなしく捕まっている振りをしていたのねぇ。なめてくれるじゃない」

「……まさか、漆我しつがくれないお前……あいつの……死者の特異能力エゴすら使えるのか⁉」


 香宮洪は何度も特異能力エゴを出そうとするが何も現れない。彼が焦り、わけのわからないことを言い、錯乱していることからもかなり私達に恐怖していることが分かった。


「でもぉ……逃げてても、まりぃちゃんに捕まってたから、結果は変わらなかったかなぁ。さて、どうするまりぃちゃん~?」

「ゼツボウ! ゼツボウ! ゼツボウ!」


 彼女は嬉々とした表情を浮かべながら、甲高い声で鳥のように囀っている。


「だめぇよ~まりぃちゃん! 自分の感情に染めたらわざわざ護衛軍の特異能力者エゴイストを選んだ意味がないじゃない!」


 すると、紅様が私達に近づいてくる。


「茉莉花、香宮洪にDRAG(ドラッグ)を渡してあげて。」

「あっ了解です~」


 私は彼の拘束を解き、彼にDRAG(ドラッグ)を投げた。


「これは……いっ一体どういうつもりなんだ……?」

「これから、ゲームをしましょう。ルールは簡単、私達から捕まらずにこの建物から逃げ切れるかどうか。貴方に課せられるルールは一つだけ。そのDRAG(ドラッグ)を使うこと。」

「ふっふざけるな! そんなことしたら僕が人間でいられなくなるじゃないか!」


 声を震わせ怯えながら彼は言う。当然だろう。なぜなら、DRAG(ドラッグ)を使った人間は遅かれ早かれ、ほとんどの確率で理性のない感情生命体エスターになるのだから。


「それじゃあ、このまま止めどなくあふれてくる恐怖に抗えずに感情生命体エスターになるのかしらぁ? どちらにしろ、貴方はもう感情生命体エスターになるしかないのよ。あとは最後まで抵抗して私達から逃げ切って護衛軍に尽くすか、おとなしく紅様の支配下に入るかでしょ」

「ゼツボウシタカナ? カナ?」


 香宮洪は頭を抱え、声を震わせながら以外にも少し笑う。


「はぁ……はぁ……ははは……これを飲めばいいんだな? どうなっても知らないぞ?」

「ソーイウノドウデモイイカラ、ハヤクノメ!」


 彼は恐怖しながら、そう言うとその錠剤を歯で噛み砕きながら飲み込んだ。そして早くもDRAG(ドラッグ)の効果が現れたのか、彼の周りに包むように水が溢れる。やはり、DRAG(ドラッグ)は体の代謝経路を通らずにそのまま直に体の一部を変化、または付着しているらしい……だから効果がこんなにも早い。


 私は身体から植物を生やし、それらで分厚い壁を作った。


「はは……はははっ! 思ったより大丈夫じゃないか! 正気も保てている! もしかして、僕にはDRAG(ドラッグ)の耐性があったのかもしれない! なら、今からお前らを倒せばそのゲーム僕の勝ちだな」


 彼は急に人が変わったように喜びだし、精製したであろう水を物凄い勢いでカッターのように飛ばす。植物達で作った壁が一瞬で破壊され、彼がこちらに向かってくる。


「へぇ……なるほどねぇ。気分が高揚するくらい特異能力エゴが強くなってるんだ。ERG(エルグ)も周りの空気に頼らず無意識で自分で精製できるようになっている……見立て通りね。でも、やっぱり私達のこと舐めすぎじゃないかしら?」

「ナメスギ! ナメスギ!」


 破壊された植物達の壁を分解して、別のものに作り替え彼がそこに来た瞬間、大きな植物の口が閉じた。


「ハエトリグサ……なんだけど私の特別製でさ、その中の毛には水を吸収するように改良してるんだ。貴方がいくら水を生成しても、奪われちゃったら意味がないわよねぇ。貴方うかつなのよ」

「ウカツ! ウカツ!」

「さて、口を強引に開けられないように抑え込んでくれるかしら? まりぃちゃん」

「ワカッタ! アトデ、オイシイモノクワセロ!」

「はぁい」


 すると彼女の身体が左右に分かれて、それぞれ動き出し分かれた体積分がヒト型を作り、そしてそれぞれに目などの主要部位が一つずつになる。


「ヨイショ! ヨイショ!」

「セーノ! セーノ!」


 そして、彼が完全に植物の中から出られないようになった。


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