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どうか、この世界を私たちに守らせてください。  作者: 華蘭蕉
Act five 第五幕 lunatic syndrome──『感情の希釈』
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殺人鬼編 12話 かくしごと3

「……すいちゃんが婢僕サーバント……か」


 その事実を聴いたことで、色々腑に落ちた。翠ちゃんが瑠璃るりくんから離れられない理由だとかその辺りだ。それに蒲公英病の一件の時のはんちゃんから最後に何気なく言われた一言……『私たちとそこの双子。違いは何だったのかな』。


 あの言葉の真意が私への煽りではなく、只の疑問だったんじゃないかと考えると、あの後私が取った行動は間違いだったんじゃないかと少しゾッとする。


 或いは、初見で瑠璃くんを感情生命体エスターだと見破るほどの技術を持っていた判ちゃんなら、意図して言っていた可能性は大いにある。


 まぁ、その話を今考えたところで意味は無いし、この話について話してくれた瑠璃くんの方が精神的に辛い部分があるのだろう。


「そっか……」

「このことについて、知ってるのは僕と紫苑しおん姉さんだけ。翠ちゃん本人には死んでも言えないかな。だから、僕が時々翠ちゃんを実家に連れて帰って、『衝動パトス』を補充してる。今日、僕と翠ちゃんが護衛軍をお休みさせて貰ったのはコレが理由なんだよね」


 仕方ない理由だろう。幸い、今はそれ程緊急事態でもない。だけどそれなのに今ここに瑠璃くんだけがいるのが不思議だった。


「翠ちゃんは今は大丈夫なの?」

「うん、今は実家の方で寝てるよ。紫苑姉さんが僕ならまだしも翠ちゃんに手をかける事は無いと思う……。それでさ、ここからは本当に申し訳ない話なんだけどさ、紅葉に前さ……嘘ではないんだけど……騙すような言ったんだよね……」


 騙すような事……? 一体何のことだろうか……?


 少し瑠璃くんは頬を紅くさせて、恥ずかしそうに、そして申し訳なさそうに言う。


「……ん?」

「えっとね──うーんと……前、その、沙羅しゃら様が誘拐された事件あったじゃん……? その時、勢いで紅葉にちゅう……というかキスというか、口づけしたの覚えてる……?」

「え?」


 そういえばそんなことあった。あの時何か瑠璃くん言ってたっけ。その後に言われた事が本当に怖くて、何を言っていたか忘れてしまったけど。


「いや、本当にあれがファーストキスだったんだよ? だったんだけどさ……僕の場合ね、人というか翠ちゃんに『衝動パトス』を補充する方法ってのがさ……」


 あーそういえばそうだった。すごく嬉しかったのは覚えてるんだけど、その後『漆我しつがくれないは僕が殺す』なんて直接言われたから、疲れていたのもあって私ショック受けてその後気を失ったんだっけ。


「うん……?」

「……あのね、紅葉は察しがいいから知ってたかもしれないけどさ、コレって浮気になるんじゃないかなって……」


 えっと……? 何の話だ……?


「ほむ……?」

「僕さ、翠ちゃんとその……不可抗力というか……致し方無くだよ……⁉︎ その……ずっと裏で……えっちなこと……してました。すいません……」

「んんん?」


 その瞬間私の脳内の伝達物質が爆発した気がした。というか脳みそそのものが破壊された気がする。


 あまりにも衝撃的すぎて私の身体は何故か宙に飛び跳ね壁に背中を強打した後、もう一度ベッドの上に戻りうつ伏せの体勢となり倒れ、ベットに頭を擦り付けながら、立ち上がれずにいた。


「紅葉……えっ⁉︎ 大丈夫⁉︎」

「わーーーーーー! 嘘ついたら本当になったー! 何も知らない! 何も聴いてない! 記憶喪失! 若年性アルツハイマー!」

「現実逃避しても駄目だよ……というか、紅葉も衿華に対してやってたよね?」

「……なんで知ってんの⁉︎ てか追い討ち? えっ! まじで?  今それ言うの? 酷くない? ぎゃぁぁあ!」

「いや、ひと目見れば分かるって。どうせ、DRAG(ドラッグ)関連なんだろうから責められないんだけど……」


 さっきまで自分の首を絞めて自殺しようてしてたのに清々しい程の追い討ちだった。その表情はかつて私自身が衿華えりかちゃんにしていたような表情そのものだった。


 さっきから上の部屋で二人の女の子がよろしくやってる中、精神面が不安定になってる時に好きな人が来たと思ったら、ようやく寝取られ報告ですか。


 ハイ、そうですか。非常に非情ですね。まぁ、自業自得なんですがね。


 一回叫び終わると、私は深呼吸を行った。


「落ち着いた?」

「うん……んで、黄依ちゃんの喘ぎ声がさっきからうるさいねっていう話だっけ?」

「……⁉︎ ちょっ! なに聞き耳立ててるの! さっきから少し気になってはいたけどさ! 放っておいてあげようよ! 今は翠ちゃんの話なの! 真剣に聴いて!」

「ほむほむほむほむほむ……」

「お願いだから……! ふざけて言ってることじゃないの!」


 正直、普通に知ってはいたけど、完全に衿華ちゃんの一件で人との色恋沙汰にトラウマができてしまった私はこの事実を正しく認識しようとしていなかった為受け入れる事ができなかった。が、流石にコチラも酷い対応をしすぎたのだろうか。また、瑠璃くんが若干涙目に戻ってきたのが見えた為、反省して声色を元に戻した。


「……ハァ。別に私がとやかく言える立場ではないから、許すも何も、私になんて罪悪感を抱く必要ないよ?」

「……それでも黙ってたら黙ってたらでバレた時今みたいに気が動転するか、怒るでしょ?」

「それはもちろん」


 我ながら理不尽極まりない言動である。だが、瑠璃くんも今まで誰にも相談できずにいたから色々辛かったのだろう。


 よくもまぁ、こんな事本人に隠して生きていけるよ。


「……それで良い機会だったから紅葉に言ってみたの。分かったでしょどれだけ僕が辛かったか」

「なるほど……まぁ……そうだね。で、その話をする代わりに私が皆んなに隠してる事言って欲しいんだっけ?」

「うん。君がそこまでの『自死欲タナトス』を放ってる理由をね」

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