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どうか、この世界を私たちに守らせてください。  作者: 華蘭蕉
Act five 第五幕 lunatic syndrome──『感情の希釈』
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プロローグ デストルドーの恵投13

 通常と言っても他人の特異能力エゴが使えるという事自体例外的な話に近いのではあるが、人間が他者の特異能力エゴを使う為には三種類の方法がある。


 第一に正攻法にして確実に失敗する手段──『DRAG(ドラッグ)』の服用だ。過去それを成功させ生還したのは筒美つつみ紅葉もみじただ一人。あの方法を使えば確かに特異能力エゴを得る際の『通過儀礼イニシエーション』を追体験できる為、使用の際はリスク無しに他者の特異能力エゴを発動する事ができる。ただし、ヒトとして生活出来るかは甚だ疑問ではある。


 そして特異能力者エゴイストの遺伝子を直接取り込む方法。私はこれに2種類あると考えている。


 まずは特異能力者エゴイストの遺伝子を自身の身体に取り付ける場合。これに当てはまるのは目の前に居る柘榴ざくろ鎌柄かまつかげいだ。この方法は特異能力エゴを作り出す機構は身体の中にある為理論上使用可能になるという訳なのだが、使用者と持ち主の相性により特異能力エゴの出力が変わってくるという問題がある。さらに他者の遺伝子を自身の身体に取り込む際に起こるリスクを打ち消さなければいけないというデメリットがある。その為、発動自体に大きな体力を使い、リスクを払うものでもあるのだ。通常の精神ではまず出来ないといった方法だ。


 そして、最後に私やみさお白夜はくやの様に他の特異能力者エゴイストの遺伝子を体外に組み込む方法だ。方法は簡単。他者の肉を喰らった蟲と私の肉体から作った蟲でつがいを作りそこから子供となる蟲を発生させる。自身の身体の一部にするのではなく、この様に私自身がその苗床として機能するだけであれば、一切のリスクなく他者の特異能力エゴを発動する事ができる。


 厄介な点と言えば蟲を増やせば増やすほど体力消費が激しくなるという事、そして『通過儀礼イニシエーション』を通じた特異能力エゴの発動ではない為出力がやはり低くなってしまう。さらに使った蟲が蠅でなければより多くの体力を消費する。それらを除けば数秒で特異能力エゴを持つ蟲を無尽蔵に作る事が出来る可能なのである。


 その為、私以外の能力者が他者の特異能力エゴ通過儀礼イニシエーション無しに使えるとは思わない。


 よって、擬似的に他人の人格を形成する『人格形成フォーミングアイデンティティ』が能力の発動に必須となってくる。


 さらに柘榴の場合、他者の肉体のパーツをそのままくっつけて利用している為、実質死体と感知されるそれらを自らの身体として使用する為には『死体操作マリオネットコープス』を使い『死喰い樹(タナトス)の腕』から逃れなければいけない。


 これらの仮説が正しいなら、この時点で使わなければいけない特異能力エゴはすでに二つ。


 そして、多数の特異能力エゴを同時に使う為の演算をする能力として『知能向上インテリジェンスインプルーブメント』も使用している。そうなれば必然的に最大4つか5つの枠の特異能力エゴを3つの特異能力エゴで埋めなければいけなくなってしまうのである。


 だから、何か一つ別の特異能力エゴを使わせた場合、攻撃に特化した『陰影舞踏シャドウダンス』のような特異能力エゴによる理不尽な攻撃を二つ以上使われる事はない。一つ攻撃が来ると分かっているのであれば今の私ならそれを避ける事はできる。


 即詰みにならないとはこういう事なのだ。だが、逆に言えば、もし彼女が同時に使える特異能力エゴの5つだった場合何か特異能力エゴを使わせなければ危険が降り注ぐのはこっちである。


 そして、昏睡状態となった筈の柘榴ざくろは目を開けてこちらを見つめて再び歓喜の声を私に浴びせた。


「まさかここまで初見で対策されちゃうなんて、金剛纂やつでちゃんは私が期待していた以上の人ですね〜」

「……世辞は要らないわ。それでどうするの? 貴女が抵抗せず私に付いてこればこれ以上の危害は加えないわ」


 すると柘榴は少し口に手を当てて考える。


「そうですね〜それも良いと思いますよ〜。でも……私達の関係性の始まりとしては少し刺激が足りない気がしませんか〜? それに私の正体は分かったと思うんですけど、まだアナタは私の目的を言い当てていないんですよ〜。だから、私はアナタに理解してもらうまで攻撃はやめる気はないですよ〜」


 あくまでも彼女はこのまま戦闘を続けるのがご所望のようだ。


「そう……一時の快楽の為に貴女は自身の命を棄てるのね」

「ふふふ〜私がアナタに惨敗する。そんな結末も良いかもしれませんね〜。アナタに蹂躙され、命を弄ばれ、最終的に蟲達の苗床にされる。ふふふ、あははは、そんな体験きっとアナタにしかしてもらえないでしょうね〜」


 彼女は自分の命の危機に立たされているというのに未だに一切表情を変えずに私の瞳をずっとうっとりと見つめている。


「きっと、どんな結末になっても私はアナタの事を受け入れますよ〜。その逆もまた然りです〜。だって、それが私たちにとっての幸せですから〜」

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