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どうか、この世界を私たちに守らせてください。  作者: 華蘭蕉
Concerto of Side Stories──『花弁たちの協奏曲』
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アマランサストリコロール 4話

 私は指をさされた、自分の身体を見つめる。そういえば、生まれた時からずっと裸だったけど、今は病院服を着ていた。


「服……?」

「あぁ……そういえば、裸で倒れてたんだったね。って違う違う。その話じゃなくて、キミのその身体の病気の事についてなんだけど……」


 病気……と言われて思い浮かぶのは気を失う前までの内臓の痛み。だが、不思議な事に今ではそれがさっぱりと消えてしまっている。


「そういえば全然身体痛くない」

「それは私達が治したからだよ。けど、感情生命体エスター由来の病気はどれも厄介なものね。根絶したと思った矢先にこれだもの」


『また、感情生命体エスター……? 私が知らないだけで一般的な言葉なのだろうか。それに根絶って……』


 私が紅葉もみじの言葉に不思議そうに反応すると何か違和感を持ったのか、私に質問する。


「……もしかして蒲公英病の事も知らない?」

「たんぽぽ……?」


 何か胸騒ぎがする言葉の響き。


「そう、蒲公英病。通称『空気感染する癌』とも呼ばれた病。キミはその病原体を持っていたの」

「一時はその病のせいでキミの命すら危険な状態だった。だけど、僕達なら直接触れればそれくらいの状態からでも治せるんだ。だから、これも治療の一環。まだ完治はしてないから、腕は離さないでね」

「えっ? あっはい」


 二人は私の繋いだ左右の手をそれぞれ軽く持ち上げた。たったそれだけで癌なんて大病治せる筈ないと思うのだが……


 だが、彼女たちの発言を裏付けるように彼女達の手からは何かしらの強いエネルギーを感じる。


「でも、キミの危篤さはそれだけじゃなかったんだよ」

「そうそう、生まれつき物凄く身体の弱い人みたいな身体の作りで……」


 紅葉はこの部屋……つまりは多分病室になるのだろう。ここにある鏡を指差して私に自分の姿を確認させた。


「そっちの方を全部正常にするのは僕や紅葉の力でも難しいと思う。善処はするけど、遺伝子まで異常が出ちゃってるとなると、それこそ何か代償なりを払わないと難しいと思う」


 白く腰まである長くサラサラな髪に、鏡で見ているから実際には逆だが右が赤で左が青のコントラストを持つ瞳。そして、風が吹けば折れてしまいそうな程に細い四肢。血管が浮き出てしまいそうなほど色白な皮膚。予想はしていたがやはりそうであったか。


「……」

「アルビノだね。私は初めて見たよ。まさか、体全体の毛が白色なんてね」


 だが、私は自分の容姿に対してまた別の感情を抱いていた。


「……きれい」


 そう、あの醜い親から生まれたとは思えないほどの色合いの綺麗な身体をしていた。おそらく、私の事を治療してくれたこの二人も物語に出てくるような絶世の美少女と呼ばれる位には見た目がよいが、彼女達と並べられても引けを取らないくらいには条件が整っていた。だから、感動というか何というかそれ以上言い表せられない位には嬉しかったのだと思う。


「……ふふ。確かにびっくりするくらいキミって綺麗な見た目してるよね」

「ほんと、作り物の僕の顔がまるで存在否定されてるみたいに整ってる。オッドアイだし、アルビノだし。紅葉みたいな空気を変える『衝動パトス』みたいなのも出てるし」


 私は二人からの賞賛を素直に受け止めて、鏡を見ながら顔を覆い赤面する。私のそんな反応に二人はまた可愛いと言い私をオモチャみたいに扱おうとしてきた。


 そんなやりとりをして、数刻経った頃ふと紅葉が私に声をかけた。


「どう? 名前思い出せそう……?」

「……まだ、分からない」

「そうだよね。でも、素性が分からない以上、ここまで強い『衝動パトス』普通の人間には絶対に出せないからキミは機関に保護されることになると思うよ」

「機関……?」


 また聞いたことのない単語が私の耳を貫いた。


「大丈夫、怖いところじゃないよ。それに私達も時々遊びに行くから」

「うん。それにね、もしキミに特異能力者エゴイストの素質があって、機関でいい成績を取れば僕達と一緒にこの護衛軍で働く事ができるよ」

「……っ!」


 瑠璃の『エゴイスト』という言葉で脳の中に電流が走ったような感覚になった。


「エゴ……イスト……それって……超能力者の……⁉︎」

「……へぇ。特異能力者エゴイストって言葉の意味は知ってるんだ。何か……面白いね。この言葉自体最近世間で出回り始めたばっかなのに」

「この子にはきっと何かあるよね。ねぇ、キミはどこから来たの? もしよかったら教えてくれない?」


 彼女達の言葉が入る度に頭の中にパチパチと火花が起こり思考が真っ白になりそうになる。そして、本能が私に口を開かせ、私が知っている唯一の情報を音として出した。


「私は……鎌柄かまつか……げいから、産まれた……」


 すると、二人は口を閉じて考えるように黙る。


「……それホント? いや、この反応は本当っぽいね」

「だけど、僕の憶えているアレとは細胞の構造がかなり違う。一回分解した事あるからわかる。もし紅葉から聴いた鎌柄鶏のことと、この子が言っている事が本当なのであれば……」


 瑠璃の顔からは先程迄の笑顔が消える。


「──この子は『女王の器』なのかもしれないね」




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