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どうか、この世界を私たちに守らせてください。  作者: 華蘭蕉
Act one 第一幕 死ねない世界の少女達
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第一幕 17話 護衛軍大将補佐3

「ぐ……衿華(えりか)ぁ!」


 私、霧咲(きりさき)黄依(きい)は恐らく先生の特異能力(エゴ)波形干渉(ウェイブインターフィアレンス)』によって攻撃を受けていた。先生はもう自分の勝ちを確信してはいるが先程の衿華の攻撃を受けまだ完全に自由に動けないだろう。


 勝利を捥ぎ取るなら今だ。


 だかしかし、身体が重くて動けない。動けたとしても、『僻遠斬撃(リモートインパクト)』はもう使えない。さらに、身体を動かそうとする度に心が折られてしまう程の念が先生の特異能力(エゴ)にこもっていた。


 これほど自分が無力だと感じたのは人生で何度目だろうか。


 父さんの時、母さんの時……指を折ることすら許されない業が私の背中に積み重なって、今日もまた自分の無力さに絶望した。


 でも、そのおかげで私の特異能力(エゴ)を応用する方法を思いついた。


 今、体が重くなっている事を考えると恐らく先生は重力に干渉しているのだろう。


 それなら私の特異能力(エゴ)速度累加(アクセラレーション)』で重力加速度を操る。


 しかし、加速しか出来ない私の特異能力(エゴ)ではこの状況を切り抜ける事は出来ない。より、身体を重くするだけだ。


 けれども、水平方向に少しでも動ければ先生の元まで辿りつけるかもしれない。それには音速を超える程までに自分の身体を加速させなければいけない。攻撃すらする余裕なんて無いし、痛みを負う覚悟じゃ無いといけないのはもう分かっていた。


 衿華や先生が地に伏せっていない事を考えると、二人がいる40メートル先には特異能力(エゴ)は使用されていない。捉える事さえ出来れば勝つ事は出来る。


 先程、衿華が暗い空間に引き込まれていた際、私は何もできずにいた。


 今度は私がやらないと。


 もう一度、身体に力を込めて精一杯身体を横に動かそうとする。


 衿華がこちらを見て気づいたのか先生と会話し、気をそらしている。


「はぁ……はぁ……衿華では先生に敵わないかもしれません。衿華は弱虫で、痛いのが怖くて、一人ぼっちはもっと怖い……! ですけど、私達はまだ諦めてないですよ……! 私達は追いつかなきゃいけない人がいるから!!!」


 足の指が身体全体数センチを押す。


 重力に押しつぶされていた身体が解放されて、走っている時の姿勢に戻る。そして、瞬きすら終わらない刹那に先生の腕を掴むことは終わっていた。


「『速度累加(アクセラレーション)』ッッ!!!」

「ッ!?」


 加速した私の身体の力を全て重力加速度に割り当てる。すると先生の身体は重力に押しつぶされて糸が切られた人形かのような動きで、再び地面に伏っする。


「はぁ……はぁ……これで後1発加えればッ!」


 これで勝ちだ! ここで私が動けなく無くなっても、数秒呼吸を整えた衿華が一発入れてくれる。


「まさか二人がここまでやるなんてね。成長したよ、本当に!!」


「えっ……?」


 だが瞬間、先生は忽然と視界の中から消える。


 まさか、重力場の操作と光の波を同時に……!


「心を折るようで悪いけど、君達の攻撃はまだ僕に届かない。でも、攻撃をする事を諦めてでも僕の動きを止めようとした。その結果、二度も触れられ、動きを止められた。今だってそうさ、僕はただ光を捻じ曲げて姿を隠しているに過ぎない」


 どこからか、拍手が聞こえる。


「君達は本当に勝利をあげないといけないくらいの成長を見せてくれた。僕の伝えたかった事、言わずとも新たな特異能力(エゴ)の使用方法として昇華してくれたしね」


 気づいてしまった。この人はまだ手加減をしていた事。まだ上がある事。私達の成長の為にあえて重力場の操作にこだわった事。


「先生、まさかこの為に手加減を……!」

「手加減じゃないさ、僕があげられる先生として最後の講義だよ。そして、もうそれは君の力さ」


 衿華も、私も、特異能力(エゴ)の使いすぎと先生の重力操作に囚われて、ほとんど身体を動かさない状態だった。


「そうだね……君達に敬意を評して本気を出した僕の力の一部を見せましょうか」


 姿を現した先生はすでに私の特異能力(エゴ)の支配下から外れており、堂々とした立っている。


「『波形干渉(ウェイブインターフィアレンス)』最終楽章『眠り』」


 頭に霧がかかり思考能力が落ち、まるで脳の行動が止まって行くように感じた。


「これで君達は行動不能だ。良く頑張ったね」

「えりか……たち……は……ま……だ……」

「まけ……て……な……い……」

「えぇ、君達の勝利ですよ、だからお休みなさい」


 そして、脳の処理が完全に止まったかのように私達は意識を失った。

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