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どうか、この世界を私たちに守らせてください。  作者: 華蘭蕉
Act four <第四幕> Dandelion──花言葉は別離
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エピローグ 1話

蒲公英ダンデライオン』の討伐から数ヶ月経った後だった。色々と落ち着いた事、良くなった事、逆により警戒しないといけなくなったこと、様々な変化は見られた。


 私──筒美つつみ紅葉もみじ感情生命体エスターを討伐した功績から三佐官から二佐官への出世を果たした。


 昇進したからといって今までと変わる事なんてほぼ何もないと思っていたが、正式に瑠璃るりくんやすいちゃんが私の直轄の部下となったという点ではとても良いものとなった。今までは慢性的な人数不足や人との相性もあり、即席な構成員で任務に取り掛かる事が多かったが二人が入った事でそれも大きく変わった。


 でも、この人員編成の変化の一番の原因は瑠璃くん達が要因ではなく、黄依きいちゃんと薔薇ばらちゃんが互いが互いを許し合った事であった。二人の間で何があったのか詳細は分からないが、本来罹っていた筈の『蒲公英病』が治っていた事からも半分くらいは想像のつく話だ。


 ともかく、二人の仲が改善されたことによって私の班は瑠璃くんと翠ちゃんを迎えて、白夜はくやくんの班は薔薇ちゃんと黄依ちゃんを迎えて行動できる様になっていた。表ではまだあまり二人は仲良さげには見せないが、順調にその距離を詰めていっているらしいと、瑠璃くんに聴いた。


 瑠璃くんがそんな事を知っている理由はどうやらいつの間にか彼自身が薔薇ちゃんと仲良くなったらしく、彼女に色々と黄依ちゃんとの関係性について助言をしているらしいの事であった。


 さて、話を戻すと『蒲公英ダンデライオン』を殺害した事によって蔓延していた『蒲公英病』は無事収束を迎えたのだった。


 発症者の体内に残存する病原体ERG(エルグ)も護衛軍が私達……特異能力者エゴイストを駆り出してまでしっかりと対策を取り、発症前患者の捜索又はその治療を積極的に行った為、今では一般人も街中を自由に歩けるレベル迄に戻っていた。


 勿論それは様々な協力や犠牲が無かったらできなかった事だ。


 そして残念ながらあの会見から、成願じょうがん大将や祖父ししょうを叩く人も増えた。本来なら、『蒲公英ダンデライオン』をたった一人であそこまで追い詰めた彼にこそ賞賛を与えられるべきだし、成願大将も最終的には此方の意に沿う形で蒲公英病の撲滅の為裏でかなり尽力してくれた。


 彼らは私達、『特異能力者エゴイスト』の人権を守るために今まで秘密裏にこれを動かしてきた。だから民衆に叩かれるべきじゃない、そう思った私は彼らの名声を元の通りに戻すために度々メディアに露出し説明する事でなんとか対策を取った。


 結局、大将を叩くような声は時が解決し徐々に消えていった。だが、人は話題を欲する生き物だ。特に暇な人々にとって何か退屈凌ぎに熱中できるモノはないか。それを考えた結果なのだろう、熱の矛先は私達であった。


 特に私は『蒲公英ダンデライオン』を討伐した英雄として市民達から祭り上げられてしまったのだ。


 一時期では最早私の仕事は人類を守る為に戦うのではなく、テレビで何かをするものとなっていた。なるべく、報道番組以外出ないようにしていたが、何故かバラエティ番組のオファーが来た時は頭を抱えてしまったのが懐かしく感じるほど時間が経っていた。


 そして、それについて青磁せいじ先生は


『お前やすいは……つうか特異能力者エゴイストは何故か知らないがみんな顔が良いからな。そういうこともあるだろ。そうだ、いっその事アイドルとか目指してみたらどうだ? 普通に人気出るかも知れないぞ』


 それを聴いた私は重く溜息をついた後


『勘弁してよ、何の為に私がここに居るの? つうかそれ、『自分の顔もいいんだぜ』って言ってんのとおんなじだからね』


 と返し再び頭を抱えた。


 結局、バラエティ番組とかには出なかったにしろ、特に私や翠ちゃんは自分で言うのはあれだが、今や一躍時の人となっていた。


 男性人気だけでなく何故か女性人気を得て、今では成願大将や祖父ししょうよりも外に出歩く事が難しくなったかもしれない。


 外に出歩き、私の事を知っている子供に会うと何故か特異能力エゴの披露を強要される。まぁ、気持ちは分かるがタネが割れると厄介だからやめて欲しいと思いつつ、でもやっぱり将来護衛軍となる可能性がある少年少女達にこの仕事に対して憧れを持ってもらう事も重要だからと結局、一般人にも可能である筒美流奥義やらを彼らに見せているのである。


 それらに目をキラキラと輝かせて見ている彼ら、彼女らを守る為に私達は日々闘っているんだなと実感はできたし、これからも守っていかなければとも思っている。だけど何か、彼ら彼女に対して罪悪感に似た感情を抱く事もあった。それは恐らく、特異能力エゴと偽って別の事をしているから。


 そして、私自身が未だに死にたいと心の奥深くの方では叫んでいるから。こんな私が純粋な子供達に触れて、子供の憧れの対象となるのに良い事なんて何ひとつないと思っていた。


 こんな思考に至ってしまう原因はこれが衿華えりかちゃんへしてきた事と一緒だから。


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