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どうか、この世界を私たちに守らせてください。  作者: 華蘭蕉
Act four <第四幕> Dandelion──花言葉は別離
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蒲公英病編 47話 ダンデライオン3

 さて、問題は『蒲公英ダンデライオン』本体の居場所だけど……


 そんな事を考えていると瑠璃くんが私に質問する。


「ねぇ紅葉もみじ、その葉書はがきさんと同化した状態ってどれくらいまで続けることが出来るの?」

「えっーとね、瑠璃くんに治してもらってからは筒美流の破ノ項以下を使ってる時は気にしなくていいレベルにはなったんだけど、急ノ項とか終ノ項とか使うとやっぱりまだ危ないかな」


 お姉ちゃんの身体を用いて筒美流を使うことにより排出される過剰な ERG(エルグ)死喰い樹(タナトス)の腕を引き寄せる。なので、基本的にはこの状態──『同化アシミレーション』では目的のある時以外高出力の技は使わないようにしている。


「防御術の『火樹銀花かじゅぎんか』や対人術の『鳥語花香ちょうごかこう』を使わないのはそれが理由なんだね」

「うん、この状態ならすぐその二つも発動出来るし、結構体力使っちゃうからね。たとえ不意打ちされても巻き返せるこの状況なら使うよりも、確実に相手に有効的な事できるときの方がいいかなって思って」

「なるほどねー」


 瑠璃くんは軽く返事した後何かを察知した様に反応を出した。


「……索敵範囲内に複数の婢僕サーバントらしき気配と本体の気配を確認したよ。同時にデコイの方の感知にも強い熱源を発する婢僕サーバントが引っかかった」

「概ね予想通りに事が運んだね」

「紅葉ねーさん、戦力が分散してる今のうちに本体を叩く? それとも分散した方の戦略を徐々に削っていく?」


 私は少し考えた後より確実性のある方を選ぶ。


「私達がこうしてる間にも苦しんでいる人は沢山いる。近くで祖父ししょうが待機してるから、あの人ならどんな状況でも覆せるし、もし私達が失敗しても引く準備は完全にできてる。予定通り、本体に発信機をつけることだけを考えよう」

「了解」

「おっけー」


 二人が返事をした瞬間、婢僕サーバント感情生命体エスターが私の索敵範囲内とぶつかり合った。相手の中に一人確実に筒美流の使い手がいた事が分かった事からもそいつらは『蒲公英ダンデライオン』である事が分かった。


「この近づき方は……まずい気付いてるかも」

「……そうだね。方法はどうやってるか分からないけど、慎重にこっちを探ってきてる」

「一旦引く? 準備は出来てるよ」


 翠ちゃんは突撃銃アサルトライフルを二つ両手に構える。


 その言葉とは裏腹な行動は彼女の本能と戦闘における鋭い嗅覚がそうしたのだろうか、結果的には正解と言えるものであった。


 彼女が銃を構えた瞬間、正確には構えた終わる何コンマ秒前。異常だったのは相手のスピードだった。たった単騎で私の懐まで入る人型の婢僕サーバント


「ッ⁉︎」


 咄嗟の防御術による鎧の構築は完璧では無かったにしろその攻撃の威力を9割以上打ち消し、数秒間その拳を掴んで離さなかった。しかし防御術により構築した鎧は穴を開け、『痛覚支配ペインハッカー』を使わなければ蹲ってしまっていたであろう痛みが衝撃となり私を貫いた。


 同時に翠ちゃんによって放たれた銃弾はその婢僕サーバントに当たるが体内にめり込まず、肉の薄いところで受け流され、転移には失敗してしまった。だが、その婢僕サーバントを一旦ある程度の間合いから追い出す事には成功した。


「チッ……あのタイミングで避けられた」

「……ありゃま。凄い反射神経だ。足に攻撃喰らっちゃった。まさか全員こっちに居たなんて。ていうか人数も三人だし、しゅうくんはまんまと釣られちゃったって訳だね」

はんちゃん……!」


 再び完全な防御術を展開し私は桜色で花柄の美しいドレスに包まれる。


「紅葉傷は無い?」

「大丈夫、というか手加減された……!」


 どうやら、判ちゃんは私を殺したくはないらしい。だが、本気じゃないのは私も同じ。私は戦闘態勢に入り全ての身体能力を最大限まで向上させる。


「ふーん、面白いことするね紅葉ちゃん。まるで葉書お姉ちゃんみたいだ」


 判ちゃんの声が聞こえた次の瞬間には私への猛攻が始まっていた。しかし、筒美流を全力で使っても私守る事に精一杯だった。私を責める彼女の表情からは未だ余裕が感じられる。


 勿論、翠ちゃんも銃弾を撃ち応戦するが全く彼女には当たりすらしない。


『このままじゃ押し切られる……! 『速度累加アクセラレーション』』


 相手の動き自体は捉えられている。なら、手数を増やせばいいだけ。その単純明快な思考は私を窮地から救う。


「おっ」


 手数で不利になった判ちゃんは私の変化に気付き一瞬で引く。


「……なるほど! あはは……アハハハッ! 特異能力者エゴイストになったんだね! 紅葉ちゃん!」


 嬉しそうに笑う判ちゃん。それに反して態勢を立て直す私。まだ全力を出してないにしろ、最初の予定では私は判ちゃんと朱くん二人を相手に時間稼ぎをする役だった。こんなんではその役目に徹することはできないだろう。


「うん、納得したよ。その状態なら紅葉ちゃん一人で私を倒せるよね。まだ強そうな特異能力者エゴイストの女の子がもう一人いるし、そこの感情生命体エスターはさっきからずっと様子見。一番不気味。この戦いにくい空間はソイツのせいかな?」


 判ちゃんは瑠璃くんに照準を合わせる。しかし、瑠璃くんは無防備に睨み返すだけであった。


「瑠璃くんッ! 逃げてッ!」


 私の声が届いた頃にはもう瑠璃くんへの攻撃は始まっていた。範囲内ちゃんが先程見せた手加減とは違う、当てれば即死不可避の猛攻。


 だが、空を切る拳の音と瑠璃くんの声が聞こえる。


 瑠璃くんに触れる前に判ちゃんの攻撃は空中ではずれ、判ちゃん自身もなにが起きているか理解していなかった。


「──『絶対領域パーフェクトテリトリー』。君には消えてもらうよ」






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