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どうか、この世界を私たちに守らせてください。  作者: 華蘭蕉
Act four <第四幕> Dandelion──花言葉は別離
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蒲公英病編 24話 不治の病の処方箋4

 そう、『蒲公英ダンデライオン』の人間体の顔は確かに衿華えりかちゃんに瓜二つであったらしいのだが、黄依きいちゃんと薔薇ばらちゃん曰く、雰囲気やその他諸々の衿華ちゃん本人だと感じられるものからは一切似ている要素はなかったらしい。


「まぁ確かに奴が『蒲公英ダンデライオン』なら、数十年も昔からあるこの病気がある筈が無いからな」

「意思疎通もできたみたいだよ。『理性』があるって事はやっぱり瑠璃るりくんみたいに仲間にできる可能性はあるのかな?」


 すいちゃんは青磁せいじ先生に尋ねる。


「……無理だろ。好意的に接したいならそもそもこんな病気流行ってない」

「そうだよね……」

「だが、霧咲きりさき達の話によると『蒲公英ダンデライオン』は『死喰い(タナトス)の樹』に対して猛烈に怨みを持っているらしい。その理由は分からないが、感情生命体エスターの元となった人間が、『死喰い(タナトス)の樹』の誕生と関わりのあった可能性は高い。護衛軍としての視点から見るのであれば協力ではなく、尋問の対象とはなりあるが……」


 問題は、『蒲公英ダンデライオン』に樹教が既に接触した場合。


 樹教の教祖、便宜上『タナトス』と名付けるが奴に ERG(エルグ)を媒介とした攻撃方法は効かなかった。つまりは、エネルギーの源となる ERG(エルグ)を操作することができる。そしてそれが意味するのは、90%以上を ERG(エルグ)DAYN(ダイン)で構成している感情生命体エスターを操る事ができるという事だ。この力の出自は不明だが、おそらく奴自身の特異能力エゴの一種であると考えられる。


「樹教が関わっていた場合、既に『蒲公英ダンデライオン』は漆我しつがくれないの手に堕ちているというわけだよね」

「だから、今はもう追跡から討伐へと護衛軍の上層部も考え方をシフトさせているんだねー」


 すいちゃんは納得がいったように声をだした。


「……結局話が振り出しに戻るが、これだけ厄介な可能性が孕む相手だ。討伐も確実に行わなければいけないがかなりリスクのある。だから、もう一つ別のところで安全策を取るなら俺様の作った特効薬がどれだけ効果を発揮するかによって今後の死者や討伐においての難易度が変わってくる」


 確かに、蒲公英病による死者が増えるたび、その婢僕サーバントになってしまうのなら、同時平行で蒲公英病による死者を減らさなければいけない。


「だが、俺様が作った薬は何か一つ足りない。悪性腫瘍に付随する ERG(エルグ)の浄化作用や除去作用があるのにも関わらずだ。実際に完治したパターンと何処が違うのか……」

「それも含めて"おおかた"なんだね」


 なら、完治したパターンを洗い出していけば良い。


「私が『焔』で『痛覚支配ペインハッカー』をした子は結局細胞を取り出した手術をした後完治したみたいだよ。でも、手術したのが止水しすいさんだから彼じゃ無いと出来ないくらいの物だと思うよ」

「へーお義兄さんに会ったんだ」

だい義兄さんか……あの人なら確かにどんな劣悪な状況でも蒲公英病の腫瘍だけを取り除けるだろうな……」


 青磁せいじ先生は考えこむと何かに気づいた。


「……見落としてたな。おい紅葉。お前特に蒲公英病の治療受けてないのに、臓器移植で助かったよな」

「えっ……あぁ……そういえば」

「あの時紅葉の手術したのも題義兄さんの筈だ。題義兄さんというポイントが大事なのか……? いや、それだと確実に発症したであろう霧咲黄依と水仙薔薇が蒲公英病の症状すら無いのが説明がつかない」


 すると、青磁先生が立ち上がり、翠ちゃんに向かって言う。


「ジジイ達を連れてきてくれ。筒美つつみ封藤ふうとうの方もだが成願じょうがんの方も頼む。よろしく頼んだ」

「……分かった、場所分かんないから5分くらいかかるけどいい?」

「ああ、急ぐ必要はないからな」


 すると、翠ちゃんはすぐ特異兵仗アイデンの方のメイド服を転移させ身に纏ったあと瞬間移動した。


「さて、此処からは関係者だけの話になる。だから、翠には出て行って貰った。俺様が樹教の内通者だって話はもう理解してるよな」

「うん、何かそっちであったの?」


 すると腕を組み溜息をつく。


「一つ、護衛軍内に俺様以外の内通者がいる事。二つ目、俺様が樹教の内通者になる為の条件が護衛軍所属の特異能力者エゴイスト複数人のDRAG(ドラッグ)を渡した事。三つ目、蕗衿華の特異能力エゴの本質を奴らは理解しておりそれを紅葉に持たせようとした事。四つ目、『蒲公英ダンデライオン』は既に『タナトス』の手中に堕ちている事。五つ目、霧咲黄依及び水仙薔薇は両者蒲公英病に一度発症した事」


 様々な事が彼の口から出た。そのどれもが予想通りで反吐が出そうな気分になった。

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